前回の記事でチェンソー特別教育の風景を載せましたが、今回はその続き。島根県の林業就業支援講習 20日間コースの中の実技のうちの林業実地講習の二日間の風景を書いてみましょう。
 また、11月半ばから山口県の阿武町で、山口の林業就業支援講習 20日間コースが始まりますが、現場が違うので多少内容が異なる可能性があります。

 とは言え、この二日間で行う林業実技講習の眼目は、特に危険作業となる伐木と枝払いについて体験しつつ安全な方法を身につけて貰うことです。

 其のためには、各自伐倒を行った後に発生する掛り木の処理を行って、一緒に掛り木を外す作業を行いながら、その処理方法にも色々な手法あること、安全に行う方法があることを知ってもらうことを目的としました。

 その後に集材搬出と造材についての練習を行いました。あとは小型林内作業車による運材も各自少し行って二日間の工程を終わったと言うのが今回のレポートです。

 あとは最後の方の午後に島根の林業と、そして林業全体の未来についての話、それから安全管理のための能力開発などの話を含め3時間話をする機会を得ましたので、日頃ブログに書いている様な内容も含めて能書き炸裂です。受講者の皆さん、よく耐えました。

 さて、今回の島根講習の場所は、以前の記事でも登場している樹上伐採やツリークライミングの講習にも使わせて貰っている吉賀町柿木村の温泉、松乃湯さんの裏山です。
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 最初は津和野町で実技作業を行う予定で、うちの集落の裏山を使おうかという話も一瞬出ましたけれど、結局わたしが草刈りなどメンテをやっている隣町吉賀町柿木村の松乃湯さんの裏山の方が使い易いということで、実地講習のチェンソーと刈り払い機と3t未満のバックホーの特別教育と、その他伐採、集材、壊れない作業路開設の実地講習を行うことになりました。
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【現場は有機農業40年の柿木村】
 此処の裏山は、正確には息子さんが生まれた年に植えた(主に地域の女性たちが植えたらしい)ということで今年で52年生になるもの。樹冠長率が30%以下になっている間伐遅れのヒノキ林。

 この林はうちの協議会で管理することになっているので、時間をみてぼちぼちと一割間伐程度でやっています。
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 以前は松の湯さんの宿に泊まって、温泉に浸かりながらの贅沢講習ができたのですが、今はコロちゃんのせいで泊まりをストップしているために、遠方からの受講者の人たちは他の宿に泊まることに。
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 でも、久々に再開した温泉に浸かることが出来た受講者の方達も居られて良かったです。

 年寄り夫婦で切り盛りしてきた宿なので、今後フェイドアウト方向に向かっているため、受講者の人数が集まれば宿泊施設をうちの協議会で借り上げて講習会をやろうかなと考えている次第です。

 食事は松乃湯さんがやらない場合でも、他に何件も美味しい仕出し弁当を配達してくれるところがあるのでそんな運営も可能です。
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 この画像は、3年ちょっと前に広島の木の駅八千代のメンバーがチェンソー講習を受けにきた時のものですね。探したら、お弁当を配達して貰って食べている、こんな画像がありました。
 松乃湯さんが丁度お休みの日に当たったので、他からお弁当を配達して貰いました。

 ところで、柿木村の行政区名はもう直ぐ無くなってしまいます(町の決定だそうです)が、この柿木村は明治の昔から合併を拒否してきた長い歴史を持つ自立意識の高いところだったのです。
 ところが平成の大合併で六日市町と合併してからは全然良いことが無かったとのこと。

 これは、柿木村だけでなく他でも合併したらますます状況が酷くなったという話を聞くので、場合によって合併は逆に地域力を落とす要因になってしまったのではないでしょうか。

 その柿木村は、40年くらい前から有機農法の村として地域全体で除草剤などを使わずに安心な作物作りをやってきた地域として有名なために広島や山口側からの来訪者も多いところです。

 わたしたち夫婦も時々道の駅に買い物に来ています。昔撮った産業祭の時の画像を載せてみましょう。
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 そして、そういった地域性に憧れて都会から移住してくる人も多いところだったのですけどね。その名前をなくしてしまうという町政はアホ以外の何物でも無いでしょう。

 地方の地域って明確に地域性というのが有って人間性が結構違うことが多いんですよね。だから最初に自立の方向を探ることもせずに、また相性が合うかどうかも精査せずに気軽に合併なんかすると後悔の嵐の様な話が沢山あります。

 うちの地域(旧日原町)の人たちの多くが、津和野町と合併せずに柿木村とくっついた方が良かったと未だに言っています。

 移住者のわたしたちから視てもその方が人間性の相性が良いと見受けられます。私たちが以前住んでいた匹見町の一部地域の人たちには、昔この日原町や柿木村が近い商圏だったこともあり、また血縁関係もあったりするからなのか、似通った人柄の人たちでした。
 だから其処の人たちと柿木村と旧日原の地区の人たちは似ている感じがします。

 柿木や日原の人たちの中には、人間の結婚みたいに旧六日市町と柿木村、旧津和野町と旧日原町が一旦離婚して縁を切り、それから柿木村と旧日原町が再婚(合併)出来た方が、今更ながらだけど良いかもしれないと言う人が多く居られますね。

 実は、此方島根県西部では、若い時に安易に結婚して、その後簡単に分かれてしまった子連れのシングルマザーが沢山居るのですが、もしかすると地域全体の風土がそんな感じかも知れないと思う今日この頃なのです。

 後悔先に立たず。安易に依存的にくっ付くと後で面倒臭い宿題を沢山抱えることになるんですよね。地域も人も自立的意識を高く持たないと人生余計なお荷物を背負ってしまいます。
 補助金などもそうですよね。むやみやたらに補助を受けると紐付きになって面倒臭いことが色々増えてしまいます。

 でも、たかり根性の人たちは結構多く居て、補助金ゲッターなんて言葉もあるくらいです。で、補助金ばかりに集っていると人も地域も腐っていきますね。

 さて、その自立的意識醸成のためには責任感も必要でしょう。そして責任感の欠如は林業に於ける危険作業の際に正しくその結果が如実に表れてしまいます。


【逃げない心の姿勢を構築するためには難問の突破方法を身につけておくこと:追いヅル伐り&各種掛かり木処理方法】
 いい加減な作業をしていると危険を招くことを現実をリアルに表してしまうのが山の仕事ですね。
 受講者に常々言っているのは、確実にイメイジングができない伐採作業は博打みたいなものになってしまうため、失敗する可能性も高くなってしまうとということです。

 受け口追い口などを含め道具の扱いにしてもマニュアル通りのことをやってさえいれば上手に伐倒ができるというものではありませんからね。
 そんなピンポイントで伐倒すれば木が素直に寝てくれるという恵まれた現場ばかりの訳がありません。

 掛り木になるならばなるで、その後が処理しやすい掛り木の作り方も必要ですし、また動きが読みにくい重心の視えない枝が広がった広葉樹の伐採が思い通りに動かなくて、違う展開になった時も前もって何パターンものシミュレーションをしておくことが大事です。

 当然、そういった不測の動きが起こることを含めて、狙った最善のところに向かって倒していくわけですが、全てがビンゴ!ってなワケには参りません。

 混み入った林や大きな広葉樹では、逆にそんなことばかりかも知れませんね。
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 何れにしてもイメイジ脳である右脳を活性化させておくことや、感覚を鍛えておくことが大事です。

 そして、安全に作業を進めたり、不測の事態が起きた時に上手に逃げるためには、伐倒作業と同時に避難場所の確保や足場の整備作業を行っておくことも大事ですね。

 芸事もそうですし伐倒作業も同じですが習い事は最初が肝心。最初にいい加減なことを教わると後々に響きます。

 伐採仕事でシリアスな事故が多いのが掛り木処理の失敗。
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 そのために、間伐遅れのヒノキ林で掛り木が必至の林を選んだわけではありません。が、掛り木の処理のための様々な方法を最初に知っておいた方が良いのは確かです。

 そもそもが此の二十日間講習は、林業に携わってみたいと想いを持った人向けの基礎的なことを身につけて貰う講習なので、本気で習得できるほど経験するには時間的に全然足りません。

 その足りない時間の中で、せめて安全に作業を進めるための方法論が幾つもあるのだということを知っておいて貰うことを中心に据えて実地作業を行いました。

 なので、全て掛り木にしたかったのですが、残念ながら素直に倒れてしまった木もあった実地講習です。それでも、幾つかの掛り木処理ケースワークが出来たので良しとしましょう。 
 とは言っても、実技講習では時間的制限があるので、あまり詳しくは出来なかったんですけどね。

 もしこれから、杉ヒノキの人工林で伐採をやろうとしている方、森林ボランティアなどで伐採を始めたばかりの方々にとって本記事がご参考になれば幸い。

 さて、どの様なものになったでしょうか。自分的に一番良かったのが、受講者たちの伐採時の体勢、身体使いに於いてしっかりとしたフォームづくりが出来ていたことです。

 みんな、初めて伐倒をした人たちとは思えない格好よさだったのですが、ご覧になっている方はどう思われるでしょうか。全員の画像は撮れなかったので一部の人たちだけ載せてみます。
 まずお断りをしておきたいのは伐倒方向についてです。本来であれば、斜面斜め下とか横、または上方に向かって木を倒すのがセオリーなのですが、今回は掛り木と搬出の処理時間を短くするためと、他のメニューを展開していく都合もあり下方に向かって伐倒しています(私の班についてはですね。もう1班の原氏の方は、経験者向けに上方伐倒を教えていました)。

 伐倒する木はそれぞれ受講者に選木して貰っていますが、適切でない木があった場合には、此方で指示して別の木に変更してもらいました。
 樹齢は52年生でも太さはまちまちでが、皆さん選んだのは胸高長直径で20cm台のものです。

 あ、そうそう。此処は掛り木必至なので、すべて牽引伐倒の準備を施してから伐採に入りました。
 実際に、わたしが担当した四名の内三名の立木は予定通りに掛り木になりました。其のために事前に樹上にロープをかけておきます。

 ロープ掛けの方法については事業体で通常行われるハシゴに登って樹上にロープないしワイヤーを掛ける方法を施しました。まずは安全にハシゴで樹上にアクセスできる方法を身につけておくことが大事です。
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 そして、この樹上にロープを掛ける技については、二日目の午後に梯子とは別の、木に登らずに高いところにロープを掛ける6つの方法を体験して貰うことにしました。

 まずは日本中の林業で行われているディファクトスタンダードの一本ハシゴ登りです。
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 写真はないのですが、一本ハシゴ(今回はロッキーラダーを使用)の組み立てから使い方、確実な立木への設置方法(いい加減なやり方をすると揺れて怖かったり緩んだりしますからね)などと、安全帯と胴綱の使い方を各自しっかりとやって貰っています。

 ですが、2022年1月1日以降は、高所作業に於いて安全帯と胴綱のU字吊りは墜落防止用器具として認められずに、あくまでもワークポジショニング用として使用することになりそうです。

 その場合には、もう一つ一本吊りの墜落防止措置が必要ですし、足元が6.75m以上ではフルハーネス型に換える必要があります(ただ、これもビルメンテナンスや法面工事の様な墜落途中に障害物が無いことが前提の規制内容なので、林業や樹上伐採に対しては機能的に不備な面がありますから、林業などの高所作業に対してはさらに精査して実効的な体制に落とし込む必要があるでしょう)。

 その辺りのことも含めてザッと説明した上で、一本ハシゴを使った木登り方法の習得を行いました。また、胴綱を使用する場合の墜落防止方法の簡易措置についても教えています。

 その上で、一本ハシゴを2段4mにして樹上6m程度のところにベルトスリングを巻いて、高強度の繊維ロープを設置して牽引伐倒用としました。
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 さて、初めて伐倒をする人たちの様子は如何でしょうか。前の週に行ったチェンソー特別教育でチェンソー自体を初めて持った人が二名居られます。

 また伐倒が初めての人は六名中四名。わたしの班はその四名全員が伐倒初めての人です。他の二名は講師補助の原氏が連れて別の場所で伐倒を行っています。
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 チェンソーを今回の講習で初めて持った人。木は細めのものを選びましたけど、受け口はほぼ及第点ではないでしょうか。
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 此方の方もそうです。今回チェンソーを初めて持った岡山の人で、鳥取に移住して林業に携わる予定だそうです。
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 定規を当てて倒れる方向をチェック。ほぼ最初に決めた方向に受け口ができました。この画像は補助の原さんが撮ってくれたものですね。
 もう一人の林業事業体に就職が決まっている山口の人の分は撮り損なっています。スミマセン。

 そして、伐倒初日の夕方3時頃に、松乃湯のオバちゃんが善哉とお新香を差し入れしてくれました。こんな林業就労者支援講習も珍しいのではないでしょうか。
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 みんなで一服です。

 この日は此の後にもう少し作業を行って終わりでした。初日に掛り木の処理で行ったのは、ツルを切って木が回るかどうか。また、ツルを切ったところにクサビを打ち込んで木を回す方法。
 それから木回し(今回は時間が無いので、ロープとかベルトは無しでフェリングレバーだけ)を使って木を回して掛かっている枝から外す方法やフェリングレバーを差し込んでテコの原理で木を回す方法をやりました。

 更には、それでも以上の方法で動かない木に対して、まずは人力でロープの一本引きをやってみて力足らずで掛り木が外れなかったので、さらにメインロープににフリクションノットを使って支点を作りプーリーを設置して三倍力に発展させて木を寝かせる方法を行いました。
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 勿論、中間にアンカーを設置してリダイレクト(方向転換)を行い牽引作業者は安全なところでロープを引いています。

 そして直引きでは敵わないので行なった三倍力に展開設置する方法は下図の様になります。この三倍力を人力で引っ張って木を寝かせた人は全然力の入り方が違うことを実感していましたね。
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 三倍力にすると全然違います。山の中で一人で作業をする場合に、大して重たくなく持ち運べるプーリー(滑車)のセットを持っているだけで、あとあとが楽になります。

 これは人力だけでなく、ハンドウィンチやチルホール、エンジンウィンチから重機などの動力を使っても基本の考え方は同じです。

 ワイヤーロープ系の道具であっても繊維ロープ系の道具を使っても同じシステムが組めますし、もうワンセット組み込めば九倍力にも展開できます。
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 まずはそういったシステム構築を行うという手法があることを知っておいて貰うことが大事ですね。

 力尽くで掛り木を倒したって、それはその時だけのものですし、例えば掛り木が発生してから手の届く範囲のところに牽引点を採ってチルホールで引っ張るなどというのは労あって益なしです。

 根元のところでチルホールを漕いで引っ張ったって大変なだけですから。そして、山での作業を力尽くでやれば事故に繋がりやすくなるでしょう。

 掛り木になることが判っているところでの伐採は、如何に木の高いところへ牽引点を作っておくかで、後の作業の楽さが変わります。

 と、言うことで初日は、まず初歩的な一本ハシゴ登りからやって、三倍力を体験するところまででした。
※林業では一般的な(ラダー型)梯子は使いません。事故の元になるからです。刺股(サスマタ)の様な二本の長い爪が付いた一本梯子を地面に突き刺して、梯子自体を細ロープで立木の幹にしっかりと縛り付けて登ります。2段目の上部まで登ったら、2段目の梯子を同じ様に細ロープで幹にしっかりと縛り付けます。同様に3段目以降も同じことができますが、重くて物理的に梯子を立てることが困難になります。因みに曲がりくねった広葉樹には使えません。広葉樹はロープを使ったツリークライミングが安全です。


【初めての伐倒にしては上出来じゃない?---初めての伐木で使った追いヅル伐りの技。フォームも良し!!】
 さて二日目です。初日の午後は、自分が担当した班の三名をフォローしていたので殆ど写真が撮れませんでした。

 でも二日目の朝は残った一名を講師補助の原さんが面倒をみてくれたので、結構写真が撮れましたのでご参考にどうぞ。

 ところで、前の週で行なったチェンソーの特別教育の時には突っ込み伐りもかなり練習しています。そして追いヅル伐りもですね。

 他の記事にも何度も書いていますので重複しますが、初めて当ブログを覗く方のために再掲しておきましょう。

 追いヅル伐りは、特別教育で使われることが多い林業・木材製造業労働災害防止協会(略して林災防)のテキスト「伐木等作業者用チェーンソー作業の安全ナビ」にも詳しく書かれて推奨されている伐採の際に使う安全作業方法です。

 重心が判りやすい偏芯していない針葉樹であれば、通常の受け口を作った後に、後ろ側から追い口を入れて行って蝶番の役目を果たすツルを作るわけですが、足場が急斜面で逃げるのに困難な場所や、木が斜めになって偏芯している木を安全に事故なく伐木するするためには必須の方法です。

 その追いヅル伐りという伐倒の方法を行うためには、チェンソーを使った突っ込み伐りが安全に出来なければなりません。

 ところが、刃の目立てが下手だとなかなか此の突っ込み伐りが出来ないんですよね。ただ、切れる刃ではダメなのです。

 刃先がやたらに尖ったフック気味に刃付けをしてものだとキックバックが激しくて、突っ込む際に撥ねてしまい危険きわまりありません。
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 スムーズに木に吸い込まれる様に刃が入っていくためには適正な刃の角度への修正が必要です。

 先の尖ったフック気味の刃は振動も多くなりますし、また硬い広葉樹では直ぐに刃が傷みます。危険ですし良いことがないので、適正な角度の目立てを身につけましょう。
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 さて、わたしはかつてチェンソー特別教育を相模原のキャタピラで受けたのですが、その時にもちゃんと撮影しているんですね。講師の方のスライドです。

 そして実地で代わる代わる練習をやりました。こんな練習です。だから、わたしも受講者に同じことを教えています。
 最初が肝心。今更ながらそう思います。
 キャタピラ相模原での講習画像です。わたくしめ記録魔ですね。
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 それで、うちの協議会のテキストにこの様に反映されています。
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 そして、下記はうちの協議会の講習テキストで、追いヅル伐りを説明しているものです。
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 前の記事にも載せていますよね。図解説明も載せてみましょう。
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 この追いヅル伐りが有効なことを実感するのは、こんな平らなところではなくて足場が悪い滑り落ちそうな崖での伐採です。
 もしくは大きく偏芯した広葉樹の伐採ですね。

 こんなヤツです。まずは小さく受け口を作って受け口方向の確認をします。
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 そこから受け口方向を修正・調整して大きく作ります。
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 そして突っ込み伐りを行いますが、足場さえあれば受け口の右側から突っ込んだ方が、ソーチェーンの腹側で切ることができるので前ヅルを正確に作りやすいです。
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 バンパースパイクを使って先回し伐りで正確に前ヅルを作ります。そして、バーが届かない場合には反対側からも突っ込んで前ヅルを作ります。
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 此の時にソーチェーンの背の方で切ることになるので、硬い木の場合にはチェーンが暴れてツルを壊すことがあるので注意しながら行います。
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 で、出来上がり。追いの高さは現場の状況や木の繊維によって様々です。わたしがやったのが良いとは言えません。
 あとはクサビを打ち込む必要があれば、追いを広げて打ち込み、最後に後ヅルを切り離して退避します。

 この広葉樹の偏芯木の場合に気をつけなければならないのは、重心方向の反対側の背の部分の繊維で枝や木の重量を支えていますから、木の種類によっては、普通の後ろから刃を入れていく追い伐りだと一気に裂け上がることがあることです。

 そうすると作業者を跳ね飛ばしたり顔面にパンチを食らわせることがあり、時には死亡事故に繋がります。

 また、海外ではバーバーチェア(床屋の倒れる椅子)と言うそうですが、幹が数m裂け上がってから落ちてきて作業者を潰す事故も発生します。昨年の津和野でのプロの死亡事故も此れが原因だったみたいです。5、6mくらい木が裂けていたそうです。

 この上の画像では、追いヅル伐りを行っていますので手当しませんでしたが、偏芯木の伐採には、受け口上部にロープやワイヤーを巻いて裂け留めを施すのが常套手段です。
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 この下の画像右下の様に明から様にに背面に繊維が入っているのが判る木ばかりではありません。兎に角斜めになっている広葉樹は、重心とは反対側の背側の繊維が樹冠の重量を支えています。
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 椎や朴の木の様に繊維が切れやすい樹種もありますし、粘る繊維の木もありますが、斜めに生えている広葉樹を重心方向に倒すために通常の様に後ろから追い伐りで刃を入れる時には、裂けても逃げられる体勢を採っておくことです。
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 斜めに生えている針葉樹は、腹側の繊維で樹冠を持ち上げる様にして重量を支えます。何れにしても偏芯して生えている木、株別れした木、足場の悪いところに生えている木を伐倒する場合には追いヅル伐りや突っ込み伐りの手法が安全を担保してくれるのではないでしょうか。
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 あとは、樹上高くに掛けたロープやワイヤーによって伐倒方向を確実に制御できるのならば、事故になる確率は格段に減らせるでしょう。

 また、目立てもまともに出来ない人が、切れない刃で且つパワーのないチェンソーでダラダラと伐倒作業をすることも広葉樹伐採には適しません。

 さて、受講者の様子に話を戻しましょう。伐木最後の一人は、すでに林業事業体に10月1日に就職している人です。この秋からの就職は春からとは違って寒い方向に行くので身体を林業用にしていくのには良いですよね。
 春からイキナリ酷暑の夏に向かって作業するのはこの猛暑が酷い時代には向いていないと思います。

 この彼の場合には可なりの枚数の写真が撮れました。突っ込み伐りで伐倒しています。他の人たちもやっていたのですが写真を撮れませんでした。
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 対象木は、ちょっと分かり難いですが、ロープを回している様に見える木の、其の又奥の木です。
 ですから、ロープがかかっている様に見える木と、その右横の木の間を抜いて引っ張るつもりで設定しました。

 かなり強引な設定ではありますので、それが良かったかどうかはちょっと疑問点がありますけれど、此の後直ぐに造材に入らないと時間がないためと、それから様々な牽引具を使って牽引することを行いたかったことが理由にあります。

 あと、左側に桜の木とか細い木があるのですが、傷めると不味いので使っていない電柱を使って似非フローティングアンカーを使って牽引方向を変換しています。
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 まずは小さめに受け口を作ります。若干高めなのは初めての伐倒なので勘弁してやってください。
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 ちゃんと水平が出ていますね。
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 会合線の方向が目標とする伐倒方向と直角になっているか精査します。それから受け口を大きく広げます。直角かどうか調べる方法は何通りか行いました。
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 方向の確認。
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 もっとも、この左の立木の二本の間を抜こうというので、最初から無理な話なのは判っていますけど、他の方向も掛り木必至なので、こういったケースではどうなるかというワークです。
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 原さんが説明を加えます。
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 若干修正を加えます。修正も上手です。チェンソー特別教育の記事に載せましたが、立てた丸太をアイドリングよりも少し高い回転を保ったままに薄く横にスライスするジット方式の練習をみっちりとやった成果でしょう。

 引っかからずに良く切れる刃を使っての低速回転で行うスライスの練習は、受け口の水平切りや斜め切りの際にも落ち着いて正確に出来る様になる効果がありますが、同時に受け口の角度調整などの微調整の際に微妙なスロットルワークを可能にします。
 皆さん上手に調整作業をやっておられましたよ。

 そして隅切り(斧目)を行います。
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 どうですかね。原さんの指導が良いので、初めての伐倒をする人とは思えないほど格好が様になっているでしょう。
 特別教育の際に、刃を反対側に寝かせる時は腿や膝にチェンソーを載せて行う練習もしてありますからね。

 そして突っ込み伐りを入れます。
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 此の時は原さんが側で見ていたのでチェックを入れませんでしたが、他の人たちの時にはバーが途中まで入ったところで、一旦エンジンを止めて、バーが水平かどうかを確認させました。

 前下がりとか前上がりになっていたら、抜いて水平になる様に挿し直し。わたしもジットの人たちにそうやって直されて身につけました。

 それ以前に、バーに水平機(丸いヤツで中央に空気玉が寄るタイプ)を載せて、動的なフォームの移動を行ってもバーの水平が保てる練習も散々しました。

 要するに現場でどんなフォームになっても身体の体勢と目の位置とそしてバーの位置や向きで水平が感覚的に判る訓練をするわけです。

 でも、彼は偶然か、それとも先週の練習の成果か、センスが良いのか、はたまた我々の教え方が良かったのか追いもほぼ水平に入っていた様子。

 次は、前ヅルをきっちりと正確に作る作業です。まずは、受け口右側を伐り進めてツルの厚さを決めたところまで切ります。

 そしてバンパースパイクを刺してから、先回し伐りで先端側を伐っていきます。
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 後ろ側から見ても分かり難い場合には受け口側から覗いて確認するのでも大丈夫です。普通の追い伐りと違って、後ろ側のツルが繋がっている為に木は倒れないからですね。
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 エンジンを止めて、確認をします。此の後のエンジン始動もこのままの状態で行います。
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 この先回し切りの際に木が太くて反対側のツルの位置が分かり難い時には、小枝を拾ってきてツルの位置の少し前に立てます。

 バーが回っていってその小枝を跳ねて倒すと、切れ込みが届いたという信号です。ジットの人たちが教える方法の一つです。賢いですよね。

 その手法をやらなかったのか、この彼は少し切り過ぎて受け口から向かって左側のツルが薄くなってしまいましたが・・・

 そして無事意図した様に掛り木になってくれました。ほとんど立ちんぼです。掛かり木は立ちんぼの時と、また大分斜めになってからでは処理方法のバリエーションが様々にあります。
 それは、市場に出す材なのか、それともB材以下なのかでも違いますからね。
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 「掛り木発生っ!!!」、と大きな声で周りに知らせます。

 あ、そうそう。忘れていました。まずは伐採に際して指差し呼称をして確認作業をすることも教えていました。

 この作業は、特別教育のテキストに載っている作業前、中、後の笛の合図以外にも行うジットが教える安全確認です。
 「上方よし!」「周囲よし!」「足元よし!」「退避方向よし!」「前方よし!」の五つです。
 上方は当然、蔓絡み、枝絡み、枯れ枝の落下などの事前確認です。そして周囲に人が居たり障害物がないかどうかの確認でしっかり注意しながら確認します。

 足元は、伐採の際のスタンスがちゃんと採れるかどうか滑らないかどうかで、足元が悪い場合にはカカトで斜面を蹴ってホールドを作ったり、木の枝で掘って土木工事をして足元を確保します。978-4-88138-178-6

 勿論、退避するときのルートの切り拓きも行います。そして安全に速やかに退避できる方向と隠れ場所の確保ですね。

 そして伐倒する前方に障害物があったり人が居ないかどうかを再度確認します。其の後で伐倒の合図の笛を吹きます。

 この安全作業を確保するためのこの作業については、ジットの理事長の石垣氏が書いた「伐木造材のチェンソーワーク」の指差し安全確認の手順・合図の項に書かれています。

 それにしてもこんな事まで詳しく書いているわたしって偉いよね。そう思いません? えっ、うざいだけ?
 でも、そんな人はこんなに文字を此処まで読まないだろうしね。

 と言うのも、このブログでこういった内容を詳しく書いているのは、近年になってあまりに素人の事故が増えているからです。それも防ごうと思えば防げるつまらない事故が多いですよね。

 勿論事故は素人だけには限りませんけれど、市民による森林資源活用とか自伐型林業に興味を持つ人たちが増えて来て、特別教育の様な専門的な講習も受けておらず、また一般的なチェンソーの扱い方だけを教えてもらって、いざ山に入れば掛り木が発生しても処理方法もしらずに我流で行って死亡事故を起こしているケースが多いからですね。

 だから、チェンソーの特別教育にしたって、防護服の着用義務など林業事業体だけでなく、伐採に関してお金が発生する場合に対しての、法規制がどんどん厳しくなって来ていますよね。

 集落などで謝金とかお金を貰ってチェンソーで伐採を行う場合など、お金が動く時には全て対象になっていることを知らない人、知らない役場が多いですからね。
 お金を払う側も貰う側も対象です。最大50万円の罰金か禁固刑です。

 そして、一般市民さんは、こういった優れたテキストがあること自体知りませんし、またチェンソー講習と言ってもピンキリで危ない作業を平気でやってきたプロが、素人に対して安全作業を教えずに、木を倒す方法ばかりを教えていることもあるでしょう。

 ネットの情報でもいい加減なものが少なからずありますし、結局は現場に於ける危険性も判らずに安易に参入している人たちも居ることでしょう。

 そうすると、我々の世界が規制でどんどん狭くなってしまうことは目に見えていますから、せめて自分ができる範囲、またご縁を持てる範囲でしかありませんけれど、クオリティの高い内容がお伝えできればと記事を書いている次第です。

 さてさて、わたしがこんな記事を書いても、自分にとって何らかのお金になるわけでも無いですし、他の記事にも書いています様に掛り木処理に応用できる樹上伐採用の道具類(ODSKさん扱い)や他の業者さんの道具類を紹介していますが、其れらが売れたとしても私にはなんら関係のない利益にならない話でも紹介しています。

 うちの協議会は関連する講習会を行うことで仕事になっています。ですから、こんな講習を行なっているという参考値を提示している次第ですが、其の講習会だけでは食べていけませんから、後は仲間からの頼まれ仕事で伐採などに行って生活費を稼いでいるというのがスタンスなんですよ。

 この間も仲間からODSKさんのものを売っていると言われたので改めて書いてみました。ODSKさんの宣伝はしていますけど、売れたからといってペイバックがあるわけではありませんので悪しからず。

 と言うことで島根から遠くて講習のご縁の無い方々にとっても本ブログ記事がお役に立てれば幸いです。

 さて、予定通り掛り木が無事発生しました。オレンジの矢印が伐倒した木です。もろに掛かっていますね。
 樹冠が混み入っていますので、ほぼ立ちんぼです。
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 下は前出の画像です。こちらはロープが写っているので分かりやすいですが、上の画像だと一番下に荷掛けワイヤーが回ってカラビナで接続しているのが辛うじて判るかどうか程度しか写っていません。
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 これを牽引具を使って力尽くで間を抜ける様にするにはどの位の力が必要かという体験をして貰うために敢えて状況を作りました。

 人力の三倍力牽引は先ほど済ませています。九倍力にしても、この状況では人力では厳しいでしょう。その三倍にするとロープの牽引距離が半端なく長くなりますから、そんなことは止めます。

 それよりも牽引具自体を知らない人が居るので、一通りの道具を用意してあります。まずは道具の説明から。
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・動滑車の定理を体験して貰うための繊維ロープ用の複数の滑車セット(フリクションノット用のロープスリングを含む)。ワイヤーロープ用の複数の滑車セット(クリップを含む)。

・プラロックの250kg引きのMPR1000:長い高強度の繊維ロープと複数の滑車を使えば750kg引きにも出来、軽量なセットを組めるのでザックに入れて山の中で機動的に作業ができる
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・750kg引きのチルホール(本体と牽引ワイヤーで16kgくらい):力はあるけれど重たい。これに三倍力を組もうと思ったら一人では運ぶのはしんどい。さらに上位機種の1.6t引きでは、本体と20mワイヤーだけで総重量が32kgくらい。
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・700kg引きのエンジンウィンチPCW3000(本体重量10kg程度):ロープの距離分をエンジンで引っ張ってくれるので楽。大きなザックならば、滑車からベルトスリングとエンジンやロープまで入れて運べる。

 三倍力を作れば、2tもの牽引力があり、また軽くて強い高強度の繊維ロープ(破断強度4tなど)も100mのものなどが用意できる。

 これはエンジンウィンチの写真は撮ってありませんね。倒した材を横に引っ張るためにロープを設置しているところだけでした。
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 テキストでは、エンジンウィンチのことを此の様に紹介しています。
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・ウィンブルヤマグチの林内作業車RN122X:ウィンチの牽引力はよく分からないけれど力持ち。ドラムのワイヤーは70mくらい出る。
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 此れらの牽引具及び、必要なベルトスリングやUシャックル、カラビナなどなど。

 此れだけの牽引具用を用意しておいてから順番に使い方をレクチャーしました。そしてそれぞれの良いところと使いにくいところ、使い方を間違った場合にはどんな危険なことが発生するかも伝えた次第。

 機材が破断した時にどういった状況に陥るとか、その回避方法などについてもですね。また、チルホールの牽引バーを挿したままにして退避すると、木が走った時の反動でバーが飛んで来たり、人を叩いて骨折することがあるなどもお話をしてあります。
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 結局、掛り木の処理はプラロックでは無理となり、次にチルホールで引いてみても結構大変な頑固な掛り木でした。で、途中でエンジンウィンチのPCW3000に換えて牽引して二本の立木の間を引き抜いて終了となった次第です。

 如何だったでしょうか? 他の受講者の方達も初めての伐倒とは思えないほど安定したフォームで受け口づくり、追い口づくり(突っ込みで追いヅルを作った人もいました)を行なっていましたが、此処に載せた彼は秀逸でしたね。

 わたしの手が空いていたので、これだけの写真が撮れました。動画でなくて申し訳ないのですが、安定したフォームづくりや作業手順を理解する手がかりになれば幸いです。

 しっかりしたメソッドの上で理論的な裏付けがある講習を行えば、初心者、それも初めての人たちが此れだけ安定した作業を行うことが可能であることを理解していただけばと記事にしてみました。

 ホームセンターでもチェンソーが手に入る時代になって、一応ネット情報なども観ているのでしょうけれど、安易に危険作業に属する山の現場に参入する人が増えつつあり、そして死亡事故が増えていることを聞き及んでいます。

 伐木という作業は、マニュアル通りにやればできるというものではありません。そもそも、初心者はそのマニュアル通りにできることさえ稀です。

 山の現場は目に見えない怖いエネルギーの圧力があります。木を切るというのは殺すのと同じことですからね。

 その圧力を感じながら頭を正常に働かせて手順通りに作業を行うこと、またマニュアルにはない変則的な条件の中で最適解を見つけ出すことなど、不確定要素が多い中で行う作業が伐採です。

 講習会では側に指導者がいるために精神的にはある程度お任せで行えるので、そんなに圧力は感じないかもしれませんが、実際の現場では一人で作業を行うわけです。
 もし、仲間が側にいても、失敗すると其の仲間も巻き込んでの事故になる可能性もありますからね。

 そして、チェンソーの講習も日本中で行われていますけれど、例え指導者がプロという人でもピンキリであることも認識しておいた方が良いかもしれませんね。

 林業界って狭い世界で天狗になっている(仲間に言わせると社会不適合者という)人が多いので、「素人、初心者にとって安全な伐木作業(様々な掛り木処理方法も含めて)」を教えられる人はあまり居ない可能性があります。

 其の点、我々が習ってきている「伐木造材のチェンソーワーク」のテキストを出しているジット・ネットワークサービスのメソッドは、人から人へ理論的に伝えて体得するためのメソッドが確立されていると思います。

 「これは、こうやってやればいいんだ。」、という様な抽象的表現で教えるのではなくて、「身体の此の部分を支点にして回転運動で動かす」とか、「微妙なスロットルワークを行うには指の付け根でトリガーを動かす」とか、「キックバックやプッシュバックなどチェンソーの不測の動きを受け止めて抑えるためには、リアハンドルおよび右手のどこかを右腿でホールドする」などなど、すべてが言葉で説明ができます。

 よって、教わった人が、また次の人に同じ様に教えることができる訳ですね。それも欧米の身体が大きく力が強い白人たちのチェンソーワークではなく、日本人全般から女性にまで体得しやすいチェンソーコントロールの方法です。

 重たいチェンソーの負荷を身体の各所に分散させて行うコントロール方法ですから、腕ばかりに頼って行うワークと違って疲れにくいですし、また不測の動きを身体全体で受け止めて治める体技と言っても良いくらいのものになっています。

 幸い島根ではジット島根の活動のお陰により一般市民さんたちのチェンソー切削事故のシリアスな話は聞いたことがありません。

 わたしはジットのメンバーでもありませんし、ジットをフォローする立場でもありませんが、良いものは良いと思うので、機会がありましたらジットの講習会に参加されることをお勧めします。
 もちろん、全林協さんの「伐木造材のチェンソーワーク」の本も手に入れられると良いと思います。そして、掲載されている石垣氏のフォームの写真を参考にされて型を身につけられると良いですね。

 うちのブログの幾つもの記事にも、ジットが教えるフォームが載っていますからご参考にして頂ければ幸甚。ついでに受講者の方達に見せた、うちの講習会用のテキストも載せておきましょうか。
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 また、チェンソーの刃付け、目立ての方法も理論的で判りやすいジットの方法もお勧めです。


【造材作業】
 造材は伐木した材を出荷するために適当な長さに玉切る作業です。針葉樹を市場に出す場合には直材の方が望しいので曲がりの部分を除いて真っ直ぐなところを採る様にします。

 其の前に先ずは枝払いの練習を行います。材をウィンチで動かして枝払いを行い易い場所に移動しました。
 枝払いの時には写真が撮れませんでしたが、下の講習用テキストの様な内容について行いました。
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 そして、造材は3m材や4m材にする場合が多いですが、ギリギリの長さではなく切り落とす余分の長さ、余尺を持って切りますので3m10cmなど余裕を持った長さにします。

 それも切り口は綺麗な方が印象がよく信頼度が上がりますから、木口の美しさはチェンソーマンの腕の見せ所かもしれません。あとは枝を払った切り口もですね。
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 まず最初に樹冠に近い方の細いところで練習をします。
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 玉伐り自体は、前週のチェンソー特別教育の実地の際に丸一日をチェンソーワークの練習をしていますから、上からと下伐りからとの面を合わせる技は色々練習済みです。
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 最初に材の長さを測ります。
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 先端の直径20cm程度の部分から採る3m材は、後日行われるバックホーの実技の作業路開設の際の土留め工や路面処理に使います。
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 まず上側から切って、そして下側から切り上げ。
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 初めてしてはまずまずの木口。と言いますか、充分でしょう。

 此方は次の人のものです。
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 お上手。津和野ヤモリーズで春から修行している成果ですね。

 上に乗り上げていた材を玉伐りしたら、今度は下側の材を引き出して切り易い場所へ移動します。
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 それには、スキッドコーンというキャップを材の先端に被せてから引っ張ると地面に突き刺さらずに少ないパワーで牽引できます。

 ついでに林内作業車のウィンチングの練習を行います。
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 此の様にした伐倒した木を3m材+余尺に揃えて引き寄せました。
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 其の中の細いものをウィンチで積み込み練習をしてから、材を山奥の作業道奥に運びます。それぞれ林内作業車の運転体験も済ませることができました。


【木に登らずに樹上にロープやワイヤーを掛ける方法、またブロック(滑車)を樹上に設置する方法】
 林業に於けるシリアスな事故は伐木の際の掛り木処理時に発生するものが多いです。またチェンソーの切削事故は枝払いの時が一番発生するそうです。

 だいたい、チェンソーパンツやチャップスをチェンソーで切ってしまうこと自体、例え怪我が無くとも事故と同じです。万が一のために防護服を着用しますけれど、だからと言って大丈夫という訳ではありませんので、甘い考えは捨てた方が良いでしょう。

 さて、掛り木の処理において、先ずは道具がなければ話になりません。細い木を切り捨て間伐で伐採する場合であっても、元玉伐りしか知らない様では長い間には痛い目に遭うこともあるでしょう。

 ロープ一本あれば飛躍的に安全になるのですから、装備自体を手抜きしてはいけませんよね。

 前述の様に装備が少ない順に行う方法としては、ツルを切って木が回る様にする。同様に楔も併用して木が回りやすくするなどがあります。
 次はフェリングレバーとかベルトなどの木回しですかね。ロープもありです。其の前に丸太をテコにしてずらすとかあります。

 でも、太い木やガッツリと枝に乗ってしまった場合には、其の程度の道具では二進も三進もいかないでしょう。

 最初から掛り木になりそうなことが分かっていたら、出来るだけ高いところにロープ乃至ワイヤーロープを掛けておくことで後の作業が楽になります。

 また、牽引伐倒用のためだけでなく、集材搬出のために樹上の高いところへアンカー(ブロック:滑車)を設置のために樹上へアクセスする必要があります。其の方法として・・・

・一本ハシゴで樹上に登る。其の場合に、軽量アルミ製のステップを持って上がると作業時の体勢を安定させやすいことと、またハシゴ以上にアクセス出来る様になる。またランヤード(胴綱)も二本使えるシステムを組むと安全を確保できる。その一本が長いものであれば、懸垂下降の様に地面まで降りられる様になる。

 他にも足に爪を付けるなどの古典的方法もありますが、場合によっては立木を傷めたり滑落する場合もあるので、一般的には一本ハシゴが安全でしょう。
木登りステップの活用 (1)
・ロープを使ったウェイビング技術で枝のない針葉樹の上方に牽引点を設置する。
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 上画像は両手で行なったウェイビングです。細い木の掛り木に有効です。一方のロープの端を立木に留めて、もう一方を引くと掛り木を回す力が発生します。ロープが長ければ、途中に滑車を設置したアンカーで方向転換して作業者が安全な場所から牽引ができますね。

 ロープさえ強くて伸縮率の低いリギングロープなどならば、人力以外のハンドウィンチやチルホール、エンジンウィンチで引っ張っても大丈夫です。

・スローイングノット。モンキーフィストとも言われるそうですが、ロープを束ねて樹上の枝に掛ける方法です。わたしの仲間の上手な人は8mくらい上の枝に掛けますね。樹上の枝の上でも同じ様なこともやります。
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 画像がブレてしまっていますが講習時のものです。広葉樹の枝に向いている技ですが、針葉樹でも枝が強ければ出来ないことはありません。枝の根元に掛かった場所をずらしたい時にはウェイビングの技が活きてきます。

・アルミ製の5m伸縮フッキングポールを使う方法。先端に上向きと下向きのフックがあります。
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 上の画像は、スローイングノットを投げるのが下手な人向けの裏技。スローイングノットをフックに掛けて枝に掛ける技を披露しています。
 スローイングノットを簡単に説明しますと、枝の向こう側にロープの束が回ると解けてロープが地面までパラパラと落ちてくる仕掛けです。
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 山で作業したことがない人は、ロープの先に重い石などを取り付けてから投げて枝に回せば良いとか考えますが、そんな人間が投げられる程度のオモリでは、ロープと木肌の摩擦で地面まで降りてきません。残念でした。

・ロープの先端に鉄製のカラビナやUシャックルを付けて、フッキングポールで枝の向こう側に落とす方法。枝が何本も生えていても引いて、もう一度次の枝に向こう側に落とす作業を順番に繰り返せば手前まで一回りする。
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 あとは、ランニングボーライン、日本語では罠もやいで輪っかを作ってから締め込めば樹上でロープが絞り込める。
 高強度の繊維ロープを持っていない人たちは、ホームセンターで売っているトラックロープ(我々は捨てロープと呼んで傷んでも良い作業に使っている)を樹上に回してから、アイ付きのワイヤーロープを繋げて樹上に回す方法がある。

・あとはスローウェイトとスローラインを投げて枝に掛ける方法も受講者に見せた。
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 上の画像は、細いスローラインをメインロープに縛る方法を行なっている風景。スローラインとはダイニーマなどの高強度の繊維ロープの2mm前後のもの。破断強度が250kgとか400kgのものがある。

 枝に回してメインロープを引き上げるために使うものだが、それを荷物を縛る様な紐で行おうと考える浅はかな人は残念でした。ロープもそこそこの重さがあるので、摩擦熱で切れます。
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・このスローウェイトを飛ばすための大型のパチンコもある。ビッグショットとかテキチューという商品名のもの。混み入った枝ぶりのところを撃ち抜くのには良いが、飛びすぎない様にラインのコントロールは難しい。
 道具さえあれば何でも可能にすると幻影を抱く人もいるけれど、そこには経験と技も必要。

・あとは電工さんが使うケーブルフィッシャーとかキャッチャーといわれる伸縮竿も見せた。グラスファイバーとかカーボン製なので、先端がしなるために重たいものは扱えない。わたしのものは8mのグラスファイバー製だが、先端を一段短くして8ozのスローウェイトを持ち上げるのがやっと。

 さて、今回の間伐遅れで混み入った講習現場での掛かり木は、ほとんど立ったままでクサビを打っても樹冠が動かない様なケースばかりだったので、事前に伐倒木の上方に牽引点を設置してから掛かり木の処理を行う牽引伐倒でしたが、今回とは異なるケースも多々あります。

 こちらは、講習時に見せた資料ですが、伐倒木がある程度倒れてから掛かり木になった場合では、前述の手法の内、スローイングノットでロープを投げて掛かり木の樹上に掛ける方法もありますし、スローラインを使って樹上に掛けてからメインロープに繋ぎ替えて牽引に持っていく方法もあります。

 もちろん、アルミ製の5mの伸縮フッキングポールや8m10mのケーブルキャッチャーを使って、ロープやスローラインをかける方法もあります。

 その場合に、フッキングポールの様なものがあれば、掛かり木に掛けたロープやスローラインを安全なところに立って手元に引き寄せることができますよね。
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 その上で、アンカーを設置してリダイレクト(方向転換)を入れて安全な場所で引けば良いわけです。

 人力で行うか、それに三倍力九倍力を入れるか、またはハンドウィンチなどで引くか、エンジンウィンチで引くか、それとも重機や車両系で引っ張るか、さらにはそういった動力に倍力のシステムを組み込むかどうかは、木の太さや掛かり木の重度によりますし、自身の手駒の道具立てに関わる話です。

 もちろん、手元に何もなければ、近くの細い木を切って長い棒を作って抉ってかかり木を動かすとか、また株の上に乗ったまま動かなければ、ハスクのインストラクターのアントンセン氏が行なった、掛かり木の根元の部分を先の方からと元の方から少し段違いにスライスし真ん中だけ少し残しておいてから抉る新幹線という方法もあります。

 現場にあるもので道具を作って応用する様な色々な方法が他にもありますからね。

 この様に、道具立てとそれを使いこなす技術、そして経験があればシリアスな事故を起こさない作業ができるはずですよね。

 何れにしてもこういった山の於ける作業は、自分の頭で考える力がないといい加減な力尽くの作業を行いがちです。
 難問への突破力は、自分の頭で考えること、それは論理脳である左脳ではなくてイメイジ脳である右脳の能力を高めないと出来ないことです。

 あとは直感とか閃きを引き込む能力でしょうか。顰蹙もあるかも知れませんが、ある意味林業現場は、リアルなゲーム的要素がてんこ盛りです。工夫すればするだけ楽になります。

 今では、一般市民さんが趣味で、また副業的に山仕事に関わっている人たちが増えていますけど、林業機械や重機などは別として、小さな林業に関わる道具類や技術自体が進歩していて、楽に安全に作業ができる新しい道具類にも色々投資しています。

 旧態依然として意識的にも膠着した今の林業界の体質では、この様な素人の一般市民たちが行なっている手法さえ採り入れようともしないわけです。

 日本の林業は重機だけで済む様な現場ばかりではありません。こういった基本的な現場の作業者の意識向上やスキルアップもあってこそ事故が減るのではないかと考えているのですがどうでしょうか。

 以上、基礎的なことを目的とした講習会では時間がなくデモだけで終わったものも多いですけれど、色々な難問突破のための道具と手法があることを知っておいて貰えば、無理な危険作業を繰り返すのを止めて、違う方法でアプローチを考える思考方法を身につけるために内容が盛りだくさんになってしまいました。

 今の時代、旧態依然とした林業作業のままに仕事をしているプロがたくさん居ますから、下手すると素人の方が技術力があったりするケースもあります。

 取り敢えずわたしとご縁があった受講者の方達には、広い裾野を知っておいて貰うことを目標に盛りだくさんの内容となりましたけど、皆さん結構真剣に受講されていたので、今後現場で悩んだ時に、あんな方法もあるとオッさんが言っていたっけ、、、と思い出してくれればと思う次第です。

 以上ざっと書いてアップしてみましょう。後から手直しをしようかなと・・・