皆さんは、山仕事のときにどんなロープを使っていらっしゃるでしょうか? 勿論、山仕事9784881383247-2と言っても様々ですから、用途によって違いますよね。ここでは、自伐型の林業、木の駅プロジェクト、薪ストーブ用の薪材採集などなど、プロ以外の方々の小さい林業、山仕事のお役に立つかも知れない話を書いてみます。


 四年くらい前に、全林協さんの本、“New自伐型林業のすすめ”に書いた小さな林業のための搬出技術の項のもっと突っ込んだ話、高強度の繊維ロープについて本記事でフィーチャーしてみます。


 神奈川から島根に移住した2011年より、“小さな林業で山を守ろう”、をテーマに匹見・縄文之森協議会を立ち上げて一般市民向けの山仕事の技術講習を行なっており、林内作業車&土佐の森軽架線からポータブルなPCウィンチ各種、ロープ架線など様々な機材が揃っています。

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 そういった活動の中で、“New自伐型林業のすすめ”にも書きましたPCウィンチや、高強度の繊維ロープの活用が、新しく参入する方々が集材・搬出を取り組む際の敷居が低いので、此れらの運用をメインに講習を行なっています。



 また繊維ロープを使ったシステムは、安全性も比較的高い上に、適正なシステムを組めば、女性一人でも長尺材を搬出できる様になります。


IMG_1157(1) 右上画像は、全林研さんの助成によって2017年の秋に行なった“女性のためのロープワーク研修”の一コマです。


 元口が30cm程、10m強の長さの檜をPCW3000のウィンチを使って2倍力のシステムの地引きで、山仕事は未経験だけど林業関係の女性が一人で集材しています。



 この時の講習では、木に登らないで樹上にロープを掛ける方法各種や、小型滑車を使った倍力(2倍力〜9倍力で綱引きをやった)のセットの仕方、掛かり木の処理方法、PCウィンチによる搬出、メインロープとプルージックループを使った、急斜面の登攀、下降時の安全確保法などを行ないました。


 この様に初めて集材を経験した女性でも太くて長い材を動かすことができますけれど、それでも基本的な安全管理の知識がないと危ない要素は沢山あります。

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 当協議会は、樹上伐採(特殊伐採)の優れた道具、用具類を扱う長野県伊那市のアウトドアショップKさんの協力を頂き、PCウィンチロープ関連用品の現場での実践的活用法のテストや応用に取り組んでいます。


 また、樹上伐採のエキスパートが揃っているアウトドアショップKさんのアドバイスは、小さな林業や薪材採集のに関して新鮮な知見を得るものであり、自分のステージを押し上げてくれるものであります。

 自分的な考えでは、チェンソーも同様ですが、安い販売者ばかりを探すのではなく、メンテナンスと智慧付きのお店とお付き合いした方が、人間関係など、そこで広がる世界はお金に代えられない価値があるものではないかと思っています。


 こんな話を後述する全林協さんの手道具の本にも書きました。職人仕事の道具を、ネット上の安い販売者“だけ”から買っていては、自分自身の世界が広がりません。


 もちろん、皆さんの周りが経験も豊かな人格者のエキスパート揃いだったらそれも良いかも知れませんけれど、周りに本物の人が居ないのだったら、また自分で道具を工夫して作り出す位の智慧と経験がないのだったら、職人向けの道具を売っている販売者を大事にして互いに育て合うことが必要ではないでしょうか。


 前述の本では、日本の職人と鍛冶屋とのそういったせめぎ合いのなかで手仕事のレベルを高め合って来た話を書きました。道具を作る人、売る人たちは、レベルの高い顧客の要求に応えながら自分自身の技術や知識を高め、道具を供給するネットワークを広げていくわけです。


 そうやって創り上げられて来た精神的土壌を文化といい、今はそういった質の高い日本古来の文化が崩壊した時代というのが現実です。素人が素人に売っているだけ・・・

 お金だけが基軸のそんな粗い文化に染まった人たちには山造りという国土や自分たちが住まわせて貰っている大地を守る職人的な仕事はできないでしょうね。


 当協議会は、機材の販売には関与しておりません(受講者に何を使えば良いかと言われるので、後述のリストを作って渡しています)けれど、樹上伐採にも使用される優れた道具類を適正に運用することで自伐型の林業や薪材の採集において安全性と効率を高めることと思い、本やオフィシャルサイト、そしてこのブログでオススメしている次第です。



【ロープの大きな特性2種】基本的な話

 例えば、岸壁に岩茸を採りに行く場合はクライムダウンだから懸垂下降をする時は良しとして、登り返しの際に、ロープのテンションが緩んでいる時にもし滑落したらどうでしょう。IMG_2410 (1)


 100kgのものが1m自由落下すると止まった時に掛かる瞬間荷重は1000kgになると言います。すると、50kgの体重の人が1m墜落して止まると500kg!


 だから、クライミング用(あっ、ツリークライミング用でないですよ。山用のものの話)のロープはその衝撃を和らげるために30%以上も伸びる構造になっています。これをダイナミックロープという呼び方をします。

(右画像はイメイジです:この時は群馬の山奥にギョウジャニンニクを採りに沢沿いを遡行している時のこと、6〜7m程度の下降でしたが、垂直の壁を確保器具なし、8mmロープを立木に掛けて降りて行った女性二人の画像です。勿論、順手でロープを握っているだけでは垂直の壁を安全に下降ができません。でも、足さえ壁に着けばごぼう握りというフリクションを使った握り方で安全に降りられます。勿論、こういった確保器具がない場合には、肩絡み懸垂下降という方法もあります。わたし?わたしは臆病なので、保険を掛けてプルージックループを使って右手の手首に通し、そしてゴボウ握りでおりました....)


 反して、木を倒す時に引いたり、また伐採した木を曳くのにロープが伸びる様では力が働かずに労力が掛かります。ですから、伸縮率が数%の伸びないロープを使います。これをスタティックロープ(リギングロープを含む)と言います。


 そういった知識なしに、伸びるロープを使っていて重たい材を引っ張り、もしその時に切れたらどうでしょう。伸びることで溜まっていた力が一気に放出されればロープだって痛いです。シャックルなどの金具が付いていたらシリアスな事故につながります。


 これがワイヤーロープだったら死亡事故につながることが多いですよね。巻きグセやキンクが入ったワイヤーロープが切れた時には、周囲を広範囲に破壊しながら飛んでいきますから。

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 わたしも18mmの主索が破断して、危うく〇〇そうになったことがあります。ワイヤーが切れて事故になるケースは結構あります。

 なんでかと言うと、大抵は自分の道具ではないので、油を染みさせたりちゃんとしたメンテナンスをしていない使い捨てみたいな使い方をしているからです。


 だから、芯線が飛び出ていたりして危なかったり、扱いが難しいワイヤーロープではなくて、高強度の繊維ロープを一般の人たちに勧めるのは理解して頂けるでしょう。


 詳しく後述しますが、ロープは軽いこと、些細な怪我に繋がりにくいこと、撤収の際の片付け・収納がロープバッグを使えば超楽なことなどがあり、体力のない初心者でも扱いが楽ですから、ひいては安全性の確保に繋がります。


 その上、ここで紹介している高強度の繊維ロープは、10mmで破断強度が2.8トンというタフなロープです。ですから、チルホール牽引の延長線上に使えますし、動力ウィンチにも使用できます。


 勿論のこと、地面や岩、木肌を擦ってしまう様なシチュエーションではワイヤーしかあり得ません。が、前述のロープであれば強度がありますから、擦れて傷みそうなところだけワイヤーに繋いでコンビで使うという手もあります。


IMG_6587 (1) さて、そのワイヤーの件ですが、脱輪・スタック車両の牽引の際も同様です。チルホールで牽引する際に車両側のフックが千切れたらどうなるでしょう。

 それも、途中にリダイレクト(方向転換)のアンカーが設置出来ない様な場所で直引きしていたら作業者に向かってワイヤーやフックなどの金属類が飛んできます。それで事故が多いんですね。


 どうしても、そんな車両レスキューを行わなければいけないケースでは、ワイヤーロープの中間点に目立つ色のジャケットなどをぶら下げるという知恵もあります。飛んで来るワイヤー自体を認識するのは非常に難しいけれど、ジャケットが飛んだら飛び退くか?体の急所を守る体勢をとるためです。


 わたしだったら、デリカには(チルホールやエアジャッキなどの脱出道具以外にも)野宿用の座布団や毛布を積んであるので、重たい其れ等を掛けますね。多少のバッファにはなるでしょうし・・・

 これは、ワイヤーロープ、繊維ロープに関わらず、レスキューに使う場合の基本的智恵ですね。

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【ロープウィンチ用のロープについて】

 ところで、PCウィンチ(カナダ製)というロープを摩擦で牽引するエンジンウィンチがあります。大分広まってきたので使っている人たちが増えましたが、売っている人たちには実際の現場のことをあまり知らない人が多いかもしれません。


 使い方は簡単に見えますから、素人(プロでも知らない人は知らないよね)が、素人に教えているケースを此方の地域でもよく聞きます。が、教えている本人たちは聞きかじりでしかないのでかなり危ないことをやっています。


 聞いた話では、このウィンチで材を牽引していて突然ロープが破断。腕を複雑骨折したそうです。また、キャプスタンドラムとロープの間に指を挟まれて切断したとか。

 ロープウィンチは、スムーズに巻けている時は良いですが、障害物でテンションがウネった時に乱巻きが起きたり、長尺材を上げて来て、材の頭を降ろそうとする際に、材の重量バランスが変化することで突然荷重が掛かってロープが急激にドラム側に引き戻されることがあります。


 また、高荷重を掛けて牽引しながら巻き取ったロープは捩れが入っていますから、使用後にロープをしごいて伸ばし、ストランドをニュートラルな状態に戻しておかないと、上記の様なことが発生した場合に現象が増幅してしまいます。その様な現象に対しての処置方法を知らない人は、結構シリアスな事故につながってしまう可能性があります。IMG_3680 (2)


 様々なケースの現場作業を知らない販売者だと、ただロープを持つところをドラムから離せとだけしか教えられません。

 ここには書ききれないケースワークが他にもあります。



 また、アウトドアショップKさんの様に、実際に現場をやって来た人たちが販売しているところでは、機能が足りない部分や未成熟な部分に対しての補完的なノウハウを持っています。



 例えばツリーワークで重たい材をウィンチングで空中移動させている時に振れて戻ろうとした時。または素人がPCウィンチで掛かり木処理をしていて、外した途端に材がバウンドして斜面を下に走った時。

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 そういった場合には、逆戻りを防止する機能があると機材を壊したり、作業者が危険に晒されることを防ぐことができます。


 そういったところまで予想して対策を採れるかどうかが事故に繋がるかどうかの境目ですよね。要するに想像力の問題ですが、これは経験値によって異なってきます。


 大体、牽引時に突然ロープが切れるのは、熱に強いポリエステルWブレードの専用ロープを使っていないか、または抵抗が大きい材(重たいだけでなく、地面の摩擦や切り株などの障害物)を過負荷で無理に引っ張っているために、ドラムの巻き取りだけが空回りしてロープが動かないので、摩擦熱でロープが溶断してしまうからです。


 牽引システム自体の構築が間違っているんですね。過負荷になりそうならば、即時2倍力,3倍力のシステムにするとか、それともアンカーを樹上の高ところに採ってヘッドアップして抵抗を減らすなどの対応をすれば良いわけです。IMG_6601 (1)



【現場の智慧】

 その様なことは昔から山の現場で作業している人たちには当たり前のメソッドですが、近年の林業は重機でなんでも作業してしまうので、力づくで作業をすることに馴れてしまっていることが懸念されます。


 また、講習会をやっていて森林組合の人に聞いても、この様な木と一対一で作業する様なことは殆どやらないと言われます。


 そんなエアポケットの様な状況の中では、経験と智慧を身につけた現場のオッさんに教わる機会、、、それは技術の伝達以上に心構えとか考え方など、現場で即時、解が得られない様な状況に立ち向かう際の突破力の凄さ、、、を目の当たりにする体験を得られない訳です。


 見て覚える、身体を使って染み込ませる、というのは、右脳的イメイジを身体を無意識(表層意識の外、言語外?)に作動させるプログラムして反射的に動けるとか瞬時に判断ができるという能力に繋がっていきます。


 Web上でいくら情報を探しても動画を観ても、細かいところまでは分かりませんから、私の知る限りの人たちでネットで調べて、そういった本質的なところに辿り着いている人たちは(今までも自分で工夫してやって来ていて少しのヒントで理解してしまい様な)ホンの一握りの人だけで、あとはツモリになっているだけに見受けられます。ま、仕事の仕方を観ていれば判りますよね。IMG_0027 (1)


 つまり温故知新という概念もなく、与えられる情報だけで、“頭だけで”判断する癖がついてしまっているのかもしれませんね。


 そういうタイプの人たちに現場において指示しても、切磋に状況を把握して動くどころか、自分なりに“考えてから”やっと動き出す、が、、、指示と違う事をやる、という人が多いことを感じます(また、そんな話ばかり聞きます)。


 中には、やる前から「なんでなんだ?」、と抵抗する様な我が強いばかりで、結果何もできない人間も少なからず居て驚くやら往生するやらですね。


 山の仕事は危険作業なので自分自身が被害者になるだけでなく、ちょっと間違えば加害者になってしまう可能性が高い仕事です。危険な状況が発生して怒鳴られて、それに抵抗したり、考えてから納得したら動くなんて人間は他の迷惑でしかありません。P1060525 (1)


 心がけは作業時だけでなく生活態度や生きる姿勢などにも滲み出ますが、わたしの知っている限りの山師でまともな仕事をしている方々は、皆さん素直な方で、幾つになっても興味を失わずに学ぶ心を持っている人たちですね。


 道具もよく手入れされているし、生活環境も整えられています(右画像は知り合いの山師のオッさんの炭焼き小屋の周り)。住まいの内も外も大抵綺麗にされています。新しく山仕事の世界に参入したい人はこういう点に留意して参考にして欲しいと思います。


 さて、その様な立派な人達をあちこちで見かける一般市民による山仕事ですが、それでも道具が進歩しているから、以前よりも安全に取り組める様になっているのも事実です。



【素人こそ良い道具を使う方がよい】

 ただ、道具は適正に使わないと却って危ないことを理解できるでしょう。また、多少のコストは掛けないと良い道具を手にすることはできません。でも、此方の地方では、どうしても上っ面だけパクって同じ様な結果を得ようとする傾向が見受けられます。


 でも、それでは本質的なところに辿り着けないために、結局長続きせずに無駄なこととなってしまいます。そしてその裏には、其れらの道具が開発されたバックグラウンドに対してのリスペクトがないという精神性があるために、何時まで経ってもレベルの低い仕事しかできない、という精神性とその結果が付き纏います。


 何事も職人仕事は真似から入りますけれど、身につけたものを何れだけ自分のものとして昇華させられるかどうかが仕事の質に現れるのだと思われます。

 わたしもお金がないので、道具は自分で作る(改造する)ということを子供の時から散々やってきていますけれど、自分の内側から閃くものを具現化していくのでなければ、何も自分の糧にはならないのが道理でしょう。


 どうせやるならば、自分の世界を確立できるくらいの事をやれば良いのに、いつも人真似ばかりなので自立した考え方ができないのです。そういった人が多ければ、地域の自立や地域自治、地方分権など成り立たないのも道理ですよね。


 ですから、自分的には山仕事の様な、自分で判断する、右脳左脳を全開で機能させて危険な作業を責任もって成し遂げるなどの要素が高い現場を若い人たちが経験して、自然との共生できる環境を作っていくことが、地方の依存的な体質改善に将来的につながっていくのではないかと考えます。


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 半農半林の様な自分たちで何もかも自立できる様な循環的な生き方は、自己確立を促し、よって他者(他の存在:自然界全てのもの)へのリスペクトの意識を高め、またコミュニティの中の有機的ネットワークづくりにも効果的でしょう。


 共依存ではなく、多様に存在するものに対して相手を認めることが出来る様な、自己を確立したもの同士がリスペクトをもって弱者(虫や植物なども)に対しても接することが出来るのならば、1万年以上も平和だったとされている縄文時代の様な精神性が高い世界を取り戻せるのではないでしょうか。


 自分が、2011年に立ち上げた“匹見・縄文之森協議会”の精神の根幹です。

 右画像は、2011年の益田市匹見町の山崎遺跡の発掘風景を撮影したものです。匹見川の川辺の高いところが8400年前、そして低い方で発掘しているところが3000年前の遺跡跡です。

 同時に発掘していました、、、が、その後、近くのトンネルを作る際の掘削ででた土砂と岩石で全て埋められヘリポートになってしまいました〜。あり得ん・・・!?


 さて、その為には、まずは良い道具。道具を選ぶ目も必要です。自分は縁あって樹上伐採を行う人たち向けに質の高い道具を販売している長野県伊那市のアウトドアショップKさんにお世話になっています。IMG_1220(1)

 

 ご存知の様に樹上伐採は危険な作業ですから、関わっている方々の意識が非常に高く、また智慧深く、そして先進的です。

 他の記事(長野市で開催された国際ウッドフェアに行った時の話)に書きましたが、現場仕事以外でもものすごく丁寧な仕事をしますので驚くこと度々です。


 また、現場作業でも自分が何をしようとしているのか端的に周りにわかる様に伝えること、また作業の前後には声を仲間にかけ合図をしつつ作業を進めています。


 自分勝手に目先の作業を進めることはありません。常に全体を俯瞰しながら、自分のやることの影響を認識してから仕事を進めます。


 これって、人任せ(相手はわたしのやろうとしていることを理解してくれているだろうという依存的思い込み)ではなくて、各自が自立して考え(安全に結果を出す自分の手法を確立している)を持っていながら、互いに確認をしつつ連携をしつつ全体として有機的に作業を進めるという理想的なフォーメンションだと思います。


 話は飛びますが、縄文時代の遺跡から集落内の住みやすい場所に年寄りや障害者(怪我で身体が不自由になった人たち)を住まわせていたことが判るそうです。


 縄文時代の精神性が非常に高かったことは学術的にも分かっていますが、その生活の中ではイノシシなどの狩もあったので、今みたいな鉄砲がない狩猟方法では、樹上伐採のチームと同じ様な連携作業が必要だったことでしょう。


 縄文時代のコミュニティの精神は、樹上伐採の連携作業にも繋がっているかも知れません。アウトドアショップKの木下氏は、講習会時にこの様な内容のことを言います。


 「経験が多いとか、技術が上とか、そんなことは関係なしに、自分が他人の作業を見ていて危ないなと思ったら直ぐに声を上げて相手や周りに伝える様に。」、「人任せにしない。どちらが上とか下とか無いんだから、作業者自身が気がつかないこともある。だから、気がついた事は声に出してから作業をすること!」


 これは、我々一般市民が仲間と作業をする上で安全管理のために非常に参考になることですね。機会がありましたら遠くからでも樹上伐採の現場を見学させてもらうと勉強になります。

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 そういった人たちの使う道具は個々に精査されているものであるのは当然ですが、それ以前に安全基準の厳しい欧米でメーカーが責任をもってリリースしているものなので、機能的かつ信頼度の高いものとなっているわけですね。


 また、アウトドアショップKさんでは、独自にロープや機材の強度試験もやっています。ロープも結んだ時にどうなるかという試験を試験場に持ち込んでデータを採ったりしています。


 また、新しい機器を開発するに際しても一年近く現場で使い、現場の声をリサーチしてより良いものに仕上げる様な姿勢がみられます。これは、社長の木下氏が、長野県の山岳救助隊の隊員でレスキュー経験が豊富な為に安全に関して非常に厳しい要求を持っているからでしょう。


 自分はその様な世界には程遠いレベルのものですけれども、樹上伐採のためのロープや道具類は、地面の上で使っても非常に優れたものだと思いましたので自分で何年も使ってみた結果をシェアしています。978-4-88138-203-5


 もう十年以上前になりますが、全林協さんから発行されている森と暮らすシリーズのNo.2で手道具の本の「道具と安全」の項にも書きました(ペンネーム)けれど、素人こそ良い道具を使った方が良いということです。


 道具は作り手の智慧が籠っています。でも、素人はそれが分かるところまで辿り着くには経験を深く積まないと分かりませんよね。

 でも、道具を大事にして使いこなせる様になっていくと、そこに広がる智慧の世界に参入していける様になります。

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 また、道具を大事するというリスペクトの心は、作業や仲間に対しても丁寧に接することができるので安全性に繋がっていきます。


 それを自分たちは素人だから安いもので良いという考え方では、それなりの性能とパクリの機能しか経験できないためにステージが上がらないんですね。

 そういう考え方では一生本物には出会えないでしょう。


 職人さんたちが安い道具でもそれなりの仕事ができるのは、既にステージが上がっているからです。みな自分なりに使いやすく改造したりします。または道具を作るための治具も自分で作ります。


 その様な奥の深い世界に対し、自分たちの意思で山に関わろうとしているのならば道具には拘った方が世界が広がります。また、道具を工夫したり、肝心な部分は質の良い本物を使うことで自分自身の心が豊かになっていくことを感じられるでしょう。


 何れだけお役に立つかどうか分かりませんが、此処では一般の人たちが森林資源活用を行う際に、そういったシステム構築に役に立つアイテムのリストを4種類ほどオフィシャルサイト(放置したままでスミマセン...)のページにリンクを張りましたので、興味がある人は覗いて見てください。



IMG_3801(1)【ロープごとで違う特性】

 近年、林業事業体でも化繊ロープを活用する様になってきました。スイングヤーダなどの巻き取り用が殆どでしょう。大きなドラムに巻き取る使い方です。


 また、林業関係の資材店でも同様のものが売られています。ダイニーマという高強度の素材を使ったロープです。林業機械展にも出展されています。


 うちもこのダイニーマロープは持っていて、右下画像の右端の青いものがそうです。サムソンのアムスティールブルーという商品名で、9mmロープで8.9トンの破断強度を持っています。とても軽く、そしてワイヤーよりも強いですね。で、アムスティールブルーは柔らかいです。6IMG_4106


 このダイニーマ素材のロープを資材店でご覧になったことがあるでしょうか。多分、添付のマニュアルには、ロープエンドはスプライスでアイ(輪っか)を編んで作る様に指示されていると思います。



 これは、結んでアイを作ると強度が弱くなるからですね。うちがお世話になっている長野県伊那市の特殊伐採(樹上伐採)の用品販売と講習を行うアウトドアショップKさんでは、様々な用品の信頼度を確かめるために強度テストを行うのが常ですが、このダイニーマ製のロープをを東京の舞台装置を扱う会社さんに頼まれて強度テストをしたそうです。


 そうしましたら、破断強度が3トンのスペックのロープを結んでから荷重を掛けたところ、1.3トンで切れた!そうです。つまり、このダイニーマ素材のロープはドラムでの巻き取り以外の用途には向かないと思われます。

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 自分の経験としては、このアムスティールブルーロープの途中に金属製のロープクランプ、ちょうどワイヤーで使うキトークリップと同じ機能のもの(たしか、ペツルのレスキューセンダーだったかと)を取り付けて750kg引きのチルホールで引いたところ、ロープの途中のところが溶けました。


 そして、ロープクランプ側にも青い素材がこびり付きました。つまり高負荷が掛かった状態で滑ると熱に変換されてロープが溶けるんですね。IMG_3691(1)


 これはダイニーマで編んだロープが滑りやすい性格をもっているからだと思います。やっていませんが、メインロープの牽引点を、プルージック用のロープでフリクションノットを使っても滑りやすいでしょう。


 ですから、ロープの素性を知って使い分ける必要がありますし、またワイヤーロープと適材適所で使って行くと、最新の高強度繊維ロープの活用は作業を楽にしてくれること必至です。



 作業が楽ということは、我々(労災の対象にならない)一般人にとっては安全性の確保に直結しますから、多少のお金を掛けてでも良いものを使った方が良いとわたしは考えています。



【掛かり木処理などに使えるタフなロープ】

 それで、どんなものを使っているかというと、掛かり木処理とちょっとしたものにはシリウス500という銘柄の10mmロープを使っています。この太さならば50m位持っても、そんなに大変なボリュームにならないからです。そして、この長さならば距離がある木でも3倍力の牽引システムを組めます。


 そして美点はなんと言っても木との擦れなどに強いことです。理由は下記に紹介した別サイトのリンクページ(PDFファイルが開きます)に詳しく書いてあります。良かったら読んでください。そうそう、シリウス500の10mmロープは、破断強度は2.8トンのスペックを持っているので、動力やチルホールでも牽引にも耐えられます。

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 そして安い。ホームセンターで売っている中で一番こういった用途に使いやすい金剛打ちクレモナロープの中の12mmのもの(m辺り300円)よりも若干高いだけなんですから(金剛打ち9mmはm当たり200円だが、人力程度が精々の強さ)。あ、シリウス500の10mmは、352円/m(税込)ですね。

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 それに、クレモナの12mmは使い込んでいくと編みがゆるくなるのでどんどん太くなり、束ねた時のボリュームが大きくて持ち運びが面倒ですね。


 その点、自分が気に入っているこのシリウス500の10mmロープは、32ストランドで編んであるためか、ボリュームが小さいままなのでコンパクトに運べます。そして木肌との擦れに強いので掛かり木の処理にはホント重宝です。


 上画像のクレモナ12mmは、たしか22m長のもの。シリウス500は、60mのものを若干切って使っていて50mちょっと。バッグに入っていて分かりにくいでしょうけれど、長くなるほどシリウスはコンパクトに収まります。

 右画像にあります様に、10mmと12mmの差以上にクレモナの方が太いです。重さは、シリウス500の重さの仕様は71g/m。クレモナは分かりませんが、計ってみると大凡63g/mでしたが、体重計に載せただけなので数値に信頼度はありません。


 ただし、シリウス500は、32ストランドのためか、一般的なスタティックロープにある24ストランドのものと比較して、被覆となるシース(外皮)が硬目なので、高負荷で材の重さに負ける様なシチュエーションでドラムを空回りさせると、PCウィンチのアルミ製キャプスタンドラムが削れます。IMG_1770(1)




 この様なケースでは、PCW3000だと力が弱いのでエンジンストップしますけれど、PCW5000の場合には、高負荷でロープは動かず、ドラムは回るとなる場合があるために、ロープの接地面がねずみ色になります(画像はなっていません。)。


 これはロープがアルミコーティングされてしまったことになりますから、ますます滑りやすくなってしまい、しまいには高熱になりロープの溶断に繋がる事象なので、絶対に避けなければなりません。

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 そうなったら、一生懸命洗剤をつけて洗濯するんですね。でも、全部は落ちきれないので、そのロープはその部分を切断して別用途に使った方が良いでしょう。


 右はシリウス500の10mmです。写真では一見綺麗ですが実際には泥や木のヤニでかなり汚れています(アルミコーティングはされていません)。

 掛かり木の処理や牽引でも使っていますから、ツリーワークの人たちよりも汚れが激しいでしょう。


 左画像が最初の水洗い。右が2度目の水洗いです。この後に洗剤で洗います。

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 この洗濯機は40リットルのものなので、12mmの100mロープの洗濯はちょっと厳しいです。写真の10mm50m強のものでも同じですが、洗濯機が回っている時に手で入れ替えて全体的に洗える様に補助しないと、大物洗いのモードであっても、全体に回転しないで同じところだけ回っています。


 この画像では分かり難いですが、ロープはチェーンノットで結んであります。出来杉計画のサイトでは大先輩の梶谷さんがWチェーンノットで洗うと良いと書かれていましたので検索してみてください。


 因みにシリウス500もスプライスが可能となっています。が、シースやコアの埋め込みやテーパーの長さのバランスが異なってくるので試行錯誤するしかないとか。いあ〜、24ストランドでも大変なのに32ストランドのスプライスは大変だし、力も要るでしょうね。


 以下、オフィシャルサイトのページのコピペです。興味がある方は、取り敢えずお知らせのページの各リンクを開いてみてください。本記事は、後日また少しずつ更新していきましょう。



【リンクページのリストへ】

 以下、自伐林業への道のサイトのページのコピペです。

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・2018/9:お知らせのページに情報追加しました。自伐型、木の駅、薪材採集の方々に役に立つと思われる高強度のロープシステムについての様々な情報です。IMG_3758 (1)


 自分的には、繊維ロープを活用した方が、ワイヤーロープよりも楽なことが多いので、こういったシステムを使っています。


  また、破断した時にはロープの方がまだ安全でしょう(勿論比較論です)。


 そして、一番違うのは、片付けですね。長く重たく、そしてキンクがついたワイヤーを片付けるのは時間と手間と力が必要ですが、汚れたロープでも右画像(14mm100m)の様に現場でそのままスルスルとバッグにしまうだけ。

 ロープが汚れていなければ肩越しに、またはウェストにカラビナを付けてそこに通してバッグへ送るだけ。超楽です。


 あと片付けでだけでなく、軽架線として張る際にはロープバッグを背負って両手はフリーで、そのまま目標の先柱に向かって一直線にラインをとって歩いていけば良いだけ。設置も楽でしょう?


 そして、ここにアップした10mmロープの3倍力システムは、ハンドウィンチのプラロックがあれば、チルホールは要らなくなります。


 ましてや、掛かり木が発生してから、手の届く範囲で牽引点を設置してチルホールで引いても重たいばかりで労力の割には報われません。IMG_8501(1)


 その場合には、スローイングノットなどのロープを投げる技や、スローラインを投げての樹上の先の方に牽引点を作れば、人力+3倍力システムでも効果が高いものです。ハシゴも要らないですしね。なので機動的かつ荷物も少なくて済みます。



  当協議会が行うこういったロープワークによる掛かり木処理の講習では、様々な手法をお伝えしていますが、場合によっては5mとか8mの伸縮竿も使い、ありと凡ゆる掛かり木処理の方法が体験できます。



 右の伸縮竿は伸ばすと8m。先端に特殊なアタッチメントをつくり、枝が多い檜でも幹にぐるっとスローラインを回して一発で掛けられる様にしたもの。

 枝が張った9m樹上にロープを“回せ”ます。


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 どうしても外れなければPCウィンチで引っ張って仕舞えばそれだけです。


 いざとなれば、こんな大きなパチンコもありますしね。




 その様な作業の根幹は、如何に樹上高くにロープを回すことができるかどうか。また、ロープが強く伸び率が少なければ、その先にチルホールのワイヤーを接続して使っても、低いところに牽引点を作るよりも効果的でレバーを漕ぐ力も少なくて済みます。


 事業体に属さない我々一般人は、如何に楽に安全に作業を行うかが第一義だと思うのですが如何でしょうか。


 道具がなければ現地調達でもなんとかしますが、道具があれば楽に処理できるのも現実。それにはコンパクトで信頼でき、そして実効的な道具が良いですね。


 少しの道具で、元玉伐りの様な危険作業をしなくて済むのならば、長い目で見てお得だと思うのですが如何でしょうか。