本記事は、ODSKワーキング館のブログに先月書いて載せていたものなのですが、特殊伐採のプロ向けに書いた訳ではなく、一般の方々向けに書いていますので、このブログに加筆して転載することにしたものです。其のために、文章の最後の方で書いている対象の人が異なっている部分もありますが、ご容赦願います。

【秋から春までが市民向け講習会シーズン】
 さて、農繁期が終わって寒くなり一般市民向けの搬出・集材・ロープワーク講習の時節となりました。って、田舎っぽいですよね。

 と言うのも、春からの農繁期には皆さん忙しくて時間が取れません。田舎ではサラリーマンの人たちだって、家に田畑がある人が多いので田植えが終わるまでは殆ど暇なしです(江戸時代、城勤めの家臣、お侍たちも自宅では畑をやったりして自給率が高かったそうですね。基本、食料を他国や他人に頼るのは自立した意識に欠けるのではないかと)。それに自治会のイベントや様々な共同作業があります。

 で、田植えが終わって梅雨に入り、そして夏は暑くて身体に障るので、講習会なんて受ける方もやる方も誰もやりたくありません。

 なので、秋からと言いたいのですが、秋は秋でお祭りから地域イベント、子供達の行事が軒並み有って、この時期に講習会を設定すると市民さんから文句を言われます。と言うことで、わたくしめ夏は超貧乏です。(^-^;;

 さて、その様な訳で此れから春までが一般市民さん向けの講習会シーズン。なので、多少の雪なら開催します。

 その講習会ですが、うちの協議会のスタッフには優秀な人が多いので、大橋先生のメソッドによる山に優しい壊れない路づくり講習から危険木・支障木処理などの伐採講習、重機を使わないで行う搬出・集材・トラックへの積み込みなどのバラエティに富んだ自給・自立的な農山村暮らしの基本的なベース確保のための講習を行なってきていますが、今期は広葉樹の伐採についてのものが多そうです
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 ところで当協議会では、みな一般市民さんたちが、自分たちで森林資源活用を通して山の保全に取り組もうと思える様な、敷居の低いローコスト(とは言っても道具がある程度揃っていないと危ないのが山の現場)でより安全で楽な方法を提案しています。

 そして、市民の皆さんで重機や小型林内作業車を持っている人は僅かですから、ローコストで使える可搬型で小さいエンジンウィンチが一台あれば多用途に使えます。
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 農山村では獲ったイノシシを運ぶのにも、雪で脱輪した車両をレスキューするのにも活躍するのが、そのPCウィンチ(ポータブルキャプスタンウィンチ)です。

 山の伐採や集材の仕事でもこのPCウィンチを使用するのが、一番汎用性が高いですし、また重機が有っても(例えばスインヤーダが有っても材の横取りなどに)、届かないところに活用できるので、後々に林内作業車など色々な機材が増えてステップアップしても無駄はありません。

 また、このロープ系を多用した掛かり木処理や、搬出システムは、設置も撤収もワイヤーと比較にならないくらいに楽ですし、また怪我も少なくて済みます。

 ただ、ロープはワイヤーに比べて損傷しやすいのは確かですから、ロープが擦れそうな土手の肩とか、混み入った林の中ではロープの延長線上にワイヤーを繋げて使う場合もあります。それに、ワイヤーロープは一般市民さんでも(農家や林家)持っている場合が多いですからね。
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 その様なことからも、小規模な山仕事ではロープ系とワイヤー系のコラボで、伐採や搬出のシステムが作れます。

 上の画像、こちらはワイヤーで軽架線を張ってPCウィンチで引き降ろす下げ荷ですが、樹上伐採で活躍しているポータラップを使ってロープで材が走らない様に制御できます。写真は4年くらい前だったか、島根県雲南市市民グループの方達の講習現場での風景です。

 皆さん、城趾の森を綺麗にしようと作業してたのですが、当然お城の跡は急峻な場所なので山の中から材を運び出すのは大変だったのです。


【里山の広葉樹率が高い島根県】
 自分が関東に住んでいた頃は、山の奥に行けば広葉樹林はありましたけれど、町や里に近いところは針葉樹の人工林の林地が多かったですし、その中で広葉樹を伐る機会は昔八王子の山奥で炭焼きの杉浦銀次先生の窯用のものを用意する時にやったことと、あとは9年前に横浜市の水源林保全を行う事業体に少しばかりいた時くらいでした。

 とは、言ってもツル絡みから枝絡みの危ない木ばかり伐っていましたね。下の画像はその中の一つですが、まだましな現場かもしれません。
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 そうは言っても、行政の事業としてやるものなので我々業者は掛かり木になるような難しい木にはノータッチです。ですから事前に現場前にマーキングする際にも細い木で本数を稼ぐ様にするために、わたしが難しそうな木にテープを巻いても、他の木に移されてしまいました。

 だから、萌芽更新もしそうもない大径木ばかりが残っている植生が崩壊に向かいそうな山になってしまいましたね。

 上の画像はその時のもので、神奈川北部の津久井湖近くの里山です。こういった里山は都市の中や周りにもありますけれど、持ち主さんや規制の関係で一般の人が伐採に入る機会はあまりないかもしれません。

 ところが、島根県や広島県など標高の低い近隣の中国山地は、山の上の方まで里山みたいなものですし、森林率が90数%とかいう場所ばかりで、その内の広葉樹率が70%以上というところが多いのです。
 つまり、市民による森林資源活用を推進している自治体では、市民さんが里山で広葉樹を伐採する機会が多いということになります。

 でも、この里山というのが都市近郊の割と整備された林分ではなくて、放置林の上に木が育ちすぎて枝絡みツル絡みが凄かったり、はたまた山陰側では湿気が多いので枝にビッシリと苔が生えていて、スローウェイトが降りてこない様な場合もあります。

 で、そんな地域ですが、広葉樹が活用できなかったのならば、一般市民さんの持っている山の整備ができません。

 その様なこともあり太い広葉樹、それも偏芯木を伐採することが多い市民さん向けに広葉樹伐採のワークショップを行なっているというわけです。

 1年前には、自伐協の予算で、耐災害生の高い作業道づくりのための講習の一環として路線上に出てくる「広葉樹や支障木・危険木処理のためのワークショップ」を作業者向けに島根県西部の柿木村で行いました。

 その時は若い連中ばかりを相手にわたしとスタッフの堀江氏との二人で対応したのですが、その堀江氏はODSKの島根講習の時にはデモンストレーターを行う樹上伐採の作業者です。

 普段彼は電力会社の支障木伐採の委託を受けている会社で十四年間電線に掛かった木を伐ったり、雪に埋もれながら現場に入って行く仕事もしていますが、今まで一度も怪我をしたことが無いという人です。
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 なので、精神的な部分、考え方や作業哲学がしっかりしていて、幾ら樹上で危なそうなことをしていても破綻する様な気配が見られません。

 島根でも増えていますが、自伐とか言って、素人同士でたまに他所の講習に行く位でプロの中で作業を一緒にしたことが無い人が多くいますが、その様な状況だと現場で必要な安全対策などの本質的な智慧が教われませんし、レベルの高い現場作業も見ることができません。

 なので、堀江氏の(素人が真似すると危ない)美しい作業風景を見せて上げようかと企画して、うちのスタッフであり自伐協のスタッフでもある田口氏に開催の企画を持ちかけたのでした。
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 そして夜は焚き火で宴会です。燃やす丸太はたくさんあります。夜中を過ぎても炎の勢いは収まりませんでしたね。


【スキルアップした市民のための講習会】
 で、一方当協議会が依頼されて行う一般市民さん向けの講習は年配の方が殆どです。この画像も雲南市での講習のものですが、雲南市ではわたしがもう5年くらいに亘って様々な講習をやっているので皆さんかなりレベルが高いです。
 チェンソーワークは、ジット・ネットワークサービスの島根支部が同じくらいの期間に亘って講習を行なっています。

 雲南市では2年前にも仲間の田口氏を講師に岡橋師匠から習った大橋式の山に優しい壊れない作業路開設の講習もやっていますし、当協議会が運営した林内作業車の特別教育もキャニコムの協力を得て企画開催した講習にも参加した人もいます。

 雲南市は幾つもの公共施設でチップボイラーを運用しているために何千トンもの原木が要るので、サプライチェーンの構築のためにも市民さんたちの協力が必要なのです。

 また、4年くらい前だったか当時の役所の若い優秀な担当者(彼が早く林業部署に戻ってこないかと心待ちにしている人たちが沢山居るんですけどね)と一緒に企画して地元の合同会社の土場で木質バイオマスの資源市を立ち上げました。こちらは、私が管理している可なりの放置サイトですが、この中に載せてあるバイオマス資源市は結構市民さんに人気があります。

 それからちょっと自慢しますがご容赦ください。この合同会社グリーンパワーうんなんには、わたしがアレンジして、ODSKさんとモキ製作所(薪ストーブや無煙炭化器など)さんの代理店にもなって貰っています。

 つまり木を出して貰う地域通貨券で素敵な役に立つアイテムを買う補助になるというシステムなんです。

 この合同会社グリーンパワーうんなん自体は、地域の会社や林業事業体が合同で立ち上げたチップ供給のための会社だったのですが、それ以前に雲南市の当時の林業担当の部長たちが国の事業を引っ張ってきて、たたらの里山再生特区の事業を展開した「たたらの里山再生雇用創造推進協議会」で行なっていた市民への講習事業を引き継いだのでした。

 其のために、マンパワーもアイデアも無かったので、周りで盛り上げて来ましたが、一年半前に入った方がやる気と使命感を持って業務に当たってくれる様になって、何とか事業を維持しているのが現在です。
 ま、色々バラしますけど、島根県下の自治体のやっていることは住民からするとおかしなトンチンカンなことだらけですが、それでも担当者がヴィジョンと信念をもって担当している時は、けっこう創造的なことが展開できます。それが先に書いたことですね。

 で、今の某市の林業担当者は何もやるきがなく、ただ予算がないを繰り返すだけ。なのでグリーンパワーうんなんの担当者が四苦八苦して県の地域振興の担当部署から(林業担当ではなくて)なんとか助成を取って来て市民さんへ還元している状態です。

 でも、ある意味においてグリーンパワーうんなんが自立して、今後利益を出して経営の内容を高めて行くためには必要な状況かと思いますし、グリーンパワーうんなんの現場の担当の方とはそんな話を何時もしています。

 客観的に観ると、此のただの民間の会社が、広い土場を用意して事業体や市民の材を受け入れていることと、レベルの高い市民への講習会を継続していること、また結構楽しくて盛り上がり森林バイオマスの資源市を開催していて、出荷された材の加工品を販売していることなどもありますし、先に書いた様に搬出のための最先端機材の販売や、薪ストーブ薪ボイラーの販売もできる体制ができています。

 今度はグリーンパワーうんなんも一般の方々に喜ばれそうなオリジナルのアイテムを開発したり、様々な体験会なども考えていますので、もし良い流れになった時には面白いサンプルになる会社に化けると思います。それには地域おこし協力隊で良いからマンパワーを増やそうと言っているのですが・・・
 前の記事の阿武町の例の様に優秀な人が来たら、相当面白い事業展開が出来るんですけどね。

 そんなグリーンパワーうんなんの土場に出荷している市民さんが大勢居ますが、その中でも特に熱心な人たちが下の写真の方達です。

 この中には庭師のご夫婦で樹上伐採(&調理師)もされる人も参加しています。もう、皆さん長年講習会に出られたり講習現場を提供して頂いているので、仲間意識みたいなものも生まれつつあります。
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 また、雲南市ではPCウィンチのセットを市民グループさんに貸し出ししていますし、また自分たちで購入した人たちも何人かおられます。また、スローラインのプーリーなどの掛かり木処理のセットも2地域で買っていたはず。

 そしてこのお父さん達の身体の頑丈なことといったら、若い人たちでも敵わないかもしれません。重たいワイヤーの束を背中に担いで両手両足で急斜面の這い上がって行く様な人たちばかりです。


【雲南市2019年秋 広葉樹伐採ワークショップ】
 そんな頼もしい人たちばかりなので広葉樹伐採のワークショップも盛り上がります。
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 二日間の最初は机上講習からです。
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 テキストも100ページ弱のものも用意してあります。
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 要するに、昔薪炭林として広葉樹を活用していた頃は若い内に伐っていたから、それなりに危なかったものの、チェンソーとクサビくらいで事足りていましたけど、その後放置されて大木化した広葉樹の伐採はプロでもやばいのに、何が危険か知らない素人が大した道具も持たずに伐採を始めたら、それこそウィドウメイカー、後家づくりにやられてしまうということです。

 他の記事にも書いていますが、こういった危険作業は作業方法のロジックだけに頼っていても不確定要素に対して対処できません。

 作業内容に対して時間軸上における因果関係、この木をこちらに倒したら、こう倒れた場合には、こちらに跳ねて、それがあの木を折って倒れて、それらがどうやって寝るか、などがイメイジで視えて来ないで、期待とか依存の気持ちだけで作業を進めると大抵は失敗します。

 そういった作業はたまたま上手く行っても、また失敗しても原因を理解していないので、また同じ様な失敗を繰り返すものです。そして何時かは大怪我をするというパターンでしょう。
 失敗グセの強い人は、どこかで転換しない限り、何時までも失敗を続けます。

 其のためには、イメイジ能力を高める必要がありますし、またイメイジを通して自分の身体へのプログラムを書き換える必要があります。
 なので、ワークショップでは、右脳と左脳の働き、そして両方を機能的に動かす方法についても学びます。
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 ただの、技術講習では危険要素は排除できません。自分自身の意識のマネージメントができない人はこういった職人レベルの作業には向いていないとも言えます。
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 能書きが多いです。が、感覚に分かっている人には無用です。また、こういった文章を理解できない人は、論理的推論もできませんから、右脳のイメイジ力の分析もできないので、他人に対して教えることが苦手ですね。
 だから、作業は上手でも人の育成ができないと言うことにつながります。
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 此れらの画像はパワーポイントで作ったスライドです。
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 受講者の皆さんに広葉樹伐採で危ないと思うことを考えてもらいます。

 と言うか、危なかった事がありますか?と投げると、後述する様に、一人が白状すると後から後から、痛い目に危なかった目に遭ったことを皆さん白状してくれました。

 事故や事故になりそうだった時のことを共有します。
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 わたしは記録魔なので、九年前に居た神奈川の津久井の山奥でもこんな記録画像がありました。イヤな男ですね。

 で、今回の雲南市の市民さんたちとのワークショップ。例えば、こんなお題もみんなで考えてワイワイ楽しく片付けてしまいます。勿論、危ないところはわたしの方で押さえていますけどね。
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 元径が60cmを超える15m位の枯れたカシの木。上の方の枝が折れて落ちてきそうで根元で作業をするのがかなり怖い木です。

 谷側にちょっと偏芯していて、ツルが効けば重心方向から90度横の作業道(これも大橋式で2年くらい前に入れました)上に倒せそうですが、作業テーマとしては、重心方向以外に確実に倒すというものが講習的には必要なので、できる手当はやってから伐採です。

 まずは、伐倒方向制御のためのガイドラインとしてのワイヤー掛けから。あ、違った先ずは作業用のロープを掛けてから人力で木を揺さぶってみました。

 思い切りやると折れそうでしたが、取り敢えず講習なので、落ちる枝はそれで落としてしまうところだけです。その後にウィンチによる牽引伐倒が待っています。

 最初にスローラインを使って、作業用のロープを樹上の二股に通してから、ワイヤーロープを山側に張って木が谷側に倒れないよう、また伐倒した際に谷側に樹冠が振れない様にしました。

 そして、PCウィンチのPCW3000を使って3倍力で樹冠を引っ張ります。ODSKさんの講習の時にもやって貰いましたが、そうやって枯れ木の折れるところまで折ってしまうと、あとの処理が楽なんですね。樹高も低くなり、他の木に掛かりにくくなりますから。
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 左写真では、すでに樹冠が折れて90度近く曲がって落下しようとしています。もう一つ上に載せた画像の中間辺り上に見える、左に折れて出ている枝との股の部分で裂けて折れました。
 そして上の右側写真では落下して突端が地面に届こうとしているものです。

枯れカシ伐木

 こんな木です。伐採者は地元の受講者の方。元小学校の校長先生で地元の皆さんと山の整備をやっています。オープンフェイスで受け口を作ってから追いヅル切りです。

 バーが届かないので左右から突っ込みで入れて貫通させましたが、その際の谷側の高い方はわたしがやってみせました。左右、同じくらいの高さに突っ込みで追い口を作るのは、コツを知らないと難しいですからね。そのコツをお伝えしました。

 そして、谷側にクサビを打ち込んでおいて、後ろヅルを切ってからサッと逃げたところへPCW3000で引いてもらい倒したということです。結果、無事に狙った方向に寝ました。

 もちろん、PCウィンチでなくてチルでも行けますし、一人作業の時にはチルの方がテンションを掛けたままで追いヅル切りを出来るメリットがあります。でも、相棒が居るならば、PCウィンチは楽ですね〜。

 3000ならば、チルの750kg引きのセットと総重量が変わらないことは、ODSKワーキング館ブログの記事にも書きましたが。3倍力にすれば牽引力が2.1tにもなりますし、まずは牽引速度がチルとは比較にならないくらい速いです。

 このPCW3000は雲南市の設備として貸し出し用があることは書きましたが、参加者の市民グループさんも2台持っています。ODSKの島根講習で講師側として来る人たちが4名全員が使っていますから、ちょっとした伐採作業にどれだけ使いやすいか判るでしょう。

 それを5年前に総輸入元に売ってくれと言ったら、北海道のエゾシカ猟様に輸入したもので林業では使えないから売らないと言われたことがありました(すでにPCW5000など150万円くらい買っていたのに)。で、ODSKさんから手に入れたら凄く良くて、林業現場人の道具と技の昔の号にワンパックウィンチセットの記事を書いたという訳です。

 その後に総輸入元も林業用として売り出した訳ですから、わたしがどれだけ貢献したかというまたまたの自慢でした〜。
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 さてさて、結果を言えば、ガイドラインのワイヤーは無くても大丈夫なくらいに芯はしっかりとしていました。だいぶ黒く滲んで居ましたけれど、斧で叩いて音が鈍かったところもそんなに傷んでいませんでした。

 それでも、状況によってはガイドのラインが効くときもありますし、重心方向に構築物や電線がある場合には、そういったラインで伐倒方向を制御する必要があります。

 その場合には、ワイヤーロープの方が伸びませんし、万が一破断した時の防護策さえ採っておけば、これほど頼りになるものはありません。

 こういった安全な伐採システムを構築するためには、先ずはODSKで扱っている高強度の繊維ロープと付随した道具類ありきです
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 当協議会の講習は、自伐型や木の駅に取り組む市民さん達や、趣味の薪ストーブのための薪材収集のための安全講習が殆どです。が、たまに事業体の人たちも参加することがあって、聞くとこういった手法を知らないし考えたことも無いという人たちが殆どだったりします。

 となると、木と一対一で相対して、重機などを使わずに伐採する手法については当協議会で教えている島根や広島の一般市民さんの方が経験値が多いかもしれません。

 いやいや、このワークショップの際に参加された方達に、最初に机上での講習を行う(100ページ近くのテキストを使って)のですが、その時間の中で皆さんが何が危険か考えて貰う時間も設定してありまして、実際のやばかった話もして貰っていますが。。。

 今回のワークショップの時には、一人が白状したら後から後から危なかった話や、自分が怪我をした話をみんなが白状してくれましたね。実際、皆さんが山で太い木を伐って土場に出荷している猛者ばかりですから、それなりに危ない目に遭っているんだろう、と思っていたら案の定でした。

 やっぱり力づくはいけません! 自伐とか木の駅でも結構人は死んでいます。一般人は労災には入っていませんから、詳しい調査はされずに新聞の片隅に、伐採中の事故で亡くなった、という程度しか載りませんけれど、事故の話はあちこちから伝わってきます。

 そもそも、自伐とか木の駅関係のトッププロの講習を頼んだり、あちこちでのレベル高い人たちの講習内容を聞いても、伐採は掛かり木にならない様にピンポイントを狙って受けと追いを作るのが第一だと言っています。

 が、そんな事で済むのは、吉野とか京都とかの林業地でちゃんと手入れをされた針葉樹の林分での話ですよね。

 そして、島根では全林協さんから出ている伐木造材のチェンソーワークの著者であるNPOジット・ネットワークサービスの石垣氏をはじめ島根支部の人たちが、ジット流のキックバックを起こしにくく、そしてよく切れる目立てと、安全なチェンソーワークのためのフォーム及び、ピンポイントを狙って伐倒する方法を徹底して論理的に教えていますから、市民のチェンソー事故は殆どなく、また上手な人たちが女性でも沢山います。

 それでも、こちらの放置林のヒノキの林では、必ず掛かり木になります。立ったままでいるか、傾いて掛かるかだけの違いです。日本各地でそんな山が多いんじゃないですか。

 建前で元玉伐りはやってはダメだとか言っても、チェンソー以外に道具が無かったらみんな元玉伐りをやりますよ。なんで言い切れるかと言うと、わたしの講習会の時に受講者に元玉伐りをやったことがあるかどうかを確認するからです。

 造材して市場に出荷する木を伐っている人たちでなければ、細切れにしても構わないからです。その上、チェンソーを使っての伐採方法は教わりますけれど、掛かり木の外し方って、ツルを切るとか、木回しで回すとか、チルで手の届く範囲の樹上にワイヤーを掛けて引っ張るくらいではないでしょうか。

 掛かり木が発生してからチルを用意して重たい根元を引っ張ることほど、苦労があって益がない虚しい作業はありません。それで、みんなで頑張ったという達成感は、もっと簡単に出来る楽な方法を知らないだけの虚ろなものです。

 でも、ロープや滑車、木回しなどがあれば、それだけでも掛かり木の処理は安全になります。また、掛かり木の元玉切りでも、受けと追いを作って掛かっている木が動かない程度にツルの厚さをギリギリにしてから、手で押して折り曲げる折り伐りと言われる方法がありますが、この折る部分にロープを掛けてから離れて引っ張れば、安全地帯から作業ができます。

 丈夫なロープ一本(あとはODSKで扱っている軽量で小型のロープ用滑車のセットが)あれば、作業を安全にそして楽にしてくれる訳です。

 ODSKのお客さんたちであれば、スローラインを使いこなしていますから、さらに楽に掛かり木の処理が可能ですし、掛かり木が発生してからでも対応できますものね。軽い木であれば、スローイングノットを作ってロープを投げて掛けるだけでも外せたりできますし。

 その様なことさえも知らないのか、市民組織を引っ張っている人たちが主催するサミットで、安全な掛かり木処理の方法をパワーポイントでプレゼンしてしていたら、1時間の予定を30分に切られた上に、この安全のために使うロープ折伐りの説明についての説明をしている最中に元玉切りは危ないと一言で片付けられる始末。

 わたしは現場に入る人たちに安全な技術を教えている立場ですから、教えた人たちが事故を起こして欲しく無いし、ある程度の責任を感じているから真剣に教えています。

 それを自治体とかNPOなどが自伐とか木の駅を行政の事業として推進するだけで、何が危ないかを知らない一般市民にチェンンソーワークだけ講習会を行い、どうすれば現場で安全な伐採や掛かり木の処理作業が出来るかを教えないまま山に入らせているのは不味いと思う訳です。

 チェンソーと軽トラだけで道具が済むのは林地残材の収集だけです。木を安全に伐採するにはそれなりの道具が必要なことは現場をやっている人たちは判っていることですよね。

 元々役所というのは責任を取れる立場では無いですし、あとは自己責任でとなりますので、市民側が自衛して賢くならないと、結局損するのは自分だけになります。

 島根の奥出雲でも自伐・木の駅で知り合いが一人亡くなっていますからね。プロの方の中には素人が山に入るな、という人も少なからず居られます。そう言われても仕方がない様な素人の人たちが居るのも事実です。

 かと言って、山主を含めた一般市民たちが山に関心を持たないと、利益中心の事業体とそれを後押しする役所に山を荒らされてしまい、場合によっては豪雨の際の土砂災害の要因になってしまいます。

 かつて20年くらい前に国が森林ボランティアを推して各地で活動が盛んになりましたが、東京西部で活動が盛んになったのは、昭和の何十年だったか多摩川が氾濫して狛江市の堤防が決壊し住宅が流された映像をTVで観ていた人たちが多かったからです。

 山が荒れていると水害に繋がると一般市民が認識し始めた頃ですね。自分も同じ様に問題意識を持って山で遊ばせて貰っていました。

 その様な思いもあって島根に移住した年に協議会を設立し、8年近く前になる翌年には、PCウィンチのセットや林内作業車、土佐の森軽架線など設備することができました。

 そして5年前にはODSKさんにもご縁をいただき、アーボリストの智慧と技術とともに高強度の繊維ロープを活用した、地面の上からの掛かり木の処理方法や危ない木の伐採方法などの講習を一般の方達向けに行なっているというわけです。

 今後、島根だけで無く、広島の安全な森の活用を行う団体や地域グループさんたちとも連携して、こういった講習も増やして行こうと考えているところです。

 また、ODSKワーキング館スタッフの中原さんにも再度島根に来てもらって一緒にやろうと頼んでいる最中なのですが、島根は遠いとか。ワーキング館のスタッフは忙しいので、帰ってからの溜まった仕事を片付けるのが大変ですからね。

 ということで、樹上伐採の人たちだけでなく、一般市民で伐採を行う人たちにとって必要な道具類がワーキング館にたくさんありますので、より安全で楽な作業を行うための方法を普及したいと思っている次第です。

 重機や高所作業車が入らないこんな場所での広葉樹伐採は危ないですよね。
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 さて、皆さんだったらどの様に処理されるのでしょうか。失敗も多い広葉樹伐採。ものを壊す位ならばOKかも知れません。命あっての物種。作業ご安全に。

以上