4IMG_9358 のコピー2015年7月27日、28日:飯南町中山間地域研究センター“女性のためのチェンソー研修”島根県林業研究グループ連絡協議会主催

 メイン講師は、NPO法人ジット・ネットワークサービスの石垣正喜氏。サブ講師はジット島根のE藤氏。受講者は県林研の会員、木質バイオマス活用に関わる市町職員や森林組合職員など。
 公のレポートは、「はいっ、こちら林業普及スタッフです!」をご参照。自分は県林研に関わる者として講習会運営の勉強をさせて頂きにお邪魔した。
 講習会の風景を撮影したのだが、参加者のお顔が出ている画像を使う許可は得ていないので、許可を貰った女性とそれから当協議会の事務局である愚妻にフィーチャーしてレポートすることお許し願いたい。なので、お見苦しい所は多々あろうかと思うがご勘弁を・・・(^^;;
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【正しいフォームは自己防衛につながる】

 先ずは室内で資料を頂き講義が行われた。
 「チェンソーワークとは何か?」と題が書かれた資料には、
『正しい使用方法(フォーム)とは、身体に負担が掛かり難く、正確な切り込みを可能にし、咄嗟の事態にも対応・回避できるフォームです。(定義)』
と記載されている。
 さらに同資料から引用してみよう。『この危険な作業を安全に行なうということは、本書の安全な伐木作業の定義の通り「作業者が対象木を作業開始から終了まで十分なコントロール下に置くこと」に尽きます。』
  『しかし、「対象木を作業者がコントロール下」に置く為には其れ以前に、チェーンソーで作業する以上、チェーンソーそのものを如何にコントロール下に置いているか、またチェーンソーが目立て等含めて、十分なコントロールを許す状態になっているか、更に下って作業者自身、自分を如何にコントロール下に置いているか、ということが大前提になります。』
 『したがって正しいフォームは、将しく自己防衛の方法であるともいえます。』
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 ほんとそうですよね〜。素人の域を出ない自分みたいな者でも分かる様な“鋸道の上に覆い被さって玉切りしている危ない人”や“腕をブランッと下げたまま前屈みでチェンソーを持って木を伐っている人”を実際に見たり、そして写真で見たりすることが多いしね。

 自分的に右はの二枚は怖いフォームに思えるので挙げてみた。何年もチェンソーに触っていても、安全性を意識しないと大体こんなフォームで伐っているという見本。右上の玉切りは、平場で細い材を短く伐っているので、実際には何も問題は起こらないが、日頃からこんな格好が癖になっているのだったら、重たく太い材を玉切る場合や山の中で倒れた樹がどの様な応力が掛かっているか分からない場合の造材の際には危険な状況を呼び寄せてしまいかねない。

 下の左右の二枚は伐倒の際のもので、追い口を伐っている方向が異なるが、チェンソーの基本的ホールドについての根本的意識が違う例。
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 此の左写真の人は初心者。研修二日目に初めて伐倒。右ひじと後ろハンドルは右腿でホールド。かつ、樹の動きを注意しながら作業。安定感がある。

 右写真の人は何年も伐倒をやっていた人。左右の手の親指が遊んでいてホールドが出来ておらず、チェンソーも両手で持っているだけ。また腰高なので樹上を見る事も出来ないし、見るつもりもなさそう。


伐っている際にも樹上を確認して、樹が動いているか、枝が落ちて来ないかを注意する必要有り。または、蔓絡みで伐った樹が不用意な動きをする事があるので、樹が倒れて行くときは全方位に注意を払っておくにこしたことはない。

4sample2 各地で行なわれているチェンソー研修会の写真を見ても、大丈夫?などと考えてしまうことが結構あるのは私の方がおかしいのだろうか。

 偏に主催者側がチェンソーの危険性について分かっていない事から、講習の指導者を選ぶ基準が無く、単に今までチェンソーを使っys伐倒が上手とか枝払いの作業が速いというだけで教える側に回っているのかも知れない。指導の為の基準点が低すぎる様に見受けられる。

 それは、万が一の事を想定していないからで、教える相手に責任を持つ気持ちが無いからではないか。危険作業に関わる事を教えるのならば、他人の事でも責任を感じる人でないと指導者として不適では。

 優れた職人が、教えるのが上手とは限らないし、感覚的に優れた職人技を危険作業が多い山仕事に於いては素人が真似をしたら危険を招く様なもの。
 チェンソーワークで教えなければならないのは、単に木を上手に倒す事だけでなく、不確定要素が多い作業の中で、万が一破綻した際に事故にまで繋がらないための、フォームや操作方法、退避を前提とした段取りなどまでトータルで教える事で、其れを行なわなかったら片手落ちになってしまう。

 素人がちょこっとチェンソーワークを教わっただけで家に帰ったら、其の後には危ない事を絶対やるんだよね。特に掛り木処理なんて、やってはいけない処理方法の原則が幾つもあるんだけれど、それは素人考えでは必ずやりたがる方法だったりする。
 だから、習うのだったら生半可な知識ではなくて、安全に対する考え方や根底の理屈を解ってないとだめだし、そして事故事例や事故のパターンもしっかりと教わって、自分が同じ様な事をやらないように肝に命じておかないと、現場では作業に追われて早く処理するための圧力に気持ちが負けてしまうからだ。そして作業を丸めて(手続きを踏まずに)行ってしまいコントロール外の事が発生してしまうと言う訳。決して突発的なことじゃないんだよね。想像力不足、意識の浮遊、無責任さから発生している。

 そうならない為には、セオリーを身につける事も重要なことだけれど、現場現場で応用が利く様に、自分の頭で考える癖や、一つ一つを確認する心癖を付けることが必要。そして、チェンソーワークでは安全作業のための基本的フォームを身につける所から。
 脇は開けない。鋸道上には自分の身体が来ないポジショニングを行う。チェンソー及びチェンソーをホールドしている腕は、身体の何処かに荷重を掛けて支点とする。枝払いの時は、チェンソー自体を樹の幹に載せて荷重分散すること。あとはキックバック、プッシュバック、プルインの原因を理解して、作業時には原因を作らない様な作業段取りをする。切断による材の重心移動による転回や落下、また材や枝に潜む応力の想定などなど。もっと、あるが、此れ等の要素の処理を身体に染み込ませておき、常に集中して、馴れ仕事にしないように身体意識を活性化しておく必要がある。

 (けっしてサービス業ではない)ジットの人たちが指導に関して厳しいのは、そういった精神も伝えようとするからだと思う。また、島根県では林業普及スタッフのS氏が林業事故で仲間を亡くされているから安全作業推進について本当に真剣だからだ。
 此の様な山仕事の危険性をさておいて、自伐型の林業が儲かるとお金の面だけにフィーチャーして喧伝する人も居られる様だが、実際に林業事業体の事故だけでなく自伐の人の死亡事故も増えている現在、取り組もうと言う人は自分自身の適正をよく見極めた方が良いのではと思う。

 実際にろくに勉強もせず調べもせずネットで見た雰囲気だけで自伐に取り組もうとして各地へ適正の無い人間が入って行っているし・・・そして事故やトラブルを起こしている。
 本人も可哀想だが、周りも超迷惑だし、此れから伸びようとしている自伐型、副業型林業の発展にも水を挿す事に繋がる。現場を大事にしていない人間、他人を利用するだけで人間を大切にしていない人たちが、アドバルーンを上げてオーガナイズしちゃだめだよね。こういった自分の手柄を立てる為に他人を駒として扱う人間が多い事も知っておいた方が良いだろう。

 素養が無い人が、わざわざ危ない仕事をやる必要はない。それは単に自分だけの問題で収まらないからだ。特に日本人は、自己責任に於いて危険要素を含むチャレンジをすることに対して寛容な人種ではないし、何か有ると他人のせいにする人が多い。と同時に、やる側も依存心が強いと、いざ事故などをおこすと人のせいにすることもある。つまり自己確立できていないもの同士が危ない事に取り組んで、もし何かがあった場合には縺れてどうしようもなくなるからだ。

 山に倒れている木をチェンソーで玉切って軽トラで出す程度の作業では、シリアスな事故には繋がり得ないけれど、いざ立木を伐倒するとなると途端に次元が異なる。理論とともに優れた感覚も必要になる。例え頭が良くても現場での賢さとは別物なのだ。その上、あらましな仕事(雑な仕事)の仕方しか出来なかったり、勢いばかりで調子が良いけれど理屈を理解しようとしない人、そして其れ等を変革しようとしない人は素養が無いとしか言えない。
 今はお金さえ出せば、格好や道具は揃えられるし、講習や本、ネットなどで知識も集められるけれど、環境が厳しい現場、危険が一杯の現場で、段取りをしっかり組んで、緻密に的確な作業をやろうと思っても、素養の無い人には到底無理。これは、変わろうと思っても、根に染み付いたものが一朝一夕で変われる訳が無い。その人に合った事に取り組むのが本当の平等であって、誰しもが木を伐る必要はないと思われる。

 適正が向かない人でも、どうしても立木を伐りたいたいのであれば、此のページに書いてある事をよく読まれて、自分の意識を観察しつつ、自分自身を知るところから始めれば良いと思う。そして木や山をリスペクトして伐らせて頂く事をお願いしつつ感謝の気持ちで作業に取り組む位が良いだろう。

4chainsowwork そもそも、木という命を頂くところから始まっているという認識自体がない。それは、大地の上で生きる事を破棄してしまった生き方に流されて、木だけでなく昆虫、動物、微生物、そして地球という生き物をリスペクトする事と、山や自然に対する畏怖や感謝の念が持てない人ばかりだからだと考える。
 自我ばかりのさばらせて乱暴な事ばかりやっていると、ひいては巡り巡って自分自身の身体をもって経験する様なことになってしまう。

 特に現代は人間一人が制御出来ない出力をもった動力を簡単に手に出来るから、常に破綻したときの対策を二重にも三重にも講じて扱う必要があるとともに、学習する為の向上心の無い人は無理だし、そもそも自制心の無い人は単に環境破壊に加担しているだけとなる。

 今行なわれている林業の中には自然破壊でしか無い取り組み方も多く、だからこそ山を愛し丁寧に自然と相対する自伐型の林業の定着が求められているわけだ。だからこそ、自分の頭で何も考えない雑で粗っぽい仕事の仕方しか出来ない(やる気の無い:期待や依存の心ばかりの癖に何か有ると他人のせいにする)人には自伐型は無理という訳。

チェンソー安全ナビ  大体、“チェンソーの切削事故”が多いのは、伐倒の時よりも造材、そして枝払いの時の方でしょ。足場の安定しない斜面で伐木した木や枝が(圧縮方向、伸展方向が)どの様な状態になっているかを考えずに作業するから、切っている枝が不意に撥ねたり、重量バランスが変わり材が動くことになる。
 注意していても分からないこともある状況の中で、チェンソーを様々な角度で持って切っていく訳だから、基本的な考え方や技術、そしてフォームがしっかりと身に付いて居なかったら事故が起きても不思議じゃないよね。

 そしてやってはいけない作業についても知らない事が多い。林業・木材製造業労働災害防止協会からは、「伐木造材作業者用チェーンソー作業の安全ナビ」安衛則第36条第8号に掲げる業務<大径木等伐木造材作業用>本体価格 2,381円+税などが発刊されている。
 このテキストは、可成り丁寧に作られていて、チェンソーワークに関わる基本的知識と共に実際の事故を挙げて原因を細かく説明してあるので、今までのテキストに比べ非常に有用だと思う。初心の人は持っていて損の無い本だ。

 木を伐って、他の木に掛かってしまい倒せなくなる事は起きうる事。特に放置林はそんなことばかり。その際の処理方法は色々あるので、今後ご参考に載せて行きたいと思うが、其れ以前に「やってはいけない掛り木の処理方法六つ」など基本的な事を知らない人は、此方の記事の一番最後を観ておいて欲しい。
 ジットの石垣理事長、米津副理事長が書いている「伐木造材のチェーンソーワーク」は右上の画像のもの。全国林業改良普及協会から発行されている。

 ジットの人たちがよく言うのは、「いままで、偶々事故になっていなかっただけ。」、と言うこと。だから林業界では、長年やって来たというプロのオジさん達が、つまらない事故で死んでいくでしょ。
 でも、事故の無い人は一生ずっと無いしね。自分的には、そういった方々の精神的特質に合点がいくものを感じる。この件は、また何処かで書きましょう。

【目立て理論講習】
 ということで、県林研の雨男と言われるS越氏の運営のためか外は雨なのでひさしのあるところへ場所を設定して、先ずはソーチェーンの目立てから。目立て台を使ってソーチェーンの刃付けの練習を行なう。
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 山では台など無いので自分のやり方で研ぎ易い様に工夫してやるのだが、先ず目立ての理屈を身につける事と、そもそも切れる刃を知らなければ、その状態を保つ事もままならない。
 基本を身につけるその為に、受講生其々の腰の高さに調整出来る目立て台とバーのクランプを用意して講習会が行われる。

 そして売っている新品のソーチェーンが必ずしも理想的な刃が付いているとも限らない。また、自分が日頃切る事が多い樹種によっても刃の付け方が違うし、作業内容によっても異なる。
 それはさておき、初心者は、先ず切れる刃とはどういうものなのかを知る所から。
 但し、時間の都合もありチゼル(角刃)を除いた一般論のみ。

【マイチャンのマイチェンソー】

 此方は、先日掲載した「6月26日、27日「島根県」林業研究グループ総会&リーダー研修」に登場している滝川麻衣嬢。昨年、ジット島根に入会して修行中。先日、県林研の理事にも就任した。彼女の、今回の講習のレポートはこちら別のページもある。静岡のジット本部へ勉強に行っていたらしい。
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 目立ては大分上達したのだろうか。どれどれ・・・

  と、覗いてみると! なんと、マイチェンソーに派手なシールが。「えっ、もしかすると滝川さん、北陸のどこかの大親分さんのお嬢様。背中に漫画描いてない?」。アフリカに二度も派遣で行っていたり、日本の山をあちこち移り住んでいたり、肝が据わった行動力の源泉は、さては・・・
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 「背中見てもいいわよ。その代わり、あとはどうなっても知らないからね!」、とは言われずに、「そんなことあるわけ無いじゃないですか〜」、とヘラヘラ笑っていたが、怪しい・・・ 
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’【右の刃付けフォーム】

 さて、此方は石垣大親分、もとい石垣大先生。右の刃を研ぐフォームの注意点についてのご説明。
  よく左右の刃付けの形が違ってしまうが、右の刃を付けるには左腕が前ハンドルやブレーキレバーに当たってしまうから。これらを抱えた上でヤスリを持つ右手と肘、身体全体の動きを阻害しないフォーム作りが大事。先ずは、上刃目立て角の30度なりに合わせた身体の角度及び足のスタンスを同じにする所から。

 この辺りの方法は誰にでも汎用的でレベル高い目立てを推進するジット流かな。欧米では逆の方向からヤスリを擦るやり方を採る場合があるようだし、目立ての様々な方法については先輩方がネットにも公開してくれているので、“チェンソー 目立て”などのキーワードで検索すると勉強になる。ありがとうございます!
 兎に角、左右の刃付けのバランスが崩れていると、切れない刃の側に材の切り口が曲がって行くから、材が平面に切れていない現象が起きる。

【職人は道具を使い易くする】と言うか、道具を工夫しない人は職人とは言えないだろう
  ところで、ジットの目立てはフリーハンドで行なうのが基本。フォームとヤスリの持ち方は人間工学に基づいているから、此れ等が身につけば、ヤスリは真っ直ぐに平行移動出来て奇麗な目立てが可能。なので、ガイドとか角度ゲージも使うことがないし、日頃の目立てには邪魔だったりする。

 ところが石垣先生、目立て用のガイドローラーを持っていた。これで、フック(鉤型に刃先が尖った形)とかバックスロープ(刃が立っている)を直すのに、手元を下げたり、上げたりして直すのに使えば良いだろ、とのこと。
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 それも、使い易い様に改造してある。下の画像の右が市販品。左がプレートにネジ穴を切ってネジを通してローラーをステンレスのものに換えてある。何れもホームセンターで手に入る資材とのこと。

 わたしも作ってみようか。自分のチェンソーの目立てをする時にはあまり必要性を感じないが、講習とかやっていると、飛んでもない目立てをしてある人がいて、取り敢えず全部の刃を直さないと始まらないことがある。それを直すのには可成り楽かもしれない。
 やっぱり、山仕事に限らないけれど、職人レベルの人たちは自分たちで道具を改造したり、治具を作ったりする。買って来たものをそのまま使っているのは初心者レベル?
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【ジット流やすりの柄と持ち方】

 ジット流の目立ては、左右の刃付け共に掌(たなごころ)を上に向けている。柄は2cm程度の短いものに交換。

 柄を交換する意味は、肘からヤスリまでを一直線にするため。掌が上に向いているのは、逆に下に向けてヤスリに人差し指を添えていた場合、刃の方向に力が掛かるよりも下側にばかり力が向いて、横方向ではなく下方向ばかり削ってしまうから。
 するとタイストラップというリンクを繋いでいるプレートを削ってしまい、ひいては破断事故につながることになる。ヤスリを押す方向は、若干斜めになっている上刃の上面と同じ方向。
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 基本的なヤスリの持ち方 by E藤講師。これは人差し指をヤスリに沿わせているから左側の刃を研ぐときの形。人差し指でヤスリを右側に押しているので、左の刃を横方向に削る。右の刃を研ぐ時には、親指を沿わせてヤスリを押す。
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 県林研事務局、ジット島根のS氏も教えてくれる。最近はE藤氏達若手に任せているので大分楽になったのでは。


【チェンソーの構え方:フォーム】

 さて、お次ぎはチェンソーの構え方、フォームの講習。初めてチェンソーを持つ人が数名。既にジットの研修を受けている人たちも何人か居る構成になった。
  わたくしめの妻はチェンソーを持ったのが今回で二度目。一回目は去年、薪作りを行なう際にトップハンドルのチェンソーで細いナラ木を切ったことがあるだけ。なので何も知らない状態。E藤氏が、「何も知らない人でも良いですから。うちの組合から参加する女性達も初めてなので。」、と言ってくれたので気楽に 参加してしまった。
 写真一番右の方はトップハンドルチェンソーを持って来ていたので、ハンドルが後ろではなくて上にあるためにフォームが採りにくい。
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 シッティングポジションでのフォームはこんな感じ。
 左手は前ハンドルの少しサイドを持ち、腕を腿に乗せてホールド。重量分散するので楽。右手及び後ろハンドルは右腿に当てる。または状況によって腿の外側に沿わす。

 うちの妻は、、、と見ると。アチャー!「あんた、もっとシャキッとせいよっ!」、と、心の中で叫ぶが、、聞こえない・・・
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 大体、うちの奥様、右足のつま先が死んでいる。

 結構、この右足の位置や向きがフォームに関係して来るので大事。E藤講師がその説明を行なう。
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 次は実際に木を切る所へ。目立ての成果は如何か。

  講習会にお借りしている中山間地域研究センターは、中国4県で設置した研究施設なので中山間地域に必要なことを幅広く色々な研究がされているところ。農林関係の地道な研究が行なわれており、アカデミックなデータ解析から、現場レベルでの実証実験まで行なわれている。また、地域コミュニティや活性化に関わる 研究を地域と恊働しながら行なっている。そして、広大な山もあり併設された農林大学のフィールドともなっている。
 其の中で、丸太切りの現場は少し歩いた施設内の資材置き場。雨も小降りになってきたので、そちらへ歩いて移動。
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【うちの妻が・・・(講師良ければ結果よしの巻)】

  目立ての講習で妻に貸したのは、別の講習で刃がガタガタになっていたエコーの古い20年以上前の機種だったが、丸太切りには17年くらい前に買った小さいスチールの古い35ccのものを貸す。ところが、力が無い妻がスタータを勢い良く引けないものだからプラグを被らせて(ガソリンで濡らし過ぎてしまい失火 する)しまったみたいで手こずっていた。
 其の時、わたしは石垣先生の経験者指導の方の丸太の固定役をやっていたが、妻の方のエンジンが掛からないのを見つけて観ていたら、「随分、気になるみたいだな。」と、石垣大先生に言われてしまった。ヒエ〜!ス・ミ・マ・セ・ン。
 隙をみて、チェンソーの交換に行って来る。ついでに丸太抑えを当協議会の若手に交代して貰った。
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 此方は初めてチェンソーに触る人たちを含めた初心者のグループ。フォームの再説明から。
  そして、エンジンの始動方法から全部教えないと解らない。うちのは、エンジンの掛からないスチールの代わりにハスクの39を渡したが、これまた始動に手こずっている。両機共にエンジンが掛かることは確認してあるので、体力のない妻は、力負けしてスターターロープが強く引けないのであろう。

  この39は字の通り39ccなのでさっきのスチールよりは若干コンプレッションが強い。デコンプも無し、パージポンプも無いもの。何と言ってもハスクバー ナの300周年記念モデル(since1689)の金のシールが貼っているものなので、なんと!1989年もののクラッシックモデル。25年以上の前の機械なのだが、アイドリングでチェーンオイルがダラダラ垂れる以外は調子がよい。マフラー焼いてスラッジを取って於いたから(昔の触媒が入っていないのは大丈夫)エンジンは良く回る。ヘタレ初心者にはちょっと危ないと思いつつも渡したマシン。
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 E藤先生が、また掛からないの?と様子を見に来ている。
 スチールもハスクも日本より寒い欧州の機械だから、日本の夏には厳しいよね、と言われてしまう。今のタイプはコンピュータコントロールで微調整が効くみたいだが、日本製のものよりは巾が無さそう。そもそも、いまのハスクは、ボディの造りが絞り込んであるデザインなので発熱に対しては余裕が無いと販売店さんに言われたことがあるがどうなのだろう。うちにある346XP位だとそこまでシビアではないかも。
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 お、頑張ってます。このポジションは良し。地面に置いて掛ける場合に、よく見るのはチェンソーに覆い被さって始動している危ない人。
 エンジンのコンプレッションが強いタイプだとスターターを引くと、そのままバーが空を向きかけることがある。もし、其の時にエンジンがハーフスロットルで始動したら自分を切るかも知れない。
 だから、まずソーバーが上下する鋸道の上に顔や身体が来ないこと。上の画像の様に。

 後、ジットが教えているのは、最初にチョークを引いてブルンッと初爆があったら、スロットルレバー(アクセルトリガー?)を一回引いてハーフスロットルにならない様に外してしまうこと。
 すると、アイドリングの回転数で穏やかにエンジンが回り始める。此れについては、機種によって出来ないものもある。
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 先ず、スタンディングポジションのフォーム。おややや?まともじゃん。
 其処から切り進むに従ってシッティングポジションへ移行。ありゃりゃ、ちゃんと出来てるじゃん。エンジンぶん回しているし・・・フェイスガードは降ろした方が良いけど・・・
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 ん〜、先生が良いとまるきり初めてでも、格好が決まるね。E藤先生、ありがとうっ!
 わたしが妻に教えるとなると、日頃の鬱憤を晴らすつもりもないのだけれど、ついボロクソに言ってしまいがちなので、自分が疲れて教えるのが出来なかったのね。いや、良かった良かった。
 
 そして、スタンディングのフォームを教えて・・・
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 んっ?
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 ありゃりゃりゃ、りゃ〜! E藤講師が、前ハンドルの脇を握って危なくない様にサポートしながら。。。
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 ブスッと突き抜けたぁ〜!
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 突っ込み伐りだ〜!最初からそんなの教えちゃって良いのか?
 切れないチェンソーだと無理だし、ちゃんと刃付けが出来ていないとキックバックが危ないし、振動も凄かったりする技だ。
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 顔、笑っているし・・・
 「ええ〜い!こいつめ、こいつめ、うちの旦那の奴〜。ブス〜っと・・・」、なんて言っていないだろうなあ。(^^;;

 今度は一人だけでか・・・
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 はい、そのまま上に切り抜いて!
 ちょっとがに股で格好悪いのでご勘弁を。
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 「よっしゃあ!」「ありがとうございましたぁ!」とうちの奥様。『ふぅ〜・・・』、E藤先生。

 初めてチェンソーワークを教わったうちの奥様。やっぱり先生が良いと、短時間でちゃんと身に付くじゃん。少しは期待していたけど、此処まで出来るとは。

【チェンソーワーク、意外と上手い女性と子供】その共通項は素直さ、かなぁ〜
 もちろんうちのヘタレ妻だけでなく、他の方々も上手にやっておられた。また、石垣先生の担当の上級者のグループは受け口と追い口作りまでやりましたが、みな上手。女性陣は、身体も頭も柔らかいのか実に素直に指示に反応出来るのが凄い。石垣先生も同じご感想。

  自分の場合、稚拙ながらもあちこちの地域でオジさん達に基本的な運用についてお教えさせて頂いているけれど、言った指示通りに反応出来る人の方が少ない。 本人はそうやっているつもりでも、実際に身体がその様に動かないことが。我流が身に付いているとどうしても同じパターンで処理したがるのが常。ま、言っている意味がなかなか理解出来ないというのもあるんだけど。

 そういった事と共に、チェンソーは刃物であり、高速で刃が回っているので、皆さん一応危ないものという認識がある。そして、実際に木を伐る現場は足場の悪い斜面だったり、伐倒方向に悩む様な混み入った林だったりする。つまり、ちょっと失敗すればパニクって頭が真っ白になって論理的に考える余裕が無くなるから、日頃の社会的仮面の下に隠された精神的特質が出て仕舞う訳。

 これは、自分がやった範囲でしか例を挙げられないが、クライミングとか沢登りなどのエキストリーム的なこととか、または瞬時の身体的反応が必要なモトクロスなどをやっている際に、破綻したり危ない局面になった際には頭が真っ白になって判断出来なくなる事や、心癖(心的反応パターン)のままに動いてしまうことがある。

 そして、こういう事をやったらこうなる、という因果関係まで考えられなくなって、取り敢えず“その人の考えられる範囲内で”反応してしまう様なことをやってしまう人がいる。
 指導者側の意図を汲もうとか、言われるままに取り敢えず素直にやってみるという様にならず、自分のエゴの理解の範囲でしか動こうとしない。

 身体が苦しい状態で作業を行わなければならない状況だったり、また恐怖心を伴う現場での作業と言うのは、その人の持っている潜在意識の部分が炙り出されてしまう。場合によっては自分で制御出来ない感情の吐出もある。

 こういう人たちは、物事の上達が遅いか、もしくは上達しないで離脱する様になる。此れって誰しもが持っている意識パターンなんだよね。

 此の程度の結果だったら自分に害はないけれど、危険作業を伴う現場でよく出る話は、怪我の多い奴はしょっちゅう怪我をしているとか、事故を起こす奴は何回も繰り返すという統計的現象のこと。それは単なる偶然なんかじゃなくて、その人の行動パターンとか意識の偏向性とか、感情の中に埋もれている様々な抑圧的な潜在意識などを観察していると法則性が見えて来る。

4sttatigislice だからこそ意識の転換が必要なわけで、それには先ず法則的で論理的な身体の使い方とか作業手順を、身体の奥、つまり身体的意識に染み込ませて、考えずに即、身体が反応出来るように訓練しないとならないわけ。年輩者だったら知っている映画、燃えよドラゴンの有名な言葉、『Don’t think!feel!』に繋がる訳ね。

 そこへ行くと、高校生。特にスポーツをやっている子達は凄かったね。おかしい所を指摘して教えると、直ぐに反応して矯正出来る。見ていても安定感があって安心して見ていられる(左画像は高校生。チェンソーワークと搬出の両方を行い1日3時間半程度して出来なかった研修の2日目。立てた丸太のスライスを行っている所。親指トリガーで低速で丁寧にスライスし、且つ伐った板が飛ばずに丸太上に残る様にする技の訓練中。これは受け口、追い口を正確に奇麗に作るための基本的操作に必要な要素を身に付けるためのもの。教え方が悪かったのでちょっと左腕のポジショニングが悪くて身体が右に傾いてしまっている)。

 つまり身体を動かして習うことが鍛えられていて、素直に学ぶ心が出来上がっているんだよね。その真っ新なところにちゃんと理屈の通った事を教えれば身に付くのも早いし安全性も高められる。

  我流が染み込んでいると、そして長年やっていると変なプライドが着いてしまっているから転換が利かないんだよね。わたしもそう。3年位前にE藤先生に、「手先だけでチェンソーを持っていて、4IMG_8805 endosan枝払いの仕方が危ない!」、と、しこたま怒られた(本当は指摘されただけ)のを暫くムカムカしていたことがあるし・・・(^-^;; 我が強くプライド高い年寄りはいけんなぁ〜と強く反省。
(枝払いについては吉賀町のチェンソー講習のレポートの後半に書いてあるので興味の有る方はご参照を)

 ところが、この間なんか、林業事業体に入ったばかりの人に、“今度、ジット・ネットワークサービスという国内でも結構有名で、テキストも出版しているし、解り易くて眼から鱗のチェンソー講習があるから参加したら?”、と誘ったところ、『もう3ヶ月もチェンソー使って仕事しているし、そんな暇もお金もない。』、なんて言われちゃったもんね・・・\( ̄▽ ̄;)/

 山の仕事って難しい仕事だから、少しでも出来る様になってくると、誰しもがプライドが高くなって来るんだよね。ジットの講習の場合、論理的でないいい加減な危険作業をやっていると、例えプロの人でもズバッと指摘されるから、人によっては気分を害して次の講習から来なくなる事もあるらしいし。自分が今まで事故を起こしていなということが拠り所で天狗になっていたりする。そんな過去の実績よりも此れからでしょ。危険要素が身に付いているから指摘される訳で、他人の言葉を受け取れない何事も自分自分の人は自分だけで歩むのね。

 チームでの連携作業が多い仕事にそんな人が多いと軋轢ばかり積み重なって、何処かで事故を起す下地を作っているだけだと思うんだけどね。人間の身体って、頭(論理)ばかりで作動しているんじゃ無いんだよね。感情とか、潜在意識って言う言語外の意識の状態が行動や身体の動きに出る訳。人との摩擦が多い人は鬱屈した感情を抱えている訳だからある意味時限爆弾を抱えている様なもの。長くなるので、こういった話や脳生理学から説明する話はまた別の機会に。

 でも、今までご一緒させて頂いて、この人凄いなあ、と思える山の先達達は、何時も興味を持って心を外に開いているから、新しい事にも熱心に取り組むし、人の話も取り敢えず自我で判断しないで、先ずは聞いてくれるよね。変なプライドを持っていないし、素直というか実直というか。だから、此方も素直になって教えを請うことが出来る。
 3Kと言われる山仕事の現場は、シリアスな状況になることも多く、自分のレベルの低さを見せつけられる様な事ばかり。そんなこともあり、初心忘れるべからず。常に学ぶ心を忘れない様にしようと、我が強い自分に言い聞かせるのである。

 此れから自伐型で取り組もうという人たちは、取り敢えず、木を伐るとか、掛り木を外して寝かすなどの状況の際に、目先の目的のみに視野狭窄的に取り組むのではなく、周りの状況を俯瞰的に見て、其の上で心を落ち着けてから作業に取り組む事をお薦めしたい。

 また、困難な状況に陥った時には、自分の出来る事は何処までなのか、何か違う処理の方法が無いのか、などを一服しながら考える事。もしかすると、以前に習った処理方法で忘れている事が有るかも知れない。また、其の様な時のためにも、日頃からテキストを読み込んで、様々なパターンをシミュレーションしておく勉強も大事。

 ちょっとした道具が有れば安全に処理出来るので、習ったり検索して調べたりして道具を揃えて行く事も大事。チェンソーと軽トラだけで木が出せるのは、林地残材という事業体などが切り捨てた残材のみ。
 間伐を行ない伐倒しようと思ったならば、チェンソー以外にクサビとハンマーになるものは必要だし、そして掛り木処理のために、最低ロープと木回しの道具は必要。それでも掛り木が外れない場合には、滑車とスリング、ハンドウィンチが必要。お金を掛けないと言っても全然手ぶらで、難しくて危ない山仕事が出来る訳が無い。

 だからと言って、他人に道具を借りるのは止めておいた方が良いと思う。そもそもそういう人たちが、道具を丁寧に扱って、元通り奇麗に返した試しがないのが実情。山の道具は傷むので貸し借りは無しにしておかないと、壊れて事故が起きたときには貸した事を悔やむだけになるし、道具に対して其の程度の意識しかないのだったら、事故やトラブルの要素を引き寄せているだけ。道具を貸してくれと言う山仕事のせこい仲間が居たら、出来るだけ遠ざかった方が良い。いずれ何かをやらかす。

 自伐型の山仕事を安全に持続的に、そして楽しみを持って取り組みたいのだったら、ある程度の意識の転換が必要な場合があるから、自分自身を見直すのにも良い仕事なのではと思う。なんと言っても、雇われでなく全て自己責任で、自分自身と道具をコントロール下において結果を出すというのは、ダイナミックかつ繊細なな仕事だからだ。山で仕事ができる人って、細かいところも緻密だったり神経質だったりする。それをササッと奇麗な流れでやってしまうから素人が見ていて簡単に思えるけど、騙されない様に・・・(^-^)

 さて、突っ込み切りは、造材のときの箱伐りの際にも関係するし、追いヅル伐りを行なう際には絶対に必要な技術なので、学んでおくと飛躍的に安全性が高まる。
  実は自分も体験講習を行う場合などには突っ込み切りを教えている。追いヅル伐り以外にも、丸太にバーの巾分の四角い穴を抜く(簡単な構造物を作る際に使える)とか、椅子やベンチを作る際にも有効なので、直ぐに役に立つ技術だからだ。何方かと言うと山仕事関係の人よりも農業関係の人に喜ばれる。

4IMG_9478 のコピー  雨と汗でビッショリになった女性陣だが、まだ終わらない。部屋に戻って安全管理の講義を受ける。事例を聞くだけだと、なんでそんな危ないことをやって事故 を起こすのだろうと思うが、現場に行くと作業を進めなければならないプレッシャーとか、疲れて頭が真っ白になってしまうとかの条件があり、安全作業の基本 的心構えが鍛えられていないと事故に結びつく様なことをやってしまう。

 狎れ(なれ)が出てしまうベテランほど気をつけた方が良いし、我々初心者でも直ぐに分かった気になって初心を忘れると危ない。
 実際の事例を挙げた事故回避の説明を受ける。そう言った話を我が事として考えられる素直さが大事ね。
 そして初日の講習は終了。

【意見交換会という名の懇親会でも、話するのは山に関係した話ばかり
 近い受講生は帰宅して、また明日再度出直す。家まで遠い受講生は講師の方々と共に宿泊して、意見交換会という名の懇親会を行った。
  島根県は横に長いので、端から端まで移動するのに、場所によっては4時間以上掛かる。中山間地域研究センターは、県の中央辺りにあるものの、自分が住んで いる西の端の津和野町からは、超スムーズに来て3時間半、190km弱。島根県は貧乏県なので高速道路は建設中で、まだ切れ切れ。広島県に向かう山側へは やっと1本高速道路が開通したばかり。ま、その代わり一般道が高速道路みたいにアベレージが高いんだけど。
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 宿泊棟の食堂。食事は地域のオバちゃん達が作ってくれる。でも、つまみは無いので、近所のスーパーでお刺身を買って来た。流通が整った現在、島根県は山奥でも魚が安くて美味しいのだ。
 始まって暫くすると、農家林家で仕事が忙しい県林研会長の響氏が奥出雲ワインの差し入れを持って参加。ペットの餌やりで遅れて来た。響さんのペットと言うのは、黒毛和牛のこと。大体、いつも6、7頭は居るので面倒をみるのが大変。
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 左写真のピンクの方は、当ブログにはよく登場するジット島根のU島講師。石垣大将が来ているので差し入れを持って挨拶に来ただけ。普段、リラックスした講習を行っているが、大将の前だとかちんこちん。
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 其々のテーブルで意見交換がされている。県下で活動している林研グループは、結構仲が良いし、今回は女性が参加しているので、また違った目線からの話が盛り上がる。
 わたしは、初めて石垣氏と同席させて頂いたが、流石突き抜けた方は話の内容が違う。まず、意識レベルが違った。どう違ったのかと言うと説明できない。酔っぱらっていて内容は忘れてしまったのだ。が、感動したことだけは覚えている。

【仕事ができる人は後片付けも上手】
 そして、ビックリしたことが・・・毎回、飲食が終わった後は残った人たちで片付ける。何時もは事務局のS越氏が洗い物をやってくれる。それもただ食器を洗うだけでなく、シンクのゴミも全部片付けて、全てのゴミもまとめ、台所を元の状態に奇麗にする所までやるのだ。
 それだけで頭が下がる。皆も県の職員がそこまでやってくれるかと言うのでよく手伝う。そのS越氏は、今晩は所用で不参加。なので、我々夫婦で片付けようと思っていたら・・・

 なんと、片付け始めたら、シンクの前に立って洗い物をしているのが石垣大先生!それも手早い。慣れている。ジット会員の滝川嬢と何を話しているのか分からないが、ドンドンと片付けていった。
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 そして、途中で県林研会長の響氏と交代。食堂側では皆が連携して片付けている。皆で行なうとさっさと片付く。素晴らしい!

 何故この様なことに注目するかと言うと、仕事ができる人というのは、最後まで処理して結果を出すということと共に、整理されていて分かり易い状況を保っているということ、そして汚れ仕事でも厭わずに自らの手を使う、ということが有ると思う。如何か。
 自分の美味しいところだけやって、あとは他人に片付けさせるとか、そのまま放置するというのでは、責任感無いよね。むかーし、高校生だった頃、モトクロス仲間の先輩の植木屋さんに結構アルバイトに行かせて貰って居たんだけど、庭師はきっちりと隅々まで片付けてなんぼのもので、そうしないと奇麗になった感が損なわれる。

 ピシッと細かいところまで奇麗になって整っていると、理屈とかではなくて眼から入って来る印象が違うのね。お客さんが感動するところまで仕上げないと、つまり仕事の価値が落ちてしまうということ。

 これは相似相学会的(今は亡き智慧深い方々の行なっていた活動)にいうと美観電圧が高い状態ということ。この世の中、光で現れているエネルギーがあるわけで、光は当然電磁波であり電気的特性をそれぞれ保っている。
 それが人間の眼のセンサーを通して脳に入るが、眼だって脳だってニューロンだって微弱電流で動作している。人間の細胞はイオンチャンネルを通して電荷のやりとりをしているわけだから、この世の活動は全て電子の動きに関わっている。

 それを眼から入って来る景観や景色からのエネルギーが、整っていて且つ高い圧力を持っていると、人間の脳に対してインパクトがあるくらいのエネルギー量をもって入って来る。それが人の心に感動を呼んだり、逆に整っていないと違和感が起こったりする。

 だから、洗練されていった人たちは、其の違和感が無くなるまで仕事をしたい。延いては整った状態を保ちたいという動機に繋がって行くので、結果、『仕事が奇麗』、ということになる。

 この相似相的見方から言えば、仕事が奇麗な人は、頭の中も整理されており、精神的にも整っている、ということ。つまり、破綻をする要素が極力少なくなっているわけ。

 チェンソーワークだって、上手い人は動きが奇麗だし、結果も奇麗。山仕事は汚れ仕事だから服が汚れるのは仕方が無いが、着方がだらしなかったり、作業の動きに違和感が有る人は不安定要素を抱え込んでいるということになる。
 だから、台所仕事でさえキチッと出来ない人が、厳しい現場仕事を奇麗にこなせる訳が無い。全ては相似相。


【世代交代、技術更新の下地づくり】
 右上写真の髭面の男性は、津和野町の地域おこし協力隊として作業道作りの研修に励んでいる田口氏。今回、当協議会の会員として、講習会運営の勉強のため参加してもらった。
  此方に来る前は関東の大手企業に務めた後に、某県の委託事業を行っていたが、山の保全の大切さを思い山仕事の素養を付けたくて地域おこし協力隊として移住した。素潜りで30m潜って底物を突いて来る特技を持つ。聞いてみると漁師になりたかったそうだが、海が荒れている事を実感しているので、海の蘇生の為に何か出来たらということで森林の保全を行ないたいとのこと。

 道作りに関しては、徳島の自伐林家の橋本先生ご夫妻に昨年度末に津和野に来て頂き、講演会と作業同開設の路網設計の講習を開催し、彼も参加している。そして、今年度は、奈良の清光林業さんへ2週間の研修に行き、さらに岡橋先生に 1週間津和野に来て頂き研修を受けているらしい。
 島根県林研の元会長の村上和寛氏が大橋先生に習って路作りを行なって居るので、田口氏が作業道作りを行なえる様になれば、今後山に優しい崩れない作業道づくりが県下で更に広がっていくことが期待出来る。

 現在、都市部の生活は飽和状態で転換期を既に過ぎている。其れは我々の様に都市部で生まれ育った人間ほど実感している事だろう。相当以前から、そんな人たちがもっと洗練されたエコな生活を創造したくて地方へ移っている。それが、誰にでも解る様になったのが今の時代。
4tanakaatsuosan2 ちゃんとした社会経験を積んで、洗練された考え方とフェアな価値観を持った人たちが、地方の一次産業と取り巻く世界に入って行く事で、淀んで膠着化した事業に風が入って行く事になる。もしくは、淀んだところに風を入れなくても、全然別の切り口から違った世界を創ってしまえば良い訳だ。リプレイスじゃなくて、次元が違うネットワークを作って有機的に違うレイヤーで繋がって行くのが良いのかと。

 何方が仰っていたのか失念したが、山や自然を大事にして来なかった地域や国は滅びていると言う歴史的事実があると書かれていた。また、何方だったか先日ネットで読ませてもらった記事に。エジプトや中東は、昔は大自然に覆われた地域だったからこそ文明が発達した訳で、木があったから大きな石を運ぶ事が出来たと書かれていた。
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 以前お聞きした森林ジャーナリストの田中淳夫さんの講演でも仰っていたが、日本の江戸時代や戦前戦後までは、燃料にする為に日本でも禿げ山が多かったとの事。今の様に里山林が生長しているのは、かつて無いほどらしい。

 その状況の中で、無駄に木をもやす大規模バイオマス発電のために、日本の山が無駄に伐られて行ったらそんな状況になる可能性もあるし、近年の様な豪雨災害が起きる様な気象状況ならば、山に保水されないで一気に出水して街場が一瞬の内に水没することになってしまう。※逆に、山の材を利用せずに放置したままだと、植物の鬩ぎ合いのなかでひょろ長い木ばかりになり、地面から上が重くなるので、豪雨で斜面崩壊、土石流を起こし自然ダムができて下流域の集落や町が水害を受けることになるので、適正な利用が望ましい

 だからこそ、山を大事に扱って其々がそこそこの経済で食べて行かれる様な自伐型・副業型の林業に取り組み、また欧米の様にフォレスターがレベルの高い知見と技術、そして誇りをもって仕事をすることが出来たならば、取り組む人が増えるだろう。例えばそういった人たちが沢山増えたならば、例え災害が起きたとしても自分たちで小屋を建てたり、燃料を自給したり、道を造ったり出来るので、変動に強い体制を維持出来る。

 そういう事を認識している若い人たちが増えているということ。今までの様に一部の山師が解っていて、あとは食べるだけの単なる作業員という意識の低い状況ではなく、多くの人たちが山を保全する意義を理解して、そして矜持を持って取り組める様な時代が来ている様に思える。
 それには技術の進歩だけでなくて意識の転換が必要ではないだろうか。自伐林家は、特に安全の確保を第一とすることが立ち位置だろう。

 取り返しのつかないことが起きるのが山仕事だから、自分自身の適正も見極めつつ取組みの仕方を熟考し、腑に落ちない事はやらない、一旦立ち止まるという意識を育てたい。全てが頭で解る訳がないので、自分の身体感覚、心の奥からの信号を拾える様になる人に育って欲しいと思う。それが自然と繋がって生きて行く、生かされて行く為の第一歩だから。

 さて、二日目の研修も雨と暑さで大変だったらしい。らしいというのは、自分は雲南市さんと次回の搬出研修の打ち合せなどで欠席だったからだ。夕方に妻を迎えに行ったら、受講生の女性達は皆さん上気して真っ赤な顔をされていた。よく頑張りました。

 それにしても石垣氏に教われるなんて幸運な方々。今後に期待。

以上