【ジップラインとは?:洪水の多い時代のレスキューにも繋がるアクティビティ用架線技術・・・】
 ジップラインは、我々の様に民間人が行う森林資源活用の際に使う軽架線と同様にして設置する遊び用の架線張りのことですね。本格的なものは、リゾートなどで空を滑走するアクティビティとして結構流行っている様です。
 また、そういった本格的な施設を作ってくれる業者さんもあります。

 我々は、木と木の間に高強度の繊維ロープや鉄のワイヤーロープを張って重たい材(丸太や伐採木全幹)をウィンチで動かして集材を行なっていますから小規模なものはお馴染みです。

 また、ワイヤーで軽架線が張れれば、山奥に大人の秘密基地を作る際に、道路が入れられないところでも、重たい道具や荷物を吊り上げられます。業界が作るお仕着せのアウトドア遊びを卒業して、マジにやる自然との共生生活をしたい人には必須の技術でしょう。って、ホントかなぁ。
某お寺向けスピードライン作業システム提案














 此方の図は、樹上伐採の際の説明図。切った枝をロープでコントロールしながら降ろすので、ジップラインとはちょっと違いますが、ロープやワイヤーをテンション掛けて張るというところは似ているかもしれません。

 この場合と同じ様に、木と木の間に張った架線にプーリー(滑車)を設置して、それにぶら下がって滑走する遊びがジップラインです。ただの滑走が、今では随分洒落た名称になっているんですね。

 が、傾斜が強いと速度が出すぎますし、その様な状況でコントロールラインを設置せずに滑走をしたら着地点で大事故につながります。
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 だから、最後はゆっくりと着地できる様にスピードが殺せるラインの張り方が大事でしょう。
 でも、木と木の間で弛み過ぎのラインを張っても滑走というレベルは生み出せません。ラインの長さの半分のところまでで終わりです。

 アマゾンなどでもキットを売っていますが、セットの中のワイヤーと短いテンショナー1本でもって必要なテンションが掛けられるのでしょうか。
 経験者の自分的にはちょっと疑問? それにラインが弛ければ弛いほど急傾斜になってしまいますので滑走ではなくて落下?になってしまいますので最初の安全確認が大事でしょう。

 自分がかつて遊んでいた沢登りや、また本格的な山岳レスキューなどでも人間をぶら下げるためのラインを横に張るには、必ず倍力を掛けてテンションを調整する技術が確立されています。チロリアンブリッジと云われています。

 ワイヤーロープでも繊維ロープでも横に張るには、其れ相応のテンションを掛けないと危なくて仕方がありません。また、アンカーの強度も大事です。

 でも、そういった技術を持っていればロープの活用範囲は広く、例えば豪雨で街中が川の様になってしまった場合の避難にも使えますから、一般の人たちにとってもとても役に立つものではないでしょうか。

 例えば沢登りにはロープを使って激流を超えていく方法が確立されています。この沢登りというアウトドアスポーツ・遊び?を行う人たちには激流の渡渉という難関が山奥で待ち受けていたりしますから、シンプルな道具を使ってどうやってそういった難関をクリアしていくのかというリアルな遊びです。その大事な道具の一つがロープでしょう。
ザックピストン法
 











 もう30年以上も前からでしょう、沢屋の先達たちが体験と智慧とで難関突破の方法を積み重ね来ています。右上画像は、泳力のあるトップが激流を渉り、パッキングしたザックを浮き袋にして後続者を何人もロープで引き寄せているところです。ザックピストン法という方法です。i-mata_taba_sarashiのコピー (1)

 画像の場所は奥多摩の丹波川から山梨側に入った一ノ瀬川の本流ですね。おいらん渕の大分下流だったのではないでしょうか。もう、25年くらい前の画像なので小さいです。

 こういった技術の積み重ねが、今の様に世界的に洪水が増えた時代には非常に役に立つのではないかと思うのです。それには、ラインを張れることがまずありき。そして繊維ロープの場合には、補助ロープやプーリー(滑車)を使った制御などが必要です。
 こういった世界にご縁がなかった一般の方々にも理解できる様に、概念の説明も含めつつ記事を書いてみたいと思います。


【スポーツや遊びに使えるライン張り】
 それから、こちら下の画像はスラックラインと言うものです。このテンションを掛けたベルトの上を歩くのですが、これがかなり難しいです。

 ベルトの上で飛んだり跳ねたり、飛んで後ろに向きを変えたりして遊ぶのですが、身体の体幹を強くする効果が高いので健康にも良いとのこと。バランス感覚と筋も鍛えますので感覚がシャープになります。
 画像は、長野県の駒ヶ根市のリゾート地、駒ヶ根高原にある登山用具、アウトドアアクティビティ用品を扱うアウトドアショップK(ODSK)のスポーツ館の中にあるスラックラインです。

 これらはラッシングベルトという荷締め器と同じ機構を使ってベルトを巻いてテンションを掛けるのがスラックラインです。短い距離なので、器具で巻ける程度で良いわけです。IMG_6168のコピー (1)


























 家庭でも設置できるスラックライン用の木製ラックもあるので、手軽に家の中で体幹を鍛えられるので、結構売れています。確か南信州産のヒノキを使って作っていたと思います。

 オフィスなどにも設置してあると、スラックラインを使って休み時間にリフレッシュできるので良いですね。画像は一昨年の国際ウッドフェアの展示ブースの横で体験を行なった時のものです。ライディングしているのはODSK社長の木下氏。長野県の山岳レスキューの隊員でもあります。
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 それから、こちらは土佐の森軽架線キットのキャレッジ。日本語で言うと搬器ですね。綺麗にお化粧してあるのは、この時はODSKさんの手伝いで国際ウッドフェアの際の展示用に使ったから。高知の綱屋産業さんで売っている時はただのオレンジ色の鉄板ですからね。

 おっと、先にアウトドアショップKスポーツ館と書きましたが、考えればこのジップラインのシステムはスポーツ館の定番商品にすれば良いかも。
 このブログを以前から観ている人はご存知ですが、わたしがサポートしているのはアウトドアショップKのワーキング館の方。樹上伐採のための用具販売や技術講習会を開催している事業者ですね。

 今回の高強度繊維ロープを使ったジップラインのシステムはキャレッジ以外、全部ワーキング館の取扱商品です。最後の方にリストを作っておきましょう(キャレッジの代わりになるものにタンデムプーリーがあります)。

 うちの協議会でこのキャレッジを使うときには、ワイヤーロープでシステムを組むのではなくて、高強度の繊維ロープで軽架線を組む時が多いのですが、その時に土佐の森のキャレッジを使わせて貰っています。

 また、他にも軽いアルミ製のキャレッジもあるのですが、支障木伐採の様な短距離の材の平地移動ではなくて山裾から上げ荷を何回も行う場合には、山裾に対してキャレッジを流して戻すためにはある程度の重量がないと荷揚げ線(ホールライン)の重量に負けて下に降りていかないから重たい鉄製が便利なわけですね。
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 今回、これを何に使ったかと言いますと、子供達の遊びに・・・それから、高校生の体験学習に。

 こんな事にも役に立つんですね〜。今回の記事は、自伐協型の自伐型林業をやっている人たちの多くが持っている土佐の森の軽架線キットが遊びにも役に立つ、というサンプルになるかと思って書いてみました。

 その他には、もちろんのこと、我々の仲間の様に樹上伐採をやっている人たちが持っている高強度繊維ロープとその周辺道具があれば、その方がもっと気軽に子供達用のジップラインが張れますから、今回は遊び目線でのシステム構築法をシェアしてみましょう。

 とは言っても、昔ながらのチルホールでの力づく掛かり木処理しか知らない方達には役に立つかも知れません。
 軽くて強い高強度の繊維ロープによる、より安全で楽な掛かり木処理にもつながる方法なので山の作業にも役に立つでしょう。良かったら最後まで読んでみてください。

 そして、うちの協議会で一般の人たちに教えている、木に登らないでも樹上にアンカーを設置する方法が出来れば、梯子などかさ張る道具が無くても、繊維ロープでもワイヤーロープでも張ることが出来ますから、安全確保にも良いですね。
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 小学校5年生の子たちです。二人ずつタンデムで乗れます。
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 本当はベルトスリングに腰が掛けられる様にしたかったのですが、地形との関係で脇の下に入れるだけの簡単なもので済ませてしまいました。

 もし、本格的に稼働させるのならば、箱の飛び出し台があるだけでベルトスリングに腰掛けられる様に出来たんですけどね。今回は、ほんの十分程度の体験なので、そこまでやりませんでした。

 と、言うのも今回は彼ら5年生の子たちを遊ばせるのが目的ではなくて、高校生たちがジップラインを張りたいから、ということで高校生がシステムを理解できる様にあくまでもサンプルにロープシステムで組んだだけだからです。


【子供たちで組むためのジップライン】
 そのジップラインのテンションをかけるためにはあまりお金が掛けられないと言う事なので、チルホールやローププーラーのプラロックは最初から除外。

 人力のみでテンションを掛けるのには、動滑車を使って何倍力のシステムを作れば良いのかを確認するというのが、今回の目的の一つです。
(更新型)軽架線スカイライ











 協議会の集材・搬出講習で使っているテキストを改編して子供達向けに47ページもの体験講習用のテキストも作りました。主索(スカイライン)=ジップラインです。

 子供達(小学5年生20名、高校生6名)は、午後に来ると言うので、午前中に体験&参考用のリギングロープ(普段は搬出講習に使っている)を使ったジップラインを山の麓の桜の林に張っておきました。

 このロープは講習には使っていますが、チェックとメンテはちゃんとしているので人が乗っても大丈夫です。12mm100mのリギングロープで(新品の時の)破断強度は4トンあるものですから。
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 先柱にはベルトスリングで直接張ってあります。作業道脇なので車両が通るために控え索(ガイライン)は無し。

 本来は、控え索で先柱を支えた方が木が弱りません。真横にテンションが掛かると根返りまではならなくても根ごと揺さぶりますからね。登山道にある様に、木は根っこを踏んだり傷つけたりすることは弱る原因になります。
 また、ロープやワイヤーを直接幹に巻くのは控えましょう。木が傷みます。

 元柱には、布でプーリーが木肌を傷つけない様にしておきました。この時は梯子を持って行きましたので、ある物は活用しましたけど、技術的には梯子がなくても樹上にロープを通したプーリーを設置することも可能です。IMG_6253のコピー (1)














 控えのアンカー部分はこんなです。
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 片方のプーリーは小さいので見えにくいですが二つのプーリーが設置されています。
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 滑車が四つで9倍力です。
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 ロープの途中にフリクションノットを使ってプーリーを設置しています。フリクションノットと言うのは、ワイヤーロープで使うクリップ(キトークリップとかスーパークリップという商品名のもの)と同じ機能をもったものです。

 この、繊維ロープの中間に牽引点を採る時のアイテムの話は最後の方に書きましょう。これは大事な話だからです。

 クライミングや沢登りをやる人たちはご存知ですが、ロープクランプなどの金属デバイスがありますけれど、我々の様に重量材の牽引を行うものたちにはこれらの道具はロープの破断に繋がるので基本的には使いません。

 もちろん、ロープクライミングの様な人間程度の重量だったら良いのですが、何百kgにもなる丸太の牽引には不向きだからです。
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 この様な感じでジップラインが出来上がりました。隣にぶら下がっているのは、ターザンごっこを行うためのブランコです。
 見え難いですが、キャレッジにはコントロール用のロープもつけてあります。子供達がベルトスリングに乗り込む際には、大人がジップラインをひき降ろさないと無理だからです。
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 最初、出来上がって自分で滑空をしてみましたが、小学生にはかなりスピードが乗ってしまうので、先柱の方の位置を下げたりして調整してみました。

 そして、人がぶら下がるためには、3倍力では足りませんでしたので、9倍力に追加です。なんでいきなり9倍力かと言いますと、下図にありますように5倍力と同じ道具で組めるからです。

 伐採した木を集材するのに、一々玉切って軽くしてから集材していたのでは手間の数が増えます。だから全幹集材したいのですが、重たくて動かない時には、直引きから次に簡単に牽引システムを変更するのは、2倍力ではなくて3倍力の方が変更しやすいですね。

 これは掛かり木を外す時に、PCウィンチ(ポータブルエンジンウィンチ)で直に引いて外れない時には、速攻下記の3倍力に変更します。だって、2倍力と言うのは、事前に樹上に用意しておかないとできませんよね。3倍力ならば下記の方法なら樹上にロープはすでに掛けてあるわけですから、すぐにできる訳です。

 そこから、まだ牽引力を強くしたい場合には、掛かり木処理なら牽引速度は関係ないので9倍力にしてしまえば話は早いわけです。
 と同様にロープの長ささえ余裕があれば、ジップラインでも3から9倍力への変更の方がすぐにできます。ロープの引っ張る方向も変わりませんしね。
滑車の原理-倍力3〜9倍力













 この図は、高校生たち渡しました。
 中学生の理科では動滑車の定理を習いますけど、大抵は机上でのものなので体験による体感を得ていないために覚えていない人がほとんどなんですよね。当然、わたしもそうでした。

 なので、わたしが行う掛かり木処理や搬出講習では、動滑車の倍力システムを組む練習の際には、受講者同士で綱引きをしてもらいます。そうすると、実感として動滑車システムの威力が分かるので頭ではなくて身体で理解できるからです。

 今回も、高校生たちにも力の強い子や女の子対男の子で3倍力システムで綱引きをして貰って体験をして貰いました。

 小学校5年生たちにも、今回の体験学習の主催者である地域自治組織の若い人が綱引きをさせてあげて体験をさせていたました。


【高校生たちのワイヤーロープのジップライン張り】
 小学生たちがジッブラインやターザンで遊んでいる間に、わたしの方は高校生とワイヤーロープ張りをやりました。IMG_6265のコピー (1)













 今回の体験学習は隣町の吉賀高校のアントレプレナーなんとか体験学習の一環で、場所は、ODSKのツリーワーク講習を度々開催した柿木村(地域で有機農法を推進して40年以上)で行ないました。

 この体験学習は、柿木村の地域自治組織(過疎化が進む島根県では県と各市町のバックアップの下に地域自治を進めるための組織づくり事業が展開されています。が以前の仕事で関わった地域もあるけれど、そこの地域は住民が補助金を使ってやるという態度で死んだお金になっていました。でも、柿木村では若い人たちが楽しみながらやっているので期待が持てます)の若い人たちが行うもので、100年の森づくりを目的としたものです。

 保育園児から小・中学生など小さい子たちが山で遊べる様に手作りの遊具を山に作ってあります。
 この日の午前中も保育士の先生に連れられて保育所の子供達が遊びに来ましたけど、みんなアクティブなこと。感心してしまいました。そして、ライン張りのオジさんは子供達に構われて一向に作業が進みませんでした。

 小学校も歩いて10分くらいのところにあります。わたしも子供達の森林環境教育の手伝いに何度か行っています。
 今回の小学5年生が集まった時に、「みんな、紙漉きとか木切れ工作をやった?」、と聞いてみたら今年の春にやったとのこと。うちの妻がNPO法人もりふれ倶楽部の環境教育の手伝いで、ちょうど行っていた学年の子供達でした〜。うちの妻の事を覚えていてくれましたよ。

 この様に、子供達の森林環境教育に関しては結構盛んにやっておりまして、島根県の水源林税を活用した「みーも事業」では、保育園児から小・中学生のみーもスクールやみーもサマースクールで、室内での杉の甘皮を使った紙漉きや、木の実や枝、木切れを使った木工体験授業や、屋外での山や川での植物、昆虫、魚などの採取などの体験をやっています。
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 島根県西部では、NPO法人もりふれ倶楽部と、いわみの森こだま協議会が地域の学校の委託を請けてこういった活動を行なっています。

 わたくしはもりふれ倶楽部の所属(こだま協議会は最初に人集めをして立ち上げに関わったけれど直ぐに脱会)だし、妻の方は両方に所属していますのでスタッフとして手伝いに行っていますが、わたしも妻の都合が悪い時にはサポートで行くこともあり、可愛い小学生相手に工作の手伝いなどさせて貰っています。

 と言うことで、こちらの子供達は本当に恵まれた自然の中で、バスを仕立てて現地まで行って遊べるので恵まれていると思います。ただ、どこの教育委員会も中央寄りの考え方から抜け出せないのでホントに勿体無いですね。

 地方こそ、左脳右脳全開の全人的な教育や能力開発ができる環境が揃っているんですけどね。
 それを、津和野町なんか、本当に立派な校舎や校庭があった小学校を児童数が定員に足らないといって(移住者が入って子供も増えつつあるのにも関わらず)廃校にしてしまう様な町政ですから。まるきり〇〇でしょ?

 しつこいですけど、わたした林業版の地域おこし協力隊募集の育成事業担当をやったとき(この時点で佐川町だけは初めていましたけど、其れ以前から行政に提案していたのでパクリではないです)に、募集開始した下半期に体験に来た人たち10名のうち5名が移住して来ましたし、残り5名のうち3名は向いていないと断った位なので、実質的には8割の高確率移住希望ということだったから、誠意と中身を伴ったを事業を継続していれば、もっと増える可能性はあったということかと。

 ましてや、津和野町には牧場の上の山にある森の幼稚園もあるのだから若い移住者にとって魅力的なんですけどね。でも、町議会議員もやっていた園長さんも凡ゆる努力の末に、もう津和野町はそういうところ、と受け入れてあとは自分たちでやっていくしかないと自立意識を高めていましたね。

 そんな事も過去にありつつ、最近どこかの雑誌に津和野町の自伐型林業とか言って成功例の様に書いてあるけど、、、実際のところはどうなのでしょう。最初に立ち上げた役場の職員も退職してしまっていますしね。

 移住者が増えなければ、今の此の自伐型だっていつ消えるか分からないのに、若者たちにとって大事な子供達が育つ機関を無くしてしまう様な愚かな町政は年寄りしか見ていないと言うこと。また、町全体がそういうところだということでしょう(その中でもうちの集落は結構前向きなところですけど)。
 この未来の子供達のための財産を潰す様な考えしかできない町は人口減少率も国内トップクラスらしいです。ちゃんと原因と結果がリンクしています。

 なので、若い人たちの移住先は一発で決めないで、移動ありきで暫く暮らしてみて様子をみた方が良いですね。新聞雑誌TVなどの大手メディアは、自分たちの食い扶持のために仕事をしていますから、精査なしの上っ面だけの行政発表をさらに持ち上げて記事を書きますので面白いくらい裏側の実際とは違うことがあります。
(但し、逆の視点から見ると、別の要素もあります。他の記事にも書いてありますけれど、なんでも頭で処理する人は、常に自分が選択する側の立場だと勘違いしているケースがまま見受けられます。ところが、世の中は選択という能動的な要素だけでなく、被選択という選ばれる側に位置する受動的な要素もあると言うことですね。地域の共同作業なども一緒にやって、地域の役に立つ様な活動もやらない人間が、目先の自分の得だけをみながら、良さげな地域に移ろうとしても、そういう人は質の高いコミュニティができている地域ほど受け入れて貰えないし、それ以前にその土地へのご縁が出来ないのでご注意を。その土地にご縁が出来るかどうかと言うのは、何かコントロール外の要素が大事な様な気がします。また、地域の人たちに、ずっと居てくれと引き止められない様な人でなければ、何処に行っても同じパターンの繰り返しをしている様にも見えます。此方の流域全体でも、そういった人たちが大勢、跡を濁して居なくなりました。尤も、そういった人たちと地域の雰囲気を視ていますとどっちもどっちの様に思われ、その人に合ったご縁が展開しているだけなのかもしれません。此れからの混沌とした時代に向かって、良き地域コミュニティづくりと、それから良いご縁で結ばれた地域外広域での横のネットワークの構築がビジネスに於いても生活に於いても大事だと思うのですが如何でしょうか。それには自分自身が差し出す側にならないとね)

 私たち夫婦も移住者ですけど島根県中の住民側の人たちと仲がいいので本当の話をみんな教えてくれますし、自分自身も現場側の人間としてやってきていますので事実の整合性を確認できますからね。補助金など税金で食べている人たちと民間で自力で生きている人たちとは、認識している現実も違うのが常ですね。

 人生が掛かっている選択をする時には、行ってみて実際の現場を見て、そして相手の眼を見て話をすることが一番であることは、今の時代の様な情報が飛び交っている状況では尚更ですよね。
 ネット情報はノイズが多すぎるし、また、智慧も経験もない人が発信している情報かどうか見抜く様に精査しないとメッセージが信用できないのは当たり前。
 電気製品みたいな汎用品を選ぶのだったらネット情報は便利だけど、食べ物や料理や飲食店なんてものに関しては大外れも可也あるから、ある意味直感も情報の取捨選択方法の要素に加えないととても無理。

 と言うか(マインドコントロール)情報氾濫の世の中は感覚の鈍い直感を鍛えていない人には厳しい世の中だろうね。
 逆に山仕事は直感を鍛えるのには良いんだけど、それ以前に自分の考えに固執する人は直感やひらめきはやってこないもの。来た様に思っても其れは只のノイズだったりして。。。

 気づきという能力は、自分以外の外側に原因を求める人には身につかないものだけど、人生の転換をもたらす閃きや直感も、鬱屈した自分の感情からくるノイズと見分けがつかないことがありますからね。
 でも、実際に気づいた事や閃いたことを“素直に実行”してみて、結果が付いてくると自分自身を俯瞰観察して、錯綜する想いがノイズなのか閃きなのかをサニワできる様になります。だから自分の頭(考え方)というブロックを如何に壊すかと言うところが入り口でしょう。

 山の作業は不確定要素が多いために思い込みで作業をしていると破綻することが多いですからね。誤努力という言葉がありますが、間違った考え方で頑張ったって結果はついて来ないし、山では力づくで頑張ったらその反動は怖いものがあります。

 頑張りよりも心の柔らかさの方が持続的に行なっていくためには大事な要素に見受けられます。木々と感応し山のメッセージを感じながら山からの恵みを頂きましょう。失敗やトラブル、他人との摩擦を自分以外のせいにしている内は気づきも閃きもやってきません。

 さて、隣町の地元小学校の子供達は、高校生たちお兄さんお姉さんたちの作業を見学というのが今日のスタンスです。
 高校生六名は小学生たちよりも先に午後になって先生の車に乗ってきて山の上まで登ってきました。小学生たちは後から山の上に登ってきて、高校生の人たちに小学生の自己紹介です。
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 高校生たちは午後一に来てから、まずは山の裾のロープで張ったジップラインのシステムを下見してから滑空体験を済ませました。
 それから、山の上の台地のところまで登って、6mmのワイヤーロープを50mくらい張る作業を行います。

 ここの場所は、前の記事を書いた時に使わせてもらったところです。1.3mmゲージのオレゴンのスピードカットシステムを装着したチェンソーとハスクバーナ560XPなどとのカッティング速度比較の記事ですね。
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 その時に撮った、赤松の丸太をエンジンウィンチを使って移動している画像ですが、その左側に枝だけ写っていてピンクで丸が書いてある胸高長直径が70cmを超える大杉があります。其処から右側のの林に向かってジップラインを張ろうという算段です。

 その大杉のどの辺りにラインを張るかですが、何にしても下の方の太い枝を落とさないとラインが張れません。
 が、高校のプログラムの中なので生徒には危ないことをさせられないために、ロッキーラダーの二段、4mには登らせての作業はご法度とのこと。残念! 結果、自分で枝降ろしをやりました。

 高校生たちが行なった作業は、山の裾で見てきた9倍力の動滑車システムをワイヤーで組むこと。
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 男の子たちと女の子たちで作業を手分けして、麓で見てきたロープシステムと同じ様に、ワイヤーでシステムを組みます。

 が、地域自治組織で集めてきた機材では到底足らないので、うちの協議会の道具類を持って行きましたので、道具類が混在しています。最後の留めにロープなんか使っちゃったりして。
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 今回の目的は、まずワイヤーのジップラインを設置してみて、地域自治組織の道具で足らないものを炙り出すこともあります。他に何を揃えたら良いかということですね。

 持っているもので使えるもの使えないもの、人がジップラインに乗って滑走する時に運用上危険性のあるものも調べておかなければなりません。
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 取り敢えず9倍力で組んでみました。










 使ったアイテムは地域自治組織が持っているもの。
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 それからうちの協議会から持っていったものが混在。
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 取り敢えず張って、テンションがどのくらいまで効いているかをロープを掛けてぶら下がってみて確認をするところまでできました。
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 高校生たちは帰らなければならない時間になったので、今日はここまで。
 あとは次回です。


【高強度繊維ロープを張る場合の注意点】
 最初の項で書いた様に、ロープの倍力システムを作る場合に牽引点が必要ですが、その牽引点を設置する場合の注意点と使う用具について説明してみましょう。

 これは、鉄のワイヤーロープにも言えることで、大型の施設ではどうやっているのかは知りませんけれど、個人レベルや小さい組織で行うにはこういったことに留意しておいた方が良いということを、こんな記事をアップした責任上書いておきます。

 先ずはワイヤーロープの場合ですが、傷んでも良いワイヤーには下記画像の様なクリップを使ってワイヤーを咥えます。上の方の画像に使用状況が載っていますが、見てわかる様にかなり急角度でワイヤーを曲げてしまうからワイヤーにとっては好ましいものではありません。
カムラーとクリップ














 その点、画像の上側のカムラーは、クリップの様に点でワイヤーを咥えるのでは無く、線でワイヤーを挟みますので、ワイヤーが傷みにくいのです。
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 仲間が撮った画像を借りてみましょう。カムラーはワイヤーに対して真っ直ぐ引っ張っていますよね。

 こちらのカムラーは確か4mmから22mmまで対応で2tのものだったと思います。今回もラインの最後のところでテンションを掛けるのに使いましたが、2万円もするものなので使いたく無かったのが本音です。もちろん回収してきましたけど。

 こういった道具があると言うのは、一昨年に林内作業車の特別教育開催を当協議会で企画して島根県の中山間地域研究センターの敷地をお借りして行なった際に講師として招聘した有限会社中国林機の住田先生が教えてくれました(その時の特別教育の内容についてはこちらの記事に書いてあります)。

 住田先生は、中山間地域研究センター内に併設されている島根県農林大学校林業科の学生たちに本格的な架線搬出を教えている講師ですから、農林大学林業科のレベルは非常に高いものがあります。

 そうそう、今回体験学習に来た高校生の中に農林大学林業科を進学先として検討している子がおられましたね。

 わたしの自己紹介で、8年半前に放射能避難で神奈川から島根にきてそのまま夫婦で居ついてしまったという話をしましたら、先生が、「この子も東京からうちの高校に入ったんですよ。」、と教えてくれました。理由を聞くと、自然の中の暮らしが好きだから、と言っていたと思います。彼とはメイルアドレスを交換したので、今後は仲間ですね。

 その吉賀高校は寮があるから、そんなことも出来るんですね。此方では、山の奥の子が高校に行くに当たって、通えない子が多いので寮がある高校が他にも昔からあります。

 以前の益田市の嘱託職員の仕事で匹見町の地域振興に携わっていた時にも、市が提携していた川崎市から夏休みに小・中学生が体験学習に来ていたのですが、中には帰りたくないと言って泣き出す子供が居たりして、それだけ感受性豊かな子供達にとっては良い環境が残っている地域であることは確かです。

 吉賀高校は農村にありますから、都会の子の農村留学というのも良いですね。

 さて、本題の繊維ロープの場合の牽引点作成についてです。何も知識がない人だったらどうやってロープにカラビナやユーシャックル、フックなどを取り付けるのでしょうか。

 ちょっと知識がある人(登山のクライミングなどをやっている)ならば、クローブヒッチなどを使うでしょうね。我々だとアルパインバタフライでノットを作って牽引点を作りますが、ロープの結び目に対する応力の掛かり方や解き易さなどは何方の方が良いのでしょう。
 また、ロープの結びで牽引点を作った場合には、位置の変更に手間がかかります。

 そして山岳クライミングをやっていると色々な金属製のデバイスを使うことが多いでしょう。下画像の右半分に写っているものです。沢登りをやっている時に買ったものもありますので古いものもありますが、これらは人間とか登山道具が入った荷物などを荷揚げするためのものです。

 ロープも同様の機能に使います。昔、登山用品屋さんだと細引きロープと言う名称で売っていました。今だとアクセサリーコードとも言うみたいですが、強度を確認して使いましょう。

 うちの場合にはODSKさんでアクセサリーコードも手に入りますが、リギングロープのシリウス500と言う商品が、32ストランドで強度もあり被覆(シース)も強いので、それを切って使っています。
 6mmロープでも破断強度が1.1tありますからね。それに安いし。太さにもよりますけれど、長さ的には1.4〜1.7mくらいあれば良いので、千円以下かその前後でしょう。Wフィッシャーマンで繋げて輪の状態にしたものを一般的にプルージックループと言います。

 左端のマダラ模様のロープは両端にアイが付いたビーラインという商品名のロープ。ロープクライミング用の高品質で高額の専用ロープです。プルージックコードと言う商品名のうちの一つです。
フリクションデバイス (1)













 先ずは、金属のガチャモンについて簡単に説明してみますと、右の黒いものが所謂アッセンダーですね。大分以前の登高器。ロープを登る時に位置を確保してくれます。ロープ登高とロープ荷揚げの逆戻り防止に使えます。

 左側のアルミ色のものはレスキューセンダーと言う商品名だったと思います。ロープクランプでワイヤーのクリップ類と同じ機能です。カムのところに横溝が入っています。チルホールなどで牽引すると応力に負けたロープが溶けたりします(と言うか、溶けました〜)。

 金色のものはセルフジャミングプーリーという名前でペツルのものだったと思います。逆戻り防止の爪が付いたカムとプーリーの組み合わせになったものです。掛かり木処理の時に使ってロープを切った人がおられるらしいです。

 真ん中の上のカラビナに付いているものはシンプルな構造ですけどちょっとしたロープに対しての位置確保には使いやすいものです。ペツルのタイブロックという商品です。
 その下も同じ様なものですが、たしかロープマンと言うもので、カムに鋭い横溝の歯がついています。

 何も歯とか爪がロープに食い込んで制動する機能を持ったものです。タイブロックの画像をアップで載せてみますがサメの口の中の様な歯がいっぱい付いているでしょ。
ペツル・タイブロック (1)













 要するに、この歯や爪がロープを傷める原因になるんですね。

 その様なこともあり、わたしの場合には、掛かり木処理や牽引など高負荷が掛かる場合にはこれら金属デバイスは使っていません。そもそも高いですしね。一番安いタイブロックでも4千円くらいしたと思います。

 乱暴に言えば、これらの金属デバイスは対人間用のものとして考えておいた方が安全です。これらアイテム自体の破断強度はトンクラスですけれど、機構的にロープを傷めてしまうことが前提なので、何百kgからトンになる重量材牽引には向かないとしておきましょう。

 次にロープには色々な種類がありますけれど、まず大まかな説明をします。

・ダイナミックロープ:山岳クライミングなどに使用する伸びるロープ。墜落の際のショックを吸収するものですが、30%以上伸びるものです。だからハーネスを付けて何メートルも落ちても大丈夫なんですね。わたしもそれで腰を痛めたことはありません。物理では、例えば人間の体重位として、50kgのものが1m墜落して伸び率0%のロープで止めた時の瞬間荷重は500kgだそうですから骨から破壊されますね。

・スタティックロープ:伸びないロープ。と言っても数%は伸びますが、一番伸びない汎用ロープはダイニーマ系のものです。が、ダイニーマロープは結び目を作ると、途端に強度が落ちますのでドラムの巻き取り用に使うのでなければ、小規模林業の牽引には使えないと思っていた方が危なくないです。さて、このスタティックロープで我々が使うものはリギングロープとも言われています。樹上伐採や牽引などに使用するものです。

 機能的な視点から大まかに言うと、この2種になります。と言う事で、架線張り、ジップライン張りにはクライミングロープは使えないということでご理解頂けますよね。

 勿論牽引もです。え〜、ホームセンターにも色々売っていますが、強いものでも強度的には人力掛かり木処理かプラロック程度の牽引までかと思います。伸びますしね。トラロープなんてあり得ません。伸びるロープは事故の元と思っていた方が良いのでは? 金属物で接続していたものが伸び切って飛んで来たら怖いでしょ。

 あと三つ撚り(三つ打ち:3ストランド)ロープは高負荷を掛けて牽引すると弛めた時に撚りが戻ろうとしてキンクが強く出るので使いにくい場合があります。ケースバイケースで使いましょう。

 そして、先ほどの金属デバイスの爪の話にも関わりますが、ロープによっては被覆(シース)が荷重の大方を受け取っているタイプのものだと、爪で被覆を破った途端にロープが破断につながる可能性を持ったものがあります。自分の使っているロープのタイプを確認しましょう。


【ロープで作る簡易ジップラインの場合のオススメシステム】
 さて、金属デバイスは百が付く重量材の牽引以外では便利な道具ですが、ロープの保護やコストを考えるとプルージックループで充分ではないでしょうか?

 プルージックループと両端にアイが付いているプルージックコードを使って作る、フリクションノットは何通りもありますが、今回の様なジップラインを張る際に低価格なプルージックループを使う場合には、“クレムハイスト”ノットだけ知っていれば良いでしょう。

 当協議会の掛かり木処理・集材搬出講習でもテキストに載せて教えているフリクションノットは、プルージックノット、クレムハイストノット、バッチマンの三つだけです。
 サブロープ(プルージックループ)でフリクションノットを作って牽引点を作れば、位置の移動が簡単に出来るのも美点です。

[※レスキュー的フリクションノットの応用例]:応用例とか書いていますけど、今みたいに素敵なアッセンダー(登高器)がなかった頃は、ロープを登るのにフリクションノット2つで攀じ登っていた昔の技のことです。
 25年以上前に、一回だけ木で練習したことがあります。これは、沢登りで滝を懸垂下降してロープの途中まで降りたは良いけれど、ロープが安全なところまで届かなかった時とか、崖下には安全な場所が無かった場合には、ロープを登り返さなければいけないので、簡単な道具で帰還する技が必要だったのです。特にソロの場合はね。

 ハーネス、もしくはロープなどでしっかり作った安全帯などの腰の部分にフリクションノットを1つ、それから片足用に足元に1つ。この2つで尺取り虫の様にロープを登ります。
 と言うことで、道具が手元にない緊急時のレスキューにも使える昔の技です。昔はなんでも道具が豊富に無かったのでシンプルなものでやっていたんですね。
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 この画像では判りにくいと思いますので、ご存じない方は検索をして調べてみて下さい。

 他にはこのフリクションノットを使う場合にはメインロープとの相性もありますので、滑りやすいロープなのか滑りにくいロープなのかで巻き数も変える必要があります。
ダイニーマロープは溶ける














 右上画像は、アウトドアショップKワーキング館のブログに書いた記事内のもの(他にもロープ活用のノウハウについて書いてありますので良かったらご笑覧を)ですが、メインロープに巻いたフリクションノットが滑った場合にはロープが溶けて破断にもつながることがありますので注意が必要です。

 特にダイニーマロープの場合には編み方と素材の両方で滑りやすいので、巻き数を増やして調整しないと難しいでしょう。特にダイニーマロープは低い温度で溶解するのではなかったでしょうか。

 また、リギングロープに使われるポリエステルはロープ素材の中では高温に耐えられるものですが溶解温度は250度前後です。が、摩擦熱でその位の温度が発生することがある様です。
 例えば、伐倒木の倒れる方向を制御しようとして、ロープを使って振り子の様に伐倒木を倒す場合に、支点となる立木に直接ロープを巻いただけだと、伐倒木の重量が重ければ、ロープが引っ張られた瞬間に支点の立木に巻いてあるロープが絞り込まれて幹に食い込みます。

 それだけ荷重が掛かっているんですよね。そして立木に巻いた部分のロープが絞り込まれることによって動くので、ロープ自体も溶けますからね。

 そして、高いロープがダメになりました〜。(;_;)  良い子の皆さんは、ちゃんと立木にスリングを設置してから制動器のポータラップを取り付けてロープの制御を行いましょうね。

 また、リギング用のロープの構造は、大抵はWブレイドという二重構造になっていますから、表面の被覆(シース)が大丈夫でも内側の芯(コア)が溶けている場合もありますので時々のチェックとメンテナンスは欠かせません。

 と言う事で、ワイヤーも9倍力でシステムを作りましたが、高強度繊維ロープを使った場合にも9倍力に設定して、一人で作れました。先に載せた図の9倍力の部分です。

滑車の原理-倍力3〜9倍力






 この作業時に必要なのは逆流れ防止装置をつける事です。そうでないとテンションを掛けたままロープの最後を留めるのは至難の業になってしまいます。

 当協議会のテキストにはこちらの画像の様に載せています。
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 実際にジップラインを張った時にはこの様にしました。
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 上画像の真ん中の青いロープが逆流れ防止用のものです。プルージックループで作ったクレムハイストノットのものです。

 その上のテキストの画像では、大径木など重量物が転がってテンションが掛かったままになった場合の対策として制動器のポータラップを設置して、簡単にロープが解ける様にしてありますから、複雑に見えます。

 9倍力で人がジップラインに乗れる程度のテンションならば人力で引き直せば、このクレムハイストの逆流れの装置を解放できます。わたしは一人で引っ張ってテンションを弛めました。

 如何ですか。繊維ロープでならばジップライン結構楽に張れそうでしょう。ワイヤーの場合には撤収が非常に手間が掛かりますけれど、ロープはロープバッグか箱にそのまま端から入れていけば良いだけなので、敷設も撤収も超楽です。
 ワイヤーロープを使う必要があるのは、長期間設置したままの設備とするため、そしてロープを使ったジップロックは短期に設置したり撤収したりして遊ぶためという運用に向いていますね。

 今回も最初の木、先柱にロープを取り付けたら、元柱に向かってロープバッグを担いて歩いていくだけでロープが敷設できるので楽なものでした。回収は、控えに使った木にスリングで滑車を付けてロープを通し、両手でバッグに引き込むだけ。楽勝なので設置も撤収も短時間でできます。

 下記に講習用のテキストのページからプーリーとロープの件について転用しておきます。
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 プーリーも色々な種類があります。
スライド114 ロープも色々あります。














 これらの画像からでは情報が読みにくいと思いますので、興味があるかたは、オフィシャルサイトのページにリンクしてあるファイルをダウンロードしてみて下さい。エクセルをPDF形式にしたものがいくつかあります。ここから探して貰えればと思います。が、消費税改定前のものです。

 さて、ロープでジップラインを設置出来そうでしょうか。一応、わたしが設置したものから参考になるものを下記にピックアップしておきます。

 此れらがあると、ジップラインを張るだけでなく、レスキューの際のロープ張りも可能です。
 また、そのレスキューとは災害時だけでなく、側溝や畑に落ちた車両レスキューも入ります。
 その牽引に際しては、人力でもウィンチ(チルホールなども)でも、動力でも応用できますが、その動力とは「他の車両、バックホウ」、なども入ります。

 つまり、今回紹介した高強度の繊維ロープを使った倍力システムは、様々な用途に使える汎用性のあるもの、ということをご理解頂ければ幸いです。

 また、この高強度繊維ロープは、途中からワイヤーロープに接続して牽引が出来るくらいに強いからです。ロープとワイヤーロープのコラボができます。

 逆に石とか岩、土手とかロープが擦れたら損傷につながる様なところはワイヤーロープにして、あとは牽引し易い高強度繊維ロープを使うという手もあるということです。


【ジップラインシステム構築用品リスト(ご参考)】
☆使用品内容☆※先端部分から分かる様に書いてみます。わたしが使ったものと若干異なりますが、ジップラインだけでなく、様々なレスキューにも対応できる機材とい視点も含めてリストアップしてみました。
 リンク先は、長野県伊那市の特殊伐採用品のショップになっています。他にも色々な製品がありますので調べてみて下さい。追記:図も作ってみました。
高強度繊維ロープ9倍力シス














(先柱&控え:木が太ければ控えは無しなので、下記から減らしてください)
スチールカラビナ ×2(アルミ製だと金属疲労や損傷を起こした時にパキッと破断するが、スチールの場合には変形で済むから)
・プーリー ×1
・12mm100mリギングロープ ×1:色々種類はありますが取り敢えずヨットマスターは如何でしょう。ローコストで強いです。

(滑走用プーリー)
・タンデムプーリー:ペツルのタンデムプーリー、アルミプレートですね。CMI社のタンデムプーリー、こちらはプレートもシーブもステンレスなのでワイヤーロープにも使えます。両方とも山岳レスキューで使うチロリアンブリッジという方法でロープにぶら下がって谿を渡る方法に使うものです。
 このタンデムプーリーにどうやってぶら下がるか、と言うこともありますが、わたしがやった様にベルトスリングに腰掛けする程度ならば必要なのは、
・ベルトスリング ×1
・スチールカラビナ ×1

(元柱)
・ベルトスリング ×1
・スチールカラビナ ×1
・プーリー ×1:ロープ用のプーリーも色々ありますが、頑丈なステンレスプレートの小型のもので如何でしょうか。何百kgもの重量材を牽引する場合にはシーブ径が大きい方がロープのためには良いですが、ジップラインのテンション掛けと方向転換用ならばこれで大丈夫。

(倍力部分)
・プルージックループ ×2:メインロープが12mmですから、応力が掛かる部分には8mmのものでフリクションノットを作り、3倍力以降は細い6mmを使えば良いでしょう。ロープを何度も動かす所には細い方が食い込みやすいからです。
・スチールカラビナ ×2
・プーリー ×2

(控え柱:正式な名前が分からないけど)
・ベルトスリング ×2
・スチールカラビナ ×2
・プーリー ×2
・プルージックループ ×1:シリウス500の1m単位の切り売りロープを使いますので、1.5m長のものが3本あればシステムが作れますが、予備も含めて4本。8mmを3m、6mmを3mで半分に切って使いましょう。輪にするには前に書きました様にWフィッシャーマンズノット、二重テグス結びで末端を繋げば良いです。

 ざっと計算した概算ですが、10万円を超えるくらいでしょうか? 此れを高いとみるか安いとみるかはそれぞれの価値観ですが、アマゾンでジップラインのキットを買っても何万円もしますからね。

 でも、こちらはレスキューから材の搬出までできる応用範囲の広い実用的な道具類の費用なので、人によっては充分に価値ある金額だと思いますけれど如何でしょう。
 費用に余裕があればハーネスも使えば思い切り安心かも。ツリークライミングにも使えるし。子供用のフルボディハーネスもあります。


【洪水時にも使える場合がある沢屋のノウハウ】
 自分的には沢登りは相性が良くて、結構はまっていた時期がありますが、今は全然。中国地方には心ときめく面白い沢が沢がない(自分の低技量にあった、ある程度の登攀要素がある沢が)のと、山仕事の方が今は面白くてクマさんのいる山をわざわざ歩きに行っている暇がないんですね。

 今回ジップラインにフィーチャーして記事を立ち上げたわけですが、ジップラインはチロリアンブリッジという山岳レスキューや自衛隊、消防の人たちが行う谷やビル間にロープを張ってレスキューを行うのと同じ様に思えたので、水害が増えている現代に於いては一般の人たちにも、沢屋(沢登り愛好家)がやるロープワークや水流への対応技術が役にたつと考えました。
 手持ちの画像が少ないので、テキストでの説明も行いながら概要を書いてみましょう。
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 さて、右画像はロープを結びつけたザックに掴まって曳航されている図です。沢登りでは、ザックの中身を浮き袋になる様にパッキングしてあるので、こういったことができます。
 これは、記事の最初に載せた“ザックピストン法”と言われる方法です。

 また、“ラッコ泳ぎ”と先達たちが名付けたものは、背中に背負ったザックに寄りかかりながら浮かんで激流を下ったりします。
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 足は下流に向けて屈ませておき、障害物に当たったら蹴って避けられる体勢にしておくことが大事です。

 右画像は緩やかな流れですが、激流だと超スリリングです。

 その他のテクニックについては、昔の銀塩カメラのフィルムと写真を処分してしまったために載せられないので、簡単にテキストだけで紹介してみます。

・“スクラム徒渉”:激流を渉る時に上流に向かってメンバーが並び肩を組んでザックのベルトを掴み互いを確保しながら横歩きですり足をしながら渉る方法。弱い方の人を後にするか、3人以上の場合には真ん中に入れる。他には二人ならば対面に組む方法(流心を身体が強い方の人から渉る)もある。

 注意点としては、対岸の目標物にたどり着くためには少し下流側から目指すことですね。でないと流れの強さに負けて、目標よりも下流に持っていかれることがあるからです。

 流れの強さや水量によりますけど、水の重さや圧力はものすごいものがありますので、腿から上になると流れに耐えるのがかなりきつくなってきます。また、足を乗せた川底が水圧で流されてグリップが保てない時もあり、瞬発的な判断も必要でしょう。

 また、水深が腰より上に来る場合にザックを背負っている場合にはウェストベルトを解放して浮力で人間も持ち上げられない様にします。要するに歩いて渡渉する場合には浮力があると流されやすいと言うことです。

 他にも激流で渉れない場合には泳力のあるトップの人が飛び込んで向こう岸を目指す(岩陰の水流が弱まる所などを使いつつ)訳ですが、大川で対岸まで遠い場合には流された場合の確保用のロープも使います。
 元来た岸に戻れる様に補助者がロープをコントロールするのですが、ロープに掴まって激流の上方に向いていると頭から水没するので、素早い確保が必要です。

 ここでは簡単にしか書けませんでしたが、もっと内容は深いので興味がありましたら、山渓さんから(今も)何冊か出ているはず沢登りのテキストを手に入れて下さい。
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・沢登り入門とガイド 山渓刊 吉川栄一著:思想的に影響を受けました。良い本だと思います。
・ヤマケイ登山学校 沢登り 若林岩雄著 山渓刊:今でもわかり易い良い本です。沢登りの黎明期のテクニックの変遷なども分かるかも
・登山技術全書 沢登り 中村成勝編・写真 深瀬信夫・宗像兵一著 山渓刊:写真が豊富でわかり易い本。深瀬氏をはじめ我々の仲間が結構登場している。

 を持っています。他にはそのまた昔の東京マタギの渓流跋渉術 深瀬信夫著がありましたけど誰かに貸して戻ってきていないなあ。

 他にも童人トマの風の手嶋氏の沢登りの本や山岳ガイドの岩崎元朗氏の本もありますが、今も手に入るものはどれだけあるのでしょうか。

 この手の本が、新しいものが全て良いかと言うとそんなこともなくて、そつなくまとめてしまっている場合もあるために、昔の本の方が情報も智慧も多い場合がありますからね。

 わたしが沢登りを知った最初の頃は、吉川氏や柏瀬氏たちが誌面に登場していましたし、深瀬さんは源流ガイドのオーソリティとして活躍していて、高桑氏や瀬畑氏の本もやがて出てきました。他に渓流など源流釣りの本が多彩に出版されていた頃です。

 その昔は田部重治氏の山と渓谷とか近代登山以前の本も出ていたりして黎明期と言うのとは違うのでしょうけれど、ダイナミックで光り輝いていたワクワクする時代ではなかったかと思います。
 山に対するアプローチに哲学的な要素や思想的なスタンスが其々に持っていた様な気がします。

 今は道具も技術も確立されて来ているので、開拓・開発という要素は無くなってしまい、沢登りや源流釣りもレジャーの延長線上になっているのでしょうか。

 わたしが教わったのは、今は教室を閉めてしまった東京マタギの深瀬氏と、その仲間の遡行同人梁山泊の面々です。18年位前の梁山泊の20周年記念パーティにも出席させてもらった事がありますが、前述の沢屋の錚々たる方々が一同会されていましたね。

 お陰様で沢登りだけでなく奥山での山菜キノコ採りからブルーシート一枚暮らしまで色々経験させて貰いました。
 まあ、沢登りの方はヘボなので滝の登攀で10m以上滑落したり滝壺で溺れたり、結構痛い目に遭っています。単独で行っていることも多かったですが、痛い目に遭った時には仲間が居て助かったこともあるので、危ないことをやる時にはよい仲間づくりは大事でしょう。
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 また、源流釣りは自分で適当にやっていたので、一緒には行きませんでしたが、JKG(ジャパンナイフギルド)のメンバーだった深瀬氏や白井氏にもナイフメーキング関連も教えてもらって、カイデックス素材を使ったシースづくりについて978-4-88138-203-5は、深瀬氏に教わったやりかたを10年以上前に全林協さんのノウハウ図解山仕事の道具という本に詳しく画像入りで書いてあります。

 本が売れても印税が入る訳ではないのですけど、結構役に立つと思う本です。

 変形ナタやヨキのシース(鞘)作りにも役に立ちますし、腰回りの小物入れも作れますので、結果ロープワークも含めて、深瀬氏のアウトドア教室が今の原点にあると言えます。感謝感謝ですね。

 と言うことで、うちの協議会のモットーは、自分は女性一人でも安全に(掛かり木処理のあらゆる手立てもあり)伐採して、ハンディな小規模の道具で材を搬出・集材しトラックに積み込んで山から出して来られるし、それを自分で活用できる様にするということで、講習会をやっているという訳です。
 要するに重機頼りの林業ではない、個人レベルでの森林資源活用ができるためのものですね。

 その上、樹上伐採や危険木・支障木処理をやる仲間から、山に優しい壊れない作業道開設ができる仲間までいますので、水が出る良い山があれば、自分たちで道を付けて山を開き、山の恵みである木を伐採して小屋作りが出来ますし、燃料や食料調達もできます。

 つまり、世の中に何かあっても自分たちで生活基盤を確保できるノウハウとネットワークがあるということ。昔からやっていた遊びの集約が色々役に立っています。

 最初に書きました様に、世界中で大規模な水害が広がっています。放置林や皆伐林は、豪雨によって災害を大きくする要因になっていますけれど、それ以前に気象変動が大きいのでしょう。

 この様な事は、今後毎年発生する可能性があると言われています。能天気な日本人はメディアの偏向的報道のお陰でお花畑に暮らしているつもりの人が多いですけれど、こういった大規模な水害は、もうかなり以前から欧米の都市部でもまた世界中で発生しています。

 原因は太陽の黒点活動が変わって地球への磁場の影響が変わったために海流気流の流れが極端に変化したなど色々な原因が言われていますけれど、原因は兎も角として世界中の災害をみていれば、日本でも今後もっと大型化する可能性は高いかも知れません。

 事前に出来るだけの対策は必要ですが、被害に遭ってから行政に幾ら文句を言っても元に戻らないものは戻りませんし、それ以前に命が無くなってしまったら元も子もありませんよね。

 うちのブログに記事を起こしている意図は色々ありますけれど、その1つとして基本的なスタンスを自己脱出ができる地力を付けようというメッセージががあります。依存ではなくて自立です。

 先ずはそういったマインドの成熟性を持っていないと、技術はパクれても、パクった技術はいざという時に役に立ちませんし応用も効きません、半端な知識は逆に危険な状況を呼び寄せてしまうでしょう。
 パクリった程度のノウハウは、自分自身や、地域、また局面に応用したりできませんし、さらに新しい技術や智慧には発展しないですからね。

 自分的には沢登りの先達の知恵があって、今の小規模の山仕事のノウハウに繋がっています。だから樹上伐採の道具の価値が響いてきたんですね。それをシェイクダウンして地面の上から活用しようとしているのが当協議会です。

 で、その手法は水害の多い時代には、一般市民の方々にも役にたつ場合もありそうなので、本記事を書いてみました。

 豪雨災害時のレスキュー技術ももっと民間の方達も学んでいた方が良い様に思えます。ただ、水相手のノウハウは、山岳クライミングの人たちが持っているものと違いますから、激流の渡渉などに関しては本格的にやっている人たちに習った方が良いと思います。

 また、沢登りは悪場(草付き泥壁やヌメッた斜面のトラバースなど)の処理方法も必要なのでクライミング技術とは畑が違います。要するに沢屋のノウハウと智慧はオールマイティなんですね。
 また、レジャーのシャワークライミングなどとも違います。今で生き延びるための智慧の宝庫が沢屋だったり源流釣りのハイクラスの人たちでしょう。

 と言うことで、災害時に役に立つ沢屋の智慧と共に、ラインの張り方のノウハウをシェアさせてもらいました。IMG_5433 (1)

 以上