先週は縁あって林業就労者支援講習の「チェーンソーによる伐木等の業務に係る特別教育」と「刈払機取扱い作業者安全衛生教育」の講師を務めさせて頂いた。今週は、実際に現場での伐木や掛かり木処理、集材などの講習を行う予定になっている。


【就労希望者のための講習】
 11月半ばからは山口県でも同様の講習を行うので、林業で働きたいと希望される方は此方をご参考に。宿泊費も補助が出るので、風光明媚な現地での講習は時間が取れる人にとっては有効だろうと思う。
 県外からの参加も可能だからね。今回も岡山と山口の方達が受講されている。
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 さて、島根でのこの講習の間は、幸い台風も逸れて天候にも恵まれた日程になったのは受講者の方達の運が良いからだろうね。
 本人たちに写真使用の許可も得てあるので、先日行なったチェンソー特別教育の実技風景を簡単に載せてみたいと思う。
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 学科は、右画像の伐木等作業者用の安全ナビという林災防のテキストと併せて、83ページにわたる以下の様な整備から装備、フォームや玉伐りの数々、また掛り木処理などについて書いたオリジナルのスライドも見せながら補完しつつ、実際にチェンソーの分解や、外しておいた各部品を手に取って確認することも行った。
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【安全に木に寝てもらう】
 講習の風景を載せるのも、まるきり初めてチェンソーを持った人たちがいる中で、どんなフォームでやっているかを観て頂きたいから。

 何故かというと、ネットには様々なチェンソー講習の画像がアップされているのだけれども、ほんとこれで大丈夫なのかなという安定性のないフォームで、木を倒すことのみを頭に置いて講習をやっておられるように見受けられるものが多いからだ。

 我々伐木に関わる者は、「安全に」木に寝てもらうことを目的にチェンソーの力を借りて伐木作業を行うのが本来の講習の目的だと思うのだが如何だろうか。

 木を伐って倒すことのみが目的ではないことは、講習開催時にも、また特別教育のテキストでも謳っていることだけども、そのメソッドが明確化されていないためにお題目を唱えているだけで終わってはいないだろうかと疑問に思うことが多々あるので忘備録がわりに記事にしてみることにした。

 通常、特別教育は資格を得ることが目的なので、実技の時間は短いために時間内での習得は難しいものがあるけれど、それでもキモの部分を身につけておかないと安全管理ができない可能性が高くなるから、わたしが今まで習ったこと、身に付けたことを時間の範囲でできる限り伝えるようにしている。
ISBN978-4-88138-286-8
 さて、ここで「木に寝てもらう」と、書いているのは、全国林業改良普及協会から出版されている「小田切師範が語るチェンソー伐木の極意」に小田切氏が伐木の際の心の姿勢について戒めておられるからだ。

 同書の帯には、内容についてこの様に謳われている。『全てのチェーンソーマンに届けたい。こうすればのびる!上達のツボ大公開!1万人以上を指導し、プロへと送り出した林材業安全技能師範の教え!心と姿勢、道具、装備、技術の磨き方、モチベーションの高め方』と書かれている。

 同書の内容は深くてハイレベル、実戦的、そしてメチャ面白い。現場での知恵などについて対談方式で書かれているので読みやすい。
 この本はチェンソーを用いた伐木をされる人は、プロだけでなく一般の方々でも読んでほしい内容になっている。

 そして、この全国林業改良普及協会からは、林業に関わる様々な技術テキストや啓発書がたくさん出版されているけれど一般書店にはほとんど置いていないので、事業体内部か林業関係のセンターのみでしか手にして中を確かめることができない。

 いやあ、勿体ないよね。ほんといい本がたくさんあるのにね。一般の市民団体でも、こんなことにこそ助成金を活用して全部揃えても良いくらいの書籍ばかり。

 わたしの場合は、好きなことしかやって来なかったワガママな人生故に、何時も懐がさみしいので、この森の書店の本を揃えるのは非常に困難な状況だったのだが、其処は神様仏様、編集者様のお陰で全林協さんの本には何度か記事を書かせて貰っていることもあり、その(お安い?)原稿料の代わりに、この森の書店の書籍をもって物納して貰ったためにかなりの本を手に入れることができた。

 他の記事にも書いているけれど、わたしのスタンスは都会暮らしの時から物々交換とか対価交換方式なので、文章書きの時も同じ。他にも農文協さんの依頼でも何度も記事を書いたことがあるけれど、こういった出版のところは軒並み原稿料が格安なんだよね。

 噂では本人たちは相当に良い給料を貰っていると元内部にいた人に聞いたことがあるけれど、書く人のノウハウを記事にするという人のふんどしで相撲を取るといったものでも支払いは非常に渋いのが常。

 なので、端金を貰っても仕方がないので、どこも物納で出版物を貰っている。出版物の原価とは言わないけれど卸価格で計算して貰った方がお金で貰うよりもお得だからだ。

 という訳で、全林協さんの本もいろいろ持っているが、そのどれもが面白いし勉強になる。山仕事は知恵の集大成だから、自分たちが属する事業体(団体)内だけでは知り得ないこともたくさんあるんだよね。

 こういった知恵の仕事は、先人、先輩、先達から学んでなんぼのもの。自分の所属するところに良い先生がいなければ、取り敢えずテキストから学ぶのが良いだろう。
 わたしもネットを使うから、Web上から拾うこともあるけれど、レベルが高いものはそんなにないからね。
 勿論、しっかりとした経験の裏付けがあって発信されている記事も少なからずあるけれど、そこにたどり着くには自分の経験値が上がらないと価値が解らなかったりするのはこの世の全てのものに通ずる法則。
 取り敢えず、うちのブログ記事からリンクさせて頂いている方の記事は有用なものばかりだと思う。

 山仕事はハウツーものじゃないので、ネットの記事や動画で表面的な技法だけ拾っても危ないだけ。というか逆に危険度を高めそうなものが多い様な気がする。

 よって、当ブログでご紹介して少しでも技術向上や安全の確保のために役に立てばと記事作成のおりには良書のテキストへリンクしている。
 全国林業改良普及協会の森の書店のサイト内の技術&啓発書籍は此方から入るのが早いのでまずは入り口をリンクしておきましょう


【林業人口を増やすために】
 ところで、うちのブログは一般市民さん向けに記事を書いているものが殆どだけれども、今回紹介した小田切師範の本をはじめとして、チェンソーを扱ったり山の整備や保全に関わる作業を実際にやっている人たちには、順番にでも良いから手に入れて勉強をされることをお勧めしたい。

 大体、林業の現場作業をやっているプロたちは身体がきついから勉強をする暇がなかなか無いし、そもそも文字を読むことが嫌いな連中も多いので、世の中の技術進歩や道具の進化に着いていけていない人も少なからず居る。

 だったら、うちの協議会が行う一般市民さん向けの講習の各種テキストに書いてあるように、「目指せスーパー素人」というプロよりも安全管理ができて、かつ技術的にも上をいく人たちがどんどん育つ可能性がなきにしもあらず。

 その上で、事業体で働きたい人は就職すれば良いし、その場合には基本が出来ているから最初から安全に作業に臨めるであろうと考える。
 また、田舎暮らしを目的に移住した人たちでも山の作業ができる様になれば、事業体の下請けで冬だけ働きにいくとか、または自分たちで直接請けて仕事を作り出すこともできない話ではない。

 今回、島根県の林業公社林業労働力確保支援センターの若い担当者の方が講習の様子を見に来られていたが、此れからの時代においては事業体の人材確保の方法も、今後フレキシブルに対応できる様なシステムに移行していかないといけないだろうと考えていると言っておられた。

 自分たちのスキルと道具揃え、そして安全管理がしっかりと出来てさえいれば、ちょっと前の農家の人たちの様に、冬だけ、またはタイミングが合う時だけ山仕事へ行っていた如く、林業人口の確保にも繋がる働き方をすることが可能だからだ。

 長野の樹上伐採用具の専門店ODSKさんのサポートで島根県での樹上伐採の講習会の補助をやっていても、林業経験を経ずに樹上伐採の仕事をしている人たちが増えていることを実感するので、林業に関係する切り口、入り口は様々になっていることが判る。

 他の記事に書いたかもしれないが、自動車会社の車体設計部門で応力計算の仕事をしていた若い人が退職して樹上伐採の仕事を楽しくやっているケースもある。樹上伐採の仕事は更に智慧深さが要求される仕事なのでやり甲斐があるだろう。
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 でも、それはそれで広葉樹の伐採後の処理作業の経験が浅い人がイキナリそんなハイレベルのことをやるのは非常に危険だと思うのだけど、その代わり樹上伐採をやる人たちの安全管理は林業事業体とは比較にならないほどレベルが高いので、指導も徹底しているから良いのだろう。
 自分の場合には、仲間には事業体に居た後に独立してやっている人たちが何人かいて、時々手伝いで草刈りに行ったり、伐採に行ったりしている。
 また、森林組合では手に負えない様な難しい危険木、支障木伐採の仕事も、その時々に必要な仲間を集めて請けてやる形のこともある。

 何にしてもそれぞれが必要なスキルと安全管理意識を持っていることが大事なことと、あとは相性も大事だね。危険作業はリレーションがしっかりと採れないと仕事にならない。いけいけドンドンな性格だと長続きしないのがこの業界の定理。

 さて、話がだいぶ横道に逸れたが、小田切師範の言われる『木に寝てもらう』、との内容を本から引用させていただくと、
 「木は伐り倒すという感覚のものではないです。静かに寝てもらうもの。相手は敵ではない、仲間。寝てもらうための技術を身に付けて欲しいですね。また、少しは自然界に対する感謝の念をもって欲しいし、もたないとバチがあたっても不思議じゃないです。中略---1本1本と相談して倒してね、と私はいつも言っています。あとはたくさん伐倒の経験をして、『ごめんなさい、静かに寝てちょうだい。』と願ってから伐ればいい。昔の人は『もっといい林にするから、わたしを山に入らせてください』という謙虚な気持ちで山に入ったものです。今は道具も良いし、何でも良いから、『俺が一番だ』という気持ちになってしまう。そういう人に限ってケガをします。中略---『お願いします』という謙虚な気持ちで念ずるのはせいぜい5秒か10秒。リセットするその時間で冷静さと慎重さを醸成すればいい。チェーンソーマンにはそういった哲学的なことも必要です。」
 とある。

 このことは、自分の場合には正しく仰られる通りと共感する次第。以前、一人で山奥に沢登りに行っていた時も何かあれば死ぬか大怪我をするわけなので、山に入る時と出る時にも礼を失しない様に山やそこに生きとし生けるものに対して挨拶をしていたことにも通じるだろう。

 木だって生き物だからね痛い想いはあるだろう。東北のマタギが書いた本にも、チェンソーを持って山に入った時に、木々がざわめいて怯えた話が載っている。
 若い広葉樹は切り株から萌芽更新して再生をするけれど、針葉樹の場合に伐ってしまうことは生き物の命を頂いていることになる。

 でも、そういう感覚がない人が多いのも現実なので、せめてわたしが講師の際には、そんな話も付け加えている。

 人間だって犬だって痛い目に遭うと謙虚になる場合が多いけれど、痛い目に遭っても謙虚にならない人も沢山いる。リスクアセスメントのデータの共有化ができない人たちだ。
 自分的には講習でご縁ができた人たちに痛い目に遭って欲しくないので、まずは安全なフォームづくりを重点に身体に覚えさせて貰っている。


【チェンソー実技講習の風景】
 他の記事にも何度も書いている様に、島根県では静岡に本部があるNPO法人ジット・ネットワークサービスの島根支部によるチェンソー講習が、県内の事業体や一般市民向けに徹底して行われている。978-4-88138-178-6

 全林協さんから出版されている「伐木造材のチェンソーワーク」の著者の石垣氏が理事長の団体だ。

 この伐木造材のチェンソーワークの本は、林災防が出している特別教育用の「チェーンソー作業の安全ナビ」ではカバーし切れない内容が載っているので、チェンソーを扱う人は併せて読んでおくと良いだろう。
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 島根支部では、この石垣氏が教えるチェンソーワークと目立てを身に付けた優秀な人たちが教えているが、時に静岡から石垣氏と副理事長の米津氏も来られて指導される機会もあるので、一般市民でも石垣氏に直接教わった人も多い。わたしも9年前から7年間くらいの間に数度教わった。

 自分の場合には、20年くらい前に日本中の事業体や海外でも目立てを教えておられた故長戸太郎先生に東京で教わって、あとは特別教育の際には相模原にあったキャタピラで受講したが、そこの先生の教え方も良かった。

 が、島根にきてジット島根の人たちに教わったら目から鱗だった。その後、7年くらい前には講習の手伝いをしたり、またジットの講師を招聘して特別教育を一般市民向けに二度ほど開催運営も行ったこともある。

 そしてジットが行うランキング審査会も数度受けているが結果不合格。プロでも落ちると長野でも聞いたりするくらいに厳しいのが有名。

 が、基本の考え方は身についているし、ジットの講習自体は税金を使って運営されていたり、また審査会は多くの人が自腹の受講費を払って受けているので、ジットの講習で良いところを教わったならば、皆でそういった点を受け継いで、さらに広めていくのが良いと判断しているのだがどうだろうか。
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 わたしの場合には、安全を確保するためのフォームはジットから学んだもの。また伐採については、ジットだけでなく長野の伊那にあったKOA森林塾でのものや、樹上伐採の人たちのノウハウも融合している。
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 そうそう、このランキング制度は、以前は東京の森づくりフォーラムで石垣氏が行っていたものだが、その後袂を分かって自分たちで制度を立ち上げたものだ。
(森づくりフォーラムで扱っているグリーンボランティア保険を当協議会での講習開催時には活用させて頂いている。農協のイベント保険では、講師に謝金を払うものだと対象外になるからだ。これは、農協窓口の担当者も知らない場合がある。チェンソー、刈り払い機などの動力を使った講習に対応している保険は余り無いので要注意)

 ジットのチェンソー技術審査会はプロでも受からない人が続出するものだが、ジットの教え方は理論的なものなので、新しい人たちを指導するには分かり易く理解しやすいものとなっているので、身に付けておくことをお勧めしたい。

 何故ならば、林業プロの職人さんが教えるチェンソーワークは、「こんな風にやるんだとか、もっと力を抜け」とか印象的な伝え方に偏るために、教わる側に力量がないと意味が分からないことが多いし、そもそも危険作業を感覚でやっているために、新しい人たちに危険な作業方法を平気で教える場合があるからね。

 プロだからって、本当にチェンソーワークが上手とは限らないし、教えるのにも教えるための技術やノウハウが必要なので、プロと名がつけば誰でも彼でも適当に教わるのが良い訳でもない。

 その点、ジット島根では林業事業体で働くプロが教えている訳だけど、このジットの理論的で分かり易いメソッドは非常に有効なので、島根県内の自治体が開催するジットのチェンソーワーク講習にはぜひ参加されることをお勧めしたい。

 他県でも石垣氏を招聘して開催するジットの講習会もあるし、林業事業体でも開催しているところも多い。

 でも、取り敢えずは前出の「伐木造材のチェンソーワーク」を手に入れて学ぶのが宜しいかと思う。この記事に載っているチェンソーをホールドするフォーム例は石垣氏のものが載っている。
 勿論、チェンソーの整備から目立て方法、伐木の様々な手法から牽引方法まで全て網羅されているのは、上記リンクから目次を見てもらえば分かるだろう。

978-4-88138-203-5 ただ、初心者で経験値が浅いと読んだだけでは中々理解し難いのは仕方がない。頭で理解したことが、そのまま身体ができるという様な浅いレベルのものではないのが伐木ということだから。

 そうそう、自分が神奈川に住んでいた頃に全林協さんの依頼で記事を書いた(本の1/4位をペンネームで書いている)森と暮らすNo.2「ノウハウ図解 山仕事の道具」という本があるが、その本にも石垣氏のフォームとチェンソーワークについての記事が載っている。

 2008年の出版だったのだが、其の頃は未だジットのチェンソーワーク自体を知らなかったので、本を持っていてもこのフォームの有用性が全然理解出来ていなかったのだ。

 ま、そんなものだろう。だから講習で繰り返し身体を動かして身に付けるのが一番早いと思われる。そもそも、チェンソーワークとか伐木というのは体技だからね。

 写真や動画で他人のフォームを見て体幹が通っておらず、足腰に安定感が欠けることが伝わってくるのは、そういうものだから。

 そんな目線でネット上のものを観てもプロ中のプロはそんな情報発信をしているはあまり居らず、居られても必要なもににはなかなか辿り着けないので、やはりプロの仕事にフォーカスした記事ばかりが載っている書籍が有用だと思う。ISBN978-4-88138-225-7

 ジットとは関係なくても、プロ中のプロのフォームは通じるものがあるからね。流石に安定感がある。
 そんな記事ばかりが載った冊子は一般書店では手に入らないが取り寄せは可能だろう。

 前述の森の書店からでも良いが、取り敢えず下記のリンクから内容をご覧あれ。わたしも牽引のところで記事を書いている。
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 さて、9年半ほど前に島根に移住して、その様なジットの講習を7年間受けてきたお陰で受講者に教えるのにもポイント抑えて教えられる様になっている其の成果はというと。。。

 講習では、まずは高い位置での玉切りを行う。リアハンドル(コントロールハンドル)及び右手は右股に預けて重量を分散していると同時に、身体全体でチェンソーのキックバックなど不意な動きに対応できる様にしている。

 そして、前ハンドルを持っている左でも同様に身体に当てている。両脇も締まっていて腕だけでチェンソーを持っているのではないことが分かるだろう。

 ガイド(ソー)バーは、根元に近い方を使い先端を使わない様にする。初めての人は、チェンソー自体が怖いものなので、スロットルワークに慣れるまで何度もスライスを繰り返してフォームづくりを行う。

 その際には、チェンソーのガイドバーで回転するソーチェーンの鋸道上には絶対顔が来ない様にして、キックバックに備える体制にすることが肝要。
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 そして、中腰でのポジションも練習する。この場合にも、前述の様に左右の手と、後ろハンドル、前ハンドルも身体に当ててホールドをしている。

 今回は6名の受講だったので、二人一チームにして交代で練習した。兎に角、数をこなすことが大事なので、休息を入れながらではあるものの、しっかりと練習できたと思う。
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 これは横スライスの練習。エンジンは回さずにアイドリングに近い遅いスピードで、丸太を薄く輪切りにしていくもの。

 刃が切れなければ、エンジンの回転を上げないと出来ない作業。遅いスピードで作業を進めるには切れる刃付けが出来ることが前提。
 また、フック気味の刃だと最後の皮を断ち切る時にスライスした薄い板が飛んでいってしまう。スライスした板が丸太の上に乗ったままにできれば上出来のスロットルコントロールが出来ている証拠。

 なぜ、この様な練習をするかというと、受け口追い口づくりの際に、エンジンをギャンギャンと回さずに、適正なスピードで確認をしながら水平切り&斜め切りを進められるので正確にできるから。
 ジットの練習方法は賢いと思う。

 エンジンをブン回してやっていたら、会合線のところを切りすぎてしまったり、また切断面がてんでに凸凹になってしまったりするからね。
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 つまり切れない刃で作業をすると、低速回転で丸太を切れないことが理解できるし、またスロットルコントロールを指の付け根で微妙に行うことの練習にもなっている。
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 照準を合わせる方法はガンマークよりもフォームを安定させることができる、周りのもの(枝)などを使って目標を合わせこんだり、向きが合っているかどうかを確認する方法に重点をおいて教えている。
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 初めてチェンソーを使って受け口を作っているが、左肩を立木に預けて身体を安定させた上で、しっかりとチェンソーを右腿と左腕でホールドしている。

 この様な低い位置に水平伐りを施す場合には、リアハンドルを持った右手の親指でトリガーコントロールを行う。
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 そうすると、右脇の下が締まって、チェンソーを安全にホールドすることが可能なので、エンジン回転のコントロールも微妙に操作可能となる。
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 助手の津和野ヤモリーズ卒業者の原氏が、まるきりの初心者二人に丁寧に教えている。今回の受講者は、林業事業体などで働いていたり、働くことが決まっている人が四名(内ヤモリーズの今年入った人が二名)。そして就労希望者が二名ということでみんな真剣だった。
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 全員、玉伐りの時に突っ込み伐りの練習をしておき、次は立木を使って追いヅル伐りの練習をする。
 上画像の彼のフォームを精査して欲しい。左腕は肘を左膝の上に置き、前ハンドルを持つ手に掛かる重量を分散すると同時に支点としてしっかりと機能している。また、前ハンドルを掴む位置も手首に負担がない形になっている。

 リアハンドルを持つ右手とリアハンドルは右腿でホールドして万が一のキックバックなどのチェンソーの暴れを受け止められる様な体勢になっている。

 また、スロットルワークのためのトリガーに掛かる指は親指を使い、低い位置であっても脇が締まり瞬間的な応力にも対応できる体勢となっている。

 細かいことを言えば、足の位置や向きなどについてはジット的にはツッコミどころがあるかも知れないけれど、短時間しかない講習時に初めて知って練習しているフォームとしては非常によくできていると思う。

 他の記事にも書いている様に、追いヅル伐りの手法は、崖などで足場が良くないところや、偏芯木の伐採には安全の確保のためにはできる限り使った方が良い手法なので初心者でも早晩に身に付けた方が良いだろう。
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 でも、突っ込み伐りは、フック気味の目立てをしたチェーンではキックバックが激しく起きるので危なくてやらせられない。
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 でも目立ての時点で、切れてかつキックバックが起きにくい刃付けを行っている。時間がないので大して練習は出来なかったが、一応その練習用のソーチェーンを使って伐っている。

 上の彼は林業事業体に就職した人。フォームは前述の様に、親指スロットルで、右股でチェンソーのリアをホールドし、左腕は左腿に載せて安定させて、チェンソーの重量を支えている。
 だから、バーの先端が多少暴れても突っ込みが上手にできる。

 というか、画像を観てもらうと解る人には解るけど、使っているチェンソーが、一昔前のハスクの名機と言われた242XPで、15500rpmも回る高回転型のもの。

 朝からの練習で慣れたてしまったので、結構ぶん回して使っていた。でも、突っ込み伐りは、そんなに回転を上げなくとも切れる刃だったらスムーズに木の中に吸い込まれていく。
 その感覚を覚えていてもらい、今後の刃付けの目安としてもらうことも大事。

 また、玉伐りも色々なパターンでやっている。上からと下からを上手に合わせるフォームづくりとか、木の中をイメイジしながら、身体をガイドとしてスライドさせる方法など。
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 木をふんだんに用意しておいたので、丸太の玉伐りの際の材の圧縮伸展を経験できる様にもした。
 学科の際にもスライドを使用して、参考になるケースも見せている。
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 特別教育の二日半は、基本的なことを伝えるのが趣旨だけど、画像を見てイメイジで覚えておけば、実際の現場に際して、あの時の講師がこんなこと言っていたなと思い出してくれればしめたもの。

 人間は理屈よりもイメイジで覚えた方が身体に身に付くものだからね。
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 以上、この様な感じで行ったというチェンソー特別教育の風景報告。ま、3年間の事業らしいけれど我々が来年も担当するという保証はないからね。
 今年受講した人たちが後になって、ラッキーだったと思い返してくれれば幸い。

 明日と明後日が、安全な掛かり木処理のための色々な技と道具の扱いをやってから伐木を行い、その材を集材するところまでやるから初めての人たちは結構体力がいるので、あまり詰め込まないでやろうかなと。

 どの道全部は体験できないので、デモだけでもやって、あとであんな方法もあったなと思い出してもらえる様にしておきますかね。

 まだまだ今週から来週前半まで講習は続くので・・・因みに3t以下のバックホーの特別教育で行う作業道開設のための講習は奈良の岡橋さんに習った丁寧で腕がいい奴が担当になっている。でも、講習時間は短いね。

 まあ、バックホーを動かすのを見るのも勉強。芸事を含めて習い事は最初が肝心だと思っている。最初に良い見本を見ておけば、それが基準になるからね。

 前出の画像で、長野のKOA森林塾で行っている切り捨て間伐の山もそう。伐採した木を全部2点掛けで山に保持した整理された綺麗な現場となっているのが解るだろう。
 事故や災害を減らすには、こういった現場跡が綺麗な状態を維持することが大事からね。

 美しくない現場や作業方法にはトラブルが付いて回るのは原因があって結果が付いてくる道理。
 市民レベルでの山の作業ではノルマがあるわけではないので、きっちりと綺麗な現場、山造りを目指しましょう。

 以上