5klk-top1☆☆5倍力ロープ牽引システムは、1t近い長尺材をも人力で牽引可能に・・・☆☆

 島根県林業研究グループ連絡協議会主催のスキルアップ研修を開催しましたのでご参考に。

 本研修は、島根県地域振興部地域政策課地域エネルギーグループによる島根県再生可能エネルギー講師派遣支援事業の助成を受けて実現出来ました。


 kensyuu1-4島根県県下でも、各市町村に於いて木質バイオマス資源の活用のための基盤作りが行なわれています。
 また県内に大型のバイオマス発電所が出来たために林業事業体の動きが活発化しています。
 然し乍ら奥山だけでなく集落近くでも皆伐施業が行われ、かつ再造林が行われていないところもあり、再度の豪雨による土砂災害に見舞われはしないかと懸念が高まっている地域も増えつつあります。

 この様な流れに歯止めを掛けるためには、山主を始めとした地域住民による自伐的な活動を活性化し、中島健造氏等が説く択伐施業による持続的な山の資源活用の基盤を確立して行かなければならないと多くの人が考えて居ます。

 山ごと売り飛ばして、それでお仕舞いではなく、自分たちが持続的に利益を得られ次世代に繋げられる様な仕組みを作っていかないと、誰がしっぺ返しを受けるのでしょうか?

 島根県東部ではたまに見る位の10t車やトレーラーなどで大量に材を積んでいる景色は、西部地方では一日何車どころではない位に見掛け、そして広範囲の皆伐された山を其処彼処で見ます。
 元々育林の文化が無く植林の歴史が浅い地域ですから植えっぱなしで枝打ちも間伐もしていない放置林が多いですが、トラックに積まれている木は太い直材が大方です。

 年寄り達が地域のことや、自分の人生を諦めてしまい山など金になるうちに売ってしまえば良いと考えてしまったのかも知れませんが、植生豊かで広葉樹も多い島根の山が好きな者達にとっては非常に残念なことです。

 少しでも次世代に此の自然を残し、美味しい農産物海産物を維持する為には、農家等を筆頭に一般市民の副業化によって山守と山の木質バイオマス資源活用のための搬出技術を高め、自分たちの懐を潤わせながら安全に木材が搬出出来る様になることが、一番の有効手段ではないでしょうか。

 つまり、山主や住民自身が山を大事にしつつ材を出していければ良い訳です。

  また、欧州に倣って木質バイオマスによる発電を行うならば、コ・ジェネレーションタイプの(お湯などの)熱利用と電力供給ができる熱併給発電の小規模のプラントを各地 域で稼働させた方が、地域資源を地域で活用するためには運送効率からも良いです。そして、地域でエネルギー循環システムが構築出来ますし、地元で資源とお金が循環します。

 また、各地域でスタンドアロンの地域エネルギー活用システムが構築出来るならば、災害時にもフレキシブルに対応が可能でしょう。また、営業施設などで活用出来る薪ボ5klk-top3イラーも色々良いものがあり実績が伴って来ています。
 この薪ボイラーを使った木材の低温乾燥システム(岐阜、高山の井上工務店さん)が、株式会社森の仲間たちのサポートで出来つつあるので、こう いった事例を参考に実質的な木質バイオマス資源活用と、其れに伴って森林保全を利益を上げつつ、そして有効利用しながら可能にしていけます(一旦人の手 の入った山は整備していかないと植生バランスが採れずに生命力が失われていきます)。

 その為には、各地域で住民達が重たい山の木を自分たちで搬出出来る技術とシステムが作れないと実現出来ない訳です。

 ところが今は小規模で優れた道具類があり、また化繊ロープを使って安全に、そして楽に伐木(掛り木処理)から搬出まで5klk-top2出来る基盤が整いつつあります。

 その啓発活動を私どもも行っているのですが、今回県の助成を受ける事が出来たので、よりレベルの高い技術と手法を学ぶべく講師を招聘して研修を行いました。

・・・と申しましても、ページ最初の表題の様に、“人力”による搬出システムの講習を行った訳ではございません。(^-^;;
 何時もの様に優れた道具類を使っております。そして、今回は素敵な講師さんが・・・数年前まで広島の有限会社安田林業さんに在籍して居られたあのお方。丹波の豪雨災害地でもPCウィンチを活用しておられるお方。
 それからアウトドアショップKの木下さんは、特伐関係の仕事柄、資機材の運用に於ける安全率や材積計算は為尽くしているし、機材の破断実験とかもやられて居られるので、PCウィンチの基本的な使い方以上の事を林研グループで研修したかったのです。
 つまりPCウィンチで材を引っ張れば良いということだけでなく、アーボリストのノウハウを導入して、より安全に効率良く行う搬出を一般の人達が出来る様になればという目論見でした。

 と、言うことで以下のレポートは県に提出した報告書をそのまま流用させて頂きご無礼を致します(助成は縄文之森協議会が受け皿になって申請しているので報告者も同様になっております)。※若干ネット用に手を入れています。




平成27年12月15

島根県知事 溝口善兵衛

            匹見・縄文之森協議会会長          

島根県林業研究グループ連絡協議会理事 高濱徹


島根県再生可能エネルギー講師派遣支援事業

安全・高効率の小規模林業向け搬出技術研修会」報告書


 島根県再生可能エネルギー講師派遣支援事業費補助金を受けて木質バイオマス資源活用のための経験者向けスキルアップ講習「安全・高効率の小規模林業向け搬出技術研修会」を島根県林業研究グループ連絡協議会主催、匹見・縄文之森協議会企画共催にて無事終了致しましたので、此処に報告致します。
 

1.研修日時:平成27年11月23日(月)8:30~16:00

 

2.研修場所:島根県中山間地域研究センター 林業技術研修館及び現地

 

3.研修人数:14名(添付資料:研修次第)

 

4.研修内容:安全・高効率の小規模林業向け搬出技術研修会

       座学1:ロープウィンチ等先進機材とノウハウによる重量材の

           搬出の実際(動画による技術解説)について 動画2

       座学2:効率良く搬出するためには掛り木を作らない事。確実

           に狙った方向に伐倒するチェンソーワークについて

       実習1:実戦的チェンソーワークについて。重量材伐倒の実際

           と技術解説

       実習2:小型軽量ポータブルロープウインチと特殊滑車・ロー

           プを使用した重量材の搬出方法について

       実習3:効率良く搬出するための、スローライン・スローバッ

           グを活用し、木に登らないで樹上にアンカーを確保す

           る方法及び、安全なかかり木処理技術について

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5.研修講師:木下啓氏、中島彩氏(Keis ファクトリー)

 講師の木下氏は、長野県伊那市にある特殊伐採の道具類を扱う全国でも有数のお店であアウトドアショップK2015_11_11の代表取締役であり長野県の山岳救助隊の隊員もある。スタッフに重量材搬出、樹上伐採をの講習を行なうポール・ポインター氏小坂岳氏が居る。

 店舗の裏の山では、輸入した伐採のための特殊用具を運用するための講習会を常時開催している。





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 もう一人の講師である中島彩氏は、長年広島県廿日市市の吉和にある有限会社安田林業で修行した後、長野県で修行し、その後に兵庫県の丹波市に移り木材コーディネータとして様々な活動を行なっている。

 著書に「今日も林業日和―ナカシマ・アヤの現場日誌 山、仕事、愉快な仲間たち」全国林業改良普及協会刊もあり、同協会の「現代林業」誌に“ナカシマ・アヤ@木材コーディネータ見習い日誌”という連載を持っている。

 

6.研修目的:鋼線ワイヤーにとって代わる最新の軽量高強度ロープを使用し

       た安全で効率の良い木材搬出方法を学ぶ。

       近年では高性能林業機械による搬出に於いても特殊ロープを使

       われ始めている。この様な現状を踏まえ、県下各地で行なわれ

       ている住民による木質バイオマス活用のための活動に軽量高強

       度の架線ロープを搬出機材に導入する事によって、作業効率と

       共に安全性を確保し体力に自信がない者でも取り組める下地作

       りを行なうための機会とした。

       この手法により画一的な力技による一般住民の搬出方法から脱

       却し、工夫と智慧による体力的に楽で、そして搬出量の達成感

       や楽しい技術習得の実感を伴うことを期待するところである。

       こういった意識醸成によって、体力的に厳しく危険度も高い山

       仕事に対する一般的イメイジを転換して、より安全な、そして

       体力に依存しない手法があることを認識して貰うことを目的と

       して最先端技術を学ぶべく遠方より講師を招聘する。

 

7.研修結果:講師等はJRの線路に掛かる高木伐採などを行い、また指導して

       いる欧米の最先端機器を活用している技術者を擁する会社のた

       め、受講者の知識と経験を新たにすることが出来た。

       また、受講者には県の林業普及スタッフで農林大学校に於いて

       も講習を行っている坂越氏も居られたが、最新のロープを使用

       した搬出方法に認識を新たにされ、ロープワークなどについて

       も学ぶ必要性を感じ取って頂けた。

 

8.添付資料:

 1)研修次第

 2)搬出技術スキルアップ研修のお知らせ(チラシ)

 3)『はいっ、こちら林業普及スタッフです!』レポート

 4)講習会開催保険:グリーンボランティア保険加入依頼書

 5)講師1木下氏移動経路1:長野県伊那市から中山間地域研究センター

 6)講師1木下氏移動経路2:兵庫県丹波市氷上町賀茂から舞鶴若狭自動車道吉川JCT

 7)講師1木下氏高速料金:伊那—三次

 8)講師2中島氏移動経路:兵庫県丹波市氷上町賀茂から中山間地域研究センター

 9)講師2中島氏高速料金:春日—三次

 

9.講師費用弁償根拠:

 5)講師1木下氏移動経路1:長野県伊那市から中山間地域研究センター

 6)講師1木下氏移動経路2:兵庫県丹波市氷上町賀茂から舞鶴若狭自動車道吉川JCT

 7)講師1木下氏高速料金:伊那—三次

による。

---以下略

 

10.研修開催運営費用について:

 この度の研修を行なうに当たり事前準備を行なっている。直裁的な費用としては、事前の現場確認と打ち合わせのための移動費があり、匹見・縄文之森協議会メンバー前日に現場入りして準備に当たったため中山間地域研究セ

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ンターでの宿泊費と移動費が発生している。

---以下略


11.研修現場選定と選木作業:

 11月16日(月)朝9時に島根県林業研究グループ連絡協議会事務局の坂越氏と中山間地域研究センター敷地内の林地に於いて現場の選定を行なった。

 また、中山間地域研究センターの管理者の許可を得るために伐っても良い木の選木を4本行なった。





 作業路上から見た林地。作業路上の林地。

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4IMG_206012.研修の様子:

【現場確認】

 23日研修当日早朝に講師の木下氏、中島氏に現場を確認して頂き研修の運営について打ち合わせを行なった。










【机上講習】

 講師を含めて17名。林業棟にて講義を受ける。講師紹介のあと、受講者の紹介も行ない県下各地で活動する木質バイオマス活用の取組み者のネットワークを拡げられる様に。

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 木下氏から実際の現場に於ける重量材の搬出をロープと滑車(ブロック)、ロープウィンチを使用して行なう動画と、樹上にスローラインという特殊な極細のロープと錘を使ってアンカー(支点)を採る動画で説明を受ける。

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4IMG_2104 中島氏からは、掛り木を作らない正確な伐倒を行なえば、搬出もより効率的になると言うことで、伐倒に於ける受け口の意味と機能について詳しく講義を受けた。









【現場講習】

 10時過ぎまで林業棟で机上講習を行い、敷地内の林地へ移動して道具の準備。10時半より現場講習を開始する。

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 先ずは道具類の説明を受ける。此れ等のロープ、滑車(ブロック)類は外洋で航海する帆船で進化したものである説明を受ける。材質も用途に寄って様々であるが、例えば9mmの太さのロープでも9t近い破断強度を持ったものさえあるので鋼線ワイヤーよりも強靭である。

 但し、使用環境を配慮する必要があることや、滑車や結束器具であるカラビナなどの強度も同様に耐えられるものを揃えて安全率を考慮することを強く言われた。

 

【掛り木の処理:樹上への作用点の採り方】

 スローライン(極細のロープ)とスローバッグを使って、高い樹上にロープを掛ける方法を教わる。

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4IMG_2145 スローラインの太さは2mm強。此れで破断強度が300kgもあると言う。ちょっとした枯れ枝ならば此のスローラインを掛けて引くだけで折れる場合も多いそうだ。


 錘のスローバッグに結ぶ、解け難くて外し易い縛り方を習う。

 




 また、投げ方も片手、両手を使って投げる方法を習うが、ただ振り子の様に振るだけではないので、投てきには訓練が必要である事を理解。

 

【正確な伐倒は効率と安全性を高める】

 中島氏は、グラップルなど高性能林業機械のオペレータも務め、現在質の良い木材を市場に出して山主により多くの利益還元できるための業務を遂行中である。

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 兵庫県丹波市に於いても市民による木質バイオマス活用のための活動が本格的に始まったので、その活動のためのサポートや現場での作業のための啓発活動も行なわれている。

 中島氏は特殊伐採に関する技術も学んでおられ、スローラインも自在に操って木にも登れる。またロープウィンチも現場で日常的に使用しているので使用方法につ いても熟達している。日本全国に於ける林業現場の女性の中でのトッププロであり、市民が取り組む木質バイオマス活用の木の駅プロジェクトの推進者でもある。

 その中島氏にして、効率的な搬出のための計画性のある伐倒と、伐倒の正確さについて指導を受ける。

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 そして、元口が50cm近くになるヒノキの鮮やかな伐倒を見せて貰う。目標とした斜面下方の木の間に見事に倒した。

 その理論と受け口の作り方角度などの説明を受ける。

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 伐木よりもチェンソーによる切削事故が多い枝払い作業に於いては「自分は速い作業は目標にしていない。」、と、丁寧で、そして音さえも穏やかな枝払いの作業を大きなチェンソーを持って、流れる様な奇麗な作業のデモンストレーションして貰った。

 

 先ずは掛り木にならない正確な伐倒が体力と時間の浪費を防ぐので、効率とともに安全性を高めると受講者一同が再確認した。此処で、午前の部を終了とする。

 

【ポータブルロープウィンチによる搬出】

 続いて午後からは重量材の搬出の講習。伐倒したヒノキは元口が偏心しているがほぼ50cmとみて、材の長さが14mであるので、1t近いと推定。4IMG_2281

 

 今回用意したポータブウィンチ2機種の内、上位機種のPCW5000は牽引引力が1.1トンなので、林内に設置して、先ずは直に材を曳いてみるシステムを設置する。

 当然、材が寝ている林床には様々な要素があるので摩擦があったり、障害物もあるために数字通りの能力が発揮出来る訳ではない。それでも、どの位の力が発揮出来るのか受講者に体感して貰うために、1対1の直引きの設置を行な う。

 実際に牽引すると僅かに動いて材が斜面を上り始めるが、キャプスタンドラム(ウインチのロープを巻くドラム)とロープがスリップしている為に、即時2倍力のシステムに変更。

 

 材の頭に滑車 を設置して引く事により牽引速度は二分の一に落ちるが引き上げる力は倍になる。上の画像は2倍力にしたもの。ロープの角度が開いているので、そのまま2倍にはなっていないが、1.5倍以上にはなっている。材は楽に動き始めたが、先端に障害物避けのキャップを付けているものの材の胴に当たる障害物で摩擦が多くロープが発熱した。

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 その作業途中で、進行方向の立木に材が当たって立木の皮が剥けて傷みそうだったために、進行位置を変えるために、「ポータラップ」という制動器機と細いロープを使って制御する方法を習った。

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【5倍力システム】4IMG_2270

 2倍力でロープが空回りロスにより加熱し始めたので作業をストップする。この様な場合にはシステムに無理があるので、次のステップに移ることが肝要。無理して作業を続けるとロープの破断などに繋がり事故の元となる。


 道具が少ない場合には、此の時点で行なうことは、材を短く切って軽くすることが通常現場での処理方法だが、今回は研修のために更に上級のステップを試みる事にした。

 

 木下氏が実験中というプロトタイプの5倍力のためのシンプルなロープシステムを持ち込んでいたこともあり、日頃経験出来ない強力な牽引が可能となった。

 

 先ずは人力で試してみましょう、と促すと、13名ほどがロープに取り付いた。

 すると、なんと材が上り始めたのだった。全員から歓声が上がる。

 材を1トン、1000kgと想定して、5倍力なので200kg相当となる。

 200kgを13人で割ると、15kg強の牽引力で済む。摩擦があるので、実際にはそんなに単純では無いが、材が動いて上ったのは事実。

 図らずも、例え原油が入らなくなっても機能的なシステムがあれば人力でも搬出が出来ないことは無いと認識する様な内容となった。

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 つまり小規模林業や市民による木質バイオマス活用活動に於いて、現在は道具が進化しているので、昔程には作業がきつく無いと言うことが言えるのではなかろうか。


 優れた道具と智慧を組み合わせ、更に工夫して自分たちで使いこなして行けば楽に楽しく作業が出来る様になる。此の事が安全性を高めることに繋がることであろうことは大事な要素であろう。

 

 今まで注目されてこなかった住民による山の資源活用に全国での取組みが増えているのはこういった要素の積み重ねであり、その事に対しては現場で携わる人たちが気付いてきた為に大きな流れとなりつつあるのかも知れない。

 

 農山村に於ける森林資源の活用で地域に密着した経済循環を構築出来れば定住化に繋がることは目に見えている。今では都市部の若い人たちが農山村に移住する事例は枚挙にいとまが無く、農と林を組み合わせた生き方を模索している人たちが多く居る。


 そういった人たちが本当に定着するためには、こういった技術進歩があることや、様々な可能性がある事を知らしめて行かなければならないと林業研究グループでは捉えている。

 今回は地域振興部の助成事業によりこの様な先端の技術を体験出来る講習を開催出来た事に感謝する次第である。

 

 さて、5倍力ではポータブルウィンチを使えば、当然材は搬出出来るのであるが、此処は研修なので、3倍力に力を落として実際の現場でスピーディに搬出するケースワークとした。

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4IMG_2312 3倍力を設定し、さらに材を8m材と残りの6m材に切り分け搬出。その上で、斜面丈夫の作業路脇に材を積み上げて搬出は終了とした。



 右の画像は、特殊伐採で重量材の吊り伐りに使う高強度のブロック。その設置の仕方も教わる。ロープを使う場合には、何処か一カ所に応力が集中しない様にして弱点を作らずに荷重が分散する縛り方が大事である。そして高荷重が掛かっても解ける様な結び方を使う。




【木に登らないで、アンカー(滑車)を樹上に設置する方法】

 林業に於いて木に登るためには、通常1本梯子を使う事が多い。あとは足に爪を付けて胴綱を使って登るか、ブリ縄と言った一部の山の匠達が使う道具がある。

 梯子は重たく嵩張るので常に携帯して山の中を回るのには適さず、他の道具類は熟練が必要である。

 

 林地の奥から材を曳いて搬出する際には、曳く材の頭を上げると障害物に引っかかる事や摩擦抵抗を減らせるので、滑車を使ったアンカー(支点)を樹上の上方に採ることが望ましい。

 

 それを木に登らないで行なう方法があると言うので講習をして貰った。此れもスローラインとスローバッグを活用した方法で、ロープを樹上の何処にどの様に通すかによって可能になる。そのロープの掛け方を教わった。

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4IMG_23564IMG_2357  閉講時間も迫っていたために、作業路脇の手近なヒノキを選んで教えて貰った。このヒノキの一番太いしっかりした枝、力(ちから)枝を選んで、其処に通す様にスローラインを描ける。

 そして本線のロープを繋いで枝を跨ぎ、ロープの掛かった位置を枝の根元に寄せるロープのウェイビングテクニックを教わる。

 

 そして、力枝にロープが通ったら末端に滑車を設置してつり上げる。

 その際には右画像の様に牽引ロープを事前に滑車に通しておく。

 





4IMG_23624IMG_2361 そのままアンカー(支点となる滑車)を留めたロープを引き上げて行き、目的となる位置に達したところで、ロープのもう一方を右画像の様に木の根元に巻いて設置終了。一番右の画像は暗くて分かり難いが樹上上方に滑車が設置されている。


 この方法は適当な枝がある場合には簡単に樹上にアンカー(支点)となる滑車を設置出来、また直ぐに外せる事が出来る為に、持ち運ぶ道具が少なくて済む事と、難しい木でなければ直ぐに実現可能な技術であることが理解出来た。


 また、それと同時に、樹上に登らないので安全に設置作業が出来る。万能では無いが非常に有用な技術であった。

 



 以上をもって、予定していた講習内容を全て網羅して研修が終了した。4IMG_2365

 

 遠方より来島根頂き、充実した先端技術の講習を行なって頂いた講師方々に惜しみない拍手が贈られた。

 

【総括】

  今回の講習は一般市民向けとしては非常に有用で充実したものになったと思われる。

 全国で一般市民向けに様々な講習が行われているが、その中でも最新の技術と道具をもって 行なわれる智慧深い研修だったのではなかろうか。

 様々な研修にも臨んでいる受講者の充実した晴れやかな笑顔がそれを物語っている様に思える。

 

 今回の研修で得られたものを地域に持ち帰り豊かな島根県の森林資源を持続的に活用すべく啓発に勤しんで頂ければと願う次第である。

 

 この機会を実現するに当たっては、島根県再生可能エネルギー講師派遣支援事業の助成を受ける事で可能となった。此処に関係者と受講者全員より御礼申し上げる次第である。拝

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 レポートは以上

☆☆おまけ☆☆

 以上でレポートは終了。ここからはおまけ。写真は研修中の一こまだが、登場している人たちに共通しているものが一点。
 そう、ヘルメットが同じメーカのもの。ご存知ファナー社のプロトスだが、それが6人分ということは凡そ20万円くらいになる。

5IMG_2130 超豪華?

 でも、何の仕事でも道具類とか装備類はお金が掛かるし、遊びでも同じ。命や身体を守るものならば尚更かと。


 自分の(かつての)趣味内でも、バイクのオフロードブーツが4、5万円とかヘルメットが3、4万円とか、レース用の皮つなぎが安いので十数万円とかの投資が必要だから林業用のヘルメットが3万円を超えてもあまりビックリしない。


 でも、田舎や山での稼ぎがあまりにも少ないので、日頃ホームセンターや作業着屋さんで売っている2、3千円のヘルメットを使っているとゼロが一桁増えたらビックリするのも解る。


 それでも伐木など危険作業に携わるのであれば機能的に優れた装備類は使った方が良いであろう。上写真中の津和野の地域おこし協力隊3名もプロトスを被っているが、自分が昨年度担当だった時に出来るだけ良いものを装備出来る様にして頭から足下までファナーで揃えてみたのだった。


 欧州製の製品は、蒸し暑い日本に合わないものもあるが、それでも1流のものに触れておけば次へのステップになる。此れ等を自腹で購入するとなると厳しいが、安全に対する意識の底上げと林業に対する環境の整備に於いては少しずつでも変えていかなければならないと考える。


 何事も雇われ気分でその場しのぎの安い仕事の仕方をすれば、結果はそれなりもものしか付いて来ない。自分自身のスキルアップにもならないし実績にもならない。事故やトラブルは突然起こる訳ではなくて必ず理由がある。

 自伐型の林業は雇われではなくて自営業者なので、自分自身でリスクマネージメントを行うこと、危険要素やトラブルの要因を自分自身で出来る限り排除しておく必要がある。其の辺りの意識もしっかりとフォーカスしていなければ、結局は自分が損をすることになるのではないだろうか。


 怪我と弁当は自分持ちならば、道具は大事に扱い整備をし、そして装備は良いものを身に付けて、自分の安全は自分自身のコントロール下に置かなければ長続きする訳もないからだ。


 そして僕らの年代では日本的精神から来るものなのか、レース仲間の先輩からは、ヘルメットを地面に置くなとか、ヘルメットの上に座るな、と言われて来た。つまり、道具に対するリスペクトがあってこそ、必要な時に意のままにコントロールが出来るし、想定外の故障を起すこと無く目的を達成出来るということだと思う。


 山仕事はレベルの非常に高い仕事故、安い、そして本物でないものに囲まれて行う仕事ではないのではないだろうか。安物に囲まれていれば、結局安い人生になってしまうのも道理。質の高い仕事をする精神素養を身につけられない。なので、我々自営業者は例え素人に毛が生えた程度でも本物を使いましょ。

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さて、此方は彩姉さんの伐倒。方向を定めている所。お顔が笑っているのは、伐倒が余りにも楽しいから? いえいえ、誰かがつまらない冗談を言ったのでしょう。


 自分は撮り損なったが、もっとベターッと身体が伸びていた時も有った。流石、元コンテンポラリーダンサー、身体が柔らかい。









そんな素敵なお姉様を地面に這いつくばらせている無礼な輩が二名。津和野の地域おこし協力隊だ。地面に正座して、「サインをお願いします!」、と5IMG_2369言って無理くりおねだりしていたのを快く快諾して頂いて居た。


 あなた達、そんなにミーハーだったっけ?





















 でもなあ・・・こんな写真まで撮られて、彩姉さんお疲れさま。



『ツルが命!ご安全に』

はい!


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 こちらは、島根・山守ネットワークの奥出雲エリアの拠点。集落一番奥の沢沿いの家。オオサンショウウオも居る地域。研修が終わって打ち上げ。


 本当は彩姉さんも泊るはずだったのだが、翌日が仕事になってしまい脱出。逃げられてしまった。ま、結果良かったかも。

 というのも、翌日宍道のふるさと森林公園で木登りして遊ぼうと、キノボリストのツリースリー、ホセ氏も来て夜に合流すると言っていたが、遅くなって途中で野宿していたらしいし。


5IMG_2384 でも、身代わりとして彩姉さんが下さった丹波のお酒はアルコール度が高く、そして美味しい逸品だった。

 此の時、男どもが寄ってたかって料理を作った---此の家は農家で台所が二カ所あるので皆で料理が出来る---洋食にも合ったお酒だった。感謝



以上