今年も有難うございました! 無事、事故も怪我もなく過ごせましたことに感謝です。年末は例年のごとく三日間のそば打ち三昧です。
 前に住んでいた集落の人たちに配ったり、関東の親達に送ったり、また地元の人たちに配ったりで、配送や発送もあるのでドタバタです。

 大晦日の夜になって、横浜の沢登り&キノコ山菜採りの仲間に30日に発送したお蕎麦の画像がメイルで送られて来ましたので年越しの儀ということで載せてみましょう。

 後に出てくる画像にあります様に、お蕎麦の後ろの器に盛り付けてあるワサビも津和野の生産者の方が畳式で栽培している島根DNAを持ったものです(多分鮫皮でなくて、普通の卸金?)。漫画の美味しんぼでフィーチャーされたものですね。食べた人は知っている香りも味も一味違うものです。

 その島根ワサビについてですが、前に住んでいた集落の隣のお婆ちゃんに昔話を聞いたことがありまして、昔背負い籠を背負って谷に入ってワサビを採ってくると、それだけで当時の若い人の初任給の1年分くらいの稼ぎになったとか。

 そのワサビがダメになったのは、拡大造林のあとの人工林から出る山水のせいだった様子。そのあとは中国産の安いワサビが輸入される様になって島根ワサビが衰退してしまったわけね。
 それでも、広葉樹林が多いのでしっかりやっている人たちは良いワサビを作っているというのが現状。また、地面の上で栽培する畑ワサビをやっているお婆ちゃんお爺ちゃんたちも多くおられて、茎と葉の部分が商売になっています。
 ところで、ワサビは特用林産物であることは林業者だったらご存知のこと。つまり、ワサビ栽培も自伐型林業のうちの一つ。

 他にも特用林産物は色々あるけれど、もう亡くなってしまった島根県浜田市の栗栖氏は山一つで暮らしてきた今で言うところの自伐林家。特に大きな収入源は東京の神社から引っ張りだこの姿の良いサカキ・シキミを育てていたことでした。
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 つまり木を伐って売るだけが自伐林業ではないということね。山のものを育てること、山造りを考えなかったら唯の収奪型の農業と変わらないでしょう。
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 因みに、後ろの方に座っているおデコが照っている人は、うちの島根林研の会長、奥出雲の響氏。農家林家の見本みたいな方。
 田圃は減農薬(ちょっと前までは無農薬のものも作っていた)、ハザ干し、肥育している黒毛和牛の牛糞発酵堆肥入り、杉檜の山は土壌もよく鳥たちが飛び交う手入れが行き届いたもの。
 そして、裏山には林内作業車が入っている製材所には大きな丸ノコ製材機があります。自宅の立派な柱や梁は持山の材を使って自家製材で調達、もちろん近所のお家のものも製材して上げたそうです。
 そしてなんと!牛舎は無節の材を使ったもの・・・椎茸は熟成栽培?の立派で美味しいもので農林水産大臣賞も受賞しているレベルのものです。

 響さん、未だに家にファクシミリも無ければ、当然ネットも無く、携帯電話も持たないという超アナログの仲間泣かせの人ですが、子供達の環境教育に引っ張りだこの人気者のオジさんです。
 こちら中国地方は山を持っている農家のお家は沢山あります。が、次世代の人たちで農にも山にも興味がないお家も沢山あります。本当は宝の山なんですけどね。

 それでも、我々の親しい若い仲間たちも、農のための林に軸足を置いている人が多いですね。農を大事にしている人たちは山は収奪の対象ではなくて育てるという概念がありますから健全です。
 山の公益的機能を維持するためには、林業という視点だけにはまっているとダメですね。山は林業者やお役人のためにあるわけではないですから。

 さて、横浜に送ったお蕎麦です。
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 萩焼の器に載せてみたそうです。お〜!上手に茹でてあるなあ。江戸蕎麦の場合は、釜前って言ったかな、茹でる人が蕎麦屋の中で一番格上の人がやるのだとか。茹で方が肝心ということ。

 兎に角、手打ち蕎麦の良さを最大限引き出すには大きな釜(鍋)で一気に熱を入れて短時間で上げないといけません。蕎麦の量に対して熱量が足らないとダラダラの締りのない蕎麦になってしまいがち。長い時間かけて芯まで火を通すというのはご法度ね。

 だから、うちの場合には大勢に出すときは、薪を焚いて羽釜でグラグラ沸いた湯でサッと茹でるという手法。そして流水で打ち粉のヌメリを洗って取り、冷水でサッと〆てから、よく水を切って出すということに。

 これが、水が山水の美味しい水だとさらに味が違うんだよね。お店だと、信州駒ヶ根の駒ヶ根高原にある駒草屋さんがそう。
 ここは中央アルプスの地下水を使った最高に旨い水なので、蕎麦だけで食べても美味しい。これは蕎麦屋として最高の条件かも。

 そして蕎麦ツユは若干甘めのの円やかなタイプだけど、この細いお蕎麦と相まって独特の爽やかな食後感がある(ちょっと自慢させて貰うと、わたしはもっと細い蕎麦切りができる。でも、細ければ旨いかというとそんなこと無いんだよね。お蕎麦の味とツユの味に合わせた適度な太さが良いです。

 だから、太い蕎麦でも練りと延しがしっかりと入っている事が前提で、その上で茹でが上手で、使っている蕎麦粉の素性と合わせるツユの味が合っていれば美味しい:私は練りの際に鍛冶屋の師匠に教わった鋼の折り返し鍛錬の技法を応用している?.....)。
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 駒草屋さんは、駒ヶ岳の登山口のところにあるお店なのでお水の条件がすごく良いのね。ここはお世話になっている伊那のアウトドアショップKさんのスポーツ館がこの駒ヶ根高原にあって、その直ぐ近くなので社長の木下氏に連れて行って貰って知ったところ。

 だからスポーツ館の水道のお水も美味しい。やっぱり山が良いとお水が旨い。ね、山の植生と土壌って大事でしょ。食と農にはまず健全な山ありき。

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 長野には此の様なお蕎麦を出す流行っているお店もあり、信州そばも昔からあちこち探索しているけれど、この駒草屋さんは好きだな〜。

 あとは島根に来てからもあちこちお蕎麦の調査をしていて美味しいところもそこそこあるけれど、自分たちが好きなのは広島の神石高原町にある雪花亭さん。ここの江戸前の二八蕎麦が良いですね。

 先日、庄原で講習を行ったので翌日に寄ってみたら大混雑。何でもTVに出たそうで、奥さんが「雪花亭じゃないみたいでしょ?」、と仰っていた。以前はメニューにあった自分たちで栽培していた蕎麦の実を挽いた田舎蕎麦が無くなっていたね。
 なので、雪花亭さんは江戸蕎麦が好きな人にはおすすめ。
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 ご主人は東京で修行した脱サラの方で仲良くして貰っている。おつゆのお味もお蕎麦も自分たち好みで凄く美味しいけれど、何が違うかと言うと「蕎麦に力がある」こと。

 さて、力ってなんの事か判らないと思うけれど、自分が東京の有名なお蕎麦屋さんとか流行っているお店を回ってみて、当然どこも美味しいわけですが、食べた後に感じるのは味だけではなくて、食べ物としての力があることとか、または無いことなど。

 別の言葉で言うならば生きているか生きていないかかな。例えば山菜を山で採ってすぐに調理して食べているとエネルギーを感じることが多いのね。此方の猪肉なんかもそうかも。

 食べたあとに元気になるとか、力が貰えるとか、そんな感じかも。それを自分たちは力があると言っています。

 だから、中には流行っているお店に行って確かに美味しかったけれど、食べ物に力が無かったよね、という話になるけれど、そんなお店のご主人はどこか疲れた感じで覇気がなかったりすることも。

 あとは、元蕎麦屋(両親と三人でやっていた)の嫁さんと話をするのは、お運びさんに依っても味が変わるよね、ということ。
 結構、これってあるんですよ。食べ物って、作り手だけでなく、お店の人の想いや愛によって一味変わっちゃうのかもと・・・

 特にお蕎麦はシンプルな食べ物なので、その辺が出やすいのかもしれませんね。それ以前に、手打ち蕎麦の素性は見た目にも違いが出ます。食をフィーチャーした雑誌のお蕎麦のアップ写真を見ても、このお店は行ってみたいと思うか、それとも食指が動かないかは写真での見た目も大きな要素です。

 勿論、撮影のバックグラウンドがあることは想像できて、撮影までに時間が掛かって、あっ、このお蕎麦勿体無いね、延びてしまっている、ということもあります。ところで、このページの4枚のお蕎麦の画像からはどんな情報が得られるでしょうか。

 さてさて、食べ物に力が有るか無いか、こんな話はあまり一般的ではないかも知れないけれど、また自分たちが弱いのか敏感なのかは解らないけれど、美味しいとか以前に口に入るものが生きているのか不活性なのかは感じやすいのかも知れません。

 因みにわたしが年末に打つ蕎麦の水回しのお水は、北広島のブナの原生林の湧き水ね。この辺じゃ一番美味しいお水。
 広葉樹林ばかりの匹見町には普段の料理用のお水を汲みに行っていて、これはこれで良いんだけど、やはりブナ林のお水は格別。

 あ、蕎麦粉は嫁さんのお店の取引先だった東京の専門の粉屋さんから取り寄せているそば粉各種ね(時期によっては北海道産を)。江戸前と田舎と両方を分けて、地元の人たちにはちょっと太めで黒い田舎蕎麦、関東の人たちには江戸蕎麦を打って送っています。

 そうそう、うちは二八で打っている。十割も以前は打っていましたけれど、十割だと胃に重いから沢山食べられないし、それに二八の方が喉越しが良いので手繰る食べ方(ツルル〜っとね。逆は此方の奥出雲で出る様な太い蕎麦をモグモグと噛んで味わって食べる蕎麦。蕎麦と一言で言っても食し方も文化も違う)に向いている江戸蕎麦風が好き。

 と言うことで、いくら旨い水を使って腰がある蕎麦切りをしたって茹でが下手だと蕎麦は台無しですからね。流石江戸っ子の彼。旨い蕎麦を知っているからこそ自宅でも旨い蕎麦にして食べてくれている。送って良かった良かった。

 それでは年越し蕎麦で乾杯!! 良いお年をお迎えくださいね。拝