単品だけでも便利なハンドウィンチのプラロックをさらに強力に活用するための併用技や、プラロックの使い難いところを使い易くする方法(改造)などの記事。
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 此れからチルホールやプラロックを導入しようかと検討している人や、すでにプラロックを使っている人たちにもお役に立てば幸い。

【山に入る人の作業用には勿論、雪道を走る事が多い人の車両系のレスキュー用に常備しておきたいプラロック】
 持っていると便利なのはマーベルのプラロックというハンドウィンチ。うちの協議会では7年以上前に出来杉計画さんのブログ記事を観てから導入。

 それ以降、掛かり木処理のためのロープワーク講習会の受講者さんたちにも紹介していて、導入した方たちは皆さん重宝して使っているようだ。
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 プラロックにはMPR-1000とMPR−2000という機種があるが、取り敢えず小型の方のMPR-1000があると良いと思う。
 山をやる人たちは結構以前から使っている人が多い。元は電設さんが電線を張るのに使う道具の様だ。

 標準で10mのロープが付いている(オプションで長いものもある)ので、その距離分だけ牽引できる。ホームセンターに似た様なものがあって、ワイヤーを2〜3m巻き取るタイプのものだが、これは荷締め用だろう。

 掛かり木の場合にはもっと長く引かないと外れない場合が多いので、いくら安いからと言っても2〜3m引くだけの道具では無駄な投資になると思う。と、言うか、もう30年以上前に海外製の同様のもので車のスタックレスキュー用に買ったことがあるが、一度使ってみて役に立たなかった為に結局お蔵入りさせたことがあるからだ。

 牽引力はMPR-1000の本体に引張り200kgfと書いてある。力はあまりないけれど、雪でスリップして動けなくなった車や、軽自動車程度が側溝へ落ちたくらいの脱輪車だったらそれでも十分かと。

 MPR-1000は、ロープを本体に巻いておくと、軽トラの助手席の足元のマットの下に収まってしまうコンパクトなもの。この小ささがよい。
 空荷の軽トラはリアが軽いので、農道から畑などに入ると脱出できなくなることがよくある。4WDだったらまだ良いけれど、2WDの場合には何らかの助けが必要になるので、こういったコンパクトなウィンチが必要な場合が出るかもしれない。

 そして4WDだと、これまた過信してスタックすることも無きにしも非ず。タイヤがノーマルだと泥のところにはまってしまえば4WDだって動けなくなることがあるし、雪だったら尚更だ。
 ジムニーの様にタイヤ径が大きければ、まだ良いけれど、タイヤ径が小さいと腹底に溜まった雪や、タイヤが埋まって腹底がつかえてしまい亀の子状態になるからね。

 なったことがある人はご存知だと思うが、亀の子になって片輪が浮くと車自体の機構で駆動力が掛からなくなる。接地している方のタイヤに動力が伝わらないので動きがつかないのだ。
 それが4WDであっても前後のタイヤが対角線上に浮いてしまうと動けない。これを対角線状スタックと言った様な覚えがある。
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 島根に移住した当初の出勤風景。我々が移住する前年には1.5m積もったことがあるところ。山陰の雪は湿気て重たいから難儀する。
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 上の画像は大分前だが、神奈川の藤野町というところで石窯焼きのパン屋とか無農薬栽培をやっていた奴から電話が来て、畑に猿が出たので追いかけて行ったらハマって抜け出せないとレスキュー依頼があって助けに行ったところ。
 青の軽トラの後ろにあるオレンジ色のものは、排気ガスで膨らむエアジャッキというもの。4tまで対応してくれる。

 この時は埋まったタイヤの周りをスコップで簡単に掘って、私の軽トラで引いても出てこないので、さらに車を浮かしてから、腹底からタイヤ周りをマジで整地をしなければならなかった。
 そう言えば、オーナーの奴は我々夫婦が土方仕事をしている間中商売の電話をしていて何も手伝わなかったな〜。

 ということで、4WDを過信しない様に。もしこれから四駆の軽トラを買う人がいたら4WDの副変速機付きのものを選ぶのであれば、さらにデフロック付き(軽トラの場合にはリアの車軸を直結にするオプション機構:スイッチ一つでロックオン)を注文した方が良いかも。
 上記の様にハマった時に、デフロックがあると両方のRホイールに駆動が同時に掛かるので強いよ。
(もう少し説明をしておくと、普通は片方のタイヤが空回りしたら、もう一方は駆動が掛からなくなる=オープンデフ。その場合に、R駆動ならばサイドブレーキを断続的に効かすか、右足でアクセルを踏みながら左足でポンピングブレーキをやる)

 上画像の白の軽トラは当時のわたしの愛車。デフロック付きだったので、場所によってはジムニーのノーマルとタメに走れた。これって十五年くらい前のことだなあ。

 相模川の河原にはこんな四駆遊びをする場所があって(MXコースもあって若い時は通っていた)、ここで田舎暮らしのために四駆軽トラのポテンシャルテストを事前にやっておいたってこと???
 ま、雪道も富士山の周りでドリドリやって練習しておいたからお陰様で街場育ちの癖に全然問題なしなので、真冬の中国山地山越えも大丈夫で広島での仕事ばかりしているし。

 ただし、デリカには様々なレスキュー道具は積んである。チルホールだけでなくてエンジンウィンチもね。備えあれば憂いなし?いやいや、道具の整理や管理は結構大変。
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 さて話を戻して、プラロックは、掛かり木の処理からレスキューまで使えるので非常に便利である。他にも林内作業車のおじぎ(転倒)防止用にテンションを掛けるのにも使い易い(後述する様に延長用の高強度の繊維ロープと併用すればアンカーが遠くても大丈夫)。
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 また、掛かる荷重にもよるけれど、レスキュー側の車両の引きずられ防止用にも使える。持っていてももし使いこなせていないならば、延長用になる強度の高いロープの存在や使いやすいロープ用の小型プーリー(滑車)などの活用方法について知らないからだ。

 こういった道具類については今まで本ブログで書いてきていることだが、本記事ではプラロックとの併用について整理しつつ書いてみようと思う。

 プラロックの良いところは軽量でコンパクトなところ。その利点を活かしつつ小さい入力で大きい出力ができる様になったら汎用性が高いでしょ?

 また、ウィンチングでカバーする距離の延長については、プラロックと共に、もう一本の長くても軽くて扱いやすい高強度の繊維ロープがあればいいだけ(ただし、高性能林業機械や電動ウィンチでも使い始めたダイニーマとかシンセティックという素材のものは不可。これはドラム巻き取りのみの単純な使い方だけに対応。ロープ自体に倍力をセットするための結び目を作ったりプルージックループを使ったフリクションノットで締め込むと、強度が弱くなったり、また溶断の原因になるから)

 それらが揃っていれば、軽車両のレスキューくらいはあまり心配する必要がない。そうなれば、山菜キノコ採り、山仕事から渓流釣り、山奥での小屋作りなどなど、今まで入って行けなかったところまでアクセス出来るかもしれない。

 もちろん、それだけでは心もとないのでスコップとかクマよけスプレーなども有れば安心。農山村での活動範囲を広げるには、まずはレスキュー道具から。

 この記事の前の田舎暮らしの日常(?)でも活躍(1)には、車両のレスキューについて書いたが、プラロックがあると下記の様なケースにも応用できる。
脱輪車レスキューベクトルのコピー
 プラロックで牽引するのではなく、他の車両に引っ張って助けて貰う場合でも、車が谷に落ちないための控えにも使える。前の記事に書き損なったが、某役場の4WDバンが谷に落ちかけた時にデリカで引っ張ったが、その時の控えはプラロックのMPR-1000で採った。

 軽のバンで軽かったし、また路肩から滑り落ちそうになっていた程度なので、プラロックでの留めで充分だったね。
 ただし、これはプラロックでテンションを掛けたからなので、ただロープで繋いで縛っただけだと、人力でテンションしたくらいでは普通のロープは伸びるために、留め側のタイヤは谷側に落ちて行く度合いが大きくなる可能性大。

 それから此れとは別方法の脱出の仕方だが、東京、高尾駅から見える山の上の神社の整備をやっていたころだから多分20年近く前だと思う。神社の山のスイッチバックの車幅ギリギリの作業道を登り降りしていた時に、当時乗っていたデリカの4WDバンをバックで降りていて谷側に脱輪させてしまったことがあった。

 下の写真はその時のものではないが・・・この手前と奥が急峻な細い参拝者の人たちの散歩道、と言うよりも神社への荷揚げ用のスイッチバックで作った作業道。軽トラ用なのでデリカの車幅ギリギリ。
天神社山
 足掻いたらますます谷に向かって滑り、さらに車が谷側に傾いてしまったので、積んであったチルホールで屋根のラックに控えを採ったのだが、どの様にやったかというと、「振り子状に動ける様な位置にアンカーを採っておいてから」、さらにチルにテンションを掛けて四駆のローモードのローで動いたら楽勝で自己脱出。

 この様な場合にチルでなくてプラロックがあったら、それでも大丈夫だっただろう。屋根にラックを載せて居なければ、窓を開けてルーフ自体にロープを回せば良い話。要するに自己脱出、自己レスキューには良い道具類が必要ということ。

 それにしても此の神社の裏山は楽しかったな〜。神社林はどこでも居心地が良いよね。ここの神社では草刈りや掃除も結構やったけど宮司のオヤジと二人で道の補修などの作業もやっていた。でも人力だった。この頃から山に上がる急峻な作業道づくりに関わっていたということに?
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 余談だが、って、このブログは余談ばかりなんだけど、この宮司のオヤジは悪オヤジで、昔ホンマもののウィリスのJeepに乗っていた時には、神社の高い参道の階段をJeepで登っていたオッさん。その上、正月の中央道の陸橋の上から富士山参拝の暴走族の車列に石を投げていた人ね。
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 上の軽トラは二台ともわたしの愛車だったもの。緑のは白の軽トラが来てから宮司のオヤジに上げてしまったキャリイの四駆550。5速にミッションを載せ替えてあってやたら速かった。昔の道志道の峠辺りじゃスカイラインGT追い回せたくらい。

 そう言えば、この緑の軽トラは日野市のマニアックな酒屋のお兄ちゃんに貰ったもの。そして白の四駆軽トラ、デフロック付きも仕事仲間が買ってくれたもの。そのまた前の昔から結構車は貰っている。で、わたしも同じく何台も上げている。

 街場暮らしでも物々交換対価交換方式の仲間がたくさん居た。そして田舎に来てもそれは同じ。だからわたしらは経済崩壊が来ようが大災害が来ようが大丈夫な様な気がする。ま、気がするだけかも知れないが、取り敢えず他人を助けられるくらいの地力はあるかも知れない。

 山仕事に関わっている人たちは、スキルや道具を整えて、自分が助けられる側ではなくて自身が助ける側に回って欲しいね。

 それには、山でハマったら自己脱出できる道具とスキルが必要だし、それは人生でも同じ。大した目的もなく田舎に移住して、税金を原資とした給料を貰った上に資格を沢山取らせてもらいながらも、田舎暮らしでスタックして都会に逃げ帰った奴なんてのは、自己中から抜け出せなかった奴らばかりに見受けられる。

 理由をいくら並べても、って、そういう連中に限って色々理屈をつけるんだが(出来ない理由を述べるのが得意?常に他人や社会が悪いと)、結果は人間性の反映でしょう。常にお金中心の損得勘定を基にした経済圏しか作れないんだろうな。

 田舎暮らしはお金を基軸としないネットワークづくりに醍醐味があると思うんだけどね。それは街場だって同じで、わたしの祖母が暮らしていた横浜の下町だって人間味が有ったし、うちの母親も同じ種類の人間だ。一昔前の日本は助け合いの精神が残っていた。

 これから経済がストップした時に、そんな精神も繋がりも無くなってしまっている都会の暮らしはどうなるんだろうか。我先にトイレットペーパーを確保する浅ましい人たちが優位の地域が崩壊したら想像するだけでも怖いよね(他の記事に書いたみたいに、うちは炭や燃料をデポしているのと同じくトイレットペーパーも予備を持っている)。

 さて、プラロック。ディープな田舎に住む人や自給率の高い生活をしたい人、そして山の奥に入って仕事をする人は軽くてコンパクト、そして値段もそこそこのプラロックと、あとは延長ロープなどの道具を装備しておくと何かと便利だと思う。
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 右がMPR-1000で左がMPR−2000。2000はレバーブロックとかチルホールなどの牽引器具と比較すれば軽いことは軽いが、それなりにボリュームがある。でも、小型チルの半分くらいかな。
 重さは2.9kgだから、チルホールの700kg引きのセットとよりも全然軽い。S7の場合では本体が8kgくらいでワイヤー20mが8kgくらいあるので併せて16kgにもなるからね。

 以前、林業事業体にちょこっと在籍していた時には、このチルホールのセットとチェンソー(燃料、オイル、工具)、弁当と飲み物を持って急斜面を移動しながらヒノキの間伐&掛かり木処理をやっていた。地下足袋の中の足の爪が死んでボロボロになったね。
 当時、すでにプラロックはあったはず。知らないということは・・・

 下の画像は小さい方のMPR-1000とチルホールのS7セットとの比較。MPR-1000はコンパクトにまとまるのでデイパックにも収まる。重さは1.8kgとなっている。チルホールセットの重量の十分の一近い。
 そしてチルホールのワイヤーは20m。プラロック標準は10m。ということは応用の仕方次第。
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【プラロックの牽引力とその応用】
 プラロックはMPR-1000のこのコンパクトさがが良いので、自分の場合にはMPR-1000にプラス3倍力システムをセットして使うことが多い。
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 オレンジのバッグには破断強度2.8tの10mmロープが60mが入っている。これを3倍力にできる様に小型プーリースチールカラビナのセットが二つ。あとは8mmの切り売りロープ1.6mのプルージックループ(ワイヤーで使うキトークリップなどと同じ働きをするもの:ロープに金属デバイスを使うと溶断、破断が起きやすいので使わない方が平和)。他ベルトスリングが1本か2本。

 MPR-1000の牽引力はカタログスペックでは横引きが1t近いことになっているが、本体には引張り200kgf(でカムを回すトルクがある)と刻印されている。また、MPR-2000は2t引きがカタログスペックだが、本体には350kgfと刻印されている。

 そして両機種共に、荷重を掛けっぱなしの場合には安全率を掛けた1/6の力で使う事とシールが貼ってある。1tの1/6は170kg弱で、2tの1/6は330kgちょっとだから、日本的表現の常用荷重の大凡の数値を刻印したのだろうか。

 でも、実際に700kg引きのチルと比較しても、本体に刻印されている程度の力の様な気がするけれど、それでも延長ロープがあれば動滑車を使って3倍力にするとかなりの牽引力を発生できるからよしとしよう。

 それよりも、組み合わせる道具立て次第で、チルホールよりも持ち運びが全然軽くて、ワイヤーをたたむ面倒が無い使い易いシステムが構築出来るし、延長ロープの種類次第では、牽引力がプラロックで足りなければ、次のステップとしてエンジンウィンチのPCW3000でも引ける様にシステムを作れる。

 また更に延長したロープの強度があればバックホウなどで引いても良い様な強力なシステムになる(なので、小型プーリーは鉄かステンレスプレートの専用のものを用意登山用などのアルミ材質のものは一気に破断するので不可)。

 下図は講習会のテキストの1ページで他の記事にも載せているものを再掲してみた。
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 つまり、赤丸の位置に赤の四角の部分に書かれている牽引の動力を入れ替えできるシステム構築ができることを説明している。

1)人力:3倍力が組めると人力でも相当な力を発揮できる。プーリーのセットを増やせば、さらに9倍力にも展開できるので、別記事にもある様にオバさん達で直立に近いヒノキの掛かり木を寝かすことができる
 ↓
2)プラロック、またはチルホールなどの人力ウィンチ:プラロックやチルホールの牽引能力の3倍の力を発揮できたら相当な牽引力になる。此れらを設置するには、上図作業者の手の部分に図中のフリクションノットを設置してウィンチのフックを引っ掛ける
※フリクションノットを設置すれば、牽引を緩めてウィンチのフックを掛ける場所を楽に自在に移動できる
 ↓
3)ポータブルエンジンウィンチのPCW3000など:PCW3000の牽引力は700kg。その3倍だから2tの牽引力になる。そして、PCW3000はロープをそのまま牽引できるのでロープが長ければ、その長さ分を牽引できるのが利点。また人力ウィンチとは違い牽引速度も速い。もっと力と速度が欲しければ、上位機種のPCW5000を設置すればよい。1)〜3)までは、車両が入らない山の奥でも実現できる作業方法
 ↓
4)作業現場が道脇で、牽引車両、バックホウ:バックホウが入るならば強度が更に高いロープを使用

5)その場合、状況的にロープが立木や岩、路肩に擦れてしまう場合には、そこだけワイヤーロープを繋ぐ手もある

 この様に、“必要によって牽引方法を入れ替えるだけ”、というシステムができる。それには、上図の緑色のロープの部分に最初からポータブルエンジンウィンチで使える熱に強く高強度のリギングロープ(10mmだったらシリウス500、12mmならば純正12mmか低価格のヨットマスターがオススメ:10mmの純正はキンクが酷くて安売り店で買った仲間が往生しているから×かな)を使っている事が条件となる。

 そうすれば、バックホウなど更に強力な牽引力を持った方法にも使える様になる。擦れる部分だけワイヤー混在でも良いが、ロープシステムの利点は、ロープバッグを持って歩いていけば、敷設が簡単に出来ること。また片付けはロープを手繰り寄せながらバッグに端から仕舞っていけば良いことにある。
 鋼線のワイヤーロープを敷設したり片付ける手間とは段違いに楽なこと。つまり高強度の繊維ロープの倍力システムを持っていると汎用的に使えるということ。

 また、そのロープを活用する為には、ロープ用で強度を持ったステンレスプレートのプーリー(ブロック)とスチールカラビナのセットを使う必要がある。

 え〜と...誤解の無い様に書いておきますが、わたしはODSKさんの販売者ではないので、此れらを皆さんが購入されたからといってマージンとか入るわけではありませんので。。。

・さて、ここで大事なことは3倍力や9倍力のシステムを設置すると、その分3倍や9倍の距離を引く必要があるので、ロープはその長さに対応するものが必要ということ。その場合でも低価格のヨットマスターを100m(4万円弱)用意すれば30mの牽引距離をセットできる。

・また、プーリー間の引き代分を目一杯引き切った際に、上図の様に移動が簡単なフリクションノットで牽引点を作ってあるのなら、手でフリクションノットを引っ張って移動させることで引き代を再設定し易いこと。

・それから逆流れの防止システム(クレムハイストの様な簡単なフリクションノットから他のロープを使って立木に巻くだけでもできる:ただし、ロープと立木が傷むことがある:ロープを傷めないためにはポータラップを使うのだが、コストがね)を設置しておけば反力があって引っ張られている状態の時にも、この様な再設定が行い易い。

 こちらは、広島県の世羅町の薪長者の方々。お母さんたちもロープで3倍力が組める。自分で組んだ3倍力システムを使ってお父さんとお母さんで力比べしてみると・・・
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 お母さんにズルズルと引っ張られるお父さん。
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 お母さんたち、3倍力から9倍力へ展開もできる。
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 9倍力が作れると人力でも相当な力が発揮できる。そこへプラロックのMPR-1000、引張り200kgfを設置したら1.8tの牽引力が発揮できる。
 この薪長者の世羅町のお父さんお母さんたちは、MPR-1000もMPR-2000も持っている。それからポータブルウィンチのPCW3000もね。安全作業をお祈りしておりますよ。


【プラロックの使い難い点と改良(改造)方法】
 それからプラロックはコンパクトで軽くて、距離も長く引けるので非常に便利だが、それでも弱点は幾つかある。

 まず、使いにくいのは、チルホールと違ってロープの動きをフリーにしたままに出来るレバーロックシステムが無いこと。
 その為に、ラチェットの逆戻りを止める爪を外すレバーは指で押したままにしていないと、牽引方向の反対側にはロープを引き出せない。要するに片手でレバーを押しながら、もう一方の手でロープを引き出さなければならない(チルホールならば解除レバーを引いてセットすれば、どちら方向にもワイヤーを出し入れできる)。

 1000だと片手でもロープの引っ張り出しが出来るが、特に2000の場合には重たすぎて、とても仕事にならないくらいだから一人では使いにくくて仕方がない。

 なので、自分で改造してこんなものを取り付けている。1000にも施してあるが、この2000と比較してスペース的な問題で、かなり面倒な改造作業になる。
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 ステンレスの太い番線で作った回転させるだけのロック機構。回せば簡単にレバーが外れる。
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 道具は自分で使いやすい様にするのが良いね。MPR-1000だと狭いスペースに機構が入っているので大幅に形状を変更する必要がある。
 先ずはレバーが大きく起きる様に本体に当たるレバーの裏側を削ってしまう。
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 それでも足りないので本体フレームの形状を削って変えてしまった。
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 何もディスクグラインダーを使って削っている。ステンレスの番線の加工は、プライヤーとペンチ、ハンマーと金床を使った。

 が、MPR-1000の場合、ここまで本体を削る位だったら、この削った部分の左右にスリットを入れて板状のものを上下に動く様に差し込んでも良いかもしれない。
 スリットを入れるのには、ドリルで小さい孔を開けてからルーター用の小さいダイヤモンドディスクで整形するのだろうか。これはこれで結構面倒かも。

 ともあれ、この付加機能があるとロープの引き出し作業に手間と力を掛ける必要が無くなった。全然楽。こんな簡単な機構で良いのだから、メーカで最初から付けてくれれば商品価値がさらに上がるのにね。少しくらい価格が高くなったって、需要は沢山あると思いますよ。

※2020年3月13日追記:そう言えば、プラロックって買った時には、ロープ末端にアイが付いていないんだった。あの手の三撚りロープのスプライスは非常に難しい、というか何度もチャレンジしたが、自分は未だにアイを作れていない。なので、単純にもやい結び(ボーライン)でアイを作っている。他の記事に書いてあるかも知れないが、解くことが必要な場合には、もやいを作るときの最初の輪っかをWにしておくとあとで解きやすい。そこにフックを取り付けてあるけれど、一応金属類を使うと、万が一破断した時に作業者に向かって飛んでくることがあることを前提に、必ずリダイレクト(滑車を使って方向転換)を入れる様にしている。牽引対象と作業者が相対しない様にすることは牽引の基本。


【逆流れ防止システム】
 あとプラロックの弱点は、構造や材質自体が弱いので動的な荷重が掛かった時に壊れるとのこと。

 自分の場合にはそんな使い方をしたことが無いので分からないが、プラロックで牽引伐倒した材が飛んだり、また斜面を落ちていく様な場合には本体が壊れる様なことがあるらしい。

 そういった事が発生しそうならば、株と一番玉を結んでおくか、または延長ロープを使う場合には逆流れ防止用のフリクションノットを使ったシステムを組んでおけば良いのだが、、、建物を壊すとかだったら別だけど、ま、普通の現場じゃやらないよね。

 でも、時と場合によって必要な時がある。下記の画像は以前掲載した子供達とジップラインを張った時のもので、人力で主索にテンションを掛けた時のもの。

 逆戻りしない様にしておかないとテンションが緩むから逆流れしない様にフリクションノットを設置してある。設置の参考例に画像を載せてみる。
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 アップにすると下画像の様になるが、この場合逆流れ防止の部分は白色の楕円マークの中なのだが、そこには一つ省いているものがある。
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 本来ならば、折り返しの滑車の部分よりも前は下記の画像の様になる。上画像の場合にはロープ折り返しのためのプーリーが小型だったので下画像の紫のプーリーの役目を代用させてしまった。
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 逆流れ防止用のフリクションノットの後ろには巻き込み防止用の専用の小さなプーリー(応力は掛からないので安いものでよい)を設置しておくのが通常。これが、ウィンチや、大きなプーリーにフリクションノットごと巻き込まれるのを防ぐための役目を果たすものになる。
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 そして逆に流れてしまい、ロープに逆方向の荷重が掛かりっぱなしになった場合のために、前の記事でフィーチャーしたポータラップがあると必要分だけを緩めることができるというわけ。
 ただ、ポータラップ自体が高額になるので、無い場合にはロープと立木が傷むこと前提で、ストッパーの役目を持っているロープを木に巻きつけておく方法がある。

 この逆流れ防止装置のセットについては、オフィシャルサイトの“自伐林業への道”の中のお知らせ用ファイルリストのページにダウンロード用のエクセルファイルへのリンクを作ってあるので、そちらからダウンロードされると役に立つかも知れない・・・いやいやとても高額なので、自分で必要なものだけピックアップして手に入れた方が良いかなと。。。

 逆流れ防止という機能は、人力でロープ牽引を行う時にも途中で一休みできる様になるし、万が一逆に引かれた場合の事故防止にもなる。
 一人作業が多い人はマスターしておくと便利な技だ。


【高性能林業機械を使ったスマート林業とは、まるきり切り口も手法も違う住民による地域の山のお守り】
 さて、わりと使われているプラロックを今頃採り上げて記事にしているのも、軽くて安くて(チルホールよりも断然)チルホールの代わりになるからだけではなくて、ロープの倍力システムと組み合わせると、使い方次第でほんとに強力な道具になるからだ。

 一般市民が地域の山の整備をしようとしても、みんながバックホーを持っているわけではないので、重機を使わずに安全に木を伐採して、そして山から木を出し里に降ろす方法が必要だろう。そうやって敷居を低くしないと山の整備は進まないことになる。

 自伐型林業とか言っても、誰もがバックホーや林内作業車を用意(それぞれ新車だったら併せて500万円は超えるだろう)して投資した以上のお金を稼ごうと思うわけではないからだ。

 それよりも、自分たちの周りにいる人たちは引き継いだ山をなんとか整備しなければ、被害がどんどん酷くなりつつある獣害対策にもならないし、ただひたすら山が荒れて行くのを危惧している人たちが多い。

 その対策としては、一般市民の人たちがスキルと経験値を上げること、安全作業に対する認識を高く持てる様に意識醸成していくこと、そして作業を楽に安全にする新しい道具と手法を知ることも大事だろう。

 世の中、どんどん進歩している。樹上伐採のための道具や手法も側からみていてもここ10年で物凄く進化している様子だ。

 自分の場合には、木登りを積極的に行う方ではない(高所恐怖症なので)が、7年くらい前に足助キコリ塾の稲垣氏からポータラップやレスキューセンダー、サムソンのアムスティールブルーロープ(9mmで8.9tの破断強度をもったダイニーマロープ)など樹上伐採に関わる道具類を手に入れたのを切っ掛けに、さらに5年くらい前に特殊伐採用品のお店アウトドアショップKさんにご縁を頂いてから、樹上伐採の道具を活用して、地上での掛かり木処理の手法や樹上高くにロープやワイヤーを回す方法を活用した安全作業を一般市民さんにお伝えしてきている。

 経験している人たちは分かっていることだが、掛かり木の処理や、偏芯木の牽引伐倒、また重量材の集材などに関しては、樹上のより高いところに牽引点を採れたり、またアンカーを設置できれば、より容易に楽に作業をこなすことができる。

 そして、木に登らずに(登っても良いけれど)樹上の高いところにロープを回す技(ワイヤーも可)を身につければ、危ない思い怖い思いをせずに登るよりも楽に樹上に牽引点を採れる。

 要するにテコの原理から言えば、より遠いところに力が掛けられる様にするだけで労力が少なくなることは理解出来るだろう。
 また、動滑車を幾つも使って倍力の数を増やせれば、それだけ小さい力で牽引ができる。

 よって、人力からハンドウィンチ類、エンジンを使った動力からユンボなど車両などを使った牽引までに使える手法なので、より樹上の高いところに牽引点を作ることと、それから滑車を複数使って倍力をかけることを併せて使うことにより、より太い木、重たいものをコントロール出来る様になるわけだ。

 そうすると、より軽量な道具、コンパクトな道具類で、ヘビー級の道具類を同じ仕事が出来る様になる(但し、応力が倍加するパートがあるので機材の強度のバランスを採ることと、万が一の時のために壊れても最小限の被害で済む位置に強度的なボトルエンド部分を作っておくこともシステムづくりには大事:作業者自身がシステムの弱い部分を特定しておくこと)。

 軽量で持ち運びが楽ということは、身体への負荷も少ないのでより疲れにくく楽な作業につながるので、安全性も高められるということ。

 先輩諸氏の経験値を糧に、さらにアウフヘーベンして良い道具を開発したり、やり易い方法を構築したりして、より良い状況を構築していくことが大事。

 林業界って側から見ていると狭い世界で天狗みたいになっている人や(多分、横のつながりが無いから)、また他人の技を盗むのは良いけれど、ただパクるだけで自分の工夫がないからパクった以下の仕事しか出来ない人たちを見受けることがある。

 現場をやっている人たちは日々に追われて勉強する暇も無かったり、基本的に言われたこと程度をやっているだけの生活のための仕事という人が多いからだろうね。

 だから、林業という分野に興味を持った人たちが、どんな人にご縁を結んで、誰に教わるかで将来の自分の立ち位置も相当変わってくるだろう。

 何事も最初が肝心。高いレベルのもの、できれば本物に触れることが大事。特に芸事や職人仕事についてはそう思う。
 最初にいい加減なことを習うと後々に響くし、場合によっては転換も効かなくなるかも知れない。

 その点、樹上伐採の世界は先ずは賢くないとできない作業ばかりだし作業内容は仲間とのリレーションも必要。そして成長業界なのでどんどん進化しているので皆さん結構切磋琢磨している雰囲気がある。
 また、TCJさんの様な安全管理のメソッドが確立されている団体もあるし、レベルの高いツリークライミング講習を行なっているところも多いからね。

 我々一般人的立場で山に関わっていく人たちはそういった人たちの良いところを見習ってレベルアップしていくのが良いのではないかと思う。

 あとは自伐型林業で有名な徳島の橋本さんご夫妻ね。もう何十年もやっておられて怪我や事故がない。それから、先年ご病気で亡くなってしまったが島根の栗栖さんも事故や怪我が一切なかった人だ。
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 橋本さんは銀行マンからの転身だし、栗栖さんは山師という雰囲気とは程遠かった。栗栖氏の自伐林家としての考え方を島根林研の副会長がまとめたものがあるのでご参考に載せておこう。
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IMG_9591のコピー (1) 他にもわたしが存じ上げている山仕事だけで食べてご家族を養ってきた方で、島根県の雲南市の山奥の80歳過ぎのご夫妻も雰囲気は普通の農家のお爺ちゃんお婆ちゃんだ。

 皆さん、山が好きで植物を愛している本当に優しい方ばかり。そして人として尊敬できるお人柄なのだ。

 ところが、失礼ながら皆さん身体は小さい方だし、けっして筋肉隆々というわけではない。それよりも観察眼をもっておられたり、自分の頭と心を使って智慧深く取り組みをされている方々に見受けられる。
 人間以外の存在にも優しい方達は、事故も怪我もなく、結果自分自身をも救っていることになるのだろう。

 一般市民の方達で山に取り組みたい場合には、こういった人達の精神性を学ぶべきだと思うが如何だろうか。
 我々は事故を起こしても誰かが保障してくれる立場にないので、怪我と事故は絶対に避けなければならないから安全に関してはプロよりも真剣に臨む必要がある。

 だから、一般的な林業現場では効率優先なので、経験に裏打ちされた見切りの能力や身体捌きがあってこその作業内容だから、そう言った作業が身についた人たちを先生に据えても時として逆に危ない様に見受けられる。

 そういった利益が中心にある林業界とは別に、地域の山を守っていくための地域住民のボトムアップの方法は別のメソッドが必要な気がするが如何だろうか?