4yosigasemi62015年7月4日に吉賀町の主催でジット島根によるチェンソー講習が行われた

 講師は島根ではお馴染みのU島氏。某森林組合の班長を務めている。今回、坂越氏が急用で講師を務められなくなったので、その代打という程の事は出来ないわたしだが、U氏の補助という形でお手伝い。
 昨年度は津和野の地域おこし協力隊の募集や町民の方々、高校生、中学生の子達向けのチェンソー研修ばかりやっていたが、その後、搬出研修ばかりやっていたので暫くチェンソーに触っていなかった。

 話はちょっとずれるが、今回の講師のU島氏の息子さんの一人は、島根県の農林大学校の林業科で学んでいる。2年制でお小遣いを貰いながら林業の基礎を学べる楽しい学校だ。自分も若い時だったら入学して勉強してみたい。
 農林大学は先生も素晴らしいし、島根ジットの坂越氏も県職として講習のお手伝いに行っている。林業課のブログも楽しそうなので覗いてご覧になっては如何。ワイヤースプライスとかやっているし、飯盒炊爨の上手なやり方なども載っている。

 さて、今回の講習は午後に雨が強くなり、ジックリ研修が出来たという感じでないので、枝払いについて少し付記してみよう。
 当ブログは、これから山仕事に参入しようとか、今注目されている自伐型の林業では、どの様なことが大事なのだろうか、という疑問を持つ一般の方々向けに、素人目線での記事を出来るだけ入れていきたいと思っている。
 自分自身が殆ど素人なので、復習の意味で書いているために稚拙だったり勘違いの部分もあるので、随時バージョンアップ(間違った所を証拠隠滅?)していくつもり。
【講習内容】
 さて、今回のメニューは初歩の初歩から。1日の短い時間なので、ソーチェーンの目立て理論から丸太切り、受け口追い口づくりのところまでの概略まで。
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 講習が朝から外で始まる為に内ヶ島氏はホワイトボードを用意して来た。先ずは目立ても数字的な理屈が解らないと、結局なんとなくヤスリを擦っているだけになる。本当は、室内でテキストも用意してじっくりと習った方が良い。そうでないと何度教わっても、直ぐ忘れるのだ。(^^;;

【安全衛生規則による特別教育について】
 修了証を発行する安全衛生の特別教育を行なう場合には、しっかりと教室を用意して林業・木材製造業労働災害防止協会(通称:林災防)の伐木造材作業者用のテキストを用意した上で、スライドや動画も含めて机上講習を行った上で、外での実作業を行なう。二日間ジックリと学ぶプログラムになっている。

 この講習は、国の労働安全衛生規則に則ったもので、林業事業体などが実施主体となって行なうものだが、教える人間が居ない場合には、林災防以外では、コベルコとかコマツなどの企業が行なっている講習を受けることで修了証を発行して貰える。
『労働安全衛生規則第36条第8号の2の業務 チェーンソーを用いて行う立木の伐採、かかり木処理又は造材の業務
 ジット島根ではS氏が講習を開く資格を持っているので、事業体(木質バイオマス活用を推進している市町村でも良い)から依頼を受ければ二日間の講習を行なう事は可能。母体のNPO法人ジット・ネットワークサービスでも特別教育を行なっている。また、他にも優れた団体が講習を行っているので、受講希望の方は近隣で探されると良いだろう。
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 ただ、この特別教育についても教える側の力量があるので、大手企業が行なっている講習はしっかりとしているものの、そうでない事業者の場合には簡単な机上講習だけでも修了証を発行しているところも見受けられるので要注意。
 自分の場合には、都市部で大手企業が開催している講習にて修了証を手にしているが、内容はジットの非常に濃い研修内容には及ばないものだった。それでも、基本的な事はしっかりと教えて貰える。

 この修了証は業務として仕事を行なう場合には求められるが、自分たちで樹を伐る場合には無くても問題ない。それでも、講習を受けているのと受けていないのでは安全に対する基本的な知識や考え方がまるで異なってくるので是非受講をお薦めしたい。

【チェンソーワークを教わっただけでは片手落ち】
 何故ならば、いま木の駅プロジェクトとか自伐型の林業などが推進され、またホームセンターなどでもチェンソーが手軽に購入出来る(が、山林業務には向かない)様になっている。

 その様な状況の中で、様々な団体がありチェンソーワークについての講習があるのだけれども、場合によっては我流のチェンソーの扱い方を教えている様なケースが見受けられる。ネットの動画などをみても教えている側が危なっかしい使い方を平気でやっていたりすることにビックリする。

 また、例えチェンソーの扱い方を教わったとしても、特別教育を受けていない場合には、基本的な掛り木処理(一番死亡事故が多い)でやってはいけないことについてまで教わっていないケースが多々あるからだ。皆さんはやってはいけない掛り木処理のテキストなど紙媒体の資料は貰って居ますか?口頭だけだと右から左になりがちだけれど、チェンソーのキックバックについてとやってはいけない掛り木処理は超大事なこと。※下記欄外参照
 大体、チェンソーワークに関して1日位では教えきれない。そして、教わっても直ぐに現場で繰り返し実作業をしなければ、大抵忘れてしまうのが常。だから、何度教わっても新鮮だったりして・・・
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【目立てありき】
 午前中は目立てから。作業台は高さの調節ができるもの。腰位の高さがやりやすい。背の高さがある人ならば軽トラの荷台に置いたRVボックスの上でも可能だが、足の位置が難しいかも。

 ソーバーには、オレゴン社などから出ている目立て用のクランプを使ってガタついたり動いたりしないようにする。ソーチェーンのドライブリンク(バーの溝に入る部分)がすり減っていると、刃が左右にガタガタ揺れるので左手で押さえて動かない様にしてヤスリを掛けるのが大事。刃物の刃付けは固定が大事だ。

 右画像はソーチェーンの右の刃を擦っているところだが、ヤスリの持ち方はジット流。柄も短くて小さいものに換えてある。
 ジット流は全てにおいて人間工学に基づいているので、非常に論理的で解り易い。プロの中には様々なやり方で自分流の素晴らしい研ぎの方法を身に付けている人が居るが、誰にでも出来る高いレベルでの研ぎはジット流が汎用的だろう。

 自分の場合には、日本のみならず海外でもソーチェーンの研ぎを指導された故永戸太郎先生に15年位前に教わったこともあるのだが未熟だった故に吸収しきれなかったことがあった。そして年を経てジット流を4年前に教わった時には経験も少し増えていたこともあり、解り易くて目から鱗だったのだ。

【楽チン枝払いの技】
 さて、今回は写真を撮り損なっているので、最後は枝払いの記事に飛んでしまうがご勘弁を。下の写真は、枝払いの際の、チェンソーの扱いについて説明しているもの。
4yosigasemi5 今回、枝がついた樹を使う所まで行かなかったので丸太での説明になっているが、樹の幹に置ける時には出来るだけ手で持たずに動かして行く事という説明中。










 これだけだと分かり難いので大サービスしよう。違う時の画像を使って説明を添付しておく。これ以上は実際に講習を受けて貰いたいし、やっぱり現場で習わないと無理でしょう。

 枝払いの際に、長い枝の場合には、途中で一回伐っておく。やっている方はその意味が分かると思う。幹を切っている時よりも枝払いの時の方が事故が多い。枝には作業者が見抜けない様な応力が掛かっている場合が多い事も其の原因。雑に作業を進めていると、バーが挟まれたり撥ねられたりするし、場合によっては張力が解放されて人間を撥ね飛ばすこともある。バーが撥ねられて人間に向かって来たら即事故につながる。

 また、幹を支えている下方の枝を切れば重たい材が動く。動く方向に居れば当然下敷きになることも。1本の材を複数人で取りかかることは素人には絶対御法度。プロの作業者だって、他人の事はお構い無しでやる人間も少なからず居るので、相手がプロであっても最初は信用しないことね。
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 チェンソーを幹に置いたままスライドさせて枝を伐っている。前ハンドルを持っている左手の位置に注意。
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同じく。

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此方は、横の枝を先ず短く伐ったところ。

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そして、幹にソーバーをスライドさせながら枝を根元から落とす。

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 横から見てみるとポジションは此の様な感じ。素人の人が気をつけることは、枝を伐ることばかりが目的となり、“安全に作業を完遂する”ことを意識しないこと。
 写真では解らないが、まずU氏の左肘は左腿で軽くホールド。伐る時に前ハンドルを持っている左手は動かさない。
 動かすのは後ろハンドルを持っている右手。つまり前ハンドルは軸になっているだけ。あとは、バーの先を地面に向けないこと。バーの先端が下がり過ぎると地面を切るからだ。当然、刃が傷むし場合に寄っては隠れた枝などに当たってキックバックを受けることにもなる。4dougutowaza2f

 今回の画像はシッティングポジションのものだが、チェンソーの扱いの考え方は基本的には同じ。両腕の肘を開けたブラブラの状態チェンソーを持って作業をしないということ。
 そして、鋸道が見える位置に顔が無いことね。鋸道とは、ソーチェーンが樹を切り開いて行くラインのこと。その伐り抜く先や、手前に自分の身体が無い様に身体さばきを行なうことと、チェンソーの挙動が乱れた時に直にホールド出来る姿勢を身に付けておくことが大事なんだけど・・・疲れて来ると、ついつい危ない状況に。だから基本を身に付けておくこと、そして防御ウェアを身に着けておくことが大事でしょう。

 動画も撮ってあるので、やり方が解ったら何れWebにアップしたいと思う。しっかりと調べていないのだが、現在youtubeに載っているものだと素人には理屈が解らないと思う。
 大体、検索の最初に出るのは、ハスクバーナのデモンストレータであるアントンセン氏の枝払いの動画のものが幾つか。でも、神業過ぎて我々レベルでは、あまり参考にならない。また、この枝払い6ポイントシステムは、絶対に防護ズボンを履いている事が前提のワークだそうだ。

 詳しくは、全国林業改良普及協会刊の林業現場人 道具と技のVOL.2を読まれると良いだろう。日本のローカルな話だけではなくて、チェンソーを生んだ国々の作業基準値が理解出来るのではないかと思う。

 下記の画像は同誌の記事から。記事を読んだからって直ぐに出来るものではないけれど、勉強することにお金を払わないで技術を身につけようと言うせこい人達をみていると、何事もそれなりのレベルでしかなく、人の後に付いて(美味しい所だけパクって)行くだけのレベルにしか見えない。
 すると、結局右往左往してロスしていたり、またはシリアスな事故をやったりして、人生トータルで大損している人がよく見受けられる。

 皆さんがやろうとしている(このページなどはプロは観に来ないだろうから)伐木、造材、搬出の様な危険作業に関わるには、何故?とかもっと上手くやる方法は無いのか?などと思う向上心や、色々な事に興味を持つ勉強心を育てることが大事だと思うのだが如何。
 見ていると、山で仕事ができるお父さん達って、幾つになってもこういった心的要素を持っている。でも、人によっては資材の保管の仕方が雑だったり、道具の扱いが乱暴だったりして非常に危ない場合があるのでもうちょっと愛着をもって扱ったら良いのでは、と思う事もある(お陰でわたくし、大怪我をするか死ぬかという目に遭った事が...)。
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 特に補助金漬けの地方行政の下だと、無料の研修だけに顔を出す人が多い。ただで技術を教わったところで、全然根本的なところまで身に付かないんだよね。特に安全管理に関する精神的な部分とか道具の扱いね。だからチェンソーとか自分の道具をボロボロにしていても平気だし、道具や資機材に対して粗い扱い方をしていることに疑問に持たないからね。

 其のため、うちの協議会では、道具類は一切貸し出さない。道具が原因で事故が起きた時に責任の所在がハッキリしないし、そもそも山仕事道具は傷むからね。そして道具を借りる程度で山仕事をしようする人って、大抵は道具を大事にしない人ばかり。周りでも他人に道具を貸して後で泣いている人たちが結構多い。
 そして、怖いことに、その人の精神的な特質って、持っている道具を見れば滲み出ちゃっていたりして・・・

 道具を大事にしない人は他人に対してもそうだし、また自分をも大事にしない。自分の身体だってある意味道具でしょ。
 日々身体に感謝しつつ、休ませて上げたり、時にメンテナンスしたりして身体の都合も聞いて上げないと、いきなりバタンと行く時があるからね。それは仕事の道具もそう。道具の都合や調子も聞いて上げないと、突然ブツンッと動かなくなったりしてね。自分の都合ばかり押し通そうとする人は、何事に付けてもトラブル(病気?)が多くなるのは必然の因果というわけ。
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4chainsowwork NPO法人ジット・ネットワークサービスの理事長、石垣氏と副理事長の米津氏の書いている伐木造材のテキストが出ている。全国林業普及協会さんの本は、殆ど書店売りしていないから直接頼むか、Amazonか、または森林組合さんか県林研さんに頼むしか無い。少し値が張る様に思えるが、危険作業に関するテキストだからお金には換えられないでしょ。
「伐木造材のチェーンソーワーク」








【テキスト位お金を出そう】

 初心者はテキスト位はちゃんと買って読み込もう。近所に昔からチェンソーを使っているオジさんが居るから只で教えて貰おうなんて思わない事。大抵の人は何も解ってないから。その様な人たちに間違った事を教えられたら逆に大損することがある。
 レベルの高い事の習いものって、誰に教わったかというので、全然その後の展開が違う。どんな世界でも職人レベルとは言わないけれど高いレベルに近づこうと思ったら「本物に触れないとだめ」。本質に近い事を習ったり触れたりしていると、次第に自分を引き上げてくれる。

 森林組合の人たちだってそう。体系的に教わって身に付けたという人はそんなに居ない。チェンソーが今の様な扱い易い形になったのは此処20年ちょっと。其れをみんな我流で使って来て、やっと最近になってチェンソー発祥の欧米の理論を理解して定着を始めたばかり。
 そしてプロがやる効率を求めるチェンソーワークと、初心者が基本から身に付けて行くべき理論的なベースに則ったワークとは違うと思っておいた方が良いかもしれない。

 プロの中のプロで、プロに指導が出来る方々だったら是非三顧の礼を踏んででも教わった方が良いが、そんな良いご縁が出来なければ、世界基準が載っているテキスト類をちゃんと読み込んでおいて、現場と照らし合わせながら自分のものにして行った方が良いと思う。
 全林協さんの、林業現場人道具と技シリーズにはそんな記事が沢山載っている。ま、道具好きの人だったら買っても絶対損はない。

 そして良い先生を見つけたら、其処でしっかりとした理論と技術を教わったら如何か。前出のテキストの著者である石垣先生が仰る「間違った技術の継承」のループを断ち切る為には、論理的に明快に納得出来る教え方ができる人たちに教わって、この業界の底辺のレベルアップを行なう必要がある。

 それが出来るのは、いま初心者で素人の素直で真っ新な人たちが良い先生について教わり、3Kと言われている森林資源活用の仕事を、安全に楽しく(楽とは言わない)やりがいのあるものに転換させて行くことだと思う。そういう人たちが増えて行けば山や自然と共生しながらエコに暮らせる基盤が整って行くはず。

【掛り木処理の禁則事項】

 さて、最後にやってはいけない掛り木処理について。
1)掛かられている樹の伐倒
2)投げ倒し(浴びせ倒し)
3)掛り木が倒れる範囲内での作業
4)掛かられている樹の枝切り
5)元玉伐り
6)肩で担って外す

 特別教育のテキストから拝借する。
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 こういった禁則事項だが、指導者が居ないと、何れも掛り木が起こった場合には、「必ず素人がやろうとすること」なんだよね。はい。わたしもやっていました。(^^;;

 道具が無いとついやってしまうのが此れ等の手法。事故が起きなかったのは偶々ということ。大体、皆さんは、ホームセンターなどで売っている、よ〜く乾燥した板材なんか持って、木が軽いものという印象があるからかも知れないけれど、生木は半端なく重たいし、広葉樹になると1.5倍以上重たいと思っていた方が良い。細い木でも人間を潰すのくらい訳は無い。
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 こういった状況になると段階を追った手法と道具が大事な訳で、処理の仕方は幾らでもある。智慧と道具があれば身体は凄く楽だし安全も確保出来る。

 そういった指導を受けないで、取り敢えずやってみよう!みたいな精神は山仕事には通じないと思うのだが・・・知らぬが仏で、事故にならなければラッキー!みたいな世界だろう。
 その様々な道具を使った手法を研修会で教えているので、何れそのテキストをオフィシャルサイトの方に載せたいとは思っているのだが・・・
 ということで、今回は以上で終了

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