いやあ〜、ブログ記事の下書きが幾つも溜まりに溜まっていてリリース出来ないのは、この夏に2台目のエアコンも壊れて生き延びるのがやっとだったせい? 隣の益田市が39.3度を記録してニュースになり島根県が何処にあるのか知った人が多かった様だけど、日当たりが良く盆地になっているうちの近所の方が益田よりも凄かったのではなかろうか。益田の人たちがそんなじゃないよ、とか言っていたし。
 そして、温度が高いだけでなく、山陰は湿度がすごくて、90%台は当たり前。時に湿度100%てなことも。山陰で使える夏用のチェンソーパンツを開発してくれ〜!
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 その蒸し暑かった夏の初めには、島根でも豪雨の被害を受けたところもあったけど、当地は平時とあまり変わらず。
 朝早くから各地の仲間たちがメイルや電話で心配の連絡を頂き、午前中はその対応に追われていたくらいだった。

 その後、日本各地で豪雨災害が起こり、島根の豪雨のことは吹き飛んだ。
 大変なことになった被災地の方々にお見舞い申し上げます。


【小さい林業で稼ぐコツ】
 さて、久々の記事更新、まずは農文協さんの担当者の方から本の宣伝載せてね、と自分が書いた部分のデータを貰ったので、今回はその本を紹介してみよう。

 それから、本の紹介を書こうと進めていたらどんどん内容が膨らんでしまい、初心者の方々に向けた安全なチェンソーワークについて知って欲しくなり、その記事と画像も入れてしまった。
 そんなことをしている内に発行された様で本書が送られてきたが、本記事と内容は被っていない様子なので良かった。

 それからさらに膨らみ、山を守り身を守ることから、参考図書についても能書きが進み、さらに最近思っている雑感まで書いている。追って中身を整理しようと思う。
 記事の構成が悪いと思うのだが、もはや考える力がない。この長文、読めるかどうか美郷町の自伐林業のJ内さん!どうですかね?

 ということで、直ぐに能書きを言いたがる知ったかぶりの(素人に毛が生えた程度の)バカチンをご容赦いただければ幸甚。

 いつも何処かに書いているけど、うちの協議会及びサイト&ブログは一般の方々向け(ガチ林業じゃなくて、農山村で地球とともに暮らしたいなあ、でも山仕事もできる様になりたいなという。でも、やるんだったら何でもできる様になりたいという欲張りな人たち?)の内容を中心に展開している・・・?

 出来るだけ分かり易く説明できる様にと平易に書いているつもりが、文字数が多くなって逆に分かりにくくなっているというジレンマに陥っているという・・・スミマセン。
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 本記事は随時整理していきたいと・・・

 おっといけない。忘れるところだった。該当の本は、これから森林資源活用をやってみたいという一般の方にとって非常に役に立つものだろう。
 各地で森林資源活用を実践している人たちの記事となっているのでアプローチの方法が様々に載っている。

 ただし、良いことしか書いてないので、山仕事の負の部分、危険作業については知ることができない。
掛け縄-4倍力熊本宇城地区1 山仕事は当然危険作業であるのは当たり前。林業事故は建設現場の何倍にもなるらしいからね。

 それでも自然の中での作業は厳しさも何倍ならば喜びも大きい。

 合う人にとってはこの上なく楽しい仕事であるのも事実。

 ただお金を目的にするとコスパは非常に悪いと思う。

 だが、自給率を上げたり、災害などでライフラインが遮断された時には、山仕事ができる人が多ければ多いほど、より多くの人たちを守ることができるだろうね。

 ちょっと前までの田舎の人たちは何でも出来た。今はそういった能力が落ちているので、逆に自然の中で暮らしていく力を付けたい人たちが農山村に回帰しているのが現状。

掛け縄-4倍力熊本宇城地区2 単なる林業とか農業とかカテゴリー分けする話ではなくなっていることが、この本からも理解できるのではないかと思う。

 さて、右の画像は誌面に載っていないもの。

 2トン車に4mの長さの重量材を積むのに際して、2人で積めた!

 と、載っているが、原稿では左ページの様に滑車を追加して4倍力にすれば、この重たくて長い材が、「一人で積める!」、と言うのがわたしが書いた記事の意図だったはず。

 上の画像2枚は別々の熊本の人が積んでいるものだが、この様なページ右(116頁)の4m長40cm径の材(ちょっと乾燥していた)が、実は一人で積めるのだ。

 こんなことは大したことでは無いが、昔からの山棲みの人達はもっと賢く、そして知恵を使ってもっと素晴らしい仕事をしている。
 日本だけではないが、昔の人たちの地に足がついた智慧というのは、今の様なハイテクで一見便利になったというレベルではなくて、人間が大地と共に生かし生かされて、地球と共に生きて行く根源的な力になっている。
 あなたは、肩書きもなく、金もなく、そして大した道具もない状況に置かれた時に、何を成し遂げ、何を差し出せますか?
 と、いうわけだ。

 後述の津和野の協力隊のT口氏と一緒に、「仕事ができない奴に限って光り物(金属の道具のこと)をジャジャラさせて喜んでいるんだよな。」、と自分たちの事を言っている。
はい。
 
我々は、ただの道具好き? でも、有ったらどこま出来るのか、無かったら何が出来るのか、持てる中で工夫しつつやってみたいと言うマインドでチャレンジ中? ま、分を知っているということでご勘弁を・・・


【道具やお金が無いなら知恵を絞り出す】
 自然の中での仕事というのは、自分で工夫したり、場合によっては自分で道具を創り出す位でないといい仕事は出来ない様な奥が深いもの。

 特に自伐型と言われる自営業の林業はそうかもしれない。

 それに対応するには、観察する力と疑問に思う心、試してみる行動力が必要だね。失敗しない様に仕事をしている人たちに自伐的なアプローチは難しいんじゃないの。
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 よく言われる、木が100本あれば100通りの伐り方がある、という様にまず観察することから始まるし、どうやってアプローチするかで結果が変わってくる。何時もワンパターンのマニュアル通りにやっていたら上達することはないだろう。

 例えば、受け口の角度はツルをどの時点で千切りたいか、また千切りたくないかに関わってくる。受け口水平切りの高さと追い口の高さの差は、木を寝かせる速度コントロールに関わってくる。また樹種による繊維が長い木と短い木では違うし、伐採点の繊維の捻れなどの状態もある。

 同じくツルの厚さを決めるのにも同様の視点から見る必要もあるし、木の重心が何処にありどちらの方向に倒したいかで左右のツルの厚さを変えたり形を変えたりする場合もある。

 どうやったら上手くやれるのかを考える性格の人には楽しくて仕方がない仕事かも知れない。

 木を切ってお金にすることも同様。
出来ない理由を考えるよりもできる理由を考えるということが大事。

IMG_1932 (1) わたしはチェンソーは何台も持っているが新品で買ったのは、17年前に買ったものと6年近く前に買った2台だけ。あとは貰ったものが多く、格安で買ったものもある。
 あ、思い出した去年もう一台買ったんだ。共立のCS251T:木の上で枝を切る用。

 左画像はイメイジです。(^-^) 貰ったチェンソーは整備して調子よくなったのを知り合いに上げたりして資源循環しているので入れ替わっていることもあるからね。

 右画像は、最近片付けついでに撮ったので、今の在庫。上の画像と共通のものは3台だけ。

 実は20年前のチェンソーでも大事に使っていたものは、整IMG_7844のコピー (1)備すれば今でもバリバリに使えるし、名機と言われて未だに愛用している人もいるくらいのチェンソーもある。

 昔のものの方が材質や造りが質実剛健だったり、排ガス規制前のものはエンジンが今のものよりもよく回ったりするものがある。この昔のもののほうが材質が良いというのは刃物類にも通じる話。

 道具に関しては最新のものの方が100%優れているということは無いし、住まいなども同様。昔のものの方が次元が違うくらいにものが良いこともざらにある。ん、今は人間も粗製乱造か?

 だから、同じタイプを集めておいて、二個一三個一にしても良い。上画像の在庫以外にハスクの242XPや42などの同じ系統のものが4台在庫している。つづいて242XPがもう一台手に入る予定。併せて何台が復活するだろうか。

 農家の納屋には亡くなったお父さんお父さんの遺品のチェンソーや山道具、ワイヤーや滑車、チルホールなどが寝ている場合がある。古金屋さんにタダで持っていかれる前に引き取って活かしてあげた方が良いよね。

 そんな話や、そうやって手に入れた山仕事の手道具の復活のさせ方はこちらの本に書いた。右下画像の手道具類は、そうやって手にいれて修復したものや、腕のいい鍛冶屋の道具類。例え石油燃料が無くなっても、山の資源を活用するためのもの。
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 あとは目的にもよるが、近年では行政や企業による助成制度もバラエティに富んできた。成果を出して行けば助けてくれることも増えていく。

 私の場合には、6年半前にチェンソー一つだけ(山仕事の手道具は色々だったが)持って島根に来たら、今では倉庫から溢れるくらいに道具が増えてしまっている。

 「島根自虐伝」というメッチャ面白い本に、老人と神々が同じくらいいる県という様な内容のものがあったかと思う。
 ほんと神様が棲んでいるんじゃないかというくらいに皆さんありがたい人が(嫌な人よりも?)多い。でも日本の田舎はどこでもそんなメンタリティだったはず。

 
お金が無いなら無いなりにやって、稼いだら道具に投資してスキルも上げて、さらに仕事の幅を広げて行けば、次第にステージが上がっていく。

 今回のこの本には、ほんの一端しか書いていないけど、記事にある様に、ロープ2本と男4人(実質3人でもOK)で400kgを超える丸太を軽トラに積めるし、重さは測っていないが、40cm径を越える4m材を一人で2トン車に講習会の時に積んでいる。
 けっして効率的な仕事ではないけれど、出来るという事が大事。

 我々の目的は、「林業」という閉ざされた世界の中で如何に利益を生むか?ということではない。

 利益ばかり追求すると、我々が住まわせて貰っている此の大地・自然界のバランスが崩れるから、地球からの恵みを必要な分だけ回して活用するというマインドの醸成と、自分たちで安全に森林資源を活用して行くための技術的底上げをしたいという人たちのサポートを行うことでお役に立てればと考えている。
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 山を愛して、その植生のバランスや生き物たちの住処を残しながら行う山造りと、短期的な利益のために行う山の整備では、考え方も手法も違うでしょ。

 今は国を上げて伐ることや燃やすことばかり。バイオマス発電なんて一番エネルギー交換の率が悪いものがもてはやされていること自体が変。

 ただ、そうやって目が向けば放置林に対しての問題意識が一般の人たちにも出てくるのではという良いこともある。
 ただ、適正な伐採が必要なのは、この局地的な豪雨が起こるような地球規模の天候異変が多くなったから余計に感じることだろう。

 そういった問題に対応するには一般の人たちのレベルを上げて、皆で山仕事に取り組むこと。ちょっと前の時代には、農家でも林業に携わって居たし、そういった切り分けもなかった。皆が食べて行くため、山村の生活を維持するために山の仕事に入っていたし、自分たちでも活用していた。

 今は時代が進んで、道具も良くなり、軽量で低価格のものが個人でも手に入るようになってきているので、一般の方々が山仕事に携われるようになってきている。私たちも同様だ。
 そのためには、安全運用の基本的な考え方や素養に欠けるところがあるので、その点についてカバーしていきたいと考えている。


【現代農業】

 さて、農文協さんは、「現代農業」という月刊雑誌を発行しているところ。現代農業誌は、田舎の書店でも平積みされているくらい売れている雑誌だ。でも、買う人は農家ばかりでなく、どちらかと言うと一般の自家菜園をやっているくらいの読者が多いのではなかろうか。東京の書店では山積みになっているくらいだからね。

phgn201709 わたしも最近でこそ買っていないが、、東京の日野市に住んでいた30年近く前から同誌の愛読者で小さな無農薬菜園をやっていた。所帯を持つ前のアパート暮らしの独り者の自営業で忙しい時でも菜園で(多少)自給自足していたのだった。

 今は、「林の自給自足」ができるようにジタバタしているので暇が全然なく、「農の自給自足」の方はまるきり出来ていない。もっとも、周りから頂くことも多いからね。夫婦で日頃からニコニコしているだけで食料自給率が高くなる?

 それでも、6年前に島根に移住して来た時には、匹見町の山奥住みだったが、手植え、手刈り、ハザ干し、千歯コキ脱穀、唐箕で選別、そして一升瓶で精米・・・はやらずに、流石に精米だけは近所の人に頼んで機械精米してもらった稲作を一年だけやることができたくらい。

 こちらでは、田んぼや畑は幾らでも空いているのに忙しくてやれないとは! そして今もジャガイモくらいしかやれていない(嫁さんがやらないもんだから...)。田舎暮らしは地域のこともあるし草刈りにも追われてやたら忙しいのだよ(その上、空き家活用とか言って、家を2、3軒借りている時もあったりして...)。

 この「現代農業」誌は、農家の方や菜園を営んでいる方々の現場での知恵が盛りだくさんの実践的な雑誌だから、、、というか毎月こんなに濃い内容の雑誌が他にあるのだろうかというくらいだが、好きな人はメチャ楽しいものに仕上がっている。

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 その現代農業の9月号にわたしが書いた記事が少し載った。
 この9月末に発売になる「小さい林業で稼ぐコツ」発売前の告知のために編集局ニュースに事前に載せたらしい。

 左の画像は、わたしが搬出講習を行う際のテキストに使っている画像だが、400kg以上(計量器で計測)の杉丸太を男性4人で積み込んだもの。
 実際には男3人でもロープを使えば積みこめる。

 そういった、小さな林業で大した道具を持たない人たちのための搬出方法の講習を行って来ているが、その一例を今度発刊される「小さい林業で稼ぐコツ」でご紹介している。

【そして季刊地域について】
 季刊地域は現代農業の増刊になるみたいだ。季刊地域という名前にになる前は、「増刊現代農業」誌として発行されていた。この本も実践者たちの智慧が載っているので今読んでも面白い内容だ。色々なテーマで発行されている。
 こういった本はアーカイブとして貴重な内容のものばかりだと思う。農文協さんではものによって電子図書化されているが、本当は全部そうした方が良いくらいだと思う。
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 わたしも15年以上前に当時の編集長の甲斐氏(今は自伐協の理事もやっておられるみたいだ)から依頼を受けて2度ほど書いたことがある。
 こちらで鍛冶屋の記事を、こっちでは半農半Xの言葉が歩き出したころの半農半インターネットビジネスの記事を書かせて貰った(農文協さんでも全林協さんでも時々ペンネームで書いている。当時、ネットでビジネスをしていたので切り分けをするため)。

no30_h1_buttonkomi1 その年4回発行の季刊地域は、書名の通り農山村で暮らしている実践者のノウハウ記事を中心に地域の自立や農的自給、エネルギー自給などのテーマの楽しい雑誌。これもずっと買っている様な気がする。

 林業関係の人は、この様な名前の本では、例え本屋さんで見かけてもおそらく手に取る人はいないだろうが、いつ頃からだっただろうか毎号季刊地域には、森林資源活用の記事が載る様になった。
 それだけ一般の人たちが山の資源活用に興味を持っていることが解るだろう。


 つまり木の駅や自伐型の林業の裾野が広がっているということ。木の駅や自伐型というのは、林業界から出たものではなくて、元森林ボランティアの人たちが動いて、一般の人たちでも森林資源活用が出来るんだという道筋を開いた活動だ。

 わたしも企業研究所相手の仕事をしていた20年くらい前から山に入っていて森林整備のボランティアや除伐間伐などのアルバイトをやっていたので、横浜の水源林を管理している林業事業体に居た7年ほど前(男だったら木を伐って小屋ぐらい作れる様になりたいななどと勘違いして50歳半ば近くになってチャレンジ!した)に、相模原市の森林ヴィジョン策定に対してパブリックコメントを出したが、その年には市のHPに掲載されたが翌年には消されてしまい、てんで反映されなかった。

 ところが、丁度自分たちが島根に移住した6年前から始まった津和野町の自伐&木の駅的取り組み(今でも津和野は木の駅にも自伐協にも入っていない)に、隣の匹見町に居る時から参加させて貰うことができた。
 結果その流れを後から考えれば神奈川に居るよりも島根に来て本当によかったということ。自分のやりたかったことが出来ているからね。山奥に暮らしたくて東北や信州はあちこち回っていたけど、まさか地縁の無かった島根に来るとは・・・

地域おこし協力隊の投入について-汎用案













 そして、当時益田市の嘱託職員をさせて貰い匹見に住んでいた5年前から、企画書に付けたこの右の添付資料に書いてあることを益田市にずっとやろうと言っていて、結局林業9784881383247-2版の地域おこし協力隊の募集育成を津和野町で3年前にやらせて貰った。

 その時の内容が、全林協さん刊の「New自伐型林業のすすめ」という本に載っている。結局、この年度では次年度の隊員の体験講習までやったので、10名に対応して5名入ったことになる(本はその途中で書いた)。その内の、女性2名が途中で辞めて、残りの男性3名が任期を全うする予定。
 その後、どうするかという問題があるが、最初に入ったT口氏が次年度に速攻会社を立ち上げて事業の母体となっているために彼はしばらく頑張るしかないだろう。

 ホントは、山に棲み山暮らし(の智慧を得て楽しみながら何でもできる人:つまり山棲みとして地域IMG_7689(1)に残り、また地域に生かされる人)をできる人を育てたかったので、オフィシャルサイトに能書きを書いたところ、それに共鳴して来たのがT口氏で、それなのに年度替りに私が居なくなったために騙された気分だったらしい。
 もっともT口氏は野生児で山にあるものは色々自分で採って食べられるし、ものづくりもやる。今も山の中で暮らしているが、もっと山の中でも楽しく生きていけるだろう、、、海が恋しくならなければ・・・

 彼は素潜りで30m以上海に潜って底物を突いてくる趣味を持っていて、海が汚くなっているのを実感。それで山を何とかしたいという理念を持って移住して来ているので、自分から仕事を創り出している。ちょっと仕事をしすぎという話もあるが、任期中は頑張ってネットワークを広げておければ任期終了後にも活かされることになる。

IMG_6996(1) 津和野町では、先ずは(山に優しい壊れない)作業路開設ができる様に吉野林業の岡橋氏を招聘して作業道開設オペレータを育成しているが、果たして津和野町にそれだけで食べていける仕事があるかどうか分からない。
 事業体にはそういった需要はないからだ。

 また、現代に於ける小さい林業では営業力が必要となるし、ジェネラリストとして何でもこなせないと、突破力も付いて来ない。

 その中でスペシャリスト的な得意分野があれば尚良いが、基本的に農山村暮らしは自分で問題解決する力と、自分の仕事は創り出すくらいでないと、人生の自由度が狭められるだろう。

 その辺の秘訣については、前述の青年帰農の記事に書いたことがある。自分が生きて行く上での「意図」によって、呼応するご縁の展開が異なるということ。特に島根は、「ご縁の國」と言っている位だからね。

 先ずは地域に溶け込んで、周りから引き立てられるくらいの人柄と、自分の人生の目的を明確に持って居なければ、地域の他人の山なんか任せて貰えないだろう。
 その上で、地域を荒らさないかどうか、地域の仲間にしていいかどうかを遠くから見られている。金で山を買おうとしたって、価値のある山を売ってくれるかどうかは本人たちのご人徳次第ではなかろうか。
 田舎の人って、よっぽど何かない限りはお金に困っていないので、物事は金で動くと思っている都会人は肩透かしを食らうと思う(実際、売ってもらえない人がいる)。

 そういうご縁を展開出来なくて、それでも林業に関わりたいのであれば林業事業体の作業員として働くしかないが、それに対応できる人は少ないだろう。
 何れにしても、雇われ人の気分で地域おこし協力隊の任期を過ごしている人には、人生の新しい道を拓いていくには任が重すぎる様に見える。これは私だけでなく関わる周りの人たちも同様に見ている様だ。

 周りの人たちの中には、彼らが汚いだらしない仕事をしていると、地域に残れないぞとハッキリいう人もいる。普段の生活も含めて地域社会は信用が第一だから、普段の草刈りの美しささえもものを言うこともある。
 よそ者が地域社会に馴染んでいくためには、最初はお客さんで、take take と貰うことを喜んでいるかもしれないが、持続的には如何に give できる力をつけるかが大事であり、過疎で地域維持作業もままならない集落で暮らして行くには何でもできて何でもやらないと、地域の役に立たないという側面もある。

 それでも、今後小さい林業にとって壊れない作業路開設は大事なキーになるので、その仕事でよければ何人かは自立して山を維持して行く仕事をできる様になる可能性はあるので、どうなるか見てみよう。

 その後には、わたしが提案していた益田市でも、その翌年に林業の担当職員が林業版地域おこし協力隊導入を展開して今に至っている(が、きっかけ作りにはなるけれど、サービス業である行政事業で、危険作業に於ける人材を育てるのは無理と実感。自分が責任者でなくて良かったかも...現場を知っている側の私自身が、現場の仕事をできる人を選んで、採用の可否を決められないからなのだ。行政主導だと、現場で問題起こす人間も平気で投入しようとする。そして、責任は現場側に。ところが、仲間が協力隊で入った奈良の黒滝村では、そのまま森林組合の一員の様な立場で仕込まれているそうだ。地域の山師のおじさんたちに教えて貰っているそうだが、森林組合の人たちも地域の人たちも皆が盛り立ててくれているので、それに応えようとしているという理想的な配置になっている。これも彼らが持っているご縁の力だろう。そういった事を行う自治体と素養の高い森林組合があることを知って我々も嬉しくなってくる)。
 益田市は一期生が来年任期終了になるが、その一人は個人事業で特殊伐採の仕事を立ち上げた。まだ経験が浅いので危ないと言っているのだが本人はやる気で、すでに仕事を始めており、またあちこちの技術研修にも顔を出している。

IMG_4533(1) 何とか事故のない様にやってほしい。樹上伐採のチェンソーワークは、地面での広葉樹伐倒と処理を安全に完璧にできる様になってからのレベルなので、杉ヒノキの伐倒が正確に出来ていて当たり前レベル。

 難しい計算も頭の中で、それも樹上の怖いところでサラッと出来なければだめだし、ベクトルや応力、瞬間荷重などから道具類の対荷重まで全て頭に入っていないと無理。
 安全を祈るしかない(本人にはチェンソーワークをなんとかせい、とは言っているが)。

 さて、この津和野の委託事業の際には、協力隊に応募して来た人たちはわたしがチェンソーの安全運用を教えていたが、他には住民が対象のチェンソー講習(特別教育も含む)を年間運営していて、その際にはジットの人たち(別ページご参照)に来て貰っていた。
 対象は津和野町住民だが、受講者には山を持っていない一般町民や農業関係者の人たちの受講も多くいて、中には高校生たちがチェンソー特別教育を受講していたこともあった。
※島根県ではジット島根が頑張っているので、事業体向けのみならず、各地の自治体で一般市民・住民向けのチェンソー講習が開催され、安全で正確なチェンソーワークと目立ての普及が行われている。

 農業関係者の人は、木を出して山の手入れをしたいこともあるが、田畑脇に生えている木が日陰を作って農作物への悪影響があることや、木を材として利用する必要性があるためにチェンソーを持っている農家さんは多い。
 ただ、ホームセンターや農機具屋さんで買ってきて我流で使っているために、壊したり危ないことをやっていたりする(自分の過去を振り返る様です)ために、チェンソーの安全運用講習には皆さん興味があるのだ。ここでは、我々が習っていることの一部をご紹介しよう。


【森林資源を活用した自立的生活に必要な安全チェンソーテクニックと目立てとの関係】
 その講習の際には、木の加工に有効な手法、突っ込み切りを教えると、丸太の応用範囲が広がるので喜ばれていた。
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 突っ込み切りとは、バーのキックバックゾーンを外して切り込みを入れ、そのままバーを材に突っ込んでいく切り方。

 右画像はチェンソーを初めて持った女性。キックバックゾーンを外したバー先端の下側から切り口を入れている。

 顔は、バーの鋸道から外し、万が一のキックバック発生時にも刃が顔面から外れる位置にある。
 また、左肘は左腿の上に固定し、右手及びチェンソーの後ろハンドルの端を右腿で固定してチェンソーを支持している。IMG_6890(1)

 その上で、下画像の様にチェンソーを起こしてまっすぐに突っ込む。

 二人とも初めてチェンソーを持った初心者なので、フォームがイマイチだったり、顔が鋸道に近かったりするが、安全なフォームをとれる体制づくりと、チェンソーの挙動を理解しておくことで安全度が高まる。

 そして大事なのがソーチェーンの目立て。切れれば良いというレベルの話ではない。

 ソーチェーンの目立てがフック(鉤型)だと、キックバックが起こって自分自身を切る様な事故が起きがちだが、これはセオリー通りの目立てが出来ていないから。
 新品の状態でフックに目立てがしていあるものが多いことにも注意。

 キックバックが起きやすいフックの刃を使い、キックバックによる事故を防ぐフォーム(持ち方と構え、そしてスタンスなど)が出来て居ないとシリアスな事故(閲覧注意!)に繋がる。他に危ないのはプッシュバックと言って、ソーバーの上側(背)が挟まれるとチェンソーが飛び出してくることもあるので注意!

 また、新品の刃が一番切れるわけでもなく、自分で研ぎ直した方が切れる。それから、新品の時からフック状態で売られているタイプの刃もある。特にチゼルタイプ(角刃)の刃はそれで、これを丸ヤスリを使って普通にセミチゼルと同じやり方で研ぐとフックがきつく、キックバックだけでなく振動もひどいものになりがち。初心者はチゼルタイプの刃は使わない方が無難だろう。
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 赤丸をした刃の先、カッティングコーナーとかワーキングポイントなどの名前があるが、上刃から(画像は逆さまになっている)0.6〜0.65mmまでの高さの部分の角度が鳥の口ばしみたいに尖っていればフックの状態という。

 画像のソーチェーンは新品で販売されているまま。予備在庫があったので撮ってみた。下からスチールのPS(ピコスーパー)3、真ん中がPM(ピコマイクロ)3、上がオレゴン(各社に供給しているソーチェーンメーカ。スチールは自社製)の25APとなる。

 PS3がチゼルタイプ。PM3がセミチゼルタイプ。25APがマイクロチゼルというタイプ。横刃から上刃への繋がり部分の形が違う。PS3の赤い矢印の指しているところが一直線に角が立っていることが判るだろう。PM3は丸く湾曲している中に二本の角が入っている。25APはもっと丸め。

 上の二つは丸くRを描いて直角の二面を繋いでいる。PS3は角で二面を繋いでいるからカッティングコーナーが鋭い口ばし状になっている。これがチゼルタイプの特徴。
 これを4.8mmの丸ヤスリで標準的に直径の20%出しで研ぐとさらに尖った感じになってしまう(スチールのマニュアルでは25%出しになっている)。そうすると材をえぐる様に切ることになってしまって調子が悪い。こんなのキックバックが怖いよ〜。

 そもそも、初心者が勘違いしているのは、横刃が鉤型のフックになって尖っている方が、木がよく切れるのではないかと思うこと。
 
ところが、チェンソーのソーチェーンの刃は、「横刃目立て角」と「上刃目立て角」と「上刃切削角」と「デプス」の各要素で切れ方が殆ど決まる(殆ど:刃長や左右の刃の均等性、消耗によるソーチェーンのガタつきなどの要素を除き)ので、単にワーキングポイントの角が尖っていれば良いわけではない。
 またデプスを削りすぎると、振動が多くなると共に刃が引っかかりやすくなるために、キックバックを起こしやすくなる。
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 此れを、その辺のオッさんに教えてもらうといい加減なことを教えられるので、ちゃんとしたテキストも出ているし、ネットでも書いてくれている良い人たちが沢山おられるので、しっかり勉強しましょう。

 この様な技術的なことを、林業事業体で働いている人たちでも、わかっていない人が多いことを結構実感する。

 前述した、ちょっとだけ在籍していた神奈川でも有名な会社では、緑の雇用の卒業生もおり、社長もその緑の雇用の講師を務めていたりしたが、誰もこういった説明が出来なかったね。

 それ以前に危ない仕事の仕方が多かったし事故も多かった。そもそも社長も口で言うほど伐倒が上手くないから社員でさえ上手い人は3人しか居なかった。
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 目立てについては、自分の場合、日本だけでなく海外でも目立てを教えておられた故永戸太郎先生に目立てを教わったことがあるので、新人のわたしが研いだ刃の方が切れたくらいのレベルだったのだ。

 そしてその時に一緒だった若い人は殆ど辞め、その中で仕事ができた一人は、山持ちの娘と再婚して自伐林業をやっているらしいし、もう一人仕事が出来た仲良しの若者は東京で空師をやっていて、伐採から製材まで行う有名な製材所の増岡材木店の特伐仕事もたまに手伝いに行っている。

 事業体のプロといってもピンキリで、すごい人は飛び抜けて凄いけれど、大抵の人はあまり勉強していない人がほとんど。経験値と感覚でやっている。それも、危ない方法でも気にせずやっているから、魔が差した時に事故が起きている。
 素人の方(副業的林家・森林ボランティア?)でも、勉強(精進?)している人の方がチェンソーなど個人で扱う道具に関しての技術レベルが高い場合もあるから努力次第?
 皆さんも全林協さんのテキストとネット情報を合わせて勉強した上で、教える人がどのくらい解っているのかを精査して、取り入れる内容や方法を取捨選択することが大事かと。

 ただし、ネット情報では現場感がどうしても薄いので、現場での実際のことを理解したければ本の方が良いだろう。全体像が分からなければ仕事にならないからね。全林協さんの、林業現場人「道具と技」(現17冊目)では、日本中の林業事業体の人たちが登場して、様々な現場の話や工夫や知恵が掲載されている。

4IMG_9381 のコピー その上で、自分自身の作業において応用して見れば、先輩たちの言っている意味が分かり身体での理解が進む。だって、目立て例の画像を見たからといって同じ様には目立てできないからね。頭(知識・情報)と身体の動作(現実化・創造作業)とは別物。両方が繋がっていくには訓練や修練が必要で時間がかかる。

 さてさて、ネット上でも先輩たちが色々な画像をアップしてくれているが、ここでは島根で我々が習っているジット流の目立て(こちらのページに丸ヤスリの持ち方も載っている)をした刃をアップしてみよう。以下は石垣氏が目立てしたもの。

 この目立ては、「切れることを一番」の目的にしていない。キックバックや振動を起こさずに安全に使える刃の形の中で最も切れる形を追求しているという言い方が出来るかも知れない。
 つまり、初心者でもプロでも使って安全、仕事もスムーズ、長切れして(刃持ちが良い)、身体も楽、IMG_6884(1)といったところか。

 あとは趣味の問題。プロは自分の用途や現場での状況(樹種や使用目的)に合わせてその都度アレンジしていたりする。プロはキックバックもコントロールしつつ作業したりしているからね。
 要するにこれが一番とか絶対というものは無いということか。

 それでも、ジットの教えている内容は、今度自分が相手をする初心者の人を相手にする場合には、非常にわかりやすく教えられる基準・メソッドを持っていると言えるのではないか。
 なぜそうするのかという理由を説明できたり数値で教えることができるので、目立てもそうだしフォームから構え方、操作から作法、作業内容まで、誰にでも通じるディファクトスタンダード的なものかと思われる。

 ジットが教えている補助道具を使わないシンプルな道具だけで行う目立ては、ヤスリの先から肘までが一直線になることと、ヤスリを真っ直ぐに送り出せるフォーム、それからヤスリで削るための力が入るベクトルのコントロールを掌と指で持ち方で調整する。

 やがてヤスリを真っ直ぐに出せることと、力をかける方向のコントロールができる様になれば、山の斜面で屈み込んででも現場で目立ては出来る様になるが、それでも、キチッとメンテをして全体にバランス良く仕上げるのには、作業台の上でバーを固定した上で丁寧にやった方が良い。
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 上の画像はセミチゼルのBP21タイプ。ハスクのH25のソーチェーン。左側の画像に角度の赤い線を入れてみた。80度ちょっとくらいか。石垣さんが目立てをしたもの。

 横線の基準はバー、もしくは隣の刃。どこの角度かというと、上左画像の刃の先端に青丸がしてある。上刃の上から測って0.6mmとか0.65mmの部分。左側に山になって居る部分がデプスなので、その高さとの差(つまりカンナで言うと刃先とカンナ台との差)の部分角度。

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 目の高さが少し違うとこんな感じ。こちらも赤い線を入れてみたが細くて分かりにくい。上のものよりも若干立っていると思う。
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 こちらは上方から撮ったもの。上刃目立て角は、ご存知の様に30から35度に。右画像はマークに倣っていて約30度か。







 ついでだから自分の刃を同じ様に並べて観てみよう。
IMG_7576(1)IMG_7571(1)








 こちらは21BPでハスクのH25。
 違うね〜。ワークポイントの横刃の角度も若干鋭角ではあるが、それよりも上刃切削角がより鋭角だね。タイストラップ(リベット二つが打ってあるプレートのこと)に擦り傷が入っているんで何やっているかバレちゃうね。

 もっと刃がチビてきたらヤスリをワンサイズ細くして4.5mmに落とす。4.0mm用の刃の場合には刃が小さくなってきたら3.5mmにサイズダウン。刃が減ると共に刃の高さも同時に低くなっている(スキを作ってあるから)からだ。
 そうしないとタイストラップを大きく削ってチェーンが破断するか、そのまま標準サイズのヤスリを使っていると刃の角度がバックスロープ(刃が立ち上がるか後ろに反る)になってしまう。

 右のものは、スチールのPM3。IMG_7580(1)ちょっと尖っているかなあ。

 さて、21BPはゲージが1.5mmで、PM3は1.3mm。ゲージの幅に応じて刃の幅も広さが変わる。

 エンジンの排気量に合わせて、また使用特性に合わせて選んで行くわけだが、当然狭い方が材への食い込みというか切り込んで行くのに抵抗が少ない。

 こちらは、スチールのPM3と同じ1.3mmゲージ用(但しピッチが違うので互換性はない)のオレゴンの95TXLというタイプ。同じメーカの95VPXの後継機種?オイルの潤滑とキックバック対策が若干よくなっているというもの。刃の上のガイドマークが特徴的。

 ピッチは21BPと同じなので、上から見た刃の幅が狭くプレート類が薄いので、木に切れ込みやすいということ。雪道では太いタイヤは浮いてしまってグリップを得難いけれど、細めのタイヤの方が雪を掻き分けやすいのでグリップを得やすいのと同じ原理。
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 こっちの目立ては、横刃は石垣氏と同じくらいだけど、上刃切削角はだいぶ鋭角に。以上の内容は一例であり、まだまだ奥が深いものなので一家言を持っている人はたくさん居られると思う。が、キックバック対策など鑑みて安全を重視するにはベンチマークになる目立て例だろう。

 さらに刃によって合う目立てというものもあるのかもしれない。自分は新しもの好きなので、このオレゴンの95TXLを、雑誌「道具と技」の記事や、お店に置いてあったオレゴンのカタログを見て、営業に乗せられお試し心が発動して、つい買ってしまった。
 オレゴンの新製品、スピードカットシステムは軽いアルミコアのガイドバーとセットでになっていて、日頃使っているハスクの346XPに着けてみたら、まあそれは21BPよりは刃の入りは良いよね。
 しばらく使ってみようと思う。でもバーはやおい。おっと、これは石見弁かな。バーが弱そうなので丁寧な仕事が必要だろう。


 ところで、21BPのタイプでハスクのものが売っている新品状態だと刃付けが右の画像の様になっている。IMG_7560 (1)

 上刃の部分をトレースしてみた印を横に描いてみたが、この部分が平面なんだよね。
 ラインで製造するのに平ヤスリで上刃をつけていることになる。
 なので、売っている新品の状態だとフック気味。

 逆さまになっていて申し訳ないのだが、上に何枚か載っている21BPの4.8mmの丸ヤスリで刃付けをしたものと比較してほしい。

 これじゃあ、新品と同じ状態を保持しようとしたら角ヤスリと丸ヤスリの両方を使って刃付けをしなければならない。メーカはどういうつもりで売っているのか何方か教えて欲しいね〜。

 先日の島根審査会の際に、この点についてジットの石垣氏に聞いたところ、機械加工の丸のまま売ると(人が一手間を加えて研いだほどには)最初からあまり切れないのでは評判が悪くなるだろうから、最初に装着した時から切れる様にするためなのではないかと言われた。また、以前のものとも形が変わっていると。

 また、わたしが平ヤスリで加工云々と言ったら「グラインダー加工だろ。」、とも言われた。兎に角、メーカーがリリースした新品がフックすぎるとのことがジットの石垣さんが言われること。確かに自分で目立てした方が切れる様になるのは確かだ。プロは皆さんそう仰る。

 またジット流で目立てをしておくと、「切れる」上に、「キックバックを起こしにくい」ことが体感できる。
 そして、一番大きな利点は、「受け口を作る時に低回転でもよく切れるので、綺麗に確実に作業ができること」。

 皆さんも、「エンジンをぶん回しながら顔を近づけて受け口を作っている怖い作業方法」を見ることがあるだろう。それが当たり前と思っている人も居るかもしれないが、実はその原因としてフック気味の刃、または切れない刃のチェンソーを使っていることにある。
 受け口作りの様な細かい作業をするのに、フック気味の刃だと引っかかって仕方がないからエンジンの回転を上げ気味にして勢いをつける。または刃が切れないから高回転にするということになる。


 そうなると振動も跳ね上がりも多くなったりするので微妙なコントロールができなくなる。すると身体に悪い(振動病)だけでなく燃料も食うし、斯くして切り口もギザギザの汚い仕事しかできなくなる。音が勇ましいだけで何も良いことがない。

 何十年も前、バイクのオフロードレースをやっていた頃に、サーキットに着くと勇ましいスロットルワークで、もうもうと土煙をあげてすっ飛んで行く派手な人たちがよく居たある時のこと。

 おお、すげ〜!と思いつつ支度をしてウォーミングアップしつつ流していると後ろから、どけどけ〜と言う様な心が見え見えのエンジン音が近づいてくる。
 大人しく避けてから、やおら後ろに着いていくと、「ありゃりゃぁ、遅えじゃん!」(^-^;;  おっと、横浜弁が出てしまったぁ〜。
ISBN978-4-88138-278-3 ということで、音にごまかされない様にね。

 こういった目立てについてネットでは先輩方がいろいろ知見を書いてくれているが、最近ブラウズして非常に参考になったのがこちら。千田典文氏のサイト「磐井の里から」の“目立てについて”の記事。

 実は全林協の、林業現場人「道具と技 Vol.7」の記事、拡大写真で見る!「ソーチェーンの切れ味ポイントはここだ!」にも書かれている。その記事中のサイト紹介を調べて拝見したのだが、素晴らしい内容ばかりだった。
 また当方と同じ様な搬出方法の記事もあるので学ぶことも多かった内容だ。

 林業現場人「道具と技」シリーズには、毎号にこういった現場の人たちの知恵が載っているので非常に参考になると思う。
 「小さい林業で稼ぐコツ」を読まれて、ご自分で森林資源活用に取り組もうという方は、まずは「伐木造材のチェンソーワーク」は手に入れて、それからこの林業現場人「道具と技」シリーズも併せて読まれたら良いだろう。
 他にも優れた本が出版されているので、全林協さんの出版物サイト森の書店オフシャルサイトをチェックされるとよい。


IMG_7563(1) さて、話は戻して、この角ヤスリの使い方は、これまたマニアックな刃付けの仕方を先輩たちが本やネット上で教えてくれているが、確かに切れるものの現場で石などに当てて刃先を飛ばしてしまった時などの修復が大変。

 ジット流の掌を上に向けたヤスリの持ち方が出来ていると此の角ヤスリも使いやすいのだが、丸ヤスリでも充分に切れる刃が付けられるので、まずは丸ヤスリをマスターすることが大事かと。


 右画像の左から二番目が目立て用の角ヤスリ。サムライレジェンドというマニアックな会社(カーヴィングの天才、林さんがこちらの会社と仲が良いので、製品買ってね!と言われる...)から出ているもの。

 平らな二面と、両はしに角で狭い二面にヤスリがついた六面六角形のヤスリ。本やネットでは先輩方が輸入品のものを使っている話が出ているが、最近ではこのブランドのものが近所の農機具屋石見エコーさんにも置く様になってきた。

 あとヤスリの取っ手はジットタイプ。掌に収まる小ささで、この大きさだと肘からヤスリの先までが一直線になる。

 右端のものは、デプスゲージとデプスを削るための日やヤスリ。左端のものは角度計。New自伐林業のすすめという本の記事中にも載せたもの。下記の様に使い目立て角度を確認する。ホームセンターで手に入る。
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 普通は、虫眼鏡は使わない。これは、日本森林管理技術・技能審査認定協会によるランク認定審査会(NPO法人ジット・ネットワークサービス後援)の審査の風景なので、厳密に測られている。これが厳しくてなかなか受からない。今年もやばいかもしれない。

 さてさて、実際切れて且つキックバックの発生を抑えたチェンソーの刃の目立てができる様になり、この「突っ込み切り」を安全に使えれば、後述の様な安全且つ正確な伐倒方法が無理なく落ち着いてできる様になるために、初心者の伐倒時の安全管理ににとって非常に有効な手立てとなる。
IMG_0512(1)
 普通の林業者ではあまり使うことのない突っ込み切りになぜフィーチャーしているかというと、足元の悪い斜面の伐採時だけでなく、後ろの追いヅルを切らない限りツルを作る作業中に木が倒れることはないので、受け口と追い、そして伐倒の際の方の方向と速度コントロールの役目を果たす蝶番役のツルを落ち着いて丁寧に作れるからだ。

 右画像は、女性が小さいチェンソーで、突っ込み切りをしてツルを作っているところ。

 普通の追い切りでは、木がいつ倒れるか分からないので、写真の女性の様に、伐倒方向から反対側のツルの厚さを確認するなんてことは出来ない。

 ところが、追いヅルを残してあれば木が倒れないので、この様にして正確にツルの厚さを確認しながら切ることができる(ソーバーは、手元のツルの厚さを先ず切って決めた上で、バンパースパイクを突き刺し扇状に回転させて切ることで先端側のツルの厚さを確認するという流れになる)。

 この様な正確な伐倒を行うための技術を身につけるには、毎回此れらの伐倒に関わる要素を、現場と対象木の状況に合わせて考えて、その上で微調整しながら伐倒作業を行う必要があるだろう。
 そのためには観察眼が必要であると共に、三次元の空間把握能力というイメイジ力、そして時間軸を足した四次元的な予測能力を駆使して、重心が偏心した重量物が動く時の物理の因果の結果を見抜かな4chainsowworkいとならない。

 何故そこまでする必要があるのか? 教えるジット側としては、
『この危険な作業を安全に行なうということは、本書の安全な伐木 作業の定義の通り「作業者が対象木を作業開始から終了まで十分なコントロール下に置くこと」』
と、いう指標があるという。
※全林協刊「伐木造材のチェンソーワーク」から

 ジットはそういった精神を持って教える側の立場になれる人を育てるために活動していることが我々でも理解できる。講習の際に話を聞いていてもテクニック的なことだけではなく、心構えの話も多い。
 つまり、自分たちだけ上手く仕事を遂行するだけでなく後進を育てるために必要ということだろう。

 そして我々の様な生業として日々林業に従事していない人間としては、前述の様に落ち着いて正確に伐倒できるようになりたい、という目標があると思うのだが如何だろうか。

 と言うのは、自伐とか自分で山の材を利用するための伐採って皆伐じゃないでしょ? 抜き伐りと言う様に必要な分だけ間引くのだから、他の木に掛けない様にピンポイントを狙った正確な伐倒技術が要るんだよね。

 あの皆伐という全部の立木を伐るのって知らない人が考えるほどには難しくない。チェンソーの扱いになれれば直ぐにできる様になるくらい、と言うのは言い過ぎだけれども、搬出を考えて出しやすい向きに倒すのは必要だが、基本的には障害物がない様にしてからの伐倒だからね。

 それが証拠に、林地の伐採後の切り株をみれば一目瞭然・・・皆さんも山に入ったら切り株を見て、どんな受け口が作ってあって、千切れたツルと追いの状態のそれぞれの大きさとか厚さ、角度が設定されているかを調べてみることをお勧めしたい。上手な人のものは参考になるだろう。

 それにしても怖いよね、そうやって仕事の履歴が残っているのは。作業者の人が何考えてやっているか、どんな気持ちで生活しているのか全部解っちゃうからね。わたしなんか失敗した時には、速攻残った切り株を切り落として消去! (^-^;;
IMG_1974 (1) そう言えば、現場から聞こえて来るチェンソーの音からも色々な情報が乗ってくるね〜。。。コワイこわい!

 ということで、安全な作業には正確で緻密な作業を身につけた方が良いということ。ちゃんとしたオッさんだったら、「最初にいい加減な仕事の仕方を覚えたら、一生そのままだぞ!」、と言うはず。
 まずは、「伐木造材のチェンソーワーク」を手に入れることをお勧めしたい。

 また、突っ込み切りが自在に出来れば、上画像の様に丸太にバーを突っ込んで四角い穴を開けたり(ホゾを切った材を挿して簡単な構造物が作れる)、中を繰り抜いたり、丸太を横にして腰掛けになる座るところをチェンソーで加工して作れる。
IMG_1465 (1)
 これも体験講習の際の画像。チェンソーはどこか身体の一部につけて安定したホールドをしている。あとは、前ハンドルを持っている手の親指は必ずハンドルに回して握っている。

 プロでもよく此の親指を前ハンドルを握らずに、添わしているだけの人がいるが、その場合何かの時に不意の反動が来たら対応しきれない場合がある。

 今までそれでも事故はなかったかも知れないが、事故をゼロにするという「心構えの醸成・自分の潜在意識へのプログラム」、に対して甘えがあるのかも。取り敢えずは他人の見本にはならないのでは、と思うが如何。

 他にも、ツッコミ切りができれば、急な斜面を上り下りするための階段や梯子が簡単にしっかりしたものが作れる様になるので農業者の人たちにとっても便利なのだ。 
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 そして、重たい材をトラックに積む時に必要な丸太スロープの端を加工するにも、突っ込み切りを使って切り欠きを加工すると、荷台とアオリの形に合わせて、ずれない形が作れる(土手の上方から材を下ろすのに必要)。




【危険木などを伐倒する際に使う、「追いヅル切り」の技は初心者こそマスターしよう】
IMG_5754 (1) その他には、伐倒を安全に行うために「追いヅル切り」、という方法があるが此れは「突っ込み切り」が出来ないと成立しない。
 この伐倒を安全にする追いヅル切りができる様になるために突っ込み切りと、突っ込み切りが安全に出来るための目立てのことをしつこく書いたわけご理解いただけるだろうか。

 単に受け口の反対から切り込んでいく追い切りとは違って、突っ込み切りで前ヅル(通常のツル)と追いヅル(木が倒れ始めない様に保持している後ろ側のツル)の両方を作るからだ。

 追いヅル切りは、足場の悪い急斜面に生えている斜めになった木を伐る時には、ツル以外に受けと反対側にもう一つ(追い)ツルを残しておき、最後に足場の良い上部に移動してからこの追いヅルを刃先でチョンと切って即逃げれば安全に伐倒できる技だ。


 もちろん、右の画像(受け口は画像に向かって奥側。バーを突っ込んで切り、追いヅルは手前側に作っているところ)の様に平地での伐倒においても、クサビと併用すれば絶対にバーが挟まれることなく安全にコントロールした伐倒が可能。

 綺麗に丁寧に受け口を作ってから、追い切りを突っ込み切りで作るが、後ろヅルがあるので木は倒れないしバーも挟まれない。
 だから、落ち着いてツルの厚さを丁寧に調整(微調整は直刃のノコでも良い)出来る。これが出来るのも、後ろ側の追いヅルが残っていて木が倒れ始めないからだ。

 そして、完璧にツルを作り、また立木が伐倒方向よりも傾いていたり、枝が多い側があって重心が傾いている場合には、倒れて欲しくない方にクサビが入れられる様に切り口を広げる。クサビを打ち込んで、追いヅルを後ろから切り離せば、あとは木が倒れて行くだけ。逃げるにも時間の余裕ができる。
 追いヅル切りは初心者こそ活用したい技だ。※兎に角、前ヅルは切りすぎない様に。後から調整は幾らでもできるから。IMG_5772 (1)








 左写真は、上手に切ったので分からないが、切り株の向かって左側(受けの反対側)に追いヅルがあった。
 後ろの丸太は伐倒とは関係ない。




 探したら、もう少し分かりやすい画像があったので載せておこう。
P1130657 (1)P1130662 (1)








 急斜面の足場が悪い斜めに生えているコナラの伐倒だが、左が画像が受け口を作ったあとにバーを突っ込んでいるところ。
 右画像は伐倒後の状態で、手前が受け口で奥に斜めに切り立っているのが追いヅル。クサビは絶対に倒れて欲しくない側に入れている。

 この場合、クサビ側(バーの先が飛び出ている側)の斜面に他のコナラがあって、伐倒木がそちらにも重心が傾いており、もし掛かり木になったら面倒なケースだったため。

 追いヅルの切り方は、上の女性の様に追い切りの水平面に合わせてやる方法が一般的。

 さて、安全管理の話ばかりになるが、一般人には労災も出ない林業事故においては、安全なチェンソーワークと伐倒、掛かり木処理の手法を習得することがまず第一で、材を沢山出すのは二の次。何事も馴れて来た頃が危ないしね。

 この間も、自伐への取り組みのための指導を受けてグループを立ち上げている人たちの、その中でも最も伐倒が上手な若者が、魔が差したのか細い木の伐倒を失敗して狙った方とは違う方向に倒れてしまい、軽トラを全損させたと、そのお仲間から聞いた。

 実は、ここ数年で自伐型への取り組みが多くなってきて、あちこちで結構たくさんの人が亡くなっている。自伐は認定事業体の事故とは違って、労災のカウントには入らないから表に出ていないだけ。

 最近になって地方創生という美しい言葉が出来て、地方に照明が当てられ様々な形で助成されているが、その流れの中で精査なしに自伐的な取り組みに参入している人たちが増えている。
 以前、森林整備の事業規制が緩くなり専門的な教育を受けていない土木業者が参入して事故が増えたり山を壊したりした過去の事例の相似的出来事に見える。

 実際、放置林が増えて様々な弊害が出てきている現在、森林資源活用から整備への道筋をつけるために一般市民の問題意識を高めいき、そして実際の活動に誘うのは良い切り口だと思う。それでも、こういった危険作業に合う人、合わない人は歴然とある。

 これは、理解力の問題ではない。理解という次元は頭の中だけの話。現場で出来るかどうかは身体の問題。左脳で分析的理解が出来ても、二元的情報をイメイジ的右脳への受け渡しができて三次元、四次元的に展開できるかどうかは、そういったニューロ回路があるかどうかの問題。

 格闘技ほどには俊敏性は必要がないと思われるが、危険な状況が起きた時に冷静に見切ることができる能力が必要なのが山仕事だと思われる。エキストリーム的なスポーツをやっている人にはそんなに難しいレベルの内容ではないと思われる。

 自分自身に山仕事の素養があるかどうかは、自分自身を振り返ってみて、「失敗や事故」が多い人は、危険度が高い山仕事に参入する必要はないと思う。本人の自由だとか言う以前に、失敗慣れした人は他人の自由を奪う可能性が大いにあるからだ。

 それでも個人的に木を伐って活用したいのならば、技術の習得だけではなく自然に対する心構えや人としての在り方が大事だと思うよ。

 自伐型林業ではよく取り上げられる山に優しい壊れない作業路作りの徳島の橋本林業さんの橋本光治先生も師匠の大橋慶三郎先生に教わったのは、技術的なことは一、二割。あとは人間としてどうあるべきかという話だったそうだ。
 橋本さんご夫妻は、山で木を搬出するのにも他の木(残存木)を傷つけない、虫一匹殺さない様に作業されている。そういった優しい気持ちが巡り巡って自分自身の安全が確保されるわけ。
 差し出すものが還ってくるもの。これが法則だから、山や自然に対して何がしたいのかという自分の動機が問題であり安全のために担保されるものだろう。

 事業体のプロは安全教育も受け、そして危険作業であることを認識しているはずだが、その様な人たちでさえも事故を起こしているわけだから、何が危ないのか分かっていない初心者は、然るべき人に教わった方が良いだろう。

 但し、この然るべき人というのは、危ないことを平気でやっているプロの作業員さんのことではない。逆に作業員さんたちには教わらない方が良いと思うくらいだ。

 プロは、みんなギリギリのところで仕事しているからね(わたしもかつてやっていたし、その時にはすぐ近くで広葉樹の間伐をやっていた同じ会社の人が事故を起こして大変だったこともある)。反射神経が鍛えられているプロの作業手法を初心者がやったらほんと危ない。
 何故かというと事業体の仕事は利益優先だからね。

 それに本当に上手い職人的な人ほど自分が器用なために初心者に教えるのが下手な人が多い。器用な人は他人の作業を見ているだけで自分も出来てしまうのだ。右脳の働きが優れているのだろう。以前、インナーテニスとかインナーゴルフといったイメイジトレーニングで上達する方法が喧伝されたが、正しくそういうこと。

 ただ、言語脳である左脳が鍛えられていないと、分析的に説明ができないので、雰囲気的な「こうやったら良い」とか「こんな風に構える」、という様な抽象的な教え方しかできない。
 それを教わってできる様になる人は、最初からセンスが良いということ。そういった人は少ない。

 もし初心者に教えるのが上手な職人さんが居たら、貴重な方なのでしっかりと師事されるのが良いだろう。


 さて、こういった安全なチェンソーワークについては、このブログでも、「吉賀町チェンソーワーク研修」「女性のためのチェンソー講習」「益田市 チェンソー講習 in 匹見」「日本人向けのチェンソーワークとチェンソー、、、」という、関連のことを書いてあるので、念のためにリストアップしておいた。ああ、左脳的に書くと大変ね〜・・・

 但し、これらの情報はあくまでも情報(知識)でしかないので、本気で身に付けたい人はジット・ネットワークサービスを招聘して講習を行なって貰うことをお勧めする。
 いまはや県、そして自治体にもそういったことに使える一般のグループ向けの助成システムがあり、セブンイレブン財団などの企業関連にも同様のものある。

 ジットの他にも同様のレベルが高い内容を教えているところもあるだろうから、良いご縁を繋いで安全なチェンンソーの運用方法を身に付けて欲しい。


【掛かり木処理が一番の課題】
 チェンソーによる事故は、チェンソーによる切創事故(チェンソーの刃による切り口は切り屑とオイルが入り込んで幅広いので縫合が大変)だけでは無い。
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 先に書いた様に、木を切れば他の木に掛かってしまう「掛かり木」という状態になることがしょっちゅうある。

 間伐されて林間が空いているならば、伐倒方向をピンポイントに狙っていけば大丈夫。

 だが、放置林や間伐の回数が少ない人工林ではそうはいかない。
 とくに強い枝が張り出したヒノキ林は掛かり木ありきで伐倒を考えないとならない。

 この掛かった木の処理の仕方も知らずに木を切ると、あとは手出しができなくなるか、無理しておかしな手法で行うために木に潰されてしまう死亡事故が後を立たないわけだ。
 ホームセンターで売っている材木を持って軽いとか思って勘違いしていると細い生木が重たいことにビックリする人が多い。

 こういった危険作業の現実について事前に知っていると知らないとでは、皆さんの未来が変わってくる。

 チェンソーの切削事故は、枝払いとか玉切りの際に発生することが多いが、死亡事故に繋がることは少ない(仲間さえ近くにいれば...)。それよりも草刈りの時の刈り払い機による事故の方が危ないとみんな言う。

 ところが、伐採による事故は伐倒方向のミスで作業者や仲間が潰されたとか、他の作業をしていて倒した木が転がってきたなどの事故があり、そして一番多いのが掛かり木の処理ミスによる事故で、これらは大怪我程度で済めば良いが即死亡事故に繋がる危険作業だ。

 そもそも普通にチェンソー講習を受けたって安全な掛かり木処理の方法まで教えてくれないだろう。掛かり木の処理方法は、持っている道具類と現場の状況により多様なやり方があるから、その場でないと教えきれないからだ。また、本にすれば、それだけで小冊子が出来上がってしまう。

 前述のチェンソー特別教育を受講されると、開催事業者によって使うテキストは様々だが、どのテキストにも「やってはいけない掛かり木の処理方法が五つ(もしくは六つ)」、が書かれている。

 これは六つ書かれている場合があるが、いずれのやってはいけない方法と言うものは、チェンソーを買っただけ、使い方を習っただけの初心者が『必ずやりたがる方法』なのだ。
 素直といえば素直なのだが、これは何が危ないのか分かっていないだけ。以下はやってはいけない掛かり木処理方法。

1)掛かられている木の方を伐倒すること

2)浴びせ倒し(投げ倒し):木が掛かってしまったところへもう一本木を掛ければ重さで倒れると勘違いする。津和野でも自己流で危ない山仕事をやってきたオッさんが、これをやって次々と何本も掛けたけど倒れずに往生していた。

3)元玉切り:掛かっている木の元から短くチェンソーで切っていけばそのうちに倒れるだろうと安易に考えてやっていたら、重心の向きが変わって自分に向かって倒れて来て潰される。生木は細い木でも重たいことを考えずにナメているから。

4)掛かられている方の木の枝を登って切ること:アマイね。タダでさえ枝を切るだけの作業でも事故が多いのに。

5)肩で担って外す:細い木でも外れてバウンドしたときの衝撃はすごい。何で知っているのかな〜。


 この様な危険作業を行わない様にするには、掛かり木処理用の道具を揃えれば良い。様々なやり方や道具があるので全部は紹介できないが、まずは基本的な手法から針葉樹の人工林の場合に特定して書いてみよう。


【掛かり木処理方法ダイジェスト】
 最初に、掛かり木になるのが最初から分かっていたら樹上にロープを掛けておくことがやること。それから以下にリストアップした方法は、重たい木がツルが離れていない状態で掛かり木になった場合のもの。軽い木ならば、近くの丸太を使ってテコの原理で揺さぶれば掛かった木が動いて外れることもある。また、以下の方法は、切り捨てでは無くて「材を出荷する場合を前提」に掛かり木の処理方法書いている。

 他には、掛かり木が発生してから、木の元の方をチルホールで引くなどの方法もあるが、これは、手間も労力掛かる割に効果が薄く、総じて時間が掛かるので省いてある。それにチルホールの新品は高いしね。

 あ、もう一つ。掛かり木が発生してから、掛かっている木に人の手の届く位のところに作用点を採って、チルホール(750kg、1t、1.5t引きとか色々)で一生懸命引いても対して効力がないケースが多い。
 ロープを高いところに掛けられる方がよっぽど効果的。

1)ツルを左右1/3ずつチェンソーで切る。木の重さで挟まれない様に素早くやる必要があるが、キックバックを起こす側は使わない。場合によっては逆手持ちもあり。鋸道を広めに、少し切ったら直ぐ引き抜いて様子をみる。

それで、動かなければ、、、

2)クサビを持っていれば、回転させたい方向と反対側の切ったツルの間に差し込んでハンマーなどで打つと木が回る・・はず。

3)クサビで回らない場合には、次に木回しを使う:フェリングレバーを持っていればそれを、なければロープかシートベルトを切って作った様なループ状のスリングを木に回して最後に残った輪の部分に、近辺の木で作った丸太を差し込んで回す。他にも、金属製の爪を刺してロープを繋いで回す道具などいろいろある。
 ただし、これらの木回しを使う場合には、滑って転けて回した木の下に入らない位置に立って行うこと。
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 それでも動かなければ、お次はロープの出番、、、ロープを木に事前にかけておく方法は様々。

 以下は、事前にロープを伐倒木に掛けておく方法だが、安全管理が出来れば掛かり木になってからでも、対象木に掛けられる方法もある(6、7、8)。

 また、ロープの途中に小型滑車プーリー:リンクのものはロープ13mmまで。ステンレスプレートなのでウィンチにも使える)を設置しておくと3倍力が作れるので人力で外せることが多い。
 右画像は講習時のもの。ロープスリングで作ったフリクションノット(プルージックかクレムハイスト:検索してください)にプーリーを設定している。

 ロープスリングで作ったフリクションノットは、必要に応じて位置をずらせるため便利。そういったロープ資材メインロープに合わせて太さを選択)がない場合には、クローブヒッチ(マスト結び・インクノット)かトックリ結びで滑車(&カラビナ or フック付き滑車)を設置すれば良い。
 ちょっとした道具があるだけで3倍力になる。IMG_6273(1)

 それでも掛かった木が外れない時には、プラロックなどのハンドウィンチを使用。
 左画像のプラロックの1000は250kgの牽引力があるので、3倍力ならば750kg! 大抵の木は外れるでしょう。

 我々の場合には、後述の750kgでの牽引に耐えられる高強度の軽いロープで延長するが、コンパクトに全てザックに入れて楽に運べる。

IMG_3158(1)4)杉や枝打ちがしてあるヒノキだったらロープをウェイビングで打ち上げる。

 左画像は講習時のもので平地でやっているが、山の中の斜面だと斜面上側に立てば、もっと上までロープが掛けられる。

 掛けたあとに、二本まとめて引くか、それとも片方を立木に固定して、もう一方を人力、プラロックなどのハンドウィンチで引くかはケースバイケース。
 片方を固定した場合にはテコの原理で倍力になって木を回せる(こちらのサイトには私が提供した処理方法が載っている。また6)のスローイングノットの写真も載っている)。

5)ロッキーラダーなどの一本梯子を使う。一段2mなので2段使えば人間の手の届く高さは6m程度。この作業においては安全帯を着用の上で行うこと。ただし、安全帯を使っていても使い方を習っていなかったり、梯子を木に縛っていなかったりすると滑落事故につながる。
IMG_6250(1)
6)スローイングノットを使ったロープ投げ。枝が多いヒノキはこれで済む場合もある。石をロープに付けて投げれば良いと考える人が居られるけど、飛ばせる位の石の重みではロープに手が届くところまで降りてきませんので悪しからず。
 右画像がスローイングノットを作ったところ。これを投げて枝に掛けると束にした部分がバラけて落ちてくる結び方。

7)ケーブルキャッチャーなどの伸縮する竿を使って枝にロープを掛ける。が、フックを改造しないと無理。

8)スローラインとスローウェイトを使って枝に回し、牽引用のメインロープを引き上げて回す。これも枝ぶりによるので万能ではない。ただし、広葉樹にロープを掛けるのには一番良い。また、搬出する際に必要なアンカーを樹上に採る際にも木の登らないで滑車とロープ(ワイヤー)を樹上に上げられる様になる。ツリークライマーの専門的な方法はこちらスローラインキット

9)昇柱器と安全帯、ランヤードなどを使って木登りして樹上にロープを掛ける。足につけるは、欧米のものだと一本ヅメのスパーがある。

10)ロープをポータブルエンジンウィンチで力づくで引く。これは絶対に外れる。

P1120598 (1) 少し前までは、ロープではなく重たいワイヤーとチルホール(人力ウィンチ)を使っていたが、これが大変。

 わたしも、7年前に神奈川の丹沢山中で班長がロッキーラダー2段とチェンソー。わたしは750kg引きチルホールとワイヤー、それから自分のチェンソーと燃料類をもって二人で急斜面の間伐をやっていた。

 今考えるとあり得ない。大変な労力が必要だったし効率も悪かった。今ならハシゴは要らないしチルホールも要らない。ここに書いた手法と道具を持っているのでこれらで済む。

 また、6)7)8)の手法で、掛かり木が発生してからロープを掛けることが出来るが、この場合には掛かり木の下に絶対に入らない様にすることが前提。

 他にも丸太を使って伐倒木を抉ったり、元口をチェンソーで切って形を変えるなどの方法も使う必要がある場合もある。

 そして、これらの手法と道具類は、斜面からの木の搬出にも同様に必要なもの。
 少しずつ揃えてステップアップして行くと良いだろう。

IMG_0711 (2) 長い材を引き出す際には、地面との摩擦抵抗と、障害物の回避が必要なので、材の頭を浮かす必要がある。

 そのためには樹上の高いところにアンカー(支点:ベルトスリングと滑車及び接続器具スチールカラビナもしくはUシャックル)を設置して、牽引用のロープを高いところに通したい場合にも使える応用範囲の広い技だ。

 右画像はロープウィンチで10数mの杉の木を引っ張り出しているところ。高校生2年生の体験講習。
 右の一本梯子(ロッキーラダー)が掛かっている木の上にアンカーを採っている。

 これらの事から分かろうかと思うのだが如何か?
 バックホウなどを持っていない人たちが、山から木を引き出すには、「支点となる太い立木が必要」、ということ。それも引き出したいところよりも外側に。
 ウィンチ(林内作業車のウィンチも含む)の設置をする場合に、またウィンチを使わないで車両で引っ張る場合にでも、アンカー(支点)を採るための根が張った太い木がないと、引き出すことも方向転換などもできない。

 だから、搬出方法が決まらない内に、木を端から全部切り倒してしまうと、木が出せなくなる。

 農村の集落営林の林分調査をした時に、木を出すことを考えて植えて居ないので、庭や田畑を潰さないと出せないところが多かった。道路際の急傾斜地しかアクセス出来なかったり、道路から川を挟んだ向こう側だったりする。そして周りには支点を取れる太い木は伐られてしまった後のことが多い。
 また、そういったところは森林組合も手間ばかりかかるのでアンタッチャブルの様だ。


【高強度の繊維ロープの活用】
 さて、大事なこと。ここで一括りにロープと書いているけど、ロープと言っても色々ある。
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 わたしたちの講習会では、ロープの種類について、まず大きな分類として、「スタティックロープ」と「ダイナミックロープ」の違いがあることを伝えている。要するに伸びないロープと伸びるロープだ。

 牽引時にもし伸びるロープを使っていて、引っ張って引っ張って伸びきった時に切れたらどうなるだろう。考えただけでも恐ろしい。もちろん、伸びないロープでも万が一切れたら鋼線のワイヤーロープほどではないがダメージは大きい。

 何故ならば、動力を使った牽引用に使用するロープでは、例えば12mmの太さで破断強度が4000kg近くになる強度を持ったものがあるからだ。
 右はシリウス500という14mmロープ100m。破断強度は5000kg。ロープで軽架線を張るのに使っている。

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 右の画像は、今年の6月に長野市で開催された国際ウッドフェアに出展したアウトドアショップKさんのブースに出したもの。

 当協議会では、林内作業車と土佐の森の軽架線キットもあるが、ロープの架線とポータブルなロープウィンチで作業する方法も講習している。

 キャレッジ(写真のプレート状のもの)は、土佐の森の鉄板と、アルミのものがあり、画像は土佐の森のキャレッジにお化粧したもの。

 アウトドアショップKさんで扱うWエンドプーリーを入れると、荷揚げ線で3倍力が可能になる。

 小規模な搬出では、こういったIMG_0148 (1)システムが組めると短時間で架線を張り、そして撤収が物凄く楽になる。



 ロープを主索に使った軽架線は、場所にもよるが架設を一人で30分くらいでできることもあり、また面倒だが一人作業で難しい段差が大きい場所などから長尺材を搬出可能とできる。



 それには、こういった高強度の繊維ロープがあってこそ出来る。

 さらにもっと強度があるダイニーマという素材を使ったロープが高性能林業機械を使った搬出にも使われ始めている。

 ただし、ダイニーマのロープは結び目を作ると途端に強度が何分の1にも落ちるので、結び目を作る使い方は不可。ドラムを使って巻き取る様な使用方法か、プルージックループでフリクションノットを併用するかして使用する必要があるので、一般的にはリギングロープスタティックロープを牽引用にする方が使いやすい。

 この様に、鋼線のワイヤーロープに取って代わって、高強度の繊維ロープの使用が広まりつつある。

 これは、取り回しが軽くて扱いやすく身体が楽だからだが、ワイヤーと一番違うのは、片付けるときIMG_9676(1)の手間の違いがダントツに楽ということ。

 ワイヤーは巻きながら揃えて片付けるのにもキンク(縒れ)が付いていたりして結構な手間も労力も掛かるが、ロープの場合にはロープバッグにそのまま端から突っ込んで行けば良いだけだからだ。その方が引き出す時も絡まない。

 上の機材は、小型のロープウィンチと10mmのシリウス500ロープ(32ストランド:破断強度2800kg)60m。被覆が固いので、重量材を引く時にはロープウィンチのアルミドラムを擦りすぎるので気をつけないといけないが、チルホールやハンドウィンチで牽引する際には気兼ねなくテンションをかけることが出来るので安心して使える。IMG_3282(1)

 また、長さがあるので滑車を幾つも使っての倍力、3倍力、5倍力などを作れるので便利だ。上の画像のロープウィンチは女性でも運べる9.5kg。ロープは女性が片手で振り回せるくらいの重さ。

 もうチルホールとワイヤーを山の中持って歩くなんて考えられないでしょう。

 ロープにはロープ用の滑車(プーリー・ブロック)があり強くて軽いのでそちらを使うこと。オタフク滑車などの鋳物のものはロープが擦れて傷むので使用しないことなどに注意。
 ロープ自体は熱に強いポリエステルのWブレイドロープをウィンチに使うが、長さは100mでも200mでも用意できる。

 現在では様々に道具が進歩しているが、多くの林業事業体では進歩が止まっているケースが見受けられる。
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 そういった最先端の素材を使って伐採や搬出を行なっていたのがアーボリストという呼び方をされる樹上伐採のプロたち。危険度が高く、また体力的にも厳しい仕事の内容だから、使う道具も洗練された信頼できるものしか使わない。

 また、安全管理に関しては次元が違うと感じるくらいに徹底している。また、いちいちの作業に関しても声を掛けたり合図をしたり、互いの意思疎通を図り勘違いの無い様に連携するコミュニケーション能力も高い。

IMG_2314(1) その手法を一般の人たちが山から材を搬出する時にも使うと、より安全で楽になる。

 そんなことを3年前から島根をベースに熊本や広島の方まで、住民の方々の森林資源活用のためのスキルアップのお手伝いをさせていただいているのが当協議会ということ(当協議会を立ち上げた5年半ほど前から「小さい林業で山を守ろう」というシグネチャを付けている)。

 今度は長野でもやりたいなぁと、アウトドアショップKさんとも話しているところ。

 Kさんにはツリーワークの講習で島根に来てもらっているが、Kさん扱いの樹上伐採用の道具類は自伐や自給自足的な暮らしをしている人たちにも役に立つものばかりだからだ。それで、ページ数の関係でほんの一例でしかないが「小さい林業で稼ぐコツ」という本にも道具の一端を載せさせてもらった。

 これらの手法と道具についてはブログには書き切れない。少しずつ記事には小出しにはしているが、体系的に習いたい人はうちの講習会に出てね。
 または、何かで助成金を取って島根までどうぞ。温泉に泊まりながら、裏山のヒノキ林でチェンソーワークから搬出、チェンソー製材までやれるから。
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 ということで、掛かり木の処理にもハンドウィンチ(チルホールでもOK)以上の力をかける場合には、こういった高強度の繊維ロープを活用している。

 人力でロープと滑車を使う程度ならば、ホームセンターで売っているクレモナロープでも大丈夫。

 ただ、気をつけなければいけないのは、繊維ロープは鋭利なものや擦れるものに弱い。泥や砂利がひどく付着したならば洗濯機で洗った方が良い。ワイヤーよりもまめなメンテは必要だ。
 もし泥がどうしても付いてしまう路肩などを通さなければならないのだったら、その部分だけワイヤーを繋げば良いので運用方法次第だ。



【小さい林業で稼ぐコツで山を守る】
 森林資源活用や森林保全活動の裾野が広がっているということは、危ないことも多くなっているということで、余計なことをたくさん書いてしまった・・・

 プロの林業者の中には、「素人は山に入るな!」、という人たちも少なからず居る様だが、利益ありきの事業体では、日本の山の整備は行き届かないことは明白。
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 また、過去の事例をみれば、事業体が作った短期利益のための作業道は使い捨てになってしまう様な造りでしかないところが多い。

 そのために、山が崩落したり土石流の始点になる場合もあることも、住民たちが知るところとなっている。

 こちらでも、どこそこの事業体は山を壊しまくっていると、多くの人に知られてしまっている。要するに日本の国自体、そして住民を含めて、そんな荒っぽい林業を認めているという事になる。これは、欧州では有り得ないでしょ。hage(1)

 また、無知な山持ちたちが、山を売って丸ハゲになってから、集落に田んぼに水が来なくなったと文句を言っている話も近くで聞く。

 水源になっている山を丸ハゲにすれば当然起こりうることで、そんな事さえも知らない田舎のお父さんたちが多いということが分かる。
 若い時に街に出て働いて、年取ったからと地元に帰ってきただけなのかな〜。ま、基本的に山や地域に愛情がないということね。P1100166 (1)





 次の項で紹介している島崎先生の仰られる、素人山主が増えたから日本の山が荒廃している、ということになるのだろう。





 山のことを知らない田舎の人が増えているのは事実だろうね。山がお金になるからと何も考えないで丸ハゲにしていたら、豪雨の際には一気に出水して川に水が流れ出る。

 それがキャパ以内だったらまだ良いけれど(岩や川の生き物が流されるし土砂で埋まるからちっとも良く無いが)、キャパを超えた河川が地域にあれば、下流域の集落や街が水没することになる。
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 丸ハゲ山や、表土が流出してしまっているヒノキの放置林がたくさんあったり、竹林や過密な放置林がある山ならば、豪雨による水害、土石流、斜面崩壊などが起きる。
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 上は津和野町の山奥。右画像は兵庫県の丹波市のもの。








 何れの崩壊地にも、竹藪と線香林が多い。
 線香林とは、放置されたために過密になり光を求めて上へ上へと伸びたヒョロヒョロの木になった林のこと。

 竹林は一律根が浅いので、斜面では表層から剥がれて落ちる。

 線香林は針葉樹、広葉樹に関わらず根が浅く、その上、木が過密で重たいために土中に水が入れば斜面ごと落ちる。広葉樹は根が深くまで入ってしっかりしていると勘違いしている人は、下記に載せた「災害に強い森林づくり」のリンクページ内のグラフを観て欲しい。

 そして、間伐されていないヒノキ林は林床に光が当たらないために下層植生がないので表土流出していると共に、ヒノキの葉は落葉しても栄養にならないので、ヒノキ林は酸性土壌になり土がスカスカ。つまり土壌結束力が無くなっているために豪雨災害に弱い。

 どの様な斜面林分でも、高樹齢の根の張った太い木が点在しているのならば斜面保持力が高く、崩れた場合でも土砂捕捉するケースが多いけれど、金になるからと何でもかんでも伐ってしまうと裾の家や集落に被害が及ぶことになりかねない。

 京大の竹内先生には、昔は集落の側にまで木を植えなかったと教わった。今は、山林に家が近すぎるとのこと。竹内先生は、大分以前から津和野町と吉賀町とで、2ヶ月ごとに来てもらって指導してもらっている。

kusatu(1) また、我々島根県林研では、国土防災技術株式会社の田中賢治部長に来ていただき、「災害に強い森林づくり」の勉強会を各地で開き、土壌測定や地下水脈の音を聞くこと、またドローンを飛ばしての林地調査法を教わっている。


 左画像で赤く色がついた部分は崩壊が最初に起きる可能性がある林地。
 その後に続く黄色い部分は崩壊して流れるエリア。
 この画像には右下一箇所しか無いが、緑色のところには土砂捕捉林となる樹齢の高いしっかりした木があるエリア、などがドローンの空撮で分かる。

 我々は前述の田中氏に教わっているが、こういった事は、昔山に入っていた高齢者の人たちは可なり分かっていて、水気が多い場所や植生で地下水が豊かなところを知っていた。
 作業路の路網設計に山に入っても、同様のことに留意して林分の調査を行うが、昔の人たちは山を利用し、狩りなどで山に常に入っていたので、山の状態を知っていたのだ。

 家を建てて良い場所、いけない場所も分かっていて代々言い伝えられていたりする。津和野町の豪雨災害でも、そういった言い伝えを守っていた様で、母屋を流されたのは上の画像の一軒か、もう一軒あったくらいで済んでいる。

 さて、今の時代、都市集中型の生活形態により高度成長経済を経て来たが、世の中が熟成して飽和状態から崩壊へ移行しつつある現在、感受性が敏感な人たちは農山村に分散しているように見受けられる。

 それで再び大地や山からの恵みを活かした生活スタイルが一般的になるくらいに復活するのかと言ったら、それにはもう少し時間が必要だと思う。まだまだ一部の人たちのライフスタイルのレベルかと。

 とはいっても、山奥でも通信網が届くところも増えて来たし自家発電も色々な方法でできる。この電気の自給については、テクノロジー的にはものすごく自由になってきているので、政治的なものを乗り越えられれば直ぐにでも電気の自給スタイルが可能になるだろう。それは燃料電池車であったり家庭用燃料電池システムがある。

 こういったテクノロジーが広まれば、楽々山暮らしが可能となる。山からの恵みを頂きながら山を保全する仕事ができたらなんと素晴らしいだろう。

 ただ、山は危な事が多いのも事実。何が危ないかを分かって入れば、それほどではないが、道のない山の中を歩ける人はそうはいない。
 林に関わる仕事は猟師ほどではないが、何処でも踏破できないと仕事にならないからね。

 昔は山での作業とか危ない遊びは先輩や長老が現場で叱りながら「智慧と経験」を教えてくれたりした(叩き込んでくれた?)。真剣でない人は、それでオミットされ、残るべき人だけが受け継いでいたということなのかもしれない。
 だが、今はネットや人からの「ただの知識(左脳的情報)」を得るだけで似た様なことが出来るから、本当に危ないこととか真髄が伝わらず、また精神的な素養の育成や意識醸成ができないから、危ない事が起きた時には、即大事故になったりすることが多い。

 人力で道具を動かしていた時代から、動力を使って人間がとても制御しきれない道具類を使っている時代になって、日常的に危ない事、ギリギリの一線を越えるか越えないかというレベルの仕事をやって来なかった人たちが、超えてはいけない一線の見切りができないのが原因ではないかと思う。

 これは、作業という分野だけでなくビジネスなどを含めた人間関係に於いても言える。
 相手に厳しいことを言われて、それが自分が間違っていることの反映でしかなく、相手の言っていることが普遍的真実であったり、または間違った自分に対して、なんとか気づいて欲しいという意図をもっての叱責だったするのが、気づけない見抜けない、という自分自身の社会的未熟さが人間関係を壊す原因となる。

 自分が一番という様に育てられた人たちが多い今の世の中は、外の異変(大声なども含む)に対して瞬時に反応ができないようだ。作業をストップするとか、飛び退くとかの身を守るための身体反応が遅すぎる。
 それは何故かというと、まず自分の頭で考えようとするからだ。自分の判断が第一なわけだ。頭の中がエゴで満帆に膨らんでいて、周りからの信号(人間関係での助言)に気づけないというマインドの未熟さ、凝り固まった心がそうさせる。

 中には指導的立場の人が、ストップと大声や笛で緊急合図をしていても、自分の世界に篭って危険作業を続ける人がいる。
 こういったタイプの人は、自分だけでなく他人をも事故に巻き込む可能性が非常に高いので、意識転換をして行動パターンが変えられない限り、複数で行う危険作業からは遠ざけたほうが良い。
 自分自身がそういったタイプの人間とも認識できていないくらいに心理的視野狭窄でありエゴが強いことが人間性に表れているものだが本人に自覚がない。

 このエゴという自分を守ろうとする心的機能は、物理的な左脳に存在するわけではないが、左脳の論理的回路(損得勘定とか自己肯定理論とか)ばかり鍛えていてエゴがインフレーションを起こしている人は、自らの内側からくる直感とか気づきという生命本来の維持機能をスポイルしてしまうからだ。
 つまり心の中はノイズだらけでカオスということ。

 危険な現場作業や、自然の中での危ない事をやっている時には考えている間も無く即身体が自然に反応する必要がある。他人の大声や叱責に対して素直に反応することも大事。

 そうでないと、異変が起きた際に瞬間的に飛びのいて木陰に隠れるなどの反応ができない。上空でピシとかパキッと音がしたら枯れ枝が落ちてくる可能性が高いし、仲間が怒鳴ったら大木が転がってくるとか、何かが起きているわけだ。それをいちいち見て確認してからの反応だと手遅れの場合が多々ある。

 みな分かったつもりで危ないことに手を出すが、実際に現場では身体が動かないんだよね。
 そもそも足場の悪い山の斜面を歩ける様な身体が出来ていない口ばっかり立派な人たちが育っている。そして、自分の頭で考えられない人たちが。

 そして幾ら社会的な意味で頭が良くても、現場の仕事がおぼつかない人も多い。有名大学の卒業生で優秀な人たちにチェンソーワークや刈り払い機(草刈機)の扱いを教えると、頭が良いから理解も早い。
 ところが、やっている仕事が汚かったり、言った通りにできないことが多いんだよね。右脳のイメイジ通りに身体がいうことを聞いてくれないらしい。

 つまり、左脳と右脳の連携と身体を司る体幹とか他の脳や神経とのネットワークが出来ていないということ。

 わたしの昔から世話になっている仲間で、日本でも有名な速読教室と能力開発のセミナーを行っている人たちがおられるが、そこでは左右の脳の活性化や超能力的な能力開発を企業人向けに行っている。
 わたしもやった、と言っては失礼になる程度だが、山師の優れた人たちは本当の意味で頭が良いことを常々感じているし、また人格的にも素晴らしい人たちが多い。

 だから、そういった今の社会では鍛えられない能力を取り戻し、生き方を転換したいのならば山仕事は最高の場ではないかと思う。ただし、危ない。

 その危ないことを見抜いたり、ときに見切ったりするには、最初は基本的なメソッドやマナーを守って行くことからではないだろうか。聞く耳を持たない人は、どの道長続きできないかも知れない。



【実戦的参考書】
 島根では、ジット島根が安全普及に頑張っているので、住民たちのチェンソー事故や伐倒事故を聞かないが、他地域の方々で、ジット・ネットワークサービスの様なランキング制度もあるシステマチックな安全指導を受けていない人たちは、ぜひ補助金などを活用して講習会を開催してもらうといいだろう。

 プロであっても向上心のある人にとっては目からウロコの内容だからだ。事業体からボランティア団体まで日本各地に教えに行っている。

 林業従事者を育てるための緑の雇用という制度があるが、そこで受けた研修程度のものだったらジットの講習に出たらガッテンが幾つも出るくらいにビックリ納得の連続の様だ。

 この間も、ジットで教えるフォームでチェンソーワークを習った緑の雇用出身の林業事業体所属の女性が、「チェンソーが重たくて大変だったのが、軽く楽に使える様になりました〜!」、とびっくりしていたくらいだった。

 その際のテキストとなるチェンソーワークの本は全林協さんから右画像の「伐木造材のチェンソーワーク」が発行されている。IMG_7332(1)

 全林協さんは林業のプロ向けの書籍を発行するところなので、山に優しい壊れない作業路開設のためのテキストから刈り払い機のテキスト、そして林業現場の人たちをフィーチャーしたシリーズまでありとあらゆる智慧が詰め込まれた内容のものが各種揃えてネット通販も行なっている

 自分も何十冊か手に入れて読んでいるがどれも面白い。道具と技シリーズ(17号まで出ている)では、日本各地の匠たちの技術や知恵を惜しみなく披露している。

 此れらを読んでいると、山造りと森林資源活用は、男の子の究極の遊びではないかと思ってしまう。因みにわたしもこの本以外でも何冊かに記事を書かせて貰っている。

 しかし、どうしても全林協さんの発行物はプロ相手のものとなるので、経験者でないと内容が理解できないものも多いかも知れない。ただ、山仕事に関わる実用書ばかりなので、これから山で作業をする人たちにとって役に立つものばかり。

 しかしながら一般書店に置いていないので知らない人が多いのが残念。この点については、農文協さんから此れらの書籍があることを紙面で情報を繋いでいき、全林協さんと連携することで、一般の方々が事故を起こさない様に誘導して貰えればと願う次第。

チェンソー安全ナビ 全林協さんの編集部の方には、だいぶ前に一般向けの書籍を出して欲しいとお願いしたのだが、書店展開していないし無理そうだからだ。
 その点、農文協さんがそういった啓発的な内容の本を出された方がいいだろう。

 それから左のものは、林業災害防止協会から発行されているもので、林業従事者が必ず受講する必要があるチェンソー伐木のための特別教育のテキストだが、チェンソーの安全な運用とともにどういった状況で事故が起こるかとか、その対策について書かれている。

 これから、森林資源の活用に取り組もうとする人たちは、ぜひ仲間で購入して皆さんで勉強してほしい。

4yamadukuri1 他には、別記事でも紹介している本で、島崎先生の「山造り承ります」、も読まれたら良いと思う。
 素人による森林整備が、木の駅プロジェクトに発展していった原点の本だ。木の駅の発起人、丹羽さんも島崎塾で教わった一人。島崎先生が筆頭講師だったKOA森林塾は、一般素人が山造りを習って延600名以上を輩出している。
 本書で書かれている初期の受講生たちの出身地を見てもわかる様に日本中から習いにきていて、わたしのかつての仲間も載っている。

 サイト内にある森林塾通信のアーカイブはここ十数年間にわたる活動の報告書にもなっているので、林業以外の一般の方々がどれだけ森林保全に対しての想いを持って実際に活動しているかが理解できるだろう。

 そして、ここの卒業生の中から林業の業界に身を投じた人たちも大勢おり、またその周辺での活動を継続している人たちもたくさん居る。有名になった方々も多いよね。
 わたしは残念ながらKOA森林塾で学ぶことは出来なかったが、山の仲間に森林塾の二期生もいるので昔から活動内容を聞いていた。

 林業に興味を持って居る一般の人たちだったら、それはもう楽しくて仕方がない内容だろう。充実しているのは勿論、同じ志を持った人たちの集まりなので非常にクオリティの高い講習になっている。
 幸い昨年春には、森林塾の通年コースに二日間オブザーバとして夫婦で参加させて頂いたが、それは楽しい二日間だった。そしてその時の受講者の数名とも未だにやりとりさせて頂いて居る。
 
 ただ、今年2017年からは運営母体が変わってしまい、かつての様な多彩な活動が行われていくのかどうか・・・。是非、島崎先生とKOA森林塾が積み重ねて来た知的財産と人的ネットワークを繋いでいって欲しいと思う。
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 と言うのも、今は何十年にも前に植えた木が育って人工林が伐期を迎えているので、放置林も含め、兎に角、伐って材を出すことばかりに注目されがちだが、本来循環サイクルの中では植えて育てることがあり、またどの様な山にしていくのかという、その土地土地にあった山造りがあるからだ。







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 山造りを考えないでP1010956 (1)刈ることばかりでは収奪的な林業となり、後々のツケとなって未来へ残すこととなる。

 こちら島根では植林の歴史が150年程度しかないので、まともな手入れをされていない人工林がほとんどのために、負の遺産になっている様なところが多い。

 水気の多い植えてはいけないところにヒノキの植林をしたものだから、病気になったりして燃やす以外に価値がない林分もたくさんある。
 だから、島根ではエネルギー効率の悪い大型バイオマス発電所を二箇所も作って、山をどんどん丸ハゲにしているのかなあ。

 昔の拡大造林の失敗実績が帳消しにできるしね。昔、島根は静岡に対抗するワサビの一大産地だったそうで、漫画美味しんぼにも載ったくらい。その中でも甘みも風味も良かった匹見の溪ワサビは、どうも拡大造林で全滅したようだ。
 昔はお婆さんが背負いかご一杯山から採ってくると、当時の初任給の1年分の稼ぎになったとか。それがダメになったのは、山に杉ヒノキを植えてからとのこと。

 そして育林の仕方も指導されずに山がどんどん悪くなり、森林組合が行う切り捨て間伐はバタバタ倒すだけなので、山を歩けなくなっている。あとはイノシシやクマさんの天下で、庭先まで出るようになってしまった。
 補助金欲しさに何も考えないで言うこと聞くとこういう事になるという事例ね。

 右上の画像は、水気の多い休火山の麓の林。京大の人工林の密度管理の竹内先生が津和野に来られたときのもの。木は漏脂病のヒノキ。水の多いところでなりがちだそうだ。

 間引くと勿体ないと間伐を一回もしていない林もある。生活道脇の急斜面をヒノキ林にして放置してあるから、表土流出して近いうちに道まで崩落しそうなところもある。
 此れを皆伐後、樹種変換してもヒノキによって土壌が貧困になった林分では斜面保持ができる様なしっかりと根を張った木が育つのだろうか。

 そういった荒れた山が多いが、この「山造り承ります」では、この様になってしまった時代背景、林業現場の状況、信州大学退官後の活動、山の植生の適正な維持のための山造り、また何を指標に間伐するのか、などの林業全体像が理解できる様に警官からの知恵が書かれている。

 今、読んでも面白く、森の健康診断の手法の原典であり木の駅プロジェクトの原点であり未来でもある。
 是非、手に取って読んで欲しい。 

 それからもう一冊!「森を育てる技術」。これは、特殊伐採のお店(自伐型の林業や山仕事に必要な高強度のロープや滑車、ウィンチなどを扱っている)、長野県伊那市のアウトドアショップKさんIMG_7548(1)行った時に、市内の書店に置いてあった。

 手に取って中を開いたら、「ガ〜ン!」面白すぎる〜!といって買ってきた。後になって分かれば、信州大学の林学科卒で、KOA森林塾の最初の方だった。
 やっぱりレベル高いね。

 ところでKOA森林塾も信大も伊那市にあるが、その伊那市は小学校の通信簿が昔から無いとか。今の若いママは困るとか文句言っているらしいけど、その方が良いと思うのだが如何?

 信大の卒業生は他地域から来ていても、此方に残って就職してしまう人も多いらしい。

 伊那の人たちはいい人が多くて礼儀正しいのを実感する。コンビニやスーパーなどのお店に入ってもそうだし、この本を買った本屋さんの店員さんも感じよかったなあ。

 アウトドアショップKさんのスタッフの人たちも、わたしらが島根から行くと帰りに全員で外に出て見えなくなるまで見送ってくれて恐縮するくらい。

 そうそう、社長の木下氏も信大卒。で、会社勤めしていた時には渓流の河原にテントを貼って1年?暮らしながら釣りをして、そこから会社に出勤していたらしい筋金入り。
 自然が近く、景観の良い意心地のよい地方都市に住みたいんだったら伊那市は絶品だね。良いところだよね〜。大自然が近いし、というか周りが全部。そして中央アルプスと南アルプスに挟まれた景色は素晴らしいし人も良い。食べ物も美味しいが、新鮮な海の魚が・・・

 直ぐに話がずれて長くなってしまう。閑話休題。スミマセン。

 この「森を育てる技術」内田健一著 川辺書林ページの二段目がこの本について、三段目が森造り承りますの紹介になっている。藤森先生も書かれている書評はこちら)の帯には以下の様に書かれている。
☆☆理論と実践が乖離する日本の森づくり 新旧の知見とプロの技術を初めて統合。安全・効率的な森林技術の集大成! [市民向け「基礎編」 関係者向け「応用編」]☆☆

 421ページの分厚い本には、林業に関することが全て書かれている。山での歩き方から始まり仕事の仕方から道具について。その道具も昔のものも紹介してあり、昔の人の智慧を持った仕事の仕方も書かれている。いや、凄い。そして現代の高性能林業機械それぞれについての評価も書かれているし、森づくりから調査測量方法、やってはいけない間伐法、掛かり木処理から危険木処理、刈り払い機の使い方からチェンソーワーク。鋸での伐倒方法、そして森で働くことについてプロとボランティアの話など。順番はこの通りではないけれど、こんな本もあるのだとビックリする。

 ただの作業員さんではなくて、少しでも山を良くしたい、森づくりとは? 森林とともに暮らしたいという人は手に入れるべきだろう。
 2007年初版の本なので今では10年経っているが関係ない。わたしが買った島崎先生の森造り承りますの初版は1999年。それから17年経って内田氏の本を読んだ(でいる)。

 これらの本は全林協さんの様な立場の出版社が出せるものではないだろう。林業界の良いも悪いも俯瞰して、個人の強烈な想いと情熱で書かれているからだ。島崎先生の本も然り、経験と智慧を持った人たちの慧眼による現場に即した伝授というものに近いのではなかろうか。

 こういった智恵に基づくものは、個人の想いとそして技術があってこそ。その想いを繋いで行くのにも現場に於けるしゃびょう的な伝授も必要だが、広くに対してはこの様な書籍が必要だろう。
 そもそも自腹を傷めない、そしてお金が掛からないネット情報というものはそれだけのものでしかないからね。

 他には、一般向けの森づくりの体系的な書籍が無い様なので皆さん調べてみてほしい。

 自然を大切にしたいとか、山を綺麗にしてあげたいとか、地球とともにエコに暮らしたいとか、そういった想いを持って林業関係の仕事に就いたとしても、やっていることは林野行政の考え方や、地方行政の都合でやっていることばかり。それもそういった補助金漬けになった事業体が大半を占めていて、理想と現実とはかけ離れて、諦めながら仕事をするか、生きる場所を変えるしかない現実がある。

 しかし、この本ではそれは日本人の未熟さにあり欧州では現場の労働者の地位が高いことについても言及されている。

 今の日本の林業界って客観的に見ても、いい加減だし矜持ももっていないし、向上心に欠ける人たちが多いのが事実。危険な仕事なのに賃金が安いからだけじゃないと思う。現場の職人を大事にしない事業体側と、自分自身を安く考えて諦めてしまっている現場側の人間との両方で構築してしまっているからではないだろうか。

 この様な現実を乗り越えて行くには、今の林業界の延長線上にはないことは誰でも理解できるのではないか。
 わたしは農文協さんが気がついた様に、農と林が不可分となって一般の人たちがレベル高く取り組んで行くことが、林業界の体質改善につながって行くのではと妄想する次第だ。


 下記の本は同じ出版社から発行されている。こんど読んでみようと思うほんだ。

「森づくりの明暗~スウェーデン・オーストリアと日本~ 内田健一著 四六判 309P 1600円(税別) 2006年5月初版」


 我々の様な山仕事もやる一般人(林業専業ではない)の技術レベルや安全管理のレベルが向上して事業体の一般的な作業員さんのレベルを超えていけば、林業事業体や林業業界も変わっていけるのではないかと思う。

 その我々というのはどういった人たちかと言うと、一般企業の仕事や自営業をやってきて、成果を求められて結果を出してきた社会人経験者の事を言っているつもり。社会で食べていくことを経験したが、都会の生活よりも自然環境に恵まれた農山村で地に足をつけて生きていきたいと考えている人間たちのこと。
 それがUIターン者だったり、地域おこし協力隊だったりするが、社会経験が豊富な方が良いと思う。

4chainsowwork その様に社会で揉まれてきた人間としては、林業事業体の経営とか事務職の姿勢とか、現場に対する考え方があまりにも緩すぎる様に見えることが多いからだ(政治と共に、地方のこういった事業体は相似的で、兎に角自浄能力とか克己心が無さ過ぎ)。もっとも、これは林だけの問題ではないのだが。

 だから自然の中で仕事をできると喜んで林業に飛び込んでも辞めてしまう若者が多いわけだ。体力や技術どうこうではなくて、業界のネガティブな波長にいたたまれなくなってしまい自分が其処にいる価値を認めることができなくなることが多いのではないかと思う。

 そこで、自伐型林業であり兼業的森林資源活用などの流れの中で、自分が考える生き方とのマッチングを四苦八苦している人たちがますます増えているのだろう。

 それ故に、先に上げたKOA森林塾の卒業生たちや、各地で同じ様な取り組みをされた方々が切り拓いた道が、この先で今の若者たちの試行錯誤の行く末で繋がって行けば良いなと願う次第だ。

 チェンソーワークは山仕事の一部だけれど、ここに紹介したシステマチックで筋が通った考え方と身体の使い方、そして意識レベルを引き上げる安全への哲学は、仕事の仕方全体に通じるものであり、ひいては生き方にも通じるものであると思う。

 昔は生き方に一本筋が通った長老の様な人がいて、自分の頭が第一のエゴの殻で固まった若者を諌めたり、人間としての生き方の躾をしてくれた場合があるが、今はそういった人も居なくなり、親に自分が一番と育てられた未熟な人間が大人になっているので、生きるための哲学とか美学、生き様とか矜持などを持たない金ばかり中心の人たちが増えて当たり前のことができないし、延いては世の中がどんどんおかしくなっている訳だ。

 当たり前のこと、簡単なことができない人間が難しい仕事をやりとげられる訳がないのがこの世の道理。足元の道具を整理しながら作業をできない人間が、搬出の難しい連携作業が安全に出来るわけもない。
 道具の手入れができない人が自分の身体を管理できるわけもなく、だから道具を見ればその持ち主がどんな人かがわかるという所以。

 そして、自伐とか山造りというのは効率とはかけ離れ、自分中心の人には一見無駄に思える作業の積み重ねが必要で、その動機は思いやりだったり生きとし生けるものへの愛だったりする。

 つまり自分中心とは真逆の、自分が何を差し出せるか、周りを活かすことが出来るかという意識の転換が必要になる。take take ではなくて give give の先で自分も生かせてもらえるということ。
 山がお金にしか見えないのだったら、どの道、長続きしないのだから大怪我をしない内に山から降りた方が本人の幸せだと考えるが如何だろうか。

 農でも林でも、もしかしたら海もそうかもしれないが奉仕的精神で大地や森、そして海の維持を心の中で思って居なかったら、唯の「収奪」でしかないわけで、大昔に緑だった森が砂漠化するようなことと同じ因果を繰り返すことになるだろう。
 今の日本の緑は、我々の先祖たちが山や大地やお日様に手を合わせながら生きてきて残してくれたものだったはず。

 感謝の念を持たない人間たちが増えて、資本主義的経済の下で何も考えずに山で動力をぶん回していたらどうなるのかは自明の理ではないか。
 農とか林は、自分たちが生きていく大地の維持に直接的に関わってくることなので、そういった仕事に関わる人をもっと大事にしないとならないのではと考える。
 トヨタやソフトバンクその他大手の会社の様に莫大な利益を上げている会社が、その利益に対して格安の法人税しか払っていないという話を聞くが、それだったらちゃんと払うものは払っていただき一次産業の方の仕組みづくりをしっかりとしていただきたいと考えるのが普通ではないのか。

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 ただし何事にも躾は大事で、今の様に補助金に集ってのうのうとやっている一次産業の関係者に対してお金でサポートするのではなくて、全体を引き上げられる様な仕組みづくりに資源が回っていく事を強く願う次第だ(いやあ、田舎って上手に立ち回って集(たか)ることが上手い人が肥えるよね。というよりも、依存型の諦めてしまった人たちが多いね〜。だからちゃんと理念を持っていて、やる気のある若者たちがどんどん田舎に移って行くことで、そういった田舎体質を改善していけると良いなあ)。

 僕らの年代だと、家庭内で躾が厳しくて、玄関の履物は揃えるとか、何をやってはいけないとか、人間として生きるのは、などを煩く言われた人が多かったのだが、今はしっかりした家庭でないと躾なんかやらないのかも知れない。
 だから田舎の大人でも躾が出来ていない人が、狡いことや勝手なことをやっていたりする。それじゃあ、若い人たちも希望を持てずに出ていく、という悪循環で過疎が進んだ場合もあるかもしれない。

 そんな躾なんか関係ないという人のために書いておこう。八王子市の保護司をやっていたご夫婦から教えて貰ったのだが、事件を起こす様な子供たちの家は行くと大抵ゴミ溜めみたいになっているとのこと。何でも同じだけど、中と外はリンクしていて相似的になるし、ご縁も同じく似たものが寄る。
 それを変えて行くには自分自身が変わり、行動パターンも変え、そして結果を変えることしか無い様だ。
 因みに工事現場では、6S運動というのがあるそうだ。ネットに載っていたので、そのまま転用させていただく。
・整理(せいり)
・整頓(せいとん)
・清潔(せいけつ)
・清掃(せいそう)
・躾 (しつけ)
・習慣(しゅうかん)
 これは山の現場でも通じると思う。このブログのコメント蘭には、大人に対して躾ってなんで?という意味のコメントが多かったけれど、大人でも躾が出来ていない人が一杯いるのをTVでも観ているのではなかろうか。政治家や経済人、はたまた芸能人には躾が出来ていなかったがために、国民の税金を私費として使っていたり、他人の連れ合いを奪ったりしているでしょ。
 一般的な話をしては、道具を壊しても報告しなかったり、遅刻を平気でしていたり、挨拶をしなかったりとか低レベルな話でもある。

 えっ!挨拶しないのが何でいけないんだって? 山の作業は連携をとる必要がある仕事だから、声かけや合図をしてコミュニケーションが採りながら仕事を進める必要があるわけ。
 時には他人の作業中に近くを通る必要もままある訳で、その時には「自分はここに居る」とか「何をしようとしている」、ということをアピールして次の動作に入る必要があるでしょ。

 それを、何のアクションも無しに、勝手に通って行ったら、作業中の仲間が気づかずにバックホウのブームを振ってくるかも知れないわけじゃない。

 挨拶と言うのは、知らない人でも知っている人にでも、「自分はここにいます。よろしく。」と言うことと、「あなたの存在を認めています。」というアピールでもあるわけだから、社会で生きて行く上でも危険作業を一緒に行なって行く上でも必要なコミュニケーションであるわけね。

 それを自分の狭い考え方で必要ないと言うのならば、危険な山の仕事は無理なんじゃない。ま、山からは受け入れて貰えないよね。例えば、山には色々な生き物が居るわけだけど、自分が此処に居るとアピールしながら入っていかなかったら、出会い頭にクマさんに一発食らうかも知れないしね。マムシに噛まれて散々な目に遭う可能性もあるし・・・
 そういったこと以前に、農山村で挨拶しない人間て相手にされないと思うのだが。

 さて、チェンソーワークを学ぶのに、こういった学ぶ姿勢も書かれているし、具体的な上達法が書かれて居るものに、全林協刊の「小田切師範が語るチェンソー伐木の極意」がある。
何度読んでも面白いし勉強になる。
 その中で、林業に適合する人間性についても書かれている。
 『私は林災防の講師もしていますが、講習に来る人の中には、ミスが多いとか、約束を守れないとか、欠勤がちょっと多いという人が来るわけです。そういう人に、命と引き換えに木を伐るような仕事をしてもらっちゃ、そばにいる人もいい迷惑だし、雇うほうもいい迷惑だから、そこをきちっと守れないようでは、この手の仕事はあなたには無理だよ、とはっきり言いますね。私が特別教育の講師として、この時間教えたことの試験をする場合、パーフェクトの100%を取らないとダメだと言います。この類の試験は普通は70点以上取れれば合格になるものが多いけれど、残った30点の所に命に関わるようなミスがあったらどうします。だから、私は100点取らないと、現場でチェンソーを使って木を伐るっていうのは無理だと言うんです。私は架線の講師もしますが、100点取らないとダメ、完璧でないとダメなんですよ。一つのミスが、たくさんの人の命に関わるから、相手にケガをさせるかもしれない。場合によっては、殺しちゃうかもしれない。そういう人間を指導した講師の方も悪いと思うんです。死んだりケガするのは、そりゃああんたの勝手だからいいかもしれないけれど、私は嫌だ。あんたと同じ仲間にはなりたくない。だから100点取って欲しい。パーフェクトでなくちゃダメだ。と言います。』
 『私生活や家庭などが乱れ、きちんと自己コントロールができない人は、自然界を相手にする仕事はムリですよ。林業だけでなく、漁業も同じです。コントロールできていない人は事故もケガもあります。事故がついてきますよ。』
 『もともと、チェーンソー作業に向いている人とそうでない人がいるような気がします。上達する人は注意力や観察力が鋭いです。伸び悩む人は、繊細さ、注意力、観察力に欠ける、上達する人とは逆ですね。チェーンソーマンは、木の倒れる原理をよく理解しなければいけません。木の重さで木は折れるという認識をきっちりと持つことです。折るのではなく切るのだと勘違いしたら、いくら伐倒をやってもうまくなりません。うまくなれないだけでなく、周囲も怖くて見ていられません。』


 だから、山を綺麗にしたいとか、木がかわいそうだから手入れをしたいという動機は素晴らしい。そういう想いで山仕事に携わりたい人たちが、食べることだけでも出来て、そういったヴィジョンを実現できる仕事が創り出せたらば、世の中は良くなって行くだろう。

 果たしてそういった人たちを活かしていける力が林業界にあるのかどうか。なければ農の側からスキルアップをしていき、自分たちが副業的に林業をおこなうことで林業界に委託せずに自ら森林経営をして理想の山造りをしていけば良いのではないか。

 そうすれば田畑に流れ出てくる山水も腐葉土もより質が高いものになり良質な作物が作れる事になるだろう。自分たちの手のうちにコントロール権を持つには、農でも林でも食べられるくらいのスキルと道具を揃えていけば良いのではないだろうか。

 うちの協議会は個人協議会みたいな小さなものだが、ロープウィンチから林内作業車、ロープ架線や土佐の森軽架線もあり、他にも伐採搬出道具は一通り揃っている(人力でできるものも揃っている)。またチェンソー製材機もあるので、山の現場で板材角材が作れる。

 そして会員でもある協力隊の一人は山に優しい壊れない路づくりができる様になっているので、水源がある山だったら(水源から水を引くためのパイプも沢山持っている)、道を付けて平地を作り、太い木を切って搬出して来て、それを製材して小屋くらいは建てられる。

 他には、信州のモキ製作所の竹(薪兼用)ボイラーも薪ストーブもあり、鋳物の竃から何からあるので、お湯の供給や暖房、調理などは森林資源の燃料で生活できる。
 あとは、12V系か24V系で太陽光発電から通信機器までの電源確保をすれば良いので、最低限の生活はできる。そして、近い将来にはもっと洗練されたスタンドアロンの電源供給システムが当たり前になっていくだろう。このリンクは今すぐにでもできる一例だが、もっとレベルの高いテクノロジーは実現している様なので今後に期待。

 話は戻って、こういった山仕事のための道具類は持っていても安全に使いこなせなければならない。知らない人は安易に考えるが、重たい木を切るときの見えないけれど重たい圧力は、素直にその作業の危険度を表している。

 林に関わるスキルは安全管理から始まるし、それが出来ない人もいるので向き不向きもある。怪我をする人は何回も懲りずにやるし、事故をやる人間はいつも同じ、というパターンがある。
 それは中身の反影でしかないのだが、言ってもわからない人はわからない。自伐の場合には自己責任でやればいいのだが、周りにそういう人がいたら自伐の自由を理由(事業体だと自分で決められないからね)に仲間にしない方がいいだろう。
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